当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(注) EBITDA=営業利益+減価償却費(営業費用)+のれん償却額
当連結会計年度における当社グループを取り巻く経営環境は、ディスプレイ業界における厳しい競争の継続、主要顧客であるスマートフォンメーカーの有機EL(OLED)ディスプレイへのシフト進展に伴う液晶ディスプレイ需要の更なる減少により、厳しい状況が続きました。また、新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーンの混乱や、世界的な半導体等の部材不足、部材・エネルギー費の高騰等が事業に深刻な影響を及ぼしました。
こうした情勢の中、当社グループは、当連結会計年度第4四半期のEBITDA黒字化を当連結会計年度の目標に掲げ、半導体不足による生産への影響の最小化に努めるとともに、更なるコスト削減、生産性改善を推し進めたほか、当社の技術力に基づく高付加価値製品についての適正な価格設定にも注力いたしました。半導体等の部材不足、部材・エネルギー費の高騰に対しては、主要サプライヤーとの長期供給契約の締結、サプライヤーの分散、在庫確保等により供給責任を最大限果たしつつ、コスト上昇分の販売価格への転嫁も進めました。
また、将来の成長に向けた競争力及び収益力の強化の一環として、台湾の製造連結子会社であったKOEの全株式を世界有数のEMS(電子機器の受託製造)企業である台湾Wistronグループに譲渡したほか、知的財産の積極活用を推進し、海外ディスプレイメーカーからのライセンス料の獲得につなげました。加えて、高付加価値技術・製品の開発・上市にも取り組みました。
当期の売上高は、前期比45,748百万円減少(13.4%減)の295,946百万円となりました。売上高が減少した一方、製品ミックスの改善、コスト削減の継続、製品の値上げ等が奏功し、円安効果もあって営業損失は前期比17,650百万円縮小の8,576百万円となりました。経常損失は、前期に稼働停止中であった工場の保全費用の剥落、当期の為替差益の計上等により前期比24,691百万円縮小の7,964百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純損失は、KOEの株式売却益、減損損失の計上等により8,096百万円となり、前期比では、固定資産売却益の剥落の一方、事業構造改善費用の剥落、減損損失の縮小等により34,600百万円縮小いたしました。なお、EBITDAは、第4四半期に3,850百万円を計上したことにより目標としていた黒字化を達成し、通期においても161百万円の黒字を計上いたしました。
アプリケーション分野別の売上高の状況は次のとおりです。
スマートフォン、タブレット用のディスプレイを含むモバイル分野では、中国向けが、出荷数量の増加及び販売単価上昇により前期比増収となった一方、欧米向けは、主要顧客のOLEDディスプレイへのシフト進展に伴う液晶ディスプレイの需要減により前期比減収となったため、全体でも大幅減収となりました。
計器クラスターやヘッドアップディスプレイ等の自動車用ディスプレイからなる車載分野は、半導体等の部材不足の課題に対し、購買ルートの多様化、長期調達等によりサプライチェーンリスクを抑制し、顧客の高付加価値ディスプレイ需要に応え、売上高は前期比増収となりました。
ウェアラブル機器やVR機器等の民生用ディスプレイ、医療用モニター等の産業用ディスプレイのほか、特許収入等を含むノンモバイル分野は、半導体不足の影響を受けたものの、高付加価値製品であるウェアラブル機器用OLEDディスプレイや超高精細なVR機器用液晶ディスプレイの出荷増がけん引し、前期比増収となりました。また、特許権収入等の知的財産収入も増加いたしました。
(生産、受注及び販売の実績)
① 生産実績
当社グループの生産品目は、広範囲かつ多種多様であり、その性能、構造、形式、販売条件などは一様ではないこと、受注生産形態をとらない製品も多いことなどから、販売価格による生産額の集計は行っておりません。また、当社グループの生産体制は、主として国内の生産拠点で担っている前工程、海外の製造子会社による後工程に区分して管理されております。
そのため、前工程及び後工程の生産量の単純合計がそのまま連結ベースの生産量ともならないことから、生産実績を金額又は数量で示すことはしておりません。
当社グループは顧客から提示された生産計画に基づく見込生産を行っているため、記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績を示すと、次のとおりであります。なお、当社のグループは単一セグメントであるため、アプリケーション分野別に記載を行っております。
(注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産合計残高は、主に、当第4四半期における車載分野の売上高及び特許関連収入の増加に伴う売掛金の増加、有償支給取引の増加に伴う未収入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて増加しました。
負債合計残高は、主に、KOE株式の譲渡による同社の連結除外、在庫積み増しに伴い買掛金が増加した一方、INCJからの借入金20,000百万円を返済したこと等により、前連結会計年度末に比べて増加しました。
純資産合計残高は、主に、新株予約権の行使による優先株式の発行に伴う株主資本の増加36,010百万円があったことにより、前連結会計年度末に比べて増加しました。
上記の結果、自己資本比率は28.2%と前連結会計年度末に比べて改善しました。
なお、前期末における繰越利益剰余金の欠損補填及び資本政策の機動性の確保を目的として、2022年3月31日付で、資本金、資本準備金の額の減少及び剰余金の処分を実施しております。
(注)フリー・キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと固定資産の取得による支出の合計であります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失の計上、売上債権の増加及び棚卸資産の増加等により、21,673百万円の支出となりました。前連結会計年度との比較では、税金等調整前当期純損失の縮小等により、支出の減少となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主にKOE株式の譲渡による収入があった一方、固定資産の取得による支出等により95百万円の収入となりました。前連結会計年度との比較では、KOE株式の譲渡による収入により収入の増加となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、優先株式の発行による収入があった一方、短期借入金の返済による支出等により、14,769百万円の収入となりました。前連結会計年度との比較では、優先株式の発行による収入が増えた一方、短期借入金の返済による支出が影響し、収入の減少となりました。
当社グループの主な資金需要は、生産、販売活動に必要な運転資金、先端技術の開発や生産性及び品質の向上を目的とした研究開発費及び設備投資であります。
当社グループでは、過年度に実施した大規模な設備投資や事業環境の急速な変化等の結果、当期純損失の計上が継続していることから、これらの資金需要が自社グループのキャッシュ・フローで賄えておらず、当連結会計年度まで数年にわたりフリー・キャッシュ・フローの赤字が継続しております。
また、過年度における新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により当社事業への影響が生じ、感染拡大が将来的に当社事業や財務へ及ぼす影響が正確に見通せない状況となっておりました。このため、当社は、追加運転資金の確保への手当てを行うとともに、財務体質の良化により資金調達の選択肢を増やし資金調達力を向上させるため、2020年7月21日付で、いちごトラストとの間で、いちごトラストに対する第三者割当によるD種優先株式(調達総額50億円)及びE種優先株式を目的とする第12回新株予約権(行使時の調達総額554億円)の発行による追加の資金調達に関する資本提携契約(以下「本追加資本提携契約」といいます。)を締結し、本追加資本提携契約に基づき、2020年8月28日に第三者割当を実施し、同日、D種優先株式に係る50億円の調達をいたしました。
その後、第12回新株予約権の行使によるE種優先株式に係る554億円についても、当連結会計年度において2022年3月4日までにその全額の調達を完了いたしました。調達した資金は、世界的な半導体等の部材不足、中国での新型コロナ対策のロックダウン及びウクライナ情勢に伴うサプライチェーンの乱れ、並びに物価高騰による消費者の購買心理の悪化を受けた当社の生産及び受注の減少に伴い、追加で必要となった運転資金の確保に一部を充当しております。
当社グループは、上記資金調達により当面の資金需要を確保しておりますが、今後は、後述の財務戦略の基本的な考え方に沿って、適宜資金調達を検討してまいります。
上記の資金状況を踏まえたうえで、当社グループは、安定収益の確保と着実な成長を目的として、計画的かつ機動的な財務戦略を立案し、実行しております。
事業活動を支える資金調達及び資金管理に関しては、低コストでかつ安定的に資金確保し、CCC(キャッシ・コンバージョン・サイクル)改善によるキャッシュ・フロー創出、グループ内CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)等による資金効率化によって財務体質を強化することを目標として取り組んでいます。また、事業展開においては、現地のカントリーリスクに伴うサプライチェーンの混乱による受注減少のリスク等、不測の事態が発生することも想定し、政府系金融機関による各種支援メニューや民間金融機関によるアセットファイナンス及びプロジェクトファイナンスの組成等、その都度最適な資金調達方法を検討しております。
また、当社グループは、将来の成長のための設備投資等の資金需要に対応しつつ、流動性リスクを軽減し、経営の安定化を図るため一定の手許流動性を維持することが肝要だと考えております。手許流動性の水準を考慮するにあたっては、連結売上高1.5か月分を目安に、手許現預金及び追加ファイナンスによって賄うこととしております。
更に、手許現預金が中長期にわたり必要額に満たなくなると想定される場合には、金融機関及び金融投資家等からの借入金等を通じて、適宜必要な資金を確保する方針です。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社グループは、「2 事業等のリスク (2)財務リスク④継続企業の前提に関する重要事象等」に記載のとおり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当該状況を解消するための当社グループの取り組みについては、「2 事業等のリスク (2)財務リスク④継続企業の前提に関する重要事象等」に記載のとおりであります。
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