文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当社グループの経営の基本方針
当社は、東京工業大学で発明された磁性材料フェライトの工業化を目的としたベンチャー企業として、1935 年に設立されました。社是である「創造によって文化、産業に貢献する」という創業の精神に基づき、素材・プロセス技術の先鋭化と市場ニーズに応える新製品開発を進めるとともに、M&Aの活用、外部との協業などを積極的に行いながら、グローバル化・多角化を進めてまいりました。その結果、受動部品、センサ応用製品、磁気応用製品及びエナジー応用製品を主要事業として展開しております。
今後も、常に新しい発想とたゆまぬチャレンジ精神を持ち、グループ各社それぞれの強みを活かしつつグループ全体の力を結集することにより、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会などすべてのステークホルダーに対し、より高い価値を創造し続ける活力あふれる企業であり続けたいと考えております。
② 当社グループの中長期的な経営戦略
エレクトロニクスを取り巻く環境は、大きな変革期を迎えており、化石燃料から再生可能エネルギーをベースとする社会への転換(エネルギートランスフォーメーション、EX)及びIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といったデジタル技術が社会のあらゆる領域に浸透することによりもたらされる変革(デジタルトランスフォーメーション、DX)が始まっております。
当社グループは、このような社会環境の変化を、新たな社会貢献と事業成長の機会と捉えて、2022年3月期から2024年3月期までを対象とした中期経営計画「Value Creation 2023」を策定し、遂行しております。この「Value Creation 2023」においては、社会課題を解決し持続可能な社会の実現に貢献する「Social Value(社会的価値)」の追求をすべての事業の目的に置いており、その結果として「Commercial Value(成長戦略)」と「Asset Value(資本効率)」の増大を実現し、「Social Value」をさらに創造していくサイクルを回してまいります。
具体的には、お客様に満足していただけるソリューションを提供し、期待を超える体験をしていただく2CX(Customer ExperienceとConsumer Experience)の実現に向けて、2つの大きな社会課題であるDXとEXに貢献することで、価値ある存在となることを目指します。例えば、DXにおいては、高速通信ネットワーク、センサ、自動運転、ロボット用の製品等の供給を通じて、デジタル技術による社会の変革に貢献してまいります。また、EXにおいては、高効率なエネルギー社会の実現に必要なエネルギーの蓄電、変換、制御に関わる製品、電気自動車・再生可能エネルギー関連の製品等の供給により、脱炭素社会の推進に貢献してまいります。
このように社会に価値ある商品を提供することでビジネスの機会を捉え、同時にスピード重視の経営システムを確立してまいります。そして、企業としての透明性を確保して社会で信頼される存在となり、さらに大きく社会に貢献をしてまいります。
SDGs(2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際開発目標)や、政治経済、技術、市場等のマクロトレンドを踏まえ、中期経営計画を実現するうえで当社グループが最優先で取り組むべき経営課題として「TDKグループのマテリアリティ(重要課題)」を設定しております。この「TDKグループのマテリアリティ」では、EX、DXを社会的価値創造と企業成長のために当社グループが注力する事業領域と定め、また、「品質管理」、「人材マネジメント」、「サプライチェーンマネジメント」、「オポチュニティ&リスクマネジメント」、「権限委譲と内部統制の追求」、「資産効率の向上」を価値創造の基盤となる領域として設定いたしました。
<TDKグループの価値創造サイクルとマテリアリティ(重要課題)>
③ 当社グループの対処すべき課題
新型コロナウイルス感染症に対して世界的にワクチン接種や治療薬の開発が進んでいるものの、収束時期は依然として不透明であり、影響のさらなる長期化が懸念されております。また、地政学的リスクの高まりや、エネルギー費、原材料費等の高騰も経済活動に大きな影響を及ぼしております。これらの影響は、単に景気動向だけではなく、社会構造や産業構造を大きく変えていくものであり、当社グループを取り巻く環境にも大きな変化をもたらす可能性があります。
しかしながら、このような社会構造・産業構造の変化の中にあっても、エレクトロニクス市場において、EXやDXの潮流は拡大し、当社グループの事業領域に新たな市場の創造をもたらすことも見込まれます。例えば、EXにおいては再生可能エネルギーや電気自動車の普及、DXにおいては5G(第5世代移動通信システム)の普及、自動車におけるADAS(先進運転支援システム)の実用化、IoT・ウェアラブル製品やクラウドサービスのさらなる普及等が、当社グループにおける大きな成長機会であると捉えております。これらの大きな変化に乗り遅れることなく、成長機会を確実に捉えるため、積極的な研究・技術開発を行い、競争力を持つ新製品のタイムリーな投入と需要に応じた生産能力の拡大を行ってまいります。
表: EX・DXによる成長機会と対象となる当社グループの事業の例
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EX |
DX |
受動部品
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<産業機器> 再生可能エネルギーの普及 アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、圧電材料部品・回路保護部品、インダクティブデバイス <自動車> 電気自動車の普及 インダクティブデバイス、セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ |
<ICT> 5Gの普及 高周波部品、インダクティブデバイス、セラミックコンデンサ IoT・ウェアラブル製品の普及 高周波部品、インダクティブデバイス、圧電材料部品・回路保護部品 <自動車> ADASの普及 セラミックコンデンサ、インダクティブデバイス |
センサ応用製品
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<自動車> 電気自動車の普及 温度・圧力センサ、磁気センサ |
<ICT> 5Gの普及、IoT・ウェアラブル製品の普及 センサ応用製品全般 <自動車> ADASの普及 磁気センサ、MEMSセンサ |
磁気応用製品
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<自動車> 電気自動車の普及 マグネット <産業機器> 再生可能エネルギーの普及 マグネット |
<ICT> クラウドサービスの普及 HDDヘッド、HDD用サスペンション |
エナジー応用製品 |
<自動車> 電気自動車の普及 電源 <産業機器> 再生可能エネルギーの普及 二次電池、電源 |
<ICT> 5Gの普及 二次電池 IoT・ウェアラブル製品の普及 二次電池 |
成長を実現するために、マテリアリティとして設定した「品質管理」、「人材マネジメント」、「サプライチェーンマネジメント」、「オポチュニティ&リスクマネジメント」、「権限委譲と内部統制の追求」、「資産効率の向上」の課題への取り組みが重要となってまいります。
例えば「サプライチェーンマネジメント」においては、原材料の安定調達やサプライチェーンにおける人権問題への対応等の各種施策に取り組んでおります。さらに、「資産効率の向上」の一環として、グループの事業ポートフォリオの見直し・再構築に取り組んでおります。また、成長を支える根本は人です。外国人従業員比率が9割を超える当社グループにとって、人材の多様さと豊富さが競争力の源泉の一つであり、才能ある人材を惹きつけ、確保するための「人材マネジメント」の各種施策に継続的に取り組んでおります。
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