文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、エレクトロニクス産業に限らず、ものづくりにおける要素技術を拡充し、高品質の製品を国際競争力のある価格で世界に送り出すグローバル企業を目指しております。
企業活動のあらゆる面で企業理念である「顧客に満足を」「地球にやさしさを」「社会に夢と活力を」に基づき、環境保全活動とグループガバナンスを積極的に推進するとともに、ステークホルダーの皆様にとって「成長する楽しみが持てる企業」であり続けることに努めております。
半導体用マテリアル製品をはじめとする新素材及び生産技術の開発に注力し、品質を第一に考えて顧客満足の向上を追求する旨の「品質理念」を掲げ、生産の自動化、デジタル化、標準化を進めております。世界での市場シェアを高め、安定的な収益体質の企業集団を形成することを経営の基本方針としております。
(2)経営戦略等
当社グループの属する主な市場は、エレクトロニクス産業でありますが、高度情報化の進展や新興国の経済発展に伴い、今後も市場規模の拡大が期待されます。同時に技術革新のスピードが早く、国際競争の激しい市場です。このような環境の中で当社グループが安定的に成長するためには、「顧客に満足を」を念頭に既存製品の拡充とともに新たな製品事業の育成を遂行する必要があります。
中期的な会社の経営戦略の具体的な項目は、以下の通りです。
① 半導体分野では、製造装置メーカーからの需要が強いマテリアル製品(石英・セラミックス・シリコンパーツ等)に関し、製造ラインの増設を進めてまいります。デバイスメーカーやFPDメーカーが保有する製造装置の部品洗浄サービスをさらに拡充してまいります。また、シリコンウエーハの再生サービスも開始いたします。
② パワー半導体分野では、ロボット、工作機械、家電製品などに使用されるIGBTパワー半導体用DCB基板の製造ラインの増設を進めてまいります。
③ バイオ・メディカル分野では、当社の熱電素子サーモモジュールを利用したDNA増幅装置(PCR検査装置)や血液分析装置、再生医療装置などへ拡販してまいります。遠隔医療機器に使用されているセラミックス製品は継続して提供してまいります。
④ 通信分野では、5G移動通信システムの通信機器、中継器、アンテナ内部の熱対策として熱電素子が採用されており、超高速・大容量化・多数端末接続などの運用による需要拡大を見込んでおります。
⑤ 自動車分野では、プラグインハイブリッド車や電動車向けのパワー半導体用AMB基板の販売や熱電素子を採用した温調シート、カップホルダーなど応用製品の用途開発に取り組んでまいります。磁性流体は、サスペンションやカー・オーディオスピーカー向けの採用を広げてまいります。
⑥ 受託製造分野は、半導体市場の需要に対応し、当社グループの真空技術と精密メタル加工を組合せ、各種半導体製造装置メーカーからの受託製造を拡充してまいります。
⑦ 業務提携やM&Aを視野に入れ、既存製品のシェア拡大のほか、新規事業への参入も重要と考えております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2022年3月期会計年度から2024年3月期会計年度までの3か年を対象期間とした「中期経営計画」を公表しており、事業成長とともに財務強化、品質強化、人材強化を基本方針として掲げております。本計画は、初年度に2年度目の計画を前倒し達成したことから、2022年5月に2年度目以降の目標数値等を修正した計画を改めて公表しております。
目標の達成状況を判断するための客観的な指標に関しては、本計画のKPI(Key Performance Indicator)として「売上高」、「営業利益」、「当期純利益」(*1)、「ROE(株主資本当期純利益率)」、「ROIC(投下資本利益率)」(*2)、「自己資本比率」の6指標を掲げており、達成度や進捗状況を外部公表しております。
*1 当期純利益=親会社株主に帰属する当期純利益
*2 ROIC =親会社株主に帰属する当期純利益/(有利子負債+純資産)、このうち純資産からは新株予約権、非支配株主持分を除く
(4)経営環境
当連結会計年度における世界経済状況は、米国経済は新型コロナのワクチン接種が進み感染者数が減少し、経済活動は雇用回復の動きを含め正常化に向かう一方、米連邦準備制度理事会が高インフレが続いているとの認識から政策金利を引き上げの方向に金融政策のかじを切りました。中国経済は、不動産業の苦境が見られたものの、新型コロナの感染も他地域と比較して抑制されたこともあり、2021年の経済状況は概ね良好に推移しました。一方、2022年に入ってからオミクロン株感染増に伴う経済への悪影響が出始めております。我が国では、2021年末までに新型コロナ感染者数が一旦減少したものの、2022年初からのオミクロン株感染者急増に伴い、3月までまん延防止措置がとられるなど社会、経済への影響が継続しております。
為替相場は、年初は緩やかに円安方向へ推移しておりましたが、米国利上げの方向性が示されて以降、円安の進行が早まりました。
当社グループの属するエレクトロニクス産業の半導体業界では、世界的なリモートワークの浸透に伴い企業や学校でのWEB会議システムが普及した結果、パソコンやデータセンター用サーバ、通信分野などの需要が増大し、半導体デバイスなど電子部品の需給バランスが崩れ品不足が続いております。加えて新型コロナの影響による人手不足や海運等の荷揚げ遅延によるサプライチェーンの混乱により、産業用機器、自動車、家電製品に至るまで電子部品を中心に部材の供給が滞る事態となりました。一方、大手デバイスメーカー各社は新たな製造拠点の投資計画を発表するなど設備投資需要は強く、保有する製造設備の稼働率も高水準な状況が続いております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題
対処すべき課題は、事業成長・利益成長の徹底的追求、成長投資の継続、財務強化の推進及び投資機会と財務状況の適切なバランス確保です。同時に、品質管理の強化、人材の強化、組織構造改革の推進を図っていくことが重要であると考えております。
当社グループは「顧客に満足を」を企業理念に掲げ、顧客要求仕様の高品質な製品を指定期間で納められる生産体制を実現したいと考えております。事業面では特に成長期待の高い分野での増産投資を積極的に進めてまいります。半導体等装置関連事業ではセラミックス、シリコンパーツ等のマテリアル製品の増産や金属加工能力の増強、装置部品洗浄サービスの拡充に努め、旺盛な顧客ニーズを取り込み、事業拡大を図ります。電子デバイス事業については、成長著しいパワー半導体用基板の増産対応を機動的に進めていくと同時に、サーモモジュールの製品供給を通信、家電、医療分野向けに拡充し景気に左右されにくい事業構造としていきます。また、新素材の開発、新製品の開発も重要と考えており、そのために業務提携やM&Aも検討・実施してまいります。
財務面では、積極的な成長投資を行いながら、投資機会と財務状況の適切なバランスを確保することが課題です。今後の設備投資及び運転資金等に必要な資金は、営業キャッシュフローから得られる資金のほか、デット調達(金融機関からの借入れ、社債の発行等)、エクイティ調達(中国子会社での第三者割当増資、IPO等)、投資先である中国市政府からの補助金など資金調達の多様化を図るとともに、財務状況の適切なバランスを確保してまいります。
品質管理面では、標準化、見える化、デジタル化、自動化を柱として、品質を重視した「ものづくり力」を強化し、品質向上、コストダウン、納期遵守、高生産性を実現することで顧客満足とブランド力向上を図っていきます。また、品質監査による実施状況のモニタリングとフィードバックを通じて適切な改善を図ります。
組織・人事面では、子会社を含めた組織改革の推進に加え、事業成長を支える優秀な人材確保や積極的な登用、人材育成が急務となっており、重要な課題として認識しております。
また、当社グループでは、業務の適正を確保する体制整備に努め、J-SOXに対応した内部統制システムの運営をグループ各社で実施しております。前連結会計年度において開示すべき重要な不備があり、当社グループの財務報告に係る内部統制は有効でない旨開示しておりましたが、当連結会計年度において是正いたしました。今後とも、適正な財務諸表の作成を保証する体制の強化を目指し、適切な運営の実施と監査を継続的に行ってまいります。
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