課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、コンピュータによる造形処理を、あくまでもユーザーの立場に立って支援させていただくことに究極の目標を置いております。デジタル化の急進に伴い、お客様のニーズが多様化、高度化する中にあって、いかに迅速かつ前向きに新技術で対応できるかが重要課題となります。単に量的拡大を追求するのみでなく、質の高い製品の供給と十分なサービスの提供によりお客様に共感を頂き、共に発展していくことを最善と考えております。

このような理念の下に、ユーザー情報の収集と新製品の開発を共通テーマとして、営業部門、開発機能を有する事業部門及び関係会社が一体化した運営体制を志向してきました。継続的に情報交換の場を持ち、問題意識の共有を図りながら、新たな研究テーマに基づき製品開発に取り組む開発プロジェクトを常に稼働させております。

一方において、高い価値の開発結果は最良の生産体制で製品化されることが求められます。当社は、品質と生産効率の向上をメーカーとしての最大の使命と捉え、体制の整備に注力してまいりました。当社の生産システムである「デジタル屋台生産方式」は、IT機器をフル活用し、リードタイムの短縮、品質の信頼性確保等を実現しております。

このような「モノづくり」における一連の努力を創造の喜びとして、今後ともグループ一体となった積極的な運営を推進していく方針であります。

 

(2)目標とする経営指標

2021年度から2023年度までの中期経営計画では、『真に“創造・BEST・共感”のRDGに生まれ変わる』を方針に掲げ、「筋肉質な企業体質への変革」と「事業ポートフォリオの転換」を計画の両輪と位置付けて取り組んでおります。

初年度の2021年には、主に「筋肉質な企業体質への変革」の実現に向けた構造改革施策を実施しました。従来、日本国内工場とタイ工場の二拠点で展開していた量産機能をタイ工場へ移管、集約するとともに、本社では早期希望退職制度による人員の適正化を図っております。

また事業面では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や半導体を中心とした部品調達難、海上輸送の遅延や混乱などは当社グループの事業においても影響があるものの、経済活動の再開に伴って需要回復が顕著となったことに加えて、コロナ禍においても新たなニーズやトレンドが生まれております。

こうした状況下、本中期経営計画の初年度となる2021年12月期に、最終年度(2023年12月期)の利益計画を2年前倒しで達成したことから、各事業分野のニーズの変化を踏まえて中期事業戦略を見直し、業績計画を再設定いたしました。最終年度となる2023年度の業績計画は、連結売上高540億円、連結営業利益80億円(営業利益率14.8%)、ROE17%、ROIC15%と設定し、引き続き構造改革による「筋肉質な企業体質への変革」と新興国や新事業への参入による「事業ポートフォリオの転換」を目指してまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題

当社グループは、カラー&3Dのデジタル制御技術をベースとして、グローバルに高付加価値市場の創出を推進し、成長を続けてまいりました。2021年から2023年までの中期経営計画では、事業ポートフォリオの転換を図ってまいります。主力市場においては、成熟化と競争の激化に対応すべく、技術の転換と効率の追求を図り利益率の低下を最小限にとどめながら、成長が見込まれるニッチ分野での新規市場創造に取り組んでまいります。

 

 

①注力する事業分野

当社では、強みが生きるニッチで高付加価値な事業展開が見込める分野に注力しております。具体的な事業としては、既存市場のサイン(広告・看板製作)をはじめアナログ工程からデジタル化へのプロセス変化が見込まれる印刷市場が対象の「DP(デジタルプリンティング)事業」、三次元デジタルデータを活用したさまざまなデジタルモノづくり市場を対象とする「DGSHAPE(ディージーシェイプ)事業」の2事業に区分しております。DP事業では、商品のパーソナライズ化に代表されるようなオンデマンド印刷を必要とする分野の開拓に取り組みます。DGSHAPE事業では、デジタルワークフローの進展が著しいデンタル(歯科医療)分野の拡大に引き続き取り組みます。これら注力分野に向けて経営資源の配分を一層明確にすることで、成長分野の拡大と新たな市場の創造を加速してまいります。

 

②市場変化、顧客ニーズ変化への対応

価値創造や市場創造を成長の中核とする当社では、ニーズの多様化をはじめとした市場変化への適応力が重要です。変化にスピーディに対応できるグループ一体の組織構造を基盤として、コア技術革新への積極的投資を行うと共に、地域ごとのニーズを迅速に取り込んで新たな市場創造に繋げるため、外部パートナーとの協業によりスピーディな製品化を実現してまいります。

 

③主力市場の成熟化への対応

当社が主力とするサイン市場では、インクジェットプリンターの普及に伴い成熟化が進行しております。優位性や差別化を追求した製品の投入や用途開発による顧客のビジネス機会創出、ソリューション提案力の強化に加えて、環境に配慮したインクへの転換を促すことによって顧客価値の拡大に集中すると共に、グローバル販売網を活かして強固な顧客基盤を維持してまいります。さらに、タイ工場での量産や製品開発のプラットフォーム化による開発工数の削減でコスト競争力を高め、収益力と持続性のあるビジネスモデルへの転換を図ってまいります。

 

④組織運営体制の強化

ニッチで高付加価値な市場創造を実現していくためには、起業家精神を持った強いリーダーのもと、社会や個人のニーズの変化をいち早く取り込み、機動的な事業活動を推進していくことが求められます。市場の変化を的確に捉えた迅速な意思決定を実現する組織体制への変革を進めることで、スピード感あふれる市場創造を目指しております。

 

⑤コスト構造の抜本的見直し

2021年度から3ヶ年の中期経営計画では、競争力の強化とさまざまな事業環境の変化へ適応できる企業体質への変革を目的とした構造改革に取り組んでおります。

その一環として2021年度には「生産拠点のタイ工場への集約」及び「早期希望退職者の募集」を実施いたしました。これまで、日本国内とタイの二拠点で展開する生産機能をタイ工場へと集約することで、ものづくりの効率性を高めると共に、当社では早期希望退職の実施を通じて人員構成のスリム化を行い、固定費の削減を図っております。

これら構造改革を通じてコスト競争力を高め、グローバル競争を勝ち抜く収益性を確保すると共に、筋肉質な企業体質へと生まれ変わることで、持続的な成長を実現してまいります。

 

⑥開発及び生産体制の強化

開発及び生産体制については、デジタルデータを全社で共有し業務を進める「デジタルファクトリー」の考え方に基づき、コンカレントエンジニアリングによる製品開発やセル生産方式による多品種少量生産等、柔軟なものづくりを実現してまいりました。

また、現在、急速な市場変化やニーズの多様化にスピーディに対応するため、研究開発投資を積極的に行い技術基盤の強化に取り組んでおり、コア技術を活かした独自性のある技術提案によって高付加価値市場の創出を促進します。

 

生産面では、2021年度に量産機能をタイ工場へ完全移管し、価格競争力の強化を図りました。国内工場は先進的な生産技術の開発や付加価値の高い小ロット生産、試作製作などを担うマザー工場と位置付けます。さらに、PSI(生産・販売・在庫)管理の強化により生産リードタイムの向上や在庫削減などに取り組むと共に、需要変動への対応力を強化し、一層の効率化を進めてまいります。

 

⑦事業継続性の向上

当社では、自然災害等に備え、サプライチェーンを含めて多面的にBCP(事業継続計画)を見直すと共に、その実効性を高めるため通年で防災委員会活動を実施しております。また、生産活動における部品調達面では、海外調達比率を高めることで調達リスクの分散化を図り、事業活動の継続性向上に努めております。

 

⑧サスティナビリティ課題への対応

当社では、サステナビリティの基本方針を定めており、まずは自らの持続可能性を確固たるものとし、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るために、イノベーションによる既存事業の進化と、新たな成長機会を捉えた新規事業の創造により、顧客価値を最大化することが経営上の最重要課題であると考えております。

これらの課題を解決するために、当社は、事業の担い手である従業員の働きがいや能力を醸成するとともに、多様な価値観の融合や止揚によるイノベーションが生まれやすい環境を整えることが重要であると考えております。従業員の健康・労働環境への配慮、公正・適切な処遇、働きやすさといったサステナビリティ要因を超えて、エンゲージメントの向上、ダイバーシティの深化を従業員価値と捉え、企業価値の創造へとつなげてまいります。

株主価値に関しましては、コア技術であるXYZ軸の制御に最新のデジタル技術を組み合わせる創造性と、グローバルネットワークを活用したニッチ市場を開拓するマーケティング能力を磨くことで、独自性とブルーオーシャン市場を確保し、事業の競争優位を確立すると同時に、資本コストを踏まえた最適な資本政策を実践することで長期的な収益力や資本効率を高めることが重要であると考えております。

また、パブリックカンパニーとして、法令を遵守し、社会的責任を果たすことは当然の責務であると認識しております。スローガンの一つである「共感を呼ぶ企業にしよう」の下、行動基準に則り、資源の有効活用や環境負荷の低減などのCSR活動に取り組むとともに、ステークホルダーの皆様と共に企業価値の向上を図るべく、相互信頼関係の構築に努めております。

環境負荷の低減に向けた取り組みでは、環境に配慮した製商品の開発、工場設備の整備による環境汚染の予防、電力消費の削減に取り組んでいるほか、社内啓蒙活動を通じて資源の有効活用やリサイクルを推進し、全社規模で環境保全を図っております。さらには、SDGs(持続可能な開発目標)の精神に賛同し、持続的に発展可能な社会づくりに貢献すべく、本社所在地である浜松市が推進する「浜松市SDGsプラットフォーム」に登録し、事業を通じてSDGsの活動に取り組んでまいります。

 

⑨コーポレート・ガバナンスの充実及び内部統制の強化

コーポレート・ガバナンスの充実は上場会社としての社会的責任であり、その実現のためには内部統制の強化は不可欠であります。会社法で求められる「内部統制システム構築の基本方針」を設定し、リスク管理体制を整備して運用しております。さらに、金融商品取引法で制度化された財務報告に係る内部統制に関しても、上記の基本方針に則り、業務の適正性を確保するための体制整備を図っております。

また、東京証券取引所に上場する会社を対象とする「コーポレートガバナンス・コード」が適用されております。本コードの趣旨と精神を十分に踏まえ、コーポレート・ガバナンスの充実に取り組むと共に、「株主との建設的な対話に関する方針」を定め、株主・投資家の皆さまとの積極的な対話を通じて、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。

 

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