当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針および将来に関する仮定および報告期間末における見積りの不確実性の要因となる事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しております。
(単位:億円)
当連結会計年度末の資産合計は24,062億円で、前連結会計年度末と比べ7,973億円の増加となりました。これは、Dialog社およびCeleno社の買収により、のれんが増加したことなどによるものであります。資本合計は11,615億円で、前連結会計年度末と比べ5,418億円の増加となりました。これは、公募増資などによる新株式発行により資本金ならびに資本剰余金が増加したこと、および為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額などのその他の資本の構成要素が増加したこと、ならびに当期利益により利益剰余金が増加したことなどによるものであります。
親会社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末と比べ5,414億円増加し、親会社所有者帰属持分比率は48.1%となりました。有利子負債は、社債を発行したことなどにより、前連結会計年度末と比べ1,372億円の増加となりました。これらの結果、D/Eレシオは0.72倍となりました。
当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下「Non-GAAP指標」)およびIFRSに基づく指 標の双方によって、連結経営成績を開示しております。
Non-GAAP売上総利益ならびにNon-GAAP営業利益は、IFRSに基づく売上総利益(以下「IFRS売上総利益」)および営業利益(以下「IFRS営業利益」)から、非経常的な項目やその他特定の調整項目を一定のルールに基づいて控除もしくは調整したものであります。当社グループの恒常的な経営成績を理解するために有用な情報と判断しており、当社グループはNon-GAAPベースで予想値を開示しております。具体的には、企業買収に伴い、認識した無形資産の償却額およびその他のPPA(取得原価の配分)影響額、株式報酬費用や当社グループが控除すべきと判断する一過性の利益や損失などを控除もしくは調整しております。
当社グループは、「自動車向け事業」および「産業・インフラ・IoT向け事業」から構成されており、セグメント情報はこれらの区分により開示しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 6.事業セグメント」をご参照ください。
(注) Non-GAAP指標の開示に際しては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)が定める基準を参照しておりますが、同基準に完全に準拠しているものではありません。
① 当連結会計年度(2021年1月1日~2021年12月31日)の業績(Non-GAAPベース)
(単位:億円)
(注)1 上記表の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 6.事業セグメント」をご参照ください。
2 為替レートは、収益・費用の換算に用いた各月のレートを平均したものであります。
3 前連結会計年度および当連結会計年度の売上収益はIFRSに基づく金額であり、Non-GAAP調整は含まれておりません。
当連結会計年度における業績は、以下のとおりであります。
(売上収益)
当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度と比べ38.9%増加し9,944億円となりました。これは、前連結会計年度上期を中心とした新型コロナウイルス感染拡大の影響による自動車生産減少からの回復を受け、当社の自動車向け事業の売上収益が増加したことに加え、産業・インフラ・IoT向け事業での需要拡大を捉えた売上収益の増加、および2021年8月31日に買収が完了したDialog社の連結開始に伴う増収効果などによるものです。なお、2021年9月14日付で、Dialog社はDialog Semiconductor Limitedに商号変更しております。
(Non-GAAP売上総利益 (率))
当連結会計年度のNon-GAAP売上総利益は5,289億円となり、前連結会計年度と比べ1,901億円の増加となりました。これは、自動車向け事業および産業・インフラ・IoT向け事業のいずれについても売上収益が増加したことや、製品ミックスおよび工場稼働率の改善などに伴う売上総利益率の上昇によるものであります。その結果、当連結会計年度のNon-GAAP売上総利益率は、53.2%となり、前連結会計年度と比べ5.9ポイントの増加となりました。
(Non-GAAP営業利益 (率))
連結会計年度のNon-GAAP営業利益は2,966億円となり、前連結会計年度と比べ1,590億円の増加となりました。これは、上述の理由による売上総利益の増加のほか、Non-GAAP調整後の販売費及び一般管理費の効率化に努めたことなどによるものであります。その結果、当連結会計年度のNon-GAAP営業利益率は、29.8%となり、前連結会計年度と比べ10.6ポイントの増加となりました。
当連結会計年度における各セグメントの業績は、以下のとおりであります。
<自動車向け事業>
自動車向け事業には、自動車のエンジンや車体などを制御する半導体を提供する「車載制御」と、車内外の環境を検知するセンサリングシステムや様々な情報を運転者などに伝えるIVI(In-Vehicle Infotainment)・インストルメントパネルなどの車載情報機器に半導体を提供する「車載情報」が含まれております。当事業において、当社グループはそれぞれマイクロコントローラ、SoC(System-on-Chip)、アナログ半導体およびパワー半導体を中心に提供しております。
当連結会計年度における自動車向け事業の売上収益は、前連結会計年度と比べ35.6%増加し4,623億円となりました。これは主に、上述の通り自動車生産減少からの回復を受け、「車載制御」および「車載情報」の売上収益が共に増加したことによるものであります。
当連結会計年度における自動車向け事業のNon-GAAP売上総利益は、前連結会計年度と比べ861億円増加し、2,146億円となりました。これは、売上収益の増加に加え、製品ミックスの改善などによる売上総利益率の上昇によるものであります。
当連結会計年度における自動車向け事業のNon-GAAP営業利益は、増収効果および売上総利益率改善に伴う利益増により、前連結会計年度と比べ741億円増加し1,224億円となりました。
<産業・インフラ・IoT向け事業>
産業・インフラ・IoT向け事業には、スマート社会を支える「産業」、「インフラストラクチャー」および「IoT」が含まれております。当事業において、当社グループはそれぞれマイクロコントローラ、SoC(System-on-Chip)およびアナログ半導体を中心に提供しております。
当連結会計年度における産業・インフラ・IoT向け事業の売上収益は、前連結会計年度と比べ41.8%増加し5,155億円となりました。これは、Dialog社の連結開始による増収に加え、「産業」、「インフラストラクチャー」、「IoT」、それぞれの区分において増収したことによるものであります。増収に寄与したのは、FA(ファクトリーオートメーション)機器向け、データセンターおよび携帯電話基地局向け、PC等OA機器向けなどでありました。
当連結会計年度における産業・インフラ・IoT向け事業のNon-GAAP売上総利益は、前連結会計年度と比べ1,032億円増加し3,123億円となりました。これは、売上収益の増加に加え、製品ミックスの改善などによる売上総利益率の上昇によるものであります。
当連結会計年度における産業・インフラ・IoT向け事業のNon-GAAP営業利益は、増収効果および売上総利益率改善に伴う利益増により、前連結会計年度と比べ774億円増加し1,671億円となりました。
当社グループは2020年2月17日に中期の戦略および財務モデルを公表しております。当社グループでは、注力市場に経営資源を集中投下することで、Long-term targetとして市場を上回る売上成長率を実現し、生産効率の最適化、製品ミックスの改善および旧IDT社、Dialog社、Celeno社の統合シナジーの発現を目指しています。2021年9月29日には財務モデルを更新し、Non-GAAPベースで売上総利益率50~55%に、営業利益率25~30%とすることを目標に掲げました。
なお、中期の戦略および財務モデルで各目標は、提出日現在における当社グループの長期的な経営目標であり、その達成を保証するものではなく、「2 事業等のリスク」に記載された事項を含む多くのリスク要因その他外部環境等の変化により、その結果が左右される可能性があります。
② Non-GAAP売上総利益からIFRS売上総利益、およびNon-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整
(注)その他非経常的な項目および調整項目には企業買収関連費用や当社グループが控除すべきと判断する一過性の利益や損失などが含まれています。
③ 当連結会計年度(2021年1月1日~2021年12月31日)の業績(IFRS基準)
④ 生産、受注及び販売の状況
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品群であっても、その性能、構造、形式などは必ずしも一様ではないこと、受注生産形態をとらない製品も多いことなどから、品目ごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため、生産、受注および販売の状況については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における売上収益のセグメントに関連付けて示しております。なお、主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(注) 上表金額には消費税等を含んでおりません。
(4) キャッシュ・フローの状況
(単位:億円)
(注)フリー・キャッシュ・フローは「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計であります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、3,074億円の収入となりました。これは主として、税引前利益を1,525億円計上したこと、および減価償却費などの非資金項目を調整したことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、6,631億円の支出となりました。これは主として、Dialog社およびCeleno社の株式を取得したことなどによるものであります。
この結果、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは、3,557億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、3,409億円の収入となりました。これは主として、公募増資などによる新株式発行および社債発行による収入があったことなどによるものであります。
(5) 流動性および資金の源泉
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保すること、および健全なバランスシートを維持することを基本方針としております。
当社は、旧IDT社の買収に必要な資金の調達、および中長期的な運転資金の確保を目的とした既存借入金の借り換えのため、2019年1月15日付で主要取引銀行である㈱三菱UFJ銀行、㈱みずほ銀行および三井住友信託銀行㈱等との間で、総額8,970億円のシンジケートローン契約を締結しました。このうち、2019年3月に6,980億円の実行可能期間付タームローンの借入を実行しました。また、2019年6月に既存のタームローンの借入の一部を返済するとともに、1,490億円のタームローンの借入を実行しました。
当社は、2021年5月28日開催の取締役会決議に基づき、2021年6月15日を払込期日とする公募増資および2021年6月28日を払込期日とする第三者割当増資を行いました。これにより、資本金が1,119億円、資本剰余金が1,111億円それぞれ増加しております。
また、2021年8月31日付で、Dialog社の買収に必要な資金を調達するため、㈱三菱UFJ銀行および㈱みずほ銀行から総借入額2,700億円のタームローンの借入を実行しました。
また、2021年12月23日付で、既存借入れ2,700億円のうち、既に返済済みの300億円を除いた2,400億円について、中長期性の資金に借り換えることを目的として、㈱三菱UFJ銀行、㈱みずほ銀行および三井住友信託銀行㈱等との間で、総借入額960億円のシンジケートローン契約を締結し、㈱国際協力銀行との間で、総借入額1,440億円のJBICローン契約を締結しました。
当社は、2021年11月19日付で、複数トランシェによる米ドル建無担保普通社債の発行を決定し、2024年満期米ドル建無担保普通社債500百万米ドルおよび2026年満期米ドル建無担保普通社債850百万米ドルを発行し、総額1,350百万米ドルの資金を調達しております。当連結会計年度末における当社債の残高の円換算額は1,546億円となっております。
当連結会計年度末における借入金の残高は6,595億円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,219億円となっております。
(6) オフバランス取引
当社グループは、資産効率を高めるために、特定の売上債権等の流動化を適宜行っております。当連結会計年度末における流動化残高は140億円であります。
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