文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「先端技術を先端で支える」を経営理念とし、最先端の技術開発を通して社会の発展に貢献していくことを使命(ミッション)としています。社会課題の解決に、今後ますます半導体の役割が増していくと考えられる中、進化する半導体バリューチェーンで顧客価値を追求してまいります。そのミッションの遂行に当たっては、すべての役員および従業員が「The Advantest Way」を理解し、あらゆるステークホルダーの尊重と持続可能な社会の実現を目指すと同時に、当社の持続的な発展と中長期的な企業価値の向上に努めます。
(2)経営戦略等
当社は、経営理念である「先端技術を先端で支える」を体現する会社であり続けるため、当社がどうありたいか、何をなすべきかを定めた中長期経営方針「グランドデザイン(10年)(2018年度~2027年度)」を2018年度に策定し、以後、この方針のもとで企業価値向上に取り組んでいます。
そして2021年度に、「第1期中期経営計画(2018~2020年度)」(略称:MTP1)が成功裡に終了したこと、またグランドデザイン策定から3年が経過したことから、業績進捗と最新の外部環境認識に沿った内容へグランドデザインを更新しました。同時に、グランドデザイン実現に向けた道筋をより確実なものとするべく「第2期中期経営計画(2021~2023年度)」(略称:MTP2)を策定し、一段の飛躍に向けた取り組みを開始しました。
MTP2の初年度となったこの2021年度は、当社が強みを持つスマートフォンやハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)関連で半導体テスト需要が良好に推移したこと、車載・産機・民生向けで顧客・製品戦略が奏功し売上が伸長したこと、グランドデザインの一環として強化中のシステムレベルテスト部門が順調に成長したことなどで、幸先の良いスタートを切ることができました。
一方で、2022年度の経営環境には、多くの対処すべき課題があると認識しています。中長期的に当社の事業機会の拡大が見込まれる中において、先駆的な製品開発など、グランドデザインに沿った成長施策や事業基盤の強化策を積極果敢に展開していきます。現時点ではウクライナ情勢による直接的な影響は小さいものと認識していますが、地政学的リスクのさらなる高まり、中国のゼロコロナ政策下でのロックダウン、物流混乱、インフレ進行など、マクロ経済や事業環境の先行き不確実性が高い中、優先課題である部材調達の早急な安定化をはじめとしたリスク対応力の強化にも努めます。
1.グランドデザイン(10年)〔2018年度~2027年度〕
<ビジョン・ステートメント>
「進化する半導体バリューチェーンで顧客価値を追求」
<中長期経営目標>
「売上高4,000億円の達成」
<戦略>
当社は、半導体の量産テスト用システムの開発・販売に加え、半導体量産工程の前後工程にある半導体設計・評価工程や製品・システムレベル試験工程といった近縁市場へ事業領域を広げることで、業容の拡大と企業価値向上を目指します。
上記の達成に向け、「コア・ビジネスの強化、重点投資」、「オペレーショナル・エクセレンスの追求」、「さらなる飛躍への価値探求」、「新事業領域の開拓」、「ESGのさらなる推進」の5つの戦略課題に取り組みます。
なお、グランドデザインでは当初、「売上高3,000~4,000億円」を目標としていましたが、デジタル革命の進展や市場シェア伸長などにより業績進捗が良好であったため、2021年度に長期経営目標を「売上高4,000億円の早期達成」へ修正しました。しかし半導体テスタ市場の旺盛な拡大が継続したことなどで、当初企図していた2027年度を待たず、2021年度をもってこれを早期達成しました。
今後は、このたびの売上高目標達成を弾みとしつつ、半導体需要の拡大などグランドデザインの前提とした環境変化が継続する中で各戦略を推し進め、さらなる企業価値向上を目指します。
2.第2期中期経営計画〔MTP2、2021年~2023年度〕の概要
<経営指標>
MTP2では、さらなる成長に向けた事業強化の取り組みを推進するとともに、成長投資と株主還元の双方を拡充し、企業価値向上を図ります。この考えに基づき、MTP2において重視する経営指標を売上高、営業利益率、当期利益、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)、基本的1株当たり当期利益(EPS)とし、これらの成長に努めます。なお計画の進捗を中長期視点で評価するため、経営指標には単年の業績変動の影響を軽減できる3カ年平均の指標を用います。
MTP2における各数値目標と初年度の進捗は、以下のとおりです。MTP2については、2021年度実績、2022年度見通しがそれぞれ目標値に対し上振れ傾向にあることから、今後財務モデルの見直しを行う予定です。
※下記指標の予想に用いた為替レートは、1米ドル=105円。2021年度の為替実績は1米ドル=112円。
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2021~2023年度(平均) |
2021年度実績 |
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売上高 |
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3,500~3,800億円 |
4,169億円 |
営業利益率 |
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23~25% |
27.5% |
当期利益 |
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620~700億円 |
873億円 |
親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE) |
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20%以上 |
30.4% |
基本的1株当たり当期利益(EPS) |
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320~370円 |
450円 |
<主な施策>
- 半導体・部品テストシステム事業部門
・新製品「V93000 EXA Scale」の強みを活かし、拡大するスマートフォン関連のSoC半導体やHPCデバイスの試験装置需要を取り込む
・2022年以降に本格拡大するミリ波関連テストにおけるリーダーポジションの確立
・DRAM半導体向け、不揮発性メモリ半導体向けでの強固なビジネス基盤を堅持
- メカトロニクス関連事業部門
・テスト品質向上につながるテストセル環境を提供し、販売機会を拡大
- サービス他部門
・システムレベルテスト(SLT)需要が高まる中、モバイル、HPC、メモリ/ストレージ向け等で顧客拡大。またSLT消耗品のリカーリングビジネスも拡大
・新規事業領域となるデータ・アナリティクス分野における最適なビジネスモデル探索を推進
<コスト・利益構造>
企業価値の向上を目指すにあたり、成長の源泉であるR&D投資についてはこれまでの高い水準を維持する方針です。並行して、業務効率向上の推進により、販管費効率と収益性の改善を図ります。
<資本政策、キャピタル・アロケーション、株主還元>
MTP2における資本政策としては、成長に向けた事業投資を優先しつつ、資本効率と資本コストに配慮したバランスシート管理の見地から負債(デット)も柔軟に活用します。さらに経営基盤の強化および持続的企業価値創造のために、財務健全性を維持した上で適正な資本構成を図る方針です。財務健全性については株主資本比率50%以上を、資本効率についてはROEを指標とします。
株主還元についてはMTP2期間における安定的な事業環境を前提として、1株当たり配当金半期50円・通期100円を最低額とする金額基準とします。通期総還元性向は50%以上を目途とし、配当や自己株式の取得を通じて株主還元を強化するとともに資本効率の向上を図ります。
(3)2022年度の経営環境および重点施策
今後の当社を取り巻く市場環境を展望しますと、MTP2で想定したように、半導体が扱うデータ処理量や通信量の増加に伴う半導体需要のさらなる拡大、半導体の高機能化、半導体に対する社会的な信頼性要求の高まりなどの要因のもと、半導体テスト需要の拡大が継続しています。またメタバースなどのデジタル革命を体現するアプリケーションへの期待やカーボンニュートラル対応を背景に、エネルギー効率改善を実現する技術の重要度も増しています。これらを総合すれば、短期的にも中長期的にも、半導体およびその関連市場の良好な環境が期待され、半導体試験装置市場においても2022年のさらなる成長を予想しています。
2022年度の通期連結業績予想については、これら市場見通しや各事業の今後の見通し、為替の状況などを踏まえ、売上高5,100億円、営業利益1,500億円、税引前利益1,500億円、当期利益1,125億円を予想しています。予想の前提とした為替レートは、米ドルが120円、ユーロが135円です。
新型コロナウイルス感染症の影響については、人的移動制限や物流逼迫などによる事業上の制約が継続していますが、当連結会計年度の業績に対する影響は軽微なものに留まったと認識しています。しかしながら、変異株拡大、半導体などの部材不足の長期化、ウクライナ情勢などの地政学的リスク、インフレの進行、気候変動リスクなど、世界経済や当社の事業環境の不確実性は依然高い状態にあります。目下の優先課題である部材調達の早急な安定化をはじめ、外部環境の変化に機動的に対応してまいります。
<2022年度重点施策>
・部材調達難の長期化に対し、製品安定供給のための施策を最優先
・最先端の半導体技術開発に取り組む顧客と協業し、高度な試験技術を開発
・一段の業容拡大に向け、中長期視点で人材・設備の増強を図ることで事業基盤を強化
・デジタル・トランスフォーメーションを当社の成長機会とするため、データ・アナリティクス分野の取り組みを強化
・半導体テスト工程に加えSLT需要も堅調に伸長。テスタ本体にとどまらず、消耗品などリカーリングビジネスも強化
・気候変動対応をはじめとし、ESGのさらなる推進を継続
・地政学的リスクの高まり、インフレ進行など事業環境における不確実性が高い中、環境の変化に機動的に対応
(4)気候変動への取り組みとTCFDへの対応状況
アドバンテストは、The Advantest Wayのもと、重要な社会課題である環境課題に事業を通して貢献してい
くため、長期的視点に立った気候変動の「緩和策」と「適応策」の取り組みを継続しています。
また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)に賛同し、気候変動による事業リスクと機会の分析と情報開示の取り組みを進めています。
<ガバナンス>
2020年度に経営企画本部長を統括リーダー兼戦略責任者とする「サステナブル経営推進ワーキンググループ」を新設しました。気候関連課題の特定と評価を行い、重点施策と目標を「ESG行動計画」にまとめ、活動を推進しています。「ESG行動計画」の達成状況は年2回、経営会議および取締役会に報告され、議論、評価されます。このワーキンググループは、コーポレート・ガバナンス体制における他の委員会等と適時適切に情報共有を行い、全社のリスク管理を行っています。
<戦略>
気候変動対策としての戦略は、IPCCおよびIEAのシナリオを参照し、事業経営における気候変動の物理的リスクと移行リスクで検討しています。2℃未満シナリオでは、カーボンプライシング導入など気候変動対策が強化され、事業に影響を与えるレベルの物理的な影響は生じないと仮定しています。脱炭素社会ではこれまで以上に半導体の必要性が高まることによるビジネス機会の拡張を予想しています。4℃シナリオでは、気候変動対策が強化されない一方、異常気象の激甚化といった気候変動の物理的な影響が生じると仮定した戦略としています。
<気候変動のリスクと機会>
TCFDの分類に沿って気候変動のリスクと機会を検討しています。それぞれのリスクと機会の「重要度」と「影響度」による評価を行い、「短期(2025年まで)・中期(2030年まで)」と「長期(2050年まで)」の3つの時間軸に分類しています。事業リスクについては、①主に2℃未満シナリオの途上に起こる「脱炭素社会への移行に関連したリスク」と、②世界のCO2排出量削減未達により4℃シナリオに至った場合に発生する「気候変動に伴う物理的影響に関連したリスク」の2つのシナリオに関して検討しています。
<目標と指標>
当社グループでは、The Advantest Wayの 基盤となるESG経営推進と持続可能な社会の実現に向け、「気候変動の緩和と脱炭素社会の実現」およびRE100(Renewable Energy 100%)を視野に入れた、気候変動対策の中長期目標(CO2排出量削減)を2020年4月に設定しました。国内拠点では2021年4月に群馬工場でRE100を達成しました。GHG排出量削減については、サプライチェーン全体での長期削減目標を策定しました。
・再生可能エネルギー導入推進(2030年までに70%以上)
・Scope 1+2のCO2排出量削減(2030年までに60%削減)
・Scope 3のCO2排出量削減(2030年までに50%削減)
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