当連結会計年度における当社グループの主な開発製品の研究開発費の総額は
また、当連結会計年度における主な開発製品の研究開発活動のセグメントごとの状況は、次のとおりであります。
(1)機構部品における研究開発
①高速伝送化が進む自動運転・先進安全システムに用いられるECU(Electronic Control Unit)や多チャンネル化と高帯域化が進む5G・V2X等の通信用ECUのインターフェース用途として、世界最小クラスサイズの「車載用超小型同軸コネクタ(クアッド対応)」を開発いたしました。ダイキャストハウジング構造を採用したレセプタクルは、自動車メーカーが求める高い堅牢性とEMC(Electromagnetic Compatibility)特性を高次元で両立するとともに、信号端子が隣接することによって発生するクロストークを制御する独自構造によって、広帯域化を実現いたしました。従来のシングルタイプ(HVE1282)を4個並列実装するのに対し、基板占有面積を約60%縮小でき、ECUのさらなる小型化に貢献いたします。また、多連コネクタ特有の課題である「コネクタ挿抜力の増大」も抑制いたします。4ポートのコネクタ接続を1回の嵌合で完了することができ、作業工程を低減いたします。次世代Ser/Des(Serializer/Deserializer)や次世代通信規格の周波数帯域を網羅するDC~10GHzの広帯域を確保しており幅広い用途に使用可能であります。
(2)表示部品における研究開発
①現在、太陽電池で主流のシリコン系太陽電池は高温プロセスを必要とするため、製造過程の電力消費量が大きく、生産コストが割高になっていることが課題でありました。ペロブスカイト型太陽電池は低温プロセスにより製造されるため、製造過程の電力消費量が小さく、主に有機材料を用いるため、生産コストの抑制が実現可能であります。加えて従来の有機系太陽電池よりも変換効率が高く、シリコン系も上回る性能が各研究機関から報告されており、軽量で柔軟性があるため、モバイル機器やIoT機器向け用途に適しております。将来、フィルム基材タッチパネルの製造ラインを活用することにより、フレキシブル太陽電池の量産も視野に入れ、ペロブスカイト型太陽電池事業に参入を計画しております。
②Ultraleap Limited社が開発した空中触覚技術と当社のタッチパネルで培った技術を融合させた製品の量産化を進めるため、Ultraleap Limited社と共同開発に関する契約を締結いたしました。空中触覚技術は次世代自動車用HMI(Human Machine Interface)などに用いられることが想定されております。また、空中で様々な大きさや形の触感を作り出すことができ、運転中に操作パネルを見ずに入力操作できる「空中アイフリー操作」が実現可能な技術であります。空中触覚技術は、複数の小型超音波スピーカの集束超音波により、機器と非接触の空中で触感を生成させる技術で、自動車用途のほか券売機、トイレ、エレベータ、ATMなど様々な分野での製品開発を進めて参ります。
③従来の静電容量式タッチパネルでは難しかった、反射率の低減と外光による見えにくさを改善した業界最高クラスの外光反射率0.4%を実現した自動車用「超低反射タッチパネル」を開発いたしました。従来の静電容量式タッチパネルはITOセンサの採用が一般的でしたが、本開発品は超低反射黒化Agメッシュセンサを採用し、カバーガラス、OCA(Optical Clear Adhesive)等の構成部材について光学設計の最適化により低反射を実現いたしました。また、メタルメッシュセンサの高感度特性に加え、偏光サングラス装着時の虹ムラ対策を行い、快適な操作性と高視認性を実現しております。
④ダイヤルなどの入力デバイスを、タッチパネルの画面上に自由に装着できる「デバイス・キャプチャ・キャパシティブ・タッチパネル(Device Capture Capacitive Touch Panel)」を開発いたしました。ダイヤルスイッチの中央部をくり抜いた入力デバイスを設置することで、ダイヤルインディスプレイスイッチとして実現でき、入力デバイスとタッチパネルの組み合わせにより、視認性に加え、違和感のない操作性と良好な感触を実現しております。独自に開発したフォース・センシング機能により、入力デバイスの押し込み操作を付加でき、4チャンネルのGPIOを搭載することで、ホストコントローラを介することなく、タッチ、ダイヤル、押し込みなど各種操作に連動した操作フィードバック(音や振動など)を制御することが可能となっております。車内ヒータスイッチなど車載機器向け用途に加え、券売機や産業機器など操作性の良い入力デバイスとなっております。
(3)複合部品その他における研究開発
①Bluetooth バージョン5対応のBluetooth Low Energyモジュールを開発いたしました。モジュールの実装形態は端面スルーホール形式を採用することで、メイン基板への実装後のはんだ付け状態を容易に確認でき、実装強度、耐衝撃性に優れております。高性能なパターンアンテナを搭載しており、小型でありながら、安定した通信を実現しております。今後、Bluetooth バージョン5.1認証を取得予定で、Bluetooth 5.0から導入された2Mモードにも対応しております。また、無線認証は日本、米国、カナダの認可の取得を予定しております。センサビーコンや医療機器、玩具などのワイヤレスアプリケーション向けに最適な製品となっております。
②無線通信基板上に防塵、防水用のシリコンコーティング剤を塗布すると一般的にアンテナ特性の劣化を招きますが、お客様指定のシリコンコーティング剤を使用し、アンテナチューニングを実施することで、アンテナ特性を最適化したBluetooth low energyモジュール技術を確立いたしました。無線通信品質評価試験で、他社汎用モジュールと比べて通信距離を3~4倍に延ばすことができ、安定した無線通信の実現が可能となっております。
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