文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、azbilグループが判断したものであります。
(1)経営方針
azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業を通して持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実践することで、自らの中長期的な発展を確実なものとし、企業価値の持続的な向上を実現することで、ステークホルダーの皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。
このため、“技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ”、“地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」”、“体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す”の3つを基本方針に、事業収益力の強化及びグローバルな事業基盤の整備を進めつつ、これらを基にした事業成長施策を展開しております。具体的には、ビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)の3事業において、計測と制御の技術を核に、「人を中心としたオートメーション」の発想に基づく製品・サービスを提供し、お客様のニーズや社会課題の解決に貢献することで、お客様・社会とともに自らの持続的成長を目指しております。
(2)経営戦略等
当社は、「人を中心としたオートメーション」すなわち、人を中心に据え、人と技術が協創するオートメーション世界の実現に注力し、お客様の安全・安心や企業価値の向上、地球環境問題の改善等に貢献する世界トップクラスの企業集団になることを長期目標と設定、段階的に中期経営計画を立案し、この目標達成に向けた取組みを行ってまいりました。
これまでは、オートメーションに焦点をあてつつ単一市場への過度な集中を避け、異なる市場構造を持つBA/AA/LAの3つの事業分野から成る複合的な事業ポートフォリオの構築を進め、顧客開拓やシナジー等による事業領域の拡大に取り組んでまいりました。これらの事業領域には、既存の製品・サービスの提供では持続的な成長の実現が厳しくなってきている成熟領域もあれば、IoTやAIといった新たな技術革新に伴い、急激に変化している領域もあります。基盤を確たるものとし、企業としての存続を確かなものとする取組みを継続するとともに、更なる成長を実現するため、国内外の事業機会の変化を的確に捉え、事業創造の視点から「商品と顧客現場の連携」によるソリューション提案力の向上に取り組み、グローバルでの顧客や社会の長期パートナーとして、azbilグループならではの価値の提供を実現してまいります。
このように2030年度に向けた長期目標を掲げる当社グループは、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献とサステナビリティの観点から、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)を経営の重要な道標と位置付け、事業として取り組む領域として「環境・エネルギー」、「新オートメーション」の2つを、また企業活動全体で取り組む領域では「サプライチェーン、社会的責任」、「健幸経営※1、学習する企業体」の2つを「azbilグループSDGs目標」と定め、様々な取組みを進めております。
「持続可能な社会」に向けて、我々を取り巻く環境では、気候変動・脱炭素への対応から社会構造や価値観の変化、ウイルス共生時代における安全・安心の確保に至るまで、様々な社会課題やお客様の課題が生まれております。こうした大きな変化に対応し、解決策を提供できるオートメーションの価値は益々向上しており、需要の増加が期待されます。当社グループといたしましては、アズビルならではの技術・製品・サービスを活かすことのできる「新オートメーション」「環境・エネルギー分野」「ライフサイクル型事業」という3つの事業領域に注力し、新たな課題の解決策を提供することにより、BA、AA、LAの3事業での成長を実現してまいります。
中期経営計画(2021~2024年度)におきましては、上述の3つの事業領域での成長を確実なものとするために、新製品やサービス開発力の強化に向けた投資の拡大、お客様との接点の拡大等の施策を推進しております。中期経営計画初年度である2021年度においては、先進的なシステムソリューション、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を活用した高機能・高性能デバイスの開発力強化に向けた研究開発拠点である藤沢テクノセンターの整備が進みました。また、生産面においても、中国大連生産子会社の新工場棟が竣工するなどグローバルでの生産基盤の強化が進みました。
収益力という観点では、これまで取り組んできた受注時の採算性改善、海外生産・調達の拡大といった収益力強化施策に加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を通じた業務効率化をグローバルに展開することにより、一層の収益力強化を行ってまいります。加えて、資本コストを意識した経営の観点から投下資本利益率(ROIC)を導入し、投下資本からの収益性に基づく経営資源活用の最大効率化と事業ポートフォリオ管理を実践することで、当社グループ全体の企業価値向上(ROEの向上)に繋げてまいります。
当社グループは、持続的な企業価値向上の基盤としてのコーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題として、取締役会の監督・監査機能強化、経営の透明性や健全性の強化、執行の責任体制の明確化等に取り組んでまいりました。
当社におけるコーポレート・ガバナンスの更なる改革を進めることを目的として2022年6月23日開催の第100期定時株主総会にて、過半数の社外取締役によって構成される3つの委員会※2を有し、かつ過半数を社外取締役が占める取締役会から法的に明確な責任を負う執行役に大幅に業務執行権限を委譲可能とする「指名委員会等設置会社」への移行をご承認いただきました。
あわせて、同日実施の報酬委員会において、信託を活用した役員向け株式報酬制度を導入することを決議いたしました。取締役・執行役等の企業価値向上への意識及び株主価値の最大化への意欲を一層高め、株主の皆様との価値共有を図ることで、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献に向けた取組みを推進してまいります。
新型コロナウイルス感染症は未だ収束を見ず、グローバルにサプライチェーンや部品調達難等の混乱が続いております。さらに欧州等の地政学的リスクの高まりやエネルギー価格の高騰、インフレ懸念等は世界経済に影響を及ぼし、事業の見通しを不透明なものとしております。こうした社会情勢・事業環境の変化は、当社グループの事業にも影響が想定されるため、これら様々な事業環境の変化に対して、株主の皆様はもとより、お客様やお取引先様等、ステークホルダーの皆様との対話を重ねつつ、迅速、適切に対応してまいります。
新型コロナウイルス感染症に対しては、引き続きお客様と社員の安全を第一に、生産、エンジニアリングやサービス等の現場業務を継続することで、感染防止と社会インフラやお客様の重要施設の維持という両面で社会の要請に応えるとともに、危機管理対応としての防疫強化、BCP(Business Continuity Plan‐事業継続計画)整備、強固な財務体質の強化、さらに資金調達力の強化・多様化といった点にも引き続き取り組んでまいります。また、グローバルな部品調達難等における混乱につきましては、生産のオペレーション改善やサプライチェーン各社との連携を通じて影響の軽減を図ってまいります。なお、こうした環境変化に即した働き方の対応として、当社グループにおきましては、在宅勤務の拡大等に取り組むことで感染防止に貢献するとともに、さらにDXによる働き方の改革・創造を推進し、ABW(Activity Based Working)※3の考え方も取り入れた、リモートワーク・在宅勤務とかけ合わせた新しい働き方・生産性の向上を図ってまいります。
※1 健幸経営:健康で幸せ、活き活きとした“働きの場と人”を創るためのアズビル独自の取組み。
※2 3つの委員会:指名委員会、監査委員会、報酬委員会。
※3 ABW(Activity Based Working):働く人が仕事をするために最適な環境(場所・時間等)を選ぶことができるワークスタイル。
気候変動への対応 ~TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示~
azbilグループは2019年11月、気候変動が事業活動に与える影響を正しく把握し、適切に開示するという気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言内容に賛同いたしました。賛同表明後、気温上昇のシナリオに基づいた各事業の機会とリスクの双方を検討した結果、CO2削減に貢献する事業活動の機会がリスクを大きく上回ると認識しております。今後も、TCFDの提言に沿った形で、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について、継続的に開示を進めてまいります。
<ガバナンス>
気候変動は、グループ理念に基づいて経営を行ううえでの最重要課題の一つと認識し、担当役員を統括責任者としたグループ横断的なタスクフォースを組成、事業影響と財務的影響開示の視点から経営会議で審議し、その内容は取締役会で適切に監督しております。
<戦略>
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、国際エネルギー機関(IEA)や各種機関からの情報を基に、2℃未満シナリオ(脱炭素社会に向けた規制強化や技術革新が促され、気温上昇が持続可能な範囲で収まるシナリオ)と4℃シナリオ(温室効果ガス排出を削減する有効な対策が打ち出されず、気温上昇が継続し、異常気象や自然災害が増大するシナリオ)の2つのシナリオで、当社グループの事業上の機会やリスクを特定しております。
機会とリスクの開示
種類 |
シナリオ |
ビルディングオートメーション事業 |
アドバンスオートメーション事業 |
ライフオートメーション事業 |
機会 |
2℃未満 |
世の中のニーズにあわせた省エネルギー・省CO2ソリューションやサービスの需要拡大等 |
環境影響を軽減する新しい産業・プロセスに向けた、センサ・各種計測器、ソリューション等への需要が増加 |
IoT技術を活用したガスメータ活用によるSMaaS事業の拡大等 |
4℃ |
気象災害に適応した建物に向けた製品・サービス・ソリューションの需要の増加等 |
異常予知機能を具備した製品・サービス・ソリューションへの需要の増加等 |
気象災害に適応した製品・サービス・ソリューションへの需要の増加等 |
種類 |
シナリオ |
概要 |
移行 リスク |
2℃未満 |
・新たな規制にあわせた新製品やサービス開発のコスト増加 ・エネルギー価格上昇による製造・調達コストの増加 ・炭素税導入などコスト負担増に伴うお客様の従来型設備投資の減退 |
物理 リスク |
4℃ |
・異常気象による操業停止、製品・サービス・ソリューション提供の休止 ・異常気象による事業不安定化に伴う、お客様の投資の大幅な減少 |
気温上昇のシナリオに基づいた各事業の機会とリスクの双方を検討した結果、CO2削減に貢献する事業活動の機会がリスクを大きく上回ると認識しております。
当社グループでは、「自らの事業活動における環境負荷低減」を進めるとともに、それらの取組みを通じて得られる技術・ノウハウを活かし、計測と制御の技術を駆使してお客様の環境に関わる課題解決を支援することで「本業を通じた地球環境への貢献」を推進し、持続可能な社会の実現へと繋げてまいります。
<リスク管理>
当社グループは、経営に重大な影響を与える可能性のあるリスクについて、気候変動を含めて網羅的に洗い出しております。①部門責任者等で構成される「総合リスク管理部会」でリスクを抽出・分析したのち、②リスク管理担当役員が統括責任者を務める「総合リスク委員会」で「azbilグループ重要リスク」を特定し、取締役会にて審議・決定しております。特定されたリスクに関しては、経営会議等において対策を立案し、施策の実施状況については取締役会へ随時報告するなど、各種リスクの軽減に努めております。
<指標と目標>
持続可能な社会へ「直列」に繋がる事業活動により、当社グループのお客様、及び当社グループとサプライチェーン全体を視野に入れた指標と目標を掲げて、気候変動への取組みを推進しております。
・お客様の現場におけるCO2削減効果を2030年度に340万トンまで拡大することを目標としております。
・当社グループの事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)※4の排出量(スコープ1+2※5)を2050 年に実質ゼロにすることを目指す「2050年 温室効果ガス排出削減長期ビジョン」を策定し、カーボンニュートラルの実現を目指しております。この達成に向けた中間目標として、「2030年 温室効果ガス(GHG)排出削減目標」を定め、サプライチェーン全体での排出量削減に取り組んでおります。
<2030年 温室効果ガス(GHG)排出削減目標>
事業活動に伴うGHG排出量(スコープ1+2) 55%削減(2017年基準)
サプライチェーン全体のGHG排出量(スコープ3※5)を20%削減(2017年基準)
※4温室効果ガス(GHG=Greenhouse Gas):大気圏にあって、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、
温室効果をもたらす気体の総称
※5 スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3:事業者の活動に関連する他社の排出(スコープ1、スコープ2以外の間接排出)
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
azbilグループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、収益性と資本効率の向上を通して、2030年度をゴールとする長期目標※6として、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模、営業利益率15%程度、ROE13.5%程度を目指しております。また、この長期目標達成に向け、2024年度を最終年度とする4ヵ年の中期経営計画※6においては、最終年度の売上高3,000億円、営業利益360億円、営業利益率12%、ROE12%程度を達成することを目標としております。
※6 2021年5月14日、当社グループは長期目標、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。
(4)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業を通して持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実践することで、自らの中長期的な発展を確実なものとし、企業価値の持続的な向上を実現することで、ステークホルダーの皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。
このため、“技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ”、“地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」”、“体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す”の3つを基本方針に、事業収益力の強化及びグローバルな事業基盤の整備を進めつつ、これらを基にした事業成長施策を展開しております。
当社グループでは、中期経営計画におきましても、経営資源を有効かつ戦略的に配分し、前述の様々な取組みの加速・定着を図ってまいりますが、その具体的な内容は次のとおりです。
① 国内事業
3事業とも国内では成熟産業に位置しますが、それぞれが置かれている環境は事業毎に大きく異なります。
BA事業は、引き続き高水準で推移する首都圏での需要を着実に捉えるため、お客様・社員の安全に十分配慮し、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体にDX推進により、ジョブ遂行能力の強化と効率化を進めてまいります。またIoT、クラウド等の新しい技術活用も含めた商品力強化を推進することによりビジネスモデルの再構築も引き続き進めるとともに、拡大する省エネルギー・CO2削減等に関するソリューションへの関心へも対応してまいります。
具体的には、カーボンニュートラル※7実現に向け大きく貢献するため、新築・既設を問わずあらゆるビルにスムーズに導入できる空調制御分野におけるGX(グリーントランスフォーメーション)※8ソリューションを確立するため、NTTアーバンソリューションズ株式会社・株式会社NTTファシリティーズ・NTT都市開発株式会社・NTTコミュニケーションズ株式会社・ダイキン工業株式会社と、空調制御に関する協業を開始いたしました。
また、働き方改革や感染症対策等による居住空間の価値や要件の大きな変化に対応し、空間の質向上による付加価値提供を目指してまいります。ニューノーマル時代の働き方やオフィス利用の多様化に対応する新空調システム等を導入し、お客様にご提案、体感いただける事業所を国内にもオープンいたしました。
これらの取組みにより、お客様の事業展開にあわせて継続的な価値を提供・提案してまいります。
AA事業では、感染症拡大や部品調達難の製造業設備投資への影響は予断を許さないところではありますが、中長期的にはグローバルな経済成長の継続や更なる生産性の改善要求、生産現場での人手不足、設備老朽化対応等を背景に生産設備の自動化投資は引き続き拡大基調にあり、製造装置市場の回復を牽引役とする設備投資の回復継続など堅調な市場環境にあります。
多岐にわたる市場から、技術の潮流変化を捉え、今後の成長と付加価値提供が見込める領域を選択・創出・集中することにより成長を図るとともに、グローバルな共通事業モデルに経営資源を集中することにより競争力を強化いたします。これら成長戦略と収益力強化策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションにより着実に実行してまいります。具体的には国内外での顧客カバレッジ拡大のための営業DX導入を含めた営業体制強化、新たなお客様を継続的なリピート顧客にすることによる受注拡大、新しいオートメーションの創造に資する製品開発の加速等に取り組んでおります。また、各種プラントにおいてプラント安定稼働のため重要な役割を担うバルブの稼働データをクラウドで解析し、バルブの“健康診断結果”を可視化することで生産設備の安定化・保安力強化を実現する「Dx Valve Cloud Service」の運用技術の拡張、AIを活用したプラント設備の異常予兆検知システム「BiG EYESTM」に関して、火力発電設備を対象とした共同開発等に取り組むなど、適用範囲を拡げることで、お客様の事業展開にあわせた継続的な価値を提供・提案してまいります。
LA事業では、ライフライン分野にて水道・各種ガスメータのIoT対応を引き続き進めております。スマートメータで計測・計量し、クラウドで収集、様々なデータを掛け合わせ脱炭素等、企業の環境経営や生活品質の向上への新たな価値提供の検討等、SMaaS(Smart Metering as a Service)時代を見据えた新たなオートメーション領域への事業展開を進めております。また、戸建て住宅向け全館空調分野でも空気質にこだわった住環境の快適さを追求したソリューションを強化し、生活関連分野の収益改善を継続してまいります。
以上のような3つの事業軸への取組みと同時に、国内外で大きく変化していくことが見込まれるエネルギーマネジメント領域においては、東光高岳グループとともに、事業コンセプトである「DX-EGATM」のもとで、エネルギーデータ(電力:Electricity、ガス:Gas、水道:Aqua)等様々なデータを利用して、生活品質向上や企業の環境経営に新たな価値を提供してまいります。温室効果ガス排出量の算定や可視化に向けて、クラウドサービス上で様々な排出量削減施策や知見を提供する試みは、その好事例となります。
また、「新オートメーション事業領域」「環境・エネルギー事業領域」という成長領域の目標を定め、展開施策を強化・加速し、社会の脱炭素化への貢献、持続可能な社会への「直列」に繋がる貢献を明確に進めるために、2022年4月に全社組織として新たに「GX推進部」を設置し、GX(グリーントランスフォーメーション)を推進してまいります。
※7 カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること。
※8 GX(グリーントランスフォーメーション):カーボンニュートラルの実現に向けた経済社会システムの変革。
② 海外事業
海外市場におきましては、事業成長と収益拡大を支えるための更なる事業基盤強化策の一つとして、各国や地域の市場環境に対応し、付加価値の高い特長ある新製品・ソリューションの提案を継続的に強化し、グローバルでの事業拡大を目指します。東南アジア地域においては、シンガポールを拠点とする「東南アジア戦略企画推進室」により、同地域での横断的な事業推進・戦略企画・経営管理を加速させております。
BA事業では、海外市場でのシェア拡大に向け、次世代ビルディングオートメーションシステムを軸に、国内事業モデルでの強み(省エネルギーのアプリケーション、エンジニアリング・サービス力)を展開し、各国の事業環境・事業基盤に応じた施策を実施するとともに、ライフサイクル型ビジネスモデルの段階的な強化に努めております。また、海外向け統合型ビルディングマネジメントシステム(IBMS)※9に向けた新たなデジタルソリューションの開発をシンガポールで開始いたしました。
AA事業では、海外での戦略地域の人員増強や管理システムの導入等による営業体制強化や営業活動の質の改善を継続し対象顧客を拡大しております。また、主要製品のリニューアルや戦略製品の投入、新市場向けの拡張製品開発や異常予兆検知・AI設備診断等、新しいオートメーション領域の開拓を進めてまいります。
LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング領域で事業展開する欧州のアズビルテルスター有限会社において、製薬市場での製薬設備需要の増加を背景に、ワクチン等の医薬品製造関連ソリューションの提供を継続してまいります。
以上に加えて、azbilグループの海外子会社における経営管理面におきましても、リモート管理体制の強化に加えて、現地法人の評価体制を拡充するなど、引き続きグループ・ガバナンスを強化し、各社の堅確な体制構築を進めてまいります。
※9 IBMS(Intelligent Building Management System):大規模複合施設の各種設備管理システムを一括管理し、効率的で高品質な設備管理やエネルギー管理、テナント情報の管理等を実現するシステム。
③ 生産・開発
azbilグループの事業拡大に向けて、グループ生産体制を再編し、商品力強化に向けて開発リソースの集約・強化を進めてまいりました。国内では、生産機能の湘南工場への一拠点化を完了し、藤沢テクノセンターにおける技術開発機能との連携を強化したグループ内のマザー工場として機能整備を推進中です。また、藤沢テクノセンターにつきましてはクラウドやAIを活用した先進的なシステムソリューションやMEMS技術を活用した高機能・高性能デバイスの開発力を一層強化するための中核研究開発拠点として、センター内に新棟を建設、本年竣工いたしました。海外では、異常予兆検知や調節弁の診断サービス等、IoT・AI技術を活用した次世代インテリジェントサービス提供を目的に、タイにてSolution and Technology Centerが稼働中です。また、グローバルでの需要拡大に対応した生産能力拡大、生産工程の高度化と更なる自動化の推進を目的に、中国大連生産子会社に新工場棟を新設し、日本、タイ、中国を3極とした生産体制を強化しました。
なお、サプライチェーンや部品調達等の混乱が続き、世界的なインフレーションの影響も高まりつつあり、それらの影響の長期化の可能性もあると認識しております。生産のオペレーションを改善しながらBCP向けの部品在庫の活用、市場流通品の確保、代替部品への切り替えや設計変更等の対応を行い、サプライチェーン各社と連携して、生産の継続及び製品の納期への影響軽減のための取組みを継続してまいります。
④ 経営管理
グループ経営の推進とガバナンス体制の充実を図るとともに、リスク管理(品質・PL、防災・防疫・BCP、情報)、コンプライアンス(企業倫理・法令遵守)、人を重視した経営、地球環境への貢献及び社会貢献を重点取組み領域として、azbilグループを挙げてCSR経営の推進に継続して取り組んでおります。
経営管理面では、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用も視野に入れた会計水準の向上と、それに伴う内部統制の強化を進めてまいります。また、経営の公正性、中立性及び透明性を高めるべく、コーポレートガバナンス・コードへの対応を継続しながら、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資するよう、全てのステークホルダーの皆様との間で建設的な対話を進めるための体制整備を積極的に進めております。
サステナビリティに向けて、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対しても積極的に取組みを進めております。E(環境)に関しては、TCFDの国際的な枠組みに賛同表明し、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標について有価証券報告書等で開示するほか、自らの事業活動に伴う温室効果ガス排出量(スコープ1+2)に加えてサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(スコープ3)削減目標を設定し、その実現に取り組んでおります。S(社会)については、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」に係わる「国連グローバル・コンパクト」に署名し、中期経営計画において人的資本・知的財産への戦略的検討を行っております。コーポレート・ガバナンスについては前述のとおり2022年6月23日開催の第100期定時株主総会にて「指名委員会等設置会社」への移行をご承認いただきました。この他、実効的な統合リスク管理の構築を目的として、サステイナビリティ推進本部内に、「CSR・リスク管理部」を設置いたしました。
これらの取組みの結果、2021年度も年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が選定した4つのESG指数※10の構成銘柄に選定されております。また国際環境非営利団体であるCDP※11により、「気候変動」に対する取組みとその情報開示に関して世界的に優秀な企業として評価されAリスト(最高評価)に選定されました。
※10 ESG指数:FTSE Blossom Japan Index、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数、MSCI日本株女性活躍指数(WIN)、S&P/JPXカーボンエフィシェント指数。
※11 CDP:企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。2000年に英国に設立され、110兆米ドルを超える資産を保有する590強の投資家と協働し、資本市場と企業の調達活動を介して、企業に環境情報開示、温室効果ガス排出削減、水資源保護、森林保護を働きかけている。
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