文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、売上債権増加2,031百万円、棚卸資産増加5,368百万円などにより、44,540百万円(前期末比6,123百万円の増加)となりました。売上債権の増加は、主に回路検査用コネクタセグメントにおける大幅な受注増に伴う売上増加によるものです。また、棚卸資産の大幅な増加は、車載通信機器セグメントにおいて、世界的な海上・航空物流のリードタイム長期化により積送在庫が増加したこと、並びにそれを踏まえて供給維持のためさらに生産・在庫水準の引上げを行ったことなどによるものです。
固定資産につきましては、有形固定資産増加2,635百万円、投資その他資産増加1,083百万円などにより、22,330百万円(前期末比3,878百万円の増加)となりました。後掲「b. セグメント情報に記載された区分ごとの状況」に記載のとおり、各事業セグメントにおいて積極的な量産投資・開発投資等を実施したことによります。
以上の結果、当連結会計年度末における資産合計は、66,870百万円(前期末比10,001百万円の増加)となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は、1年内返済予定の長期借入金減少3,400百万円がありましたが、仕入債務増加1,499百万円、未払法人税等増加751百万円、その他増加675百万円などにより、20,184百万円(前期末比303百万円の増加)となりました。仕入債務の増加は、主に車載通信機器及び回路検査用コネクタの両セグメントにおける次期の大幅な増産見通しに基づく部材等の仕入増加によるものです。
固定負債につきましては、長期借入金増加1,600百万円などにより、2,357百万円(前期末比1,572百万円の増加)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における負債合計は、22,541百万円(前期末比1,875百万円の増加)となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、第三者割当による新株予約権の発行及びその行使による払込に伴い資本金が1,431百万円、資本剰余金が1,431百万円増加したこと、親会社株主に帰属する当期純利益4,663百万円の計上、米ドルをはじめとする各国通貨の当連結会計年度の期末の対日本円レートが前連結会計年度より円安となったことなどによる為替換算調整勘定増加1,789百万円、剰余金の配当860百万円などにより、44,328百万円(前期末比8,125百万円の増加)となりました。
<車載通信機器>
業量増に伴う売掛債権及び棚卸資産の増加のほか、設備投資などに伴う有形固定資産及び無形固定資産の増加3,184百万円などにより、当連結会計年度末におけるセグメント資産は、30,286百万円(前期末比8,402百万円の増加)となりました。
上記の設備投資(当連結会計年度における投資総額2,857百万円)のうち主なものは、フィリピン生産子会社であるYOKOWO MANUFACTURING OF THE PHILIPPINES, INC.の立上げに伴う工場建設工事、中国生産子会社である東莞友華汽車配件有限公司、ベトナム生産子会社であるYOKOWO VIETNAM CO., LTD.における量産設備等の導入であります。
<回路検査用コネクタ>
業量拡大に伴う売掛債権増加のほか、設備投資などに伴う有形固定資産及び無形固定資産の増加1,202百万円などにより、当連結会計年度末におけるセグメント資産は、10,160百万円(前期末比851百万円の増加)となりました。
上記の設備投資(当連結会計年度における投資総額1,086百万円)のうち主なものは、半導体検査用治具の受注拡大及び短納期化に対応するための日本国内生産拠点及びマレーシア生産子会社であるYOKOWO ELECTRONICS (M) SDN. BHD.における各種設備の増設など、能力増強投資であります。
<無線通信機器>
業量拡大に伴う売掛債権増加のほか、設備投資などに伴う有形固定資産及び無形固定資産の増加706百万円などにより、当連結会計年度末におけるセグメント資産は、6,004百万円(前期末比909百万円の増加)となりました。
上記の設備投資(当連結会計年度における投資総額659百万円)のうち主なものは、中国生産子会社である東莞友華汽車配件有限公司やマレーシア生産子会社であるYOKOWO ELECTRONICS (M) SDN. BHD.におけるファインコネクタ事業の量産設備等の更新、メディカル・デバイス事業の販売拡大に対応した日本国内生産拠点における量産設備等の増設であります。
当連結会計年度における世界経済は、前年度に引き続き新型コロナウイルス感染症拡大の影響が残りましたが、ワクチン接種の進展とともに経済活動制限の緩和が進みました。わが国におきましても、個人消費の回復は伸び悩んだものの、世界経済の改善とともに景気の持ち直しの動きがみられました。
当社グループの主要市場である自動車市場、半導体検査市場、携帯通信端末市場、先端医療機器市場におきましては、5G(第5世代移動通信システム)を筆頭に、業界構造や各業界の事業モデルを劇的に変える可能性が高い先進アプリケーションの普及拡大とともに、製品/技術開発競争が激化しております。
このような状況の中、当社グループは、質の高い本格成長を期し、経営基本方針に掲げる4つのイノベーション(プロダクト/プロセス/パーソネル/マネジメント)の推進に引き続き取り組みました。車載通信機器セグメントにおきましては、世界的な半導体・部材不足の影響や物流の混乱などによりサプライチェーンが逼迫する中、顧客への供給責任を果たすための体制の大幅強化に取り組みました。回路検査用コネクタセグメントにおきましては、5Gを契機として広がる事業成長機会をより確実に捉えるべく、技術/製造体制の強化、急激な受注増に対応するための国内・マレーシア工場への新生産ライン増設による能力増強とともに、国内・マレーシア生産比率の見直しによる生産バックアップ体制の強化に引き続き取り組みました 。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は、車載通信機器および回路検査用コネクタの両セグメントが前期比で増収となった一方、無線通信機器セグメントが前期比で減収となった結果、 66,848百万円 ( 前期比+11.5% ) となりました。営業損益につきましては、回路検査用コネクタセグメントが増収に伴い前期比で大幅に増益となったものの、無線通信機器セグメントがコストアップおよび事業構成変化などにより減益となり、車載通信機器セグメントが物流費の増加や原材料価格上昇・円安などに伴うコストアップの影響を受けて損失となったことなどから、 4,684百万円の利益 ( 前期比△9.6% ) となりました。経常損益につきましては、円安による為替差益 1,763百万円 を計上したことなどにより、 6,529百万円の利益 ( 前期比+22.7% ) となりました。親会社株主に帰属する当期純損益につきましては、経常増益などにより 、 4,663百万円の利益 ( 前期比+22.1% )となりました。
以上のとおり、営業利益は前期比で減益となりましたが、売上高、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも過去最高を更新いたしました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
<車載通信機器>
当セグメントの主要市場である自動車市場は、世界的な半導体不足や新型コロナウイルス変異株の感染拡大による部品調達停滞などの影響が年度を通じて継続したことにより、本格的な挽回生産には至りませんでした。地域別では、米国/中国市場の新車販売台数は前期比で増加したものの、欧州/日本国内市場では減少しました。
このような状況の中、主力製品であるシャークフィンアンテナ/GPSアンテナをはじめとする自動車メーカー向けアンテナの国内・海外販売及びETCアンテナなど国内向けを主とする製品の販売は、第2四半期以降の自動車減産に伴う生産調整の影響を受けましたが、前期比では第1四半期の反動増により上回りました。
この結果、当セグメントの売上高は 40,081百万円 ( 前期比+7.5% ) と、前期比で増収となりました。セグメント損益につきましては、海上運賃の高騰などによる物流費増、現地通貨高に伴う中国/ベトナム生産拠点における労務費などの増加、原材料価格上昇によるコストアップ、自動車メーカーの挽回生産に備えた生産体制維持などにより、 1,443百万円の損失 ( 前期は433百万円の利益 ) となりました。
<回路検査用コネクタ>
当セグメントの主要市場である半導体検査市場は、テレワークやオンライン学習拡大などに伴うハイエンドPC向け需要が増加したことに加え、クラウドサービス向け/スマートフォン他電子機器向け半導体の需給逼迫により、検査需要は極めて旺盛な状況が続いています。
このような状況の中、当社グループの主力製品である半導体後工程検査用治具の販売は、ロジック半導体検査用ソケット・高周波検査対応ソケットの旺盛な受注増および新規量産立上げなどにより、前期を上回りました。半導体前工程検査用治具の販売も、周辺機器を含めてワンストップソリューションでサービスを提供するターンキービジネスが順調に拡大したことなどにより、前期を上回りました。また、高周波電子部品検査用MEMSプローブカード(YPX)の販売も、5G対応スマートフォンの普及を背景に受注が増加し、前期を大幅に上回りました。
この結果、当セグメントの売上高は 17,625百万円 ( 前期比+33.1% ) と、前期比で増収となりました。セグメント損益については、原材料価格上昇によるコストアップはあったものの、増収および円安に伴う増益に加え比較的利益率の高い製品の比率上昇などにより 、 4,871百万円の利益 ( 前期比+81.6% )となりました。
<無線通信機器>
当セグメントの主要市場である携帯通信端末市場は、スマートフォンの販売が鈍化傾向にある一方、ウェアラブル端末は多様化・高機能化により今後の成長が見込まれています。POS端末市場は、物流/製造を始めとする幅広い業界において、情報管理による業務効率化実現の観点から着実な成長を続けているほか、産業機器などの他市場も成長が期待されています。
このような状況の中、微細スプリングコネクタを中核製品とするファインコネクタ事業においては、半導体不足の影響やアセアン地域における新型コロナウイルス感染再拡大による顧客の生産調整などの影響により、第2四半期以降、POS端末向けやワイヤレスイヤホンなどウェアラブル端末向けの販売が減少したことなどから、売上高は前期を下回りました。
当セグメントに含めておりますメディカル・デバイス事業につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により上期は受注が弱含んだものの、下期以降はユニット品の新製品販売とベンチャーエコシステム向け販売が増加したことにより、売上高は前期を上回りました。
この結果、当セグメントの売上高は、 9,141百万円(前期比△3.2%)と、前期比で減収となりました。セグメント損益につきましては、ファインコネクタ事業における減収に伴う減益に加え、人民元高などによる中国生産拠点における労務費比率の上昇、事業構成変化などにより、1,256百万円の利益(前期比△39.1%)となりました。
(事業セグメント別連結売上高 前期比較) (単位:百万円、%)
c. 新型コロナウイルス感染症の影響(当連結会計年度及び2023年3月期)
<車載通信機器セグメント>
当セグメントにおける生産は、主に中国、ベトナム、北米拠点にて行っております。各拠点におきましては、当連結会計年度以降概ね安定稼働を継続しておりますが、販売面では、2022年3月に中国現地政府により発令された上海ロックダウンの影響で売上高が一時的に減少するものと見込んでおります。
また、物流面におきましては、感染者増加に伴い各国の港湾作業が遅延し、海上輸送のリードタイムが通常時より延伸したことに加えて、海上運賃の高騰・高止まりにより、物流費が大幅に増加しました。2023年3月期におきましては、上期一杯は物流費大幅増加による利益下押しの影響を見込む一方で、販売価格の見直し及び生産現場における原価低減活動などによる損益改善を見込んでおります。
<回路検査用コネクタセグメント>
当セグメントにおける生産は、主にマレーシア拠点と日本拠点にて行っております。当連結会計年度におきましては、生産面では、マレーシア拠点が現地政府の移動制限令の影響で上期中は操業を制限されていたことにより、同期間中に生産遅れが生じました。制限解除後は、2022年初に当社マレーシア拠点で一時的な感染拡大があったものの、2022年3月には収束し、概ね安定稼働を継続しております。
2023年3月期におきましては上記のとおり概ね安定稼働を継続するものと想定しておりますが、生産キャパシティ拡大及び事業継続性向上のため、上期中を目途に日本国内及びベトナムに新拠点設立を予定しており、機械設備の償却費や新規採用費用の増加を見込み、当セグメントの利益が若干下押しされると想定しております。
<無線通信機器セグメント>
・ファインコネクタ事業
当事業における生産は、主にマレーシアと中国拠点にて行っております。当連結会計年度におきましては、マレーシア拠点については、上記の回路検査用コネクタセグメントに記載のとおりです。中国拠点については、上記の車載通信機器セグメントに記載のとおりです。販売面では、半導体不足の影響やアセアン地域における新型コロナウイルス感染再拡大による顧客の生産調整などの影響により、売上高は減少しました。
2023年3月期におきましては、生産面では、両拠点とも概ね安定稼働を継続しております。販売面では、上期中は2022年3月期に引き続き売上高は低調に推移すると見込むものの、下期から改善するものと想定しております。
・メディカル・デバイス事業
当事業における生産は、日本拠点のみで行っております。当連結会計年度におきましては、感染防止策の徹底により、年度を通じて安定稼働を継続しました。販売面では、上期中は国内の感染拡大に伴う医療現場逼迫・手術回避の影響を受けましたが、下期以降はカテーテル等のアッセンブリ製品・部品とも受注が上向き、販売は堅調に推移しました。
2023年3月期におきましては、生産面では引き続き安定稼働継続を見込んでおります。販売面についても、引き続き堅調に推移するものと想定しております。
d. 目標とする経営指標の達成状況等
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、13,816百万円(前期比1,478百万円の減少)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、車載通信機器セグメントにおける積送在庫の増加並びに供給維持のための生産・在庫水準の引上げなどによる棚卸資産の増加4,190百万円などの減少要因がありましたが、税金等調整前当期純利益6,459百万円、減価償却費3,302百万円などの増加要因により、3,677百万円の収入(前期比1,461百万円の収入減少)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、フィリピン工場の建設など有形固定資産の取得による支出4,739百万円、無形固定資産の取得による支出530百万円などの減少要因により、5,967百万円の支出(前期比1,348百万円の支出増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入の返済による支出3,400百万円、配当金の支払による支出858百万円などの減少要因がありましたが、株式の発行による収入2,853百万円、長期借入金による収入1,600百万円などの増加要因により、171百万円の収入(前期比1,734百万円の収入減少)となりました。
当社の運転資金は、主に製品製造に使用する原材料や部品の調達に費やされており、製造費や販売費及び一般管理費に計上される財・サービスに対しても同様に費消されております。また、設備投資資金は、生産設備取得等生産体制の構築・強化、情報システムの整備等に支出されております。これらの必要資金は、利益の計上、減価償却費等により生み出される内部資金により賄うことを基本方針としております。
当連結会計年度におきましては、研究開発・製品開発投資、フィリピン生産子会社の工場建設、ベトナムの生産子会社における生産設備増設やマレーシア生産子会社における加工設備増設など量産設備増強等を積極的に実施いたしました。2023年3月期以降も、回路検査用コネクタセグメントの日本国内工場及びベトナム生産子会社工場の新設、マレーシア生産子会社におけるさらなる能力増強等を計画しており、その設備投資資金として、営業キャッシュ・フローに加えて、長期借入金の借り換えを実施いたしましたが、その金額は一部返済により圧縮いたしました。一方、新中期経営計画において、中長期的視点から、既存事業・既存技術の限界を突破し新たな成長力を獲得するため、コア技術のさらなる深化のための基礎研究投資、MEMSプローブカード生産ライン新設など新規領域進出に向けた設備投資の実施を計画しております。それらの使途に充当するため、2020年11月に発行を決議した第三者割当による新株予約権の発行及びその権利行使により、新株300万株を発行し約76億円を調達いたしました。しかし、車載通信機器セグメントにおけるサプライチェーン混乱・海上輸送リードタイム長期化により大幅に増加した製品・部材在庫に資金が張り付くこととなり、その結果、当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物の残高は13,816百万円と、前期末比1,478百万円減少いたしました。
⑥ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成
されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計上の見積りを行なっております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となる場合があります。
重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
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