課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

1.経営方針

(1) 会社の経営の基本方針

 人とIoTの主要インターフェースである「ディスプレイ」及び周辺デバイス、そして電子の目「イメージセンサー」を始めとする半導体の自動検査における、トップリーダーを目指し、世界的企業へと成長し、社会に貢献します。

 我々は、人と環境にやさしい技術をとおして、社会に貢献し、地球環境の保全を図り、次の世代に住みよい地球と豊かな社会を残すように努めます。

 当社は、この経営理念を具体化するために、以下の経営方針のもとに安定かつ効率的な経営を継続していくことにより、収益性を向上し、会社の発展と社会への還元を図り、株主、顧客、従業員の期待に応えることを経営の基本としております。


企業目的: バイタリティ(生命力)、知恵、創造
行動指針: 量より質、プロセス重視、ゼロから考え直して
計画  : コンセプトデザイン重視
課題解決: 全員で寄って集って課題解決、ベストウエイソリューション、PDCAスパイラルアップ
風土  : 分かち合う。
利益処分: フェア(投資家、従業員、顧客、役員、社内留保)
人事  : 一流のもの、出る杭には油を、加点主義、将来を見据えたマネージメント

 

(2) 目標とする経営指標

 「売上高経常利益率20%以上の確保、配当性向の30%の回復」を目標としております。このため当社は、次世代ディスプレイドライバIC向け検査装置、高精細化著しいイメージセンサー、ディスプレイ(アレイ)分野向け検査装置並びに先端ロジックデバイス向けの検査装置の開発販売を継続し、メインマーケットを市場の消えた日本国内から中国、台湾に移し、事業の拡大を図ってまいります。新たな成長の起爆剤として、中国湖北省武漢市に当社100%の量産工場「偉恩測試技術(武漢)有限公司」(以下、「ウインテスト武漢」という。)を2020年1月から稼働開始したことにより、今後急拡大を続ける中国半導体市場向け装置の柱といたします。引続きIoTヘルスケア関連技術、インダストリー4.0を念頭においた、自重補償型マニピュレータの製品化を進め、マーケティングを通して技術革新を推進、売上の増大を図ってまいります。また徹底したコスト管理を行うことにより、目標とする利益率の確保に努めてまいります。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

 当社の検査装置の対象のひとつであるイメージセンサーの分野は、情報端末の市場拡大もさることながら、スマートフォンの画質を一眼レフに近づける技術開発がすすんでおり、カメラの複眼化が進み、ハイエンド製品では3眼が標準になっていますが、搭載個数がスマートフォンの商品力に直結するため、さらなる多眼化が進み、イメージセンサーの需要は大きく増加、また今後大きな市場が見込まれている高速通信規格である5G(第5世代移動通信システム)技術の普及拡大に合わせた車の自動運転など、本分野も同様に急拡大し2025年には2兆6,460億円(2019年比38.5%増)が予測されています。(株式会社富士キメラ総研:イメージング&センシング関連市場総調査より)
 特に当社が力を入れる、ディスプレイドライバIC検査装置では、2020年10月に開発を完了し、2021年1月末より出荷を開始した新装置WTS-577SRの、各有力顧客でのベンチマーク(お客様工場に装置を貸出し、実際の現場で量産半導体の検査ラインに投入し、検査スピードや精度、そしてデータの相関度などを評価頂くこと)は終了し、大阪事業所並びに当社100%製造子会社(ウインテスト武漢)での増産体制構築を完了、順次出荷を行っています。そして現在更に、高速、高精度な次世代機の開発を行っておおり、2023年にリリースを行う方針です。同装置はLCDドライバー検査装置、イメージセンサー検査装置、ロジックデバイス検査装置、そしてフラッシュメモリーの検査にも、内部の一部のリソース基板を差し替えるだけで対応可能な装置として開発を進めております。

 2021年中は、WTS-577SRを使った積極的なベンチマークを伴う中国市場攻略の成果として、デザインハウス及びOSAT合わせて15社を超える顧客と商談を進めております。また新型コロナウイルス禍の影響から納入タイミングの調整を頂いておりました出荷分につきましても2022年1月から順次出荷を再開しております。当社グループとしては、今後も検査実績を高めて、台湾の販売店 スパイロックス社及び当社が中国に設立したウインテスト武漢に販売店機能も持たせており、更なる追加受注に向け営業活動をしてまいります。

 

2.経営環境

 当連結会計年度における世界経済は、全世界的に当初の想定を超えて猛威を奮う新型コロナウイルス禍の影響から深刻な半導体不足が発生、当社の顧客においても半導体不足の影響や、サプライチェーン不調に伴う供給制約、資源高、需給ミスマッチによる労働力の不足を伴い、半導体市場においては、上流である半導体デバイスの開発メーカー(以下、「デザインハウス」という。)からの新デバイスのリリースなどにも影響がでたことで、半導体受託組立検査専門会社(以下、「OSAT」という。)では物流の停滞や半導体材料の不足などを原因とし、工場稼働率の低下が叫ばれる事態となりました。そのような状況は、経済市場全方位に影響を与え、例えば大手の車メーカーや電気製品メーカーであっても半導体不足、物流チェーンの乱れなどから大幅な納期遅延が発生しています。

 当社への影響としましては、上述の状況から最もビジネスが活発になる下半期に、設備投資のタイミング調整が入ることとなり受注済み製品の納入タイミング調整と、下半期に強い引合いが期待された顧客からの発注に影響が出ることとなり、受注、売上は低調に推移しました。また装置の製造面では、検査装置の製造に欠かせない半導体部材の入手も困難な状態になりつつあったため、2021年上半期に通常より多くの部材の発注を行い、2021年末から2022年の製造に必要な部材の早期調達を行いました。しかし、半導体不足は現在更に深刻な状況となり当社が必要とする製造部材の納期は12カ月から高集積度半導体チップなどは18カ月と大幅な長納期となり、価格は数倍、ものによっては10倍にまで高騰しています。当社は、このような状態に対応するため、2022年においては、必要十分な部材を先行手配し、工場を止めることの無いよう計画的に部材の調達を進めてまいります。

 当社グループが属する半導体並びにフラットパネルディスプレイ業界の2021年度及び同市場の長期的展望としては、2021年に想定以上の半導体不足が叫ばれ、製品需要に対し、需給バランスが崩れましたが、今後2022年は、半導体を消費するスマートフォンが安定的に伸びてまいります。その中でも特に5G仕様のハイエンド品が大きな伸びが顕著となっていくと予想されています。パソコン、タブレットなどは世界的なテレワーク等需要の高まりはあるものの半導体及び周辺部材なども、ひっ迫していることから特に2021年下半期は出荷台数が伸び悩み、その状況は今でも余波が続いています。WSTSの11月発表によると、2021年の世界半導体市場成長率は、25.6%増でしたが、2022年も引き続き 11.1%増が見込まれ、半導体全体で2022年は8.8%増となり、2年連続で最高記録を更新する見込みと予想されています。(JEITAが発表する、世界半導体市場統計(WSTS)参照)

 「表示デバイス市場」は、PC・タブレット・モニターに使われるITパネルの品薄はまだ続いており、動きも旺盛でありますが、巣ごもり需要増大からひっ迫感が出ていたTV用大型パネルは、やや落ち着きを取り戻し価格も安定したことから、2022年度~2023年度は、比較的新規での大型投資案件は少ないものの、ITパネルをG8.6クラスの大型基板で量産する動きや、新しいパネル製造技術の採用を考慮し、総じて安定した成長が見込まれています。(一般社団法人 日本半導体製造装置協会(SEAJ)参照)

 製造装置市場(日本)としては、2022年度は5.8%増の3兆5,500億円の成長が見込まれ、2023年度は4.2%増の3兆7,000億円と、安定的な成長が予測されています。また市場地域では、「中国市場向け」が昨年に続き続伸、世界半導体製造量で見ると2022年中にも中国が世界市場において55%を超えるとも予想されております。(IC Insightsから引用)このような状況から、2022年に向かい当社がメインマーケットと位置づける中国市場の拡大が更に進むものと考えております。

 

3.対処すべき課題

(1)主たる既存事業への取り組み

 当社グループの主要事業である半導体検査装置事業では、高度化、多様化するお客様の検査ニーズにお応えするため、既存検査技術の革新を進め、2020年10月に高速半導体向けとして、WTS-577SRの開発を完了し、2021年1月末より出荷を開始しました。更に、現在次世代検査装置の開発を継続しており、マルチプラットフォーム設計思想とすることで、検査対象の半導体の種類拡充が可能となり、今後持続的な成長が予想されている半導体市場に追随し、当社グループの事業の成長継続と、半導体サイクルにおける市場の急速な変化に対応してまいります。さらに足元の政策として、製造能力の強化、品質管理体制の整備推進を通し、お客様にとってより信頼される企業として成長するために、以下の課題への取り組みを進めてまいります。

 当社の主たる事業分野である半導体検査装置事業分野はスマートフォンに代表されるように新製品サイクルが非常に早く、おおよそ、6カ月を目途として新製品がリリースされ、その技術レベルや機能のレベルが上がるごとに新機能を実現するための半導体が要求され開発されています。そのため、当社グループとして検査装置の開発の手を緩めることなく、市場要求に合わせた新機能などの開発が必須となります。その流れは、5G高速低遅延通信規格の普及とともに加速しており、より早い技術革新が当該検査装置にも求められております。

 半導体検査装置においては高精度、低コスト、高速化に加え信頼性の向上が求められるだけでなく、更に使いやすいユーザーインタ―フェースと、検査用プログラミング補助機能の強化などを実現する必要があります。それぞれをこれまでにないスピードで推し進めることが、同分野において求められることから、当社グループは当期より組織と業務運営体制を変更し、よりスピーディーな経営判断ができるように改革を行っております。今後とも検査ニーズに対応する検査技術や手法の開発を継続するとともに、随時開発体制の見直しと強化を行ってまいります。

 世界の半導体市場はもはや中国を抜きに語れないところまできております。当社は引続き、中国と台湾をメインマーケットとし、現地顧客のニーズを把握し当社100%出資の中国湖北省武漢市に設立した製造子会社の能力を最大限に高め、製造から納品までのタイムラグをなくすことで、現地顧客の信頼、ニーズを先取りした経営を行ってまいります。

 当社第30期となります2022年からは、ウインテスト武漢に開発部を正式に設立し、新機能や高速化を目的とした開発や改良を行わせることとし、製造品質の強化、営業部の拡充を進めてまいります。当社の台湾における販売店、スパイロックス社の上海中国本部及び蘇州オフィスと共同で新規顧客へのアプローチ、既存顧客からのリピート受注の促進を図ってまいります。

 また、2022年初頭に開発の完了した次世代SSDR4.0(次世代機向け高速データ転送機能)他、2021年から開発中であった、次世代装置向けである、いくつかの新機能の開発は終了或いは最終段階に入っており、現状最新機種であるWTS-577/WTS-577SRにも搭載可能とし、出荷を始めました。現在開発中の次世代検査装置は、マルチプラットフォームを強く意識した構造とし、LCDドライバーIC、フラッシュメモリー、イメージセンサーをはじめ、高速ロジックIC検査にも対応するなど多様な半導体の検査ができることとし、それらの検査を制御するソフトウエアや専用インターフェースを共通化して使えるようにすることで、お客様においても、製造ライン内における資源の汎用化を実現、現場での開発スピードのアップだけでなく、導入コスト、導入リスクを大きく下げる提案が可能となります。当社は、このような新たな発想による新たな検査ニーズに対応する検査技術や手法の開発を新組織の下、進めてまいります。

 当社は、中国・台湾のマーケットに参入するため、スパイロックス社と連携、ウインテスト武漢の営業部及び日本のテスト技術課が三位一体になった新規顧客向け検査装置貸出評価活動(以下「ベンチマーク」という。)や販売戦略プロジェクトを推進し、なお一層販売体制を強化し、拡大が続く中国マーケットに深耕してまいります。加えて、2022年も引き続き中国における製造工場としてのエンジニアや管理組織の人員の雇用を促進し量産に向けた製造体制の強化を推し進めつつあり、中国国内の顧客から、大きな注目と期待を寄せて頂いております。また、蘇州に拠点を有するスパイロックス社オフィスにも数名のエンジニアを常駐させ、共同でサポートやデモ、ベンチマークを行える拠点とし、受注体制の拡充とスピードアップを図り、拠点からの直接サポート、納入ができる体制を整備しております。

 さらに、今後、当社グループとしての具体的な営業技術戦略として、ウインテスト武漢に開発機能を持たせることは前述いたしましたが、アフターサポートの重要な面としてアプリケーションサポート要員を育成、メーカーとして現地顧客からの信頼を獲得してまいります。製造・開発面では、ウインテスト武漢を強化することで、大阪事業所は、本来のミッションである新技術の開発、新型次世代検査装置の開発並びにそれら新型装置の製造に専念できることとなります。

 

(2)産学連携等による新技術への取り組み

 当社は、業務範囲の拡充を目的に、産学連携を行っております。しかしながら2020年1月に顕在化した新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、各大学機関は2022年現在も完全に元に戻っておらず、リモート授業が続き研究室も一部が活動に制限のある状況でありますが、2021年後半からは、順次条件付きながら再開しつつあることから、以下にそれらの進捗につきご説明申し上げます。

 インダストリー4.0を念頭においた検査装置向け工場FA化機器技術(「自重補償機構技術」)、当該技術については、学校法人慶應義塾大学慶應義塾先端科学技術研究センターと共同開発を進めており、2021年9月の段階で、より製品に近い重量キャンセル型アームのプロトタイプが完成しており、各部動作の検証を進めております。なお、特許等の申請については、既にお知らせのとおり手続きは終了しております。また今後の進め方につき大学側と調整中でございます。当該技術は当社の検査装置とウエーハ搬送装置との間のドッキングアダプター(以下「ポゴタワー」という。)の着脱(約25㎏~30㎏)をオペレータ一人で簡単に安全に行うための補助アーム(以下「マニピュレータ」という。)で製品化を目指し、当面の目標として、その搬送可能重量を50㎏前後で製品化を行います。その後応用製品としてインダストリー4.0を推進する「半導体製造工場内FA化システム」、「半導体工場内物流搬送システム」等への応用が可能と考えております。

 和歌山大学と進めておりました脈波(BCG,ECG)を利用したヘルスケア管理システムは、研究室が2021年4月に奈良県立大学に異動となりましたので、現在は同大学並びに株式会社TAOS研究所とアライアンスを継続し、製品化を急いでおります。現在、最終製品化に向けて共同開発を進め、センサーを組込んだバイタル情報インターフェースを完成させ、いくつかの試作モデルを使いあらゆる年代におけるデータのばらつきなどを取得し検証を進めております。なお、ヘルスケア管理システムの販売に関しましては、TAOS研究所に一任する方向です

 

(注)インダストリー4.0 検査装置向け工場FA化機器技術に使われる「自重補償機構技術」とは

 一般的な「重量物搬送装置」は、電気モーターやエンジン等の動力源を持ち、かつ、重いカウンターウエイトや油圧・圧縮空気の出力を借りることで、数十キロから数百キロの重量物の移動をアシストしますが、装置が大掛りで重量が重くなることや、重量物に見合う外部動力が必要となるといった課題を有しています。これらの課題克服のため、当社と慶應義塾先端科学技術研究センターは、いかなる動力や重いカウンターウエイト、そして油圧・空圧機器をも使用しない「自重補償機構」の開発を進め、バネの弾性力を応用した軽量かつシンプルな構造を内蔵したロボットアームの継続開発を行っております。今般開発した試作機は、被搬送物の重量が変化した場合でもその重さに見合った自重補償ができる構造となっており、回転軸を除く各軸にて搬送する重量物の自重補償を達成し、自身の腕部分の自重をも含め、より安全な自重補償を成立させています。

 

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