(1) 売上成長、適切なコストコントロール、生産構造の最適化
まず、当社グループの売上面では、自動車の需要回復や、新型コロナウイルス感染症拡大を契機としたデジタル化の進展に伴うインフラ整備の加速を受け、半導体の需要が高まったことに加え、2021年8月にDialog社の買収が完了したことに伴い、当期は前期と比べ、増収となりました。また、将来の売上収益の源泉となるデザイン・インは、当期の目標と比べ、8%の過達となり、前期と比べ、6%増加しました。
当社グループは、さらなる売上成長に向けて、オーガニック的なアプローチ(既存事業を拡大・強化するアプローチ)とインオーガニック的なアプローチ(他社との戦略的な提携、買収などを活用するアプローチ)の双方を通じて、製品ポートフォリオと必要な技術の拡充・強化に努めます。
オーガニック的なアプローチによる取り組みとしては、当社グループの注力分野に対して、集中的に研究開発投資を進めます。具体的な注力分野としては、自動運転および自動運転支援向けのSoC、車載のドメインコントロール向けマイクロコントローラ、xEV向けのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、ADASおよびxEV向けミックスドシグナル製品、Arm社コアおよびRISC-Vコア搭載マイクロコントローラ/SoC、BMS(Battery Management System:バッテリマネジメントシステム)、DRP-AI(Dynamically Reconfigurable Processor-AI:動的再構成プロセッサ-AI)を内蔵したMPU、データセンタや5G関連分野向けのアナログ・ミックスドシグナルなどがあげられます。
一方、インオーガニック的なアプローチによる取り組みとしては、過去に買収した旧インターシル社や旧IDT社に加え、当期に買収を完了したDialog社およびCeleno社とのシナジーを最大化するため、ウィニング・コンビネーションなどの開発を継続して推進していきます。また、さらなるM&Aを通じて、当社グループが保有していない製品ポートフォリオや技術の拡充を適時に行います。
次に、コスト面では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による輸送費の高騰が続いているものの、物流フローの整流化に向けた施策を継続して行っており、当期からその効果が現れています。また、業務・ITシステム効率化の観点から、従来使用してきたERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)の統合に向けた戦略的投資も実施しており、その効果は中長期的に貢献するものと考えております。
当社グループでは、短期的には、将来の売上成長や事業の効率化に必要となる戦略的な投資を確実に実行しつつ、継続的に適切なコストコントロールに努めます。
また、生産面では、当期における当社グループの前工程生産拠点の稼働率は、6インチ生産工場が57%、8インチ生産工場は97%、12インチ生産工場は75%、全工場平均で84%でした。
当社グループは、車載制御向けのマイクロコントローラとSoCをはじめとした半導体の世界的な供給不足を背景に、安定供給に向けて自社工場の設備増強に加え、製造委託先での生産量の拡大にも取り組んでいきます。また、2021年3月の那珂工場での火災を踏まえ、自社工場での消火設備や予知保全システムの拡充を含む防災対策に努めていきます。
(2) ソフトウェア開発力の強化
当社グループにおいて開発人員全体に占めるソフトウェア開発人員の割合は、当期末現在で10%強となっています。
しかしながら、近年、半導体に関連するソフトウェアの付加価値は一層高まっており、ソフトウェアの開発力の強化は、当社グループの製品やソリューションの提供のためにも重要になります。
当社グループでは、社内の開発効率化の推進やソフトウェアハウスなどのアウトソースの活用により、ソフトウェアの開発体制と顧客サポート・サービス体制の強化に努めていますが、今後も、インオーガニック的なアプローチや積極的な採用を通じて、開発人員の拡充・強化を図り、継続してソフトウェア開発に関する戦略を構築し、実行します。
(3) 地政学的問題への対応
近年、米中貿易摩擦は、ますます長期化と激化の様相を呈しており、今後、当社グループが事業セグメントとする半導体市場において、より重大な問題に発展する可能性があります。
当社グループは、短期的および中長期的な視点から、ワールドワイドでの設計拠点の分散化・リソースの適正化などに取り組んでいますが、今後も、こうした地政学リスクを最小化するための活動を継続していきます。
(4) 半導体業界における合従連衡への対応
当社グループが事業を展開する半導体業界は、従来からグローバルレベルでの競争が激しく、合従連衡の動きが見られる業界です。そして、近年、買収価額が1兆円を超える大型のM&Aが多数公表されるなど、こうした動きが加速しており、半導体業界各社の事業規模の差が顕著になっています。
当社グループでは、こうした動きを踏まえ、事業ポートフォリオの拡充・強化を図り、競合他社と伍していくため、当期においては、Dialog社およびCeleno社の買収を行いました。今後も引き続き、買収候補先のリストアップ・更新を行い、当社グループの企業価値向上に資するM&Aの検討を進めていきます。
(5) 従業員エンゲージメントの向上と「ルネサスカルチャー」の浸透
当社グループは、「To Make Our Lives Easier」をパーパスとして掲げ、人々の生活を楽(ラク)にする製品・ソリューションを提供しています。このパーパスのもと、世界中の当社グループ組織とそこで働く従業員一人一人が絶えず変化する環境に迅速かつ柔軟に対応していくために共有する行動指針として、「Transparent, Agile, Global, Innovative, Entrepreneurial」という5つの要素からなる「ルネサスカルチャー」を前期に策定し、展開しました。
当期は、この「ルネサスカルチャー」の浸透を加速させるため、様々な施策に取り組みましたが、今後も「ルネサスカルチャー」の各要素について、従業員とさらに共有し、これを根付かせ、エンゲージメントのさらなる向上に努めます。
(6) 従業員ポートフォリオの最適化
当期末現在における当社グループの各拠点地域の人員構成は日本が45%、北米が10%、欧州が10%、アジア太平洋が35%でした。
当社グループは、中長期的な視点から、グループ全体にとって最適な従業員の年齢構成と地域構成を実現するとともに、ソフトウェアなどの重要分野や今後成長が見込まれる分野に従事する従業員を拡充することを目指し、様々な人事施策に取り組みます。
具体的には、グローバルなタレント採用チームを組織化し、これまで以上にグローバルに整合された戦略的な採用活動を各地域において実施していくとともに、インオーガニック的なアプローチも活用しながら、当社グループ従業員のポートフォリオの最適化に継続して取り組みます。
(7) ESG活動と情報開示の推進
当社グループは、当期において、ESGやSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に対する多くの取り組みを実施しましたが、今後も引き続き、持続可能な社会の実現に向けた「環境」に資する活動、人材の多様性や従業員の安全衛生などの「社会」に資する活動、そして、取締役会の機能強化などの「ガバナンス」に資する活動を推進します。
また、このESG活動に関する非財務情報をより一層充実させ、ESG格付けの向上や当社グループを取り巻く様々なステークホルダーに対する情報開示の拡充に努め、さらなる企業価値の向上に努めます。
(8) サプライチェーンの最適化
当社グループのサプライチェーンには、生産と受注のリードタイムの整合、受注確定に関する商慣行などの点で課題があります。
これらの課題を解決するため、当社グループは、モダンかつ業界標準的な仕組みやITシステムへと改善を進めています。
今後も引き続き、ITシステムの集約・改良、取引条件の見直し、販売チャネルの適正化などに加え、ダイバンクの構築などの諸施策を通じて、サプライチェーンの最適化に向けて取り組みます。
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