(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当社は、2020年10月29日に開催の第27期定時株主総会において「定款の一部変更の件」を決議し、第28期より、決算期を7月31日から12月31日に変更いたしました。経営成績及び各セグメントにおける対前年度比については、前年度連結会計期間との比較は行っておりません。
①経営成績の状況
当社の半導体検査装置事業におきましては、数年前より、スマートフォンやタブレットなどの高機能情報端末向け半導体分野への精力的な設備投資が続くアジア圏(台湾及び中国本土)に新たな商機を求め、現地の顧客ニーズに適合したLCDドライバーIC検査装置を開発し、2020年10月にはWTS-577の後継となるWTS-577SRの開発を完了しリリースいたしました。当社の販売店である、スパイロックス社及び当社の子会社ウインテスト武漢との協業強化により、新顧客の開拓に注力しております。
その結果、既存のWTS-577並びに新開発のWTS-577SRそれら検査装置については、検査コスト低減に繋がる検査装置の効率的な機能がベンチマークの結果、高く評価され、現在、既存・新規顧客への導入に向け最終的な交渉を行っております。
2021年中に当社がメインとするLCDドライバーIC検査装置、WTS-577SRを使った積極的なベンチマークを伴う中国市場攻略の成果として、デザインハウス及びOSAT合わせて15社を超える顧客と商談を進めております。また新型コロナウイルス禍の影響から納入タイミングの調整を頂いておりました出荷分につきましても2022年1月から順次出荷を再開しております。当社グループとしては、今後も検査実績を高めて、台湾の販売店 スパイロックス社及び当社が中国に設立した当社の100%製造子会社、偉恩測試技術(武漢)有限公司(以下、「製造子会社」という。)に販売店機能も持たせており、更なる追加受注に向け営業活動をしてまいります。
2020年からの2年間は、2020年1月から顕在化した新型コロナウイルス禍の影響を大きく受けましたが、その間、「ファブレスからの脱却」、「半導体市場において大きな成長を遂げる中国マーケットに進出できる体制の構築」、セグメントを整理し「半導体検査事業に集中」するなど、経営体制の見直しを含む新体制移行に邁進してまいりました。今後もウインテストグループとして、横浜本社、大阪事業所における開発環境整備、人材育成及び増員に努め、組織の強化を行い、総務経理部を含む各部署における業務推進体制を革新するため、ERPやITを駆使した、より機動的かつ最新の環境で、設計、開発及び経営能力を強化するとともに、トータルコストの削減、納期の短縮と品質の向上を目指し、顧客満足度を上げることで受注増、業績の向上、企業価値の増大を図り、株主様の利益につなげてまいります。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は307,576千円、営業損失は730,710千円、経常損失は668,818千円、親会社株主に帰属する当期純損失は629,178千円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(半導体検査装置事業)
半導体検査装置事業では、昨今の半導体不足に端を発する有力顧客であるデザインハウスの稼働率低下を受け、売上・受注時期がずれ込み低調に推移しました。
この結果、売上高は240,250千円、セグメント損失は722,773千円となりました。
(新エネルギー関連事業)
新エネルギー関連事業においては、新型コロナウイルス禍の影響により現地作業などに大きな影響が出ました。
この結果、売上高は59,394千円、セグメント損失は4,327千円となりました。
②財務状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,870,782千円となり、前連結会計年度末に比べ514,617千円の減少となりました。これは主に現金及び預金が706,674千円減少したことによるものです。
固定資産は25,429千円となり、前連結会計年度末に比べ376千円の減少となりました。これは主にソフトウェアが1,439千円減少し、投資その他の資産が1,063千円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は201,873千円となり、前連結会計年度末に比べ29,324千円の減少となりました。これは主に未払法人税等が22,837千円減少したことによるものです。
固定負債は103,910千円となり、前連結会計年度末に比べ56,027千円の増加となりました。これは主に長期借入金が59,944千円増加したことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は1,590,428千円となり、前連結会計年度末に比べ541,697千円の減少となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純損失により繰越利益剰余金が629,178千円減少したことによるものです。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は219,109千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローとそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果減少した資金は856,085千円となりました。これは主に、棚卸資産の増加額557,946千円等による資金の減少があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果増加した資金は21,852千円となりました。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入23,992千円等による資金の増加があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果増加した資金は68,617千円となりました。これは主に、長期借入金による収入80,000千円による資金の増加があったことによるものです。
④生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度の生産実績、受注実績及び販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
前年同期比(%) |
半導体検査装置事業(千円) |
310,476 |
- |
合計(千円) |
310,476 |
- |
(注)1.金額は、製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績は、次のとおりです。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
|||
受注高 |
受注残高 |
|||
金額(千円) |
前年同期比(%) |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
半導体検査装置事業 |
381,881 |
- |
692,481 |
- |
合計 |
381,881 |
- |
692,481 |
- |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
前年同期比(%) |
半導体検査装置事業(千円) |
240,250 |
- |
新エネルギー関連事業(千円) |
59,394 |
- |
報告セグメント計(千円) |
299,644 |
- |
その他(千円) |
7,931 |
- |
合計(千円) |
307,576 |
- |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.最近2連結会計年度の主要な輸出先及び輸出販売高及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年8月1日 至 2020年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
日本 |
127,862 |
15.9 |
233,967 |
76.1 |
台湾 |
573,651 |
71.3 |
21,682 |
7.0 |
中国 |
100,144 |
12.4 |
2,665 |
0.9 |
インドネシア |
3,389 |
0.4 |
49,261 |
16.0 |
合計 |
805,047 |
100.0 |
307,576 |
100.0 |
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年8月1日 至 2020年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
Spirox Corporation |
570,711 |
70.9 |
- |
- |
Jilin Province New Century OpticElectric Co., Ltd. |
100,144 |
12.4 |
- |
- |
PT.EPSON BATAM |
- |
- |
49,261 |
16.0 |
日本放送協会 |
- |
- |
48,650 |
15.8 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表及び財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表及び財務諸表の作成にあたりまして、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主にたな卸資産評価損、固定資産の減損、貸倒引当金及び製品保証引当金であり、継続して評価を行っております。
なお、見積り及び判断・評価については、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 1経営方針 (2)目標とする経営指標」記載の通り、
当社は、「売上高経常利益率20%以上の確保、配当性向の30%の回復」を目標としております。当連結会計年度
においては、売上高経常利益率はマイナスとなっており、配当は行っておりません。その主な理由は、半導体不足に端を発する有力顧客であるデザインハウスの新デバイスのリリース遅延とOSATのライン稼働率の急激な低下、それに伴う売上と受注時期のずれ込みにあると考えております。
対応策に関しましては「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (7)継
続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を改善するための対応策等」に記載のとおりであり
ます。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤資本の財源及び資金の流動性についての分析
「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主な資金需要は、原材料や商品の仕入、製造費、販売費及び一般管理費などの運転資金であります。また、これらの主な資金調達としては、営業活動および新株予約権の行使による株式発行などの自己資金、金融機関からの借入によっております。
⑥経営者の問題認識と今後の方針について
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
⑦継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を改善するための対応策等
当社グループには、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク (8)継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況の概要」に記載のとおり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
当社グループはこうした状況を解消するため、以下の取組みを実施しております。
まず、半導体検査装置事業では、2022年以降半導体製造企業の新規投資は、通信の5G化(移動高速データ通信低遅延技術)が普及するにあわせ、LiDARに代表される技術である自動運転や、ミスが許されない遠隔手術やロボット制御、身の回りのあらゆる「物」がインターネットに繋がる、IoTの大きな変革が起きようとしています。これは、半導体集積回路(以下、「IC」という。)の機能面にも大きな変化があることが予想されており、いわゆる5G投資が注目されています。当社でもその技術変化に応じたタイムリーな検査技術の開発が必須となります。特に当社グループが「主力装置」と位置付けるLCDドライバーIC検査装置は、パソコン、タブレット、そしてスマートフォン等に多く使用されている各種半導体、とりわけLCDドライバーIC(画面に絵を表示するIC)の検査に使用されており、また、それら情報端末ではLCDドライバICだけではなく、当社が得意とするCMOSイメージセンサーIC、ロジックICなど周辺半導体デバイスの需要も同時に大きく伸びてまいります。当社が2020年10月に発表し、2021年から出荷を開始したWTS-577SRにつきましては、顧客からのベンチマーク要請に積極的に応え、ベンチマーク結果に一定の評価を頂くことができました。2022年度に入り、旧正月明けから徐々にデザインハウス及びOSATの事業活動は、活発化してまいりましたので、2021年度中に出荷を見合わせておりました受注済の検査装置を、2022年1月から順次出荷を開始、2022年中に売上計上を行う予定でおります。今後さらにスパイロックス社、製造子会社と協働での顧客攻略を進めるとともに、アフターサポート体制の拡充と強化を進め、中国における販売チャンネルを活かし、新規、既存顧客等複数企業からの受注活動を強化してまいります。製造子会社においては、コストの削減と顧客対応力の両方を強化を行ってまいりますが、他方、製造品質の向上にも注力するため、日本からのキーエンジニアの常駐も並行して行い、基盤の強化を行います。
今後、既存装置に係る工場機能は主に製造子会社に移し、大阪事業所は、新型次世代検査装置の開発設計と製造に注力してまいります。さらに大きく当社の事業を伸ばすため、当社の製造子会社の製造ライン横に設営しているクラス100(1㎥の空間に埃が100個以下)のクリーンルームを生かし、お客様のIC(アルミウエーハ)を借用したインターナルベンチマークを行うことで、お客様の工場で発生した新たな問題に対し早期解決を図ること、また問題解決にあたり必要以上にお客様の製造ラインを止める必要がなくなります。その結果、顧客信頼度を高めることができます。これは特に製造子会社が受け持つ有力な大型OSAT向けに直接営業を行う上で大変重要な戦略となります。このような戦略を積極的に進めることが、受注・売上の増大を図り、2022年度(当社第30期)の予算を達成する礎となります。
さらに、次世代マルチプラットフォーム検査装置で開発予定の高速ロジックテスターについては、より広範囲のロジックIC検査に対応させる計画であり、2022年度内の完成を見込んでおります。本装置については既に複数のお客様からも問い合わせを受けており、計画どおりの開発完成を目指してまいります。
また、上述しましたとおり、当社グループがこれまで培ってきた検査技術や画像処理技術、高精度センサー技術、データ解析技術を生かし、現在開発中のマルチプラットフォーム検査装置によって、今後の市場拡大が見込まれるメモリーIC、イメージセンサーIC等への検査分野拡大に加え、5G通信規格の台頭とともに新たに注目を集めるパワーデバイス検査分野への進出を、3年後をめどにM&Aなども視野にシナジーの高い事業会社との資本・業務提携、並びに産学連携を積極的に進め、当該分野へ新規参入、対応可能検査範囲の拡充と展開を計画、収益基盤の拡充に取り組んでまいります。
自重補償機構技術プロジェクトは、昨年新型コロナウイルス禍における大学研究室の閉鎖など進捗に大きな支障が出ましたが、昨年後半からは研究室の再開もあり、より製品に近い試作モデルも完成し、当社の検査装置に付属させるマニピュレータの完成イメージに近づいており2022年度中には当社装置に搭載できるものと考えております。詳細は上述しておりますので、そちらをご参照ください。
当社が、奈良県立大学並びにTAOS研究所と進めております脈波(ECG,BCGセンサーを利用したバイタルデータ)を利用したヘルスケア管理システムも同様に、製品化に大きく近づいており、また、バイタルインターフェースの試作モデルが完成しましたので、より多くのデータを取得し、その精度を高める作業に着手しており、当期中の製品化を計画しています。なお、販売はTAOS研究所が自身の既存の販売チャンネルを使って販売をする計画でおります。海外からのお問い合わせがあった場合は当社が輸出販売を行います。
経費水準については、大阪事業所並びに中国製造子会社の開設に伴う運転資金及び研究開発費等により増加しておりますが、国内における製品の製造委託コストに変化はないものの、部材調達につきましては、半導体不足の影響を色濃く受けており、その納期の長期化やコストの上昇が深刻ではありますが、経営判断により2021年の早期に思い切った部材調達を行いました。しかし、その甲斐あって、今年度は半導体不足に影響されることなく、装置の納期、サポートともにスピーディに行うことができます。現地での製品やサポートの品質向上にも同時に取り組み、売上予算の達成に向けて邁進いたします。
財務面については、折からの半導体不足が深刻さを増し、当社の検査装置に不可欠な半導体部品の大幅な納期遅延、大幅な価格高騰を受け、タイムリーな装置製造に支障がでる恐れがあるとのことから経営判断により、2021年前半に必要十分な早期の部材仕入れを行った結果、運転資金となる現預金が減少しております。財務基盤の安定化を求め、2021年11月に金融機関からの新規借入を行い、更に2022年1月31日に開催の取締役会において、資本増強につながる割当予定先への第三者割当による新株予約権の発行を決議し、2022年2月21日にその払込も完了いたしました。これにより、今後の事業継続に必要な開発及び運転資金を確保するとともに、2022年後半から2023年の製造に必須となる製造部材の調達に必要な資金の確保及び財務基盤の強化を図りました。また、2022年2月28日には今後の運転資金需要に対応するため金融機関からの追加借入を行っておりますが、引き続き前記の新株予約権行使による資金調達並びに筆頭株主である武漢精測と諮りながら、親会社及び金融機関からの借入等による運転資金確保のための施策を実施してまいります。
以上のとおり、台湾、中国を中心とするビジネス機会や売上・受注の増加が見込まれること、受注済みの検査装置の売上・入金が見込まれること及び上述の資金調達の実施により、今後の運転資金に必要十分な現預金を確保していることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
お知らせ