業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社グループは、当連結会計年度よりIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSに組替えて比較分析を行っております。

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大や米中関係の緊張状態をはじめとした政治的対立の懸念等による影響を受けましたが、社会経済活動の正常化も進み、生産活動の回復傾向が続いたことにより、企業の設備投資は堅調に推移しました。しかしながら、当第4四半期連結会計期間に入りロシアによるウクライナ侵攻に伴う地政学的リスクが一気に高まり、素材やエネルギーにおける供給不安と価格高騰が見られ、世界経済の先行きに不透明感が残りました。

当社の連結業績に影響を与えるエレクトロニクス市場を概観しますと、自動車市場においては、部材調達におけるサプライチェーン上の制約を受け生産台数が前期並みにとどまったものの、部品搭載点数の増加や顧客の部材在庫確保の動きにより、需要は堅調に推移しました。ICT(情報通信技術)市場においては、ノートパソコンやタブレット端末の需要が当期も堅調に推移しましたが、スマートフォンは新型コロナウイルス感染症の感染再拡大等が部材調達や需要に影響を及ぼしたため、生産台数は前連結会計年度を下回る水準となりました。また、データセンター向けの需要が回復し、サーバー用HDD(ハードディスクドライブ)の生産が好調に推移しました。さらに、産業機器市場においては、旺盛な設備投資需要により、産業機器向けの需要も堅調に推移しました。

 

このような経営環境の中、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

2022年3月31日現在の資産合計は、前連結会計年度末に比べ681,990百万円増加し、2,359,663百万円から3,041,653百万円となりました。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ339,922百万円増加し、1,397,976百万円から1,737,898百万円となりました。

資本合計は、前連結会計年度末に比べ342,068百万円増加し、961,687百万円から1,303,755百万円となりました。

b.経営成績

当社の連結業績は、売上高1,902,124百万円(前連結会計年度1,479,008百万円、前連結会計年度比28.6%増)、営業利益166,775百万円(同111,814百万円、同比49.2%増)、税引前利益172,490百万円(同117,263百万円、同比47.1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益131,298百万円(同74,681百万円、同比75.8%増)、基本的1株当たり当期利益346円44銭(同197円6銭)となりました。また、当社は2021年10月1日を効力発生日として、普通株式1株を3株に分割いたしました。1株当たり当期利益につきましては、前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定しております。

当連結会計年度における対米ドル及びユーロの平均為替レートは、112円33銭及び130円53銭と前連結会計年度に比べ対米ドルで5.9%の円安、対ユーロで5.5%の円安となりました。これらを含め全体の為替変動により、約1,257億円の増収、営業利益で約69億円の増益となりました。

当社グループの事業は、「受動部品」、「センサ応用製品」、「磁気応用製品」及び「エナジー応用製品」の4つの報告セグメント及びそれらに属さない「その他」に分類されます。

受動部品セグメントの連結業績は、売上高は505,198百万円(同407,126百万円、同比24.1%増)、セグメント利益は77,251百万円(同40,080百万円、同比92.7%増)となりました。

センサ応用製品セグメントの連結業績は、売上高は130,769百万円(同81,345百万円、同比60.8%増)、セグメント利益は3,190百万円(同損失24,915百万円)となりました。

磁気応用製品セグメントの連結業績は、売上高は248,446百万円(同199,253百万円、同比24.7%増)、セグメント利益は4,522百万円(同損失2,266百万円)となりました。

エナジー応用製品セグメントの連結業績は、売上高は965,345百万円(同740,227百万円、同比30.4%増)、セグメント利益は123,212百万円(同147,404百万円、同比16.4%減)となりました。

4つの報告セグメントに属さないその他は、売上高は52,366百万円(同51,057百万円、同比2.6%増)、セグメント損失は5,630百万円(同16,056百万円)となりました。

地域別売上高の状況は、次のとおりであります。
 国内における売上高は、前連結会計年度の117,205百万円から27.2%増の149,038百万円となりました。受動部品セグメント及び磁気応用製品セグメントが増加しました。
 米州地域における売上高は、前連結会計年度の96,666百万円から34.3%増の129,857百万円となりました。エナジー応用製品セグメント及び受動部品セグメントが増加しました。
 欧州地域における売上高は、前連結会計年度の148,443百万円から18.3%増の175,580百万円となりました。受動部品セグメントが増加しました。
 中国における売上高は、前連結会計年度の840,129百万円から26.1%増の1,059,718百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが増加しました。
 アジア他の地域における売上高は、前連結会計年度の276,565百万円から40.3%増の387,931百万円となりました。エナジー応用製品セグメント及び磁気応用製品セグメントが増加しました。
 この結果、海外売上高の合計は、前連結会計年度の1,361,803百万円から28.7%増の1,753,086百万円となり、連結売上高に対する海外売上高の比率は、前連結会計年度の92.1%から0.1ポイント増加し92.2%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によって得たキャッシュ・フローは、178,987百万円となり、前連結会計年度比51,868百万円減少しました。これは主に、長期前渡金の増加によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動に使用したキャッシュ・フローは、281,546百万円となり、前連結会計年度比50,128百万円増加しました。これは主に、固定資産の取得の増加によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によって得たキャッシュ・フローは、113,743百万円となり、前連結会計年度比92,661百万円増加しました。これは主に、長期借入金の増加によるものです。

これらに為替変動の影響を加味した結果、2022年3月31日現在における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比58,952百万円増加して439,339百万円となりました。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。

事業の種類別セグメントの名称

生産実績

(百万円)

前連結会計年度比増減(%)

受動部品

523,273

30.2

センサ応用製品

136,942

72.0

磁気応用製品

256,852

29.4

エナジー応用製品

994,809

26.5

その他

54,281

7.6

合計

1,966,157

29.6

(注)1.金額は販売価格により算出しております。

 

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。

事業の種類別セグメントの名称

受注高

(百万円)

前連結会計

年度比増減

(%)

受注残高

(百万円)

前連結会計

年度末比増減

(%)

受動部品

638,099

28.4

343,350

87.6

センサ応用製品

191,607

78.9

103,990

116.8

磁気応用製品

245,496

24.3

19,788

0.5

エナジー応用製品

1,099,775

22.4

176,266

△1.8

その他

52,870

26.5

16,755

98.6

合計

2,227,847

27.9

660,149

50.5

(注)金額は販売価格により算出しております。

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。

事業の種類別セグメントの名称

販売実績

(百万円)

前連結会計年度比増減(%)

受動部品

505,198

24.1

センサ応用製品

130,769

60.8

磁気応用製品

248,446

24.7

エナジー応用製品

965,345

30.4

その他

52,366

2.6

合計

1,902,124

28.6

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお文中の将来に関する事項は、2022年3月31日現在において判断したものであります。

①重要な判断を要する会計方針及び見積り

重要な判断を要する会計方針とは、その適用にあたり不確実な事象について見積りを要し、経営者の主体的、複雑かつ高度な判断が要求される会計方針であります。

IFRSに準拠した連結財務諸表を作成するにあたり、会計方針の適用、資産・負債及び収益・費用の報告額並びに偶発資産・偶発負債の開示に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っております。実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。

以下は、会計方針を網羅的に記載したものではありません。重要な会計方針及び見積りについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の見積り及び判断、 3. 重要な会計方針に詳しく開示しております。

当社グループが、重要な判断を要する会計方針として認識した項目は次のとおりであります。

 

有形固定資産、のれん及び無形資産の減損

2021年3月31日及び2022年3月31日現在、当社グループの有形固定資産、のれん及び無形資産の総額はそれぞれ975,469百万円及び1,151,424百万円であり、総資産のそれぞれ41.3%、37.9%に相当します。当社グループは、その回収可能性が経営成績に及ぼす影響の大きさを考慮し、有形固定資産、のれん及び無形資産の減損は当社の連結財務諸表にとって重要であると認識しております。

当社グループは、有形固定資産及び特定の識別可能で耐用年数を確定できる無形資産につき、減損の兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能価額に基づく減損テストを実施しております。また、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年同じ時期に減損テストを実施しており、さらに減損の兆候が存在する場合は、その都度減損テストを実施しております。減損テストの結果、資産、資金生成単位または資金生成単位グループの帳簿価額が回収可能価額を超過する場合に、その帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識します。

経営者は、回収可能価額の見積りは合理的であると判断しておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して回収可能価額が当初の見積りを下回った場合、資産の評価に不利な影響が、また、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。当社グループは、製品の将来の収益性や投資の回収可能性を十分考慮した上で投資を行っております。

棚卸資産の評価

棚卸資産は、取得原価または正味実現可能価額のいずれか低い金額で測定しております。予想される陳腐化について、将来の需要予測に基づき、取得原価と正味実現可能価額の差額が棚卸資産の帳簿価額から減額されます。当社グループは、過去の需要や将来の予測に基づき、棚卸資産の過剰及び陳腐化の可能性を考慮し帳簿価額の見直しを行っております。さらに、既存及び予想される技術革新の要求は、棚卸資産の評価に影響を与えます。正味実現可能価額の変動が当社グループの経営成績に影響を与えるため、棚卸資産の評価は重要であると認識しております。実際の需要が予想されたものより著しく低い場合は、棚卸資産の過剰及び陳腐化に関する棚卸資産の評価について追加的な調整が必要となり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に著しく不利な影響を及ぼす可能性があります。

過去の見積りの妥当性について、当社グループは四半期ごとに見積りと実績を比較し検討しております。例えば、特に技術革新がめまぐるしい一部の事業の運営においては、顧客が求める高性能製品へのタイムリーな対応が求められており、棚卸資産の陳腐化評価を行い四半期ごとに見直しております。

 

確定給付制度債務

従業員の確定給付費用及び確定給付制度債務は、保険数理人がそれらの数値を計算する際に使用する基礎率に基づいております。基礎率には、割引率、退職率、死亡率、昇給率等が含まれます。使用した基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異をその他の包括利益として認識し、直ちに利益剰余金に振り替えられるため、包括利益、利益剰余金及び帳簿上の債務に影響を与えます。当社グループはこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果及び基礎率の変更による差異は将来における確定給付費用及び確定給付制度債務に影響を及ぼす可能性があります。

当連結会計年度の連結財務諸表の作成において、当社グループは割引率を国内の制度及び海外の制度においてそれぞれ0.9%及び2.4%に設定しております。割引率は、給付が見込まれる期間に近似した満期を有する優良社債の利回りを参照して決定しております。

割引率の減少は、確定給付制度債務の増加をもたらす可能性があります。

繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産の認識にあたり、将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除の一部または全部が、将来の課税所得を減額できるまたは税額を控除できる可能性が高いかどうかを考慮しています。繰延税金資産の最終的な回収可能性は、一時差異、繰越欠損金及び繰越税額控除が将来減算される期間における課税所得の水準により決定されます。当社グループは、回収可能性の評価に当たって将来加算一時差異の解消時期、将来の課税所得の予測及び税務戦略を考慮しております。認識された繰延税金資産については、過去の課税所得の水準及び繰延税金資産が控除可能な期間における将来の課税所得の予測に基づき、回収される可能性が高いと考えております。しかしながら、将来の利益計画が実現できない、もしくは達成できない場合、または当社グループがその他の要因に基づき繰延税金資産の回収可能性評価を変更した場合、回収する可能性が高くなくなった部分を減額することが必要となります。

引当金の認識及び測定、並びに偶発負債の将来の経済的便益の流出の可能性

当社グループは、過去の事象の結果として現在の法的または推定的義務を有しており、義務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が必要となる可能性が高く、かつその義務の金額について信頼性のある見積りが可能な場合に引当金を認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要な場合には、見積将来キャッシュ・フローを貨幣の時間的価値及びその負債に特有のリスクを反映した割引率を用いて現在価値に割り引いております。

当社グループは、製品・工程等が第三者の知的財産権を侵害した場合や通常の事業活動を営む上で、様々な訴訟や賠償要求を受ける可能性があります。当社グループは、専門家と相談の上、こうした偶発負債が重要な影響を及ぼす可能性を評価しており、不利益な結果を引き起こす可能性が高く、かつその金額を合理的に見積もることができる場合には、当該負債を計上します。発生した負債は見積りに基づいており、将来における偶発負債の発展や解決に大きく影響されます。これらの引当金は、期末日における不確実性を考慮した最善の見積りにより算定しておりますが、予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、計上される負債の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績及び経営成績に重要な影響を与えた要因

当連結会計年度の業績は、連結売上高が前連結会計年度比28.6%増の1,902,124百万円、営業利益が同比49.2%増の166,775百万円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益が同比75.8%増の131,298百万円となりました。

 2022年3月期においては、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大や米中関係の緊張状態をはじめとした政治的対立の懸念等により部材調達におけるサプライチェーン上の制約が長期化し、自動車やスマートフォン等の生産台数が伸び悩みました。一方、社会経済活動の正常化が進み生産活動の回復傾向も続いたことによりエレクトロニクス需要が堅調に推移した結果、全セグメントで売上が拡大しました。受動部品の収益拡大やセンサの黒字化によって、よりバランスの良い収益構造となり収益性も向上しました。売上高は前連結会計年度比28.6%の増収、営業利益は前連結会計年度比49.2%の増益となり、売上高、営業利益は過去最高を更新しました。

 自動車市場においては、部材調達におけるサプライチェーン上の制約を受け生産台数が前連結会計年度並みにとどまったものの、更なるxEVの進展、ADAS等電装化の加速による部品搭載点数の増加や顧客の部材在庫確保の動きにより需要が堅調に推移し、受動部品やセンサの販売が拡大しました。

 ICT市場においては、PCやタブレット端末の需要が2022年3月期も堅調に推移しました。データセンター向けの需要も回復しサーバー用HDDの生産が好調に推移した結果、PC、タブレット、HDD向け売上が増加しました。スマートフォンは、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大等が部材調達や需要に影響を及ぼし生産台数が前連結会計年度を下回る水準となりましたが、スマートフォン向け製品の採用拡大もありスマートフォン向け売上は増加しました。エナジーデバイス(二次電池)、センサ、HDDヘッドの販売が拡大しました。

 産業機器市場でも、企業の設備投資が堅調に推移しました。半導体等製造設備向けや再生可能エネルギー向け等の販売が増加し、受動部品や産業機器用電源の売上が拡大したことに加え、二次電池において家庭用蓄電システム向け等中型電池の売上が伸びました。

 

 対ドル等の為替変動で売上高は約1,257億円の増収、営業利益で約69億円の増益影響がありました。それらを含み、売上高は1兆9,021億円、前連結会計年度比4,231億円、28.6%の増収、営業利益は1,668億円、前連結会計年度比550億円、49.2%の増益となりました。基本的1株当たり当期利益は346円44銭となりました。

 為替の感応度は、営業利益で円とドルの関係において1円の変動で前連結会計年度と同様年間約12億円、円とユーロの関係において約2億円と試算しています。

 

営業利益550億円増益の主な要因は、次のとおりであります。

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 受動部品の増収による収益拡大、センサの黒字化、HDDヘッドの収益回復等により、二次電池等の材料価格高騰の影響があったなかでも、売上による利益変動が895億円の増益効果となりました。売価値引き影響は軽微にとどまった一方、合理化コストダウン及び前第4四半期連結会計期間に実施した構造改革による効果が合計289億円となり収益性を底上げしました。

 販売費及び一般管理費は646億円増加しました。この主な要因は、二次電池に係るロイヤリティ費用約150億円の増加、受動部品の売上拡大に伴う販売費用の増加やコロナ禍による世界的な物流費用の増加、二次電池におけるパワーセルのパック事業拡大等による費用増加です。

 前連結会計年度176億円の構造改革等一時発生費用が当連結会計年度96億円となり80億円の費用減少、対円安の為替影響で69億円の増益となりました。この結果、営業利益はトータル550億円の増益となりました。

 

 

資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、現預金、短期投資、有価証券等を含む流動性資金は、月次連結売上高の2.0ヶ月以上を維持するよう努めております。具体的には日本、米国、欧州、中国及びアセアンの各地域においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しグループ資金効率の向上を図るとともに、コミットメントライン契約などにより流動性を担保しております。2022年3月31日現在の流動性資金の残高は円換算で493,045百万円であり、月平均売上高の3.1ヶ月相当の流動性を確保しております。新型コロナウイルス感染再拡大、地政学的リスクによる世界経済の不確実性等(米中貿易摩擦問題、ロシアによるウクライナ侵攻等)が当社グループの資金繰りに及ぼす影響に備え、流動性資金の拡充や金融機関からの借入金長期化、社債の発行など、対策を講じております。

当社グループの運転資金需要は主に、製品の製造に使用する原材料や部品の調達等の製造費用のほか、販売費用及び一般管理費用、さらには継続的な新製品開発に向けた研究開発費用であります。また、長期性の資金需要は、エレクトロニクス市場における急速な技術革新や販売競争の激化に的確に対応するための設備投資や更なる成長戦略に向けたM&A等によるものです。

資金の調達方針としては、短期運転資金については自己資金及び金融機関からの短期借入を基本とし、設備投資や長期性資金につきましては、金融機関からの長期借入、社債等での調達を基本としております。当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は679,813百万円となっております。

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループが描いた成長戦略を、財務・資本戦略はもとより、現場の施策にいたるまで有機的につなげながら、その実現を図るための取り組みの一環として業績管理フレームワークの強化を進めています。当社グループは、当社グループ独自の付加価値指標として、利払前税引後利益と各事業の事業用資産に対して最低限求められる収益(株主資本コスト)を比較するTVA(TDK Value Added)を採用しています。このTVAに結びつくロジックツリーで、各事業の収益性評価や事業資産の効率性評価、キャッシュの獲得能力の評価などを実施するとともに、現場の各種施策及び特性に合わせたKPIにまで要素分解しモニタリングします。これによって成長戦略を全社一丸となって推進していくと同時に、投資効率の管理強化により設備投資の選択と集中につなげながら、2024年3月期を最終年度とする中期3か年計画で14%以上の親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)を実現できる体質の構築を目指しております。

当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度の8.5%から3.1ポイント改善し、11.6%となりました。

前連結会計年度比でのROEの改善要因の分析として、ROEを売上高利益率(ROS)、総資産回転率、財務レバレッジの要素に分解して検討すると、総資産回転率、財務レバレッジはおおむね横ばいに推移しており、売上増加によるROSの上昇が寄与しました。

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(受動部品セグメント)

受動部品セグメントは、①コンデンサ ②インダクティブデバイス ③その他受動部品 で構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は505,198百万円(前連結会計年度407,126百万円、前連結会計年度比24.1%増)、セグメント利益は77,251百万円(同40,080百万円、同比92.7%増)、セグメント資産は699,107百万円(同625,016百万円、同比11.9%増)となりました。

 

当セグメントの売上概況を事業別にみますと、次のとおりであります。

コンデンサは、セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ及びフィルムコンデンサから構成され、売上高は、198,110百万円(同158,182百万円、同比25.2%増)となりました。インダクティブデバイスの売上高は、179,944百万円(同139,990百万円、同比28.5%増)となりました。その他受動部品は、高周波部品及び圧電材料部品・回路保護部品で構成されており、売上高は、127,144百万円(同108,954百万円、同比16.7%増)となりました。

 自動車生産台数は前連結会計年度比横ばいながらも、部品搭載点数の増加によって自動車向け販売は引き続き好調に推移しました。産業機器市場向けも、再生可能エネルギーや生産設備向け需要が好調に推移しました。ICT市場向けの需要は、スマートフォンの生産台数減少により微増にとどまりました。営業利益は773億円、前連結会計年度比約1.9倍の増益、営業利益率も15.3%となり、収益性も大きく向上しました。

 事業別では、高周波部品を除く自動車市場向け販売比率の高い事業で増収増益となり、特にコンデンサ及びインダクティブデバイスの収益性向上が全体収益の拡大に寄与しました。

 

(センサ応用製品セグメント)

センサ応用製品セグメントは、温度・圧力センサ、磁気センサ、MEMSセンサで構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は130,769百万円(同81,345百万円、同比60.8%増)、セグメント利益は3,190百万円(同セグメント損失24,915百万円)、セグメント資産は263,531百万円(同190,812百万円、同比38.1%増)となりました。

 当第4四半期連結会計期間に一時費用20億円が発生したものの、増収効果や製品構成の好転等により、営業利益は通期で32億円の黒字化を達成しました。

 温度・圧力センサは自動車市場向けに加え、産業機器向けや生活家電向け需要が堅調に推移し増収となりました。ホールセンサも自動車市場向けの売上が増加し、収益が大きく改善しました。

 TMRセンサは、ICT市場向け需要の増加に加え、製品の新規採用拡大により大幅な増収増益、MEMSセンサは顧客基盤やアプリケーション拡大の成果が着実に実績に表れてきており、モーションセンサ、MEMSマイクロフォンの販売が大幅に増加しました。収益改善も進み赤字が大きく縮小しました。

 

(磁気応用製品セグメント)

磁気応用製品セグメントは、HDD用ヘッド、HDD用サスペンション、マグネットで構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は248,446百万円(同199,253百万円、同比24.7%増)、セグメント利益は4,522百万円(同セグメント損失2,266百万円)、セグメント資産は436,787百万円(同373,465百万円、同比17.0%増)となりました。

 HDDヘッドにおいては、期初からデータセンター向けサーバー需要の回復が進み、ニアライン用HDDヘッドの販売数量は前連結会計年度比で1.9倍の増加、HDDヘッド全体でも33%の数量増加となり、増収増益となりました。

 HDDサスペンションもニアライン用サスペンションの販売が引き続き好調に推移し増収、一時費用を除いた実質ベースでは増益となりました。

マグネットは、自動車市場向け販売が堅調に推移し増収となりましたが、原材料の値上り影響があり、前連結会計年度並みの赤字が継続しました。

 

(エナジー応用製品セグメント)

エナジー応用製品セグメントは、エナジーデバイス(二次電池)、電源で構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は965,345百万円(同740,227百万円、同比30.4%増)、セグメント利益は123,212百万円(同147,404百万円、同比16.4%減)、セグメント資産は1,661,860百万円(同1,229,342百万円、同比35.2%増)となりました。

 エナジーデバイス(二次電池)においては、為替変動影響や材料値上りの影響に伴う価格転嫁による売上増加を除くと、スマートフォン生産台数が前連結会計年度比で減少しICT市場向け販売が微増にとどまった一方、電動二輪車向けや家庭用蓄電システム向け等パワーセル製品の販売が順調に拡大し、全体では前連結会計年度比10%強の増収となりました。営業利益については、ICT市場向けの実質売上が増加しなかったなか、当第3四半期連結会計期間より原材料価格が再び急騰し減益の影響が残留したことや、約150億円のロイヤリティ費用計上もあり、前連結会計年度比で減益となりました。産業機器用電源は、半導体製造装置等産業機器向け需要が堅調に推移し、増収増益となりました。

 

 

 

 

 

(その他)

4つの報告セグメントに属さないその他は、メカトロニクス(製造設備)、スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータ等で構成され、売上高は52,366百万円(同51,057百万円、同比2.6%増)、セグメント損失は5,630百万円(同16,056百万円)、セグメント資産は91,325百万円(同82,529百万円、同比10.7%増)となりました。

メカトロニクスは、産業機器市場向けの販売が増加しました。スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータは、ICT市場向けの販売が減少しました。

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