業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。これらの将来に関する記載事項につきましては、「第2  事業の状況  2  事業等のリスク」に記載した内容等を含む様々な要因により、実際の結果と異なる場合があります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における世界経済は、年度前半には主要国における大規模な金融緩和や積極的な財政出動により景気は回復に向かっておりましたが、半導体等の部材不足に起因する供給網混乱の長期化や新型コロナウイルス感染の再拡大が回復の勢いに影を落としました。また、2022年に入り、米国ではインフレ抑制を目的とした金融引き締めに動いており、ロシアによるウクライナ侵攻や中国における「ゼロコロナ」政策による都市封鎖等、世界経済の先行きへの不透明要因が新たに出現しました。

当社の主力事業領域である自動車やスマホ市場では、半導体等の部材不足や中国における「ゼロコロナ」政策が完成車メーカーやスマホメーカーの生産に影響を与えております。このような状況下、当社売上高の約半分を占める車載向けでは、顧客であるTier1メーカー(完成車メーカーに部品を供給するメーカー)からの受注は引き続き高い水準で推移しており、当連結会計年度の売上高は前期比2割以上増加いたしました。売上高の2割弱を占める移動体通信向けは、5Gスマホ向け76.8MHzサーミスタ内蔵水晶振動子の販売は堅調に伸びましたが、TCXO(温度補償水晶発振器)の販売が減少したため、売上高は前期比で微増にとどまりました。売上高の1割弱を占める産業機器向けは、米国政府による中国通信機器大手メーカーに対する輸出規制の影響を受け、同メーカーに対する販売は減少しましたが、米国等における5G基地局の需要増により、売上高は前期比で微減となりました。この他、民生やIoT向けの売上高が前期比増加いたしました。

その結果、当期の売上高は45,408百万円(前連結会計年度比15.8%増)となりました。

利益につきましては、売上高が大幅に増加した車載向けで利益が改善した他、5Gスマホ向け76.8MHzサーミスタ内蔵水晶振動子の販売増が収益改善に大きく貢献しました。なお、その他の営業収益には、中国蘇州市にある連結子会社(蘇州日本電波工業有限公司)の新工場への移転完了により、蘇州市政府より受領していた1,136百万円について、補助金収入に計上いたしました。一方、その他の営業費用には、新潟エヌ・デー・ケー㈱の事業終了に伴う費用・損失として492百万円を計上いたしました。2021年12月18日にマレーシア工場が豪雨により浸水した影響により損害を被った2工場(建物・機械設備・棚卸資産)の損失等については保険を付与しており、損益への影響は軽微となりました。なお、マレーシア工場は、2022年4月から全面的に生産を再開しております。また、1,917百万円の繰延税金資産計上により、△1,665百万円の法人税等調整額を計上いたしました。

その結果、当連結会計年度の営業利益は5,180百万円(前連結会計年度比82.2%増)、税引前当期利益は4,920百万円(前連結会計年度比89.8%増)、当期利益は5,455百万円(前連結会計年度比176.1%増)となりました。

在外営業活動体の換算差額が893百万円増加する等、税引後その他の包括利益が1,029百万円となったことから、当期包括利益合計は6,485百万円(前期は当期包括利益合計3,270百万円)となりました。

これにより、売上高営業利益率は11.4%となりました。

なお、前期には、当社100%子会社であったNDK SAW devices㈱の株式の51%を譲渡したことによる株式売却益及び評価益計4,405百万円を計上した一方、790百万円の構造改革費用と328百万円の減損損失を計上しておりました。

事業の品目別の業績を示すと、次のとおりであります。

①  水晶振動子

水晶振動子の販売は、車載向けで前期比、大きく増加しました。また、移動体通信向けでは5Gスマホ用に76.8MHzサーミスタ内蔵水晶振動子の販売が大幅に増加しました。その結果、売上高は31,162百万円(前期比22.3%増)となりました。
 

 

②  水晶機器

車載向けでは、車載カメラ向けを中心にクロック用水晶発振器等の販売が増加しました。一方、移動体通信向けでは、TCXO(温度補償水晶発振器)の販売が減少いたしました。また、米国政府による中国通信機器大手メーカーに対する輸出規制の影響を受け、基地局向けのOCXO(恒温槽付き水晶発振器)の販売が減少いたしました。その結果、売上高は10,062百万円(前期比2.5%減)となりました。
 

③  その他

医療用に超音波機器、特殊機器向けに周波数シンセサイザの販売が増加しました。その結果、売上高は4,183百万円(前期比23.2%増)となりました。
 

主要な販売先別の業績を示すと、次のとおりであります。
①  日本

車載向けを中心に水晶振動子や水晶発振器の売上高が前期比増加しました。また、超音波機器やFA機器関連向けの販売が伸びました。その結果、売上高は8,453百万円(前期比21.6%増)となりました。
 

②  アジア

中国圏では、車載向けでは水晶振動子を中心に売上高が前期比大幅に増加しました。一方、移動体通信向けでは水晶振動子の販売は増加しましたが、TCXO(温度補償水晶発振器)の販売が減少しました。基地局向けでは、中国大手通信機器メーカー向けの販売が減少しました。韓国では、移動体通信向け水晶振動子の販売が減少しました。その他のアジア地域では、車載や基地局向けの売上高が増加しました。その結果、売上高は中国15,779百万円(前期比7.0%増)、韓国2,125百万円(前期比7.2%減)、その他3,267百万円(前期比44.2%増)となりました。
 

③  欧州

車載向けを中心に水晶振動子や水晶発振器の販売が増加しました。その結果、売上高は9,845百万円(前期比21.2%増)となりました。
 

④  北米

車載向けを中心に水晶振動子の販売が増加しました。その結果、売上高は4,199百万円(前期比15.9%増)となりました。
 

生産、受注及び販売の実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

①  生産実績

品目別の名称

生産高(百万円)

前期比(%)

水晶振動子

32,411

32.8

水晶機器

9,195

4.7

その他

3,982

34.6

合計

45,589

26.1

 

(注)  金額は、販売価格によっております。

 

②  受注実績

品目別の名称

受注高(百万円)

前期比(%)

水晶振動子

37,546

11.9

水晶機器

12,002

2.3

その他

5,055

43.4

合計

54,605

11.8

 

 

 

③  販売実績

品目別の名称

販売高(百万円)

前期比(%)

水晶振動子

31,162

22.3

水晶機器

10,062

△2.5

その他

4,183

23.2

合計

45,408

15.8

 

(注)  総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上の相手先が存在しないため、主な相手先別の販売実績の記載を省略しております。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末における資産、負債及び資本の、前連結会計年度末に対する主な増減は以下のとおりであります。

前連結会計年度末に比べ、総資産は、現金及び現金同等物の減少6,344百万円、営業債権の増加1,362百万円、棚卸資産の増加1,656百万円、繰延税金資産の増加1,418百万円等により1,833百万円減少し61,220百万円となりました。負債は、借入金の減少8,447百万円、営業債務その他未払勘定の増加1,315百万円、流動負債のその他に含まれる前受金の減少1,205百万円等により8,319百万円減少し41,182百万円となりました。親会社の所有者に帰属する持分は、当期包括利益合計6,485百万円の増加により、20,037百万円となりました。これにより、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末から11.2ポイント上昇して32.7%となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比較し6,344百万円減少の10,362百万円となりました。活動毎のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

フリー・キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが4,560百万円のプラスとなり、投資活動によるキャッシュ・フローが2,326百万円のマイナスとなったことにより、2,233百万円のプラス(前期比1,796百万円のプラス)となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、マイナス要因として、棚卸資産の増加1,186百万円、政府補助金1,157百万円、営業債権の増加764百万円等があったものの、プラス要因として、税引前当期利益4,920百万円、減価償却費及び償却額2,974百万円があったこと等により、4,560百万円のプラス(前連結会計年度比4,436百万円のプラス)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出2,406百万円等により、2,326百万円のマイナス(前連結会計年度比2,640百万円のマイナス)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入25,284百万円、長期借入金返済による支出32,555百万円、短期借入金の純減少額1,200百万円等により、8,910百万円のマイナス(前連結会計年度比14,331百万円のマイナス)となりました。

これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ6,344百万円減少し、10,362百万円となりました。

なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは次のとおりであります。

 

 

2018年3月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

親会社所有者帰属持分比率

24.8%

24.2%

9.8%

21.5%

32.7%

時価ベースの
親会社所有者帰属持分比率

21.5%

12.8%

12.2%

22.7%

40.4%

キャッシュ・フロー対
有利子負債比率

19.9

36.2

287.9

5.9

インタレスト・
カバレッジ・レシオ

7.7

3.1

0.3

10.5

 

 

[算式]親会社所有者帰属持分比率:親会社所有者帰属持分/総資産

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注) 1. IFRSに基づく連結ベースの財務数値により計算しております。

2. 株式時価総額は自己株式を除く発行済普通株式数をベースに計算しております。

3. キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

4. 有利子負債は連結財政状態計算書に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

5. 2018年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1) 連結財務諸表  連結財務諸表注記  2.作成の基礎  (4) 見積り及び判断の利用」に記載しております。

 

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