(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大による停滞状況から、各国でワクチン接種が進展したことにより、先進国を中心に経済活動の正常化が進み、企業活動も回復傾向が続きました。しかしながら、新たな変異株による新型コロナウイルス感染症の再拡大、世界的な半導体等の入手難に加え、ロシアのウクライナ侵攻の影響による資源・エネルギー価格の高騰など、世界経済の先行きは不透明な状況にあります。
エレクトロニクス業界におきましては、経済活動の正常化に向け、今後の生産増加に備えた在庫積み増しのための需要増加が継続しました。また、世界的な半導体需要の高まりから、半導体製造・増産を目的とした設備投資が進んでおりますが、依然として半導体等部品材料の入手難が継続しております。さらに中国における新型コロナウイルス感染症再拡大に伴う都市封鎖によるサプライチェーンの混乱もあり、各社の生産計画に影響が出ております。
このような情勢の中で当社グループは、新型コロナウイルス感染症の影響によるお客様への訪問営業の制限が徐々に緩和されつつある中、電話・メール・ウェブを中心とした拡販活動に注力してまいりました。
新製品につきましては、ピーク電力に対応した自然空冷大容量タイプAC-DC電源「AEA600F/1000F」、小型基板単体シングル出力AC-DC電源「LHP150F/300F」及び「LHA10F/15F」並びに小型高絶縁DC-DCコンバータ「MHFS6/MHFW6」及び三相交流入力用ノイズフィルタ「TSD600」を市場投入しております。また、海外市場向けには医用電気機器規格に対応した、ユニット型AC-DC電源「PJMA300F」を市場投入いたしました。
また、生産面においては、前期から継続して新型コロナウイルスの感染予防に努めるとともに、需要急増への対応として、部品材料の安定調達に注力してまいりましたが、一部の部品材料において入手難が継続しており、当社グループの生産活動に影響が生じております。
この結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、受注高は571億66百万円(前年同期比103.2%増)、売上高は280億77百万円(同3.9%増)となりました。利益面におきましては、売上高の増加、人件費や経費の節減効果および為替による影響等があったものの、部品材料の値上げによる材料費率の上昇により、経常利益は29億82百万円(同13.1%減)となりました。その一方で、前連結会計年度においては多額の減損損失を計上しており、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益については18億95百万円(同75.9%増)となりました。なお、第1四半期会計期間より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用したことにより、当連結会計年度において、売上高及び売上原価がそれぞれ65百万円増加しております。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本生産販売事業
日本国内では、FA関連、半導体製造装置関連、医療機器関連需要が堅調に推移する中、部品材料の入手難による当社製品のリードタイム長期化に伴い、先々を見込んだ手配需要の大幅な増加が継続しております。
営業活動につきましては、当社が重視する訪問面談が新型コロナウイルス感染症拡大による制限から徐々に緩和されつつある中、販売店との情報共有強化を図り、お客様とのウェブ面談やメールを中心とした活動に取り組んでまいりました。
この結果、外部顧客への売上高は、177億83百万円(前年同期比3.8%増)、セグメント利益は23億98百万円(同18.4%減)となりました。
② 北米販売事業
米国では、新型コロナウイルス感染症拡大による停滞から回復し、半導体装置関連で堅調に推移しているものの、部品材料の入手難に対する懸念から、先行手配に伴う需要増加が継続しております。一方で、当社グループにおいても部品材料の入手難等の影響があり、北米販売事業の売上については低調に推移しました。
営業活動につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による制限が緩和される中、ウェブやメールを中心にファクトリーレップとの連携を図りつつ、拡販活動に注力してまいりました。新製品につきましては、動画を用いてプロモーション強化に取り組んでまいりました。
この結果、外部顧客への売上高は、20億43百万円(前年同期比0.5%減)、セグメント利益は1億70百万円(同20.0%減)となりました。
③ ヨーロッパ生産販売事業
ヨーロッパでは、新型コロナウイルス感染症再拡大の影響から回復し、需要が増加傾向にあります。当社グループにおいても部品材料の入手難等の影響がありましたが、ヨーロッパ生産販売事業の売上においては、下半期からPRBX製品の売上が回復したことで、好調に推移しました。
営業活動につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による行動制限が徐々に緩和されつつありますが、テレワーク中心の拡販活動に注力してまいりました。
この結果、外部顧客への売上高は、55億58百万円(前年同期比13.2%増)、セグメント損失は6百万円(前年同期はセグメント損失4億65百万円)となりました。
④ アジア販売事業
アジアでは、FA関連、半導体製造装置関連、医療機器関連の需要が好調に推移し、日本地域同様先々を見込んだ手配需要の大幅な増加が継続しております。一方で、当社グループにおいても部品材料の入手難等の影響があり、アジア販売事業の売上については低調に推移しました。
営業活動につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、電話・メール・ウェブを使った拡販活動が中心になっており、特に新規開拓のためのウェブマーケティングに注力しております。
この結果、外部顧客への売上高は、26億91百万円(前年同期比7.8%減)、セグメント利益は1億29百万円(同14.7%減)となりました。
⑤ 中国生産事業
中国生産事業におきましては、先行手配による需要増加が継続しております。これに対応すべく、生産能力の増強を進めており、新製品においてはLHA10F/15Fの生産・出荷を開始いたしました。一方で、部品材料の入手難や価格高騰、新型コロナウイルス感染症再拡大による中国での都市封鎖の影響等により、生産活動の一部に影響が生じております。
この結果、セグメント間の内部売上高は、17億66百万円(前年同期比27.3%増)、セグメント利益は83百万円(同40.2%減)となりました。
財政状況につきましては、当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金、売上債権、棚卸資産、有形固定資産、投資有価証券が増加した一方で、有価証券、無形固定資産、繰延税金資産が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ12億15百万円増加し、457億22百万円となりました。負債の部では、買掛金、リース債務が増加した一方で、未払法人税等が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ3億69百万円減少し、47億82百万円となりました。純資産の部では、利益剰余金、その他有価証券評価差額金及び為替換算調整勘定の増加、自己株式の取得等により、前連結会計年度末に比べ15億85百万円増加し、409億39百万円となりました。この結果、自己資本比率は89.4%(前連結会計年度末は88.3%)となりました。
2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ18百万円減少し、129億44百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、10億21百万円(前年同期は24億36百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益29億42百万円に加え、減価償却費12億36百万円を計上した一方で、売上債権の増加額5億12百万円、棚卸資産の増加額28億82百万円、法人税等の支払額17億90百万円があったこと等を反映したものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、19億33百万円(前年同期比29.2%減)となりました。これは主に、投資有価証券の償還による収入53億円があった一方で、投資有価証券の取得による支出19億1百万円、有形固定資産の取得による支出8億75百万円、定期預金の預入による支出5億76百万円があったこと等を反映したものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、13億48百万円(前年同期比65.2%増)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出6億72百万円、配当金の支払額6億84百万円があったこと等を反映したものであります。
3)生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度の生産実績、受注実績及び販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
a.生産実績
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年5月21日 至 2022年5月20日) |
前年同期比(%) |
日本生産販売事業(千円) |
21,194,088 |
98.0 |
北米販売事業(千円) |
- |
- |
ヨーロッパ生産販売事業(千円) |
4,491,819 |
120.3 |
アジア販売事業(千円) |
- |
- |
中国生産事業(千円) |
1,884,781 |
108.5 |
合計(千円) |
27,570,689 |
101.7 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額は販売価額によっております。
b.受注実績
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比 (%) |
受注残高(千円) |
前年同期比 (%) |
日本生産販売事業 |
38,480,110 |
221.5 |
25,290,257 |
558.6 |
北米販売事業 |
4,465,952 |
221.3 |
2,914,275 |
592.3 |
ヨーロッパ生産販売事業 |
8,210,272 |
137.9 |
6,538,948 |
168.2 |
アジア販売事業 |
6,010,224 |
215.2 |
3,869,648 |
702.3 |
中国生産事業 |
- |
- |
- |
- |
合計 |
57,166,560 |
203.2 |
38,613,129 |
408.3 |
(注)金額は販売価額によっております。
c.販売実績
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年5月21日 至 2022年5月20日) |
前年同期比(%) |
日本生産販売事業(千円) |
17,783,254 |
103.8 |
北米販売事業(千円) |
2,043,705 |
99.5 |
ヨーロッパ生産販売事業(千円) |
5,558,491 |
113.2 |
アジア販売事業(千円) |
2,691,601 |
92.2 |
中国生産事業(千円) |
- |
- |
合計(千円) |
28,077,053 |
103.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年5月21日 至 2021年5月20日) |
当連結会計年度 (自 2021年5月21日 至 2022年5月20日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
㈱リョーサン |
4,753,134 |
17.6 |
5,154,715 |
18.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成に当たりましては、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。そのため、これらの見積りについては過去の実績や状況に応じ、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りに不確実性があるため異なる場合があります。特に次の重要な会計方針が、連結財務諸表の作成において使用される判断と見積りに重要な影響を及ぼすと考えております。
なお、会計上の見積りに対する新型コロナウイルス感染症の影響は、翌連結会計年度以降の業績に対する影響は限定的であるとの仮定に基づき、当連結会計年度において会計上の見積りを行っており、その結果、当連結会計年度における連結財務諸表に及ぼす影響は軽微であると判断しております。
① のれん等無形固定資産の減損処理
当社グループは、減損会計の対象となるのれん、技術資産及び顧客関連資産を有しております。今後、市場の動向や業績の状況に基づき見積られた将来キャッシュ・フローの総額の見積りが、帳簿価額を下回った場合に、減損損失の計上が必要になる可能性があります。
② 有価証券の減損処理
当社グループは、金融機関や販売又は仕入先の株式等を保有しております。これらの株式等は株式市場等の価格変動や投資先の業績悪化等による実質価額変動のリスクを負っており、投資価値が50%以上下落した場合、投資の減損を計上しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が生じた場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
③ 繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積り、繰延税金資産の回収可能性を評価しております。その見積りにより全部又は一部が回収できないと判断した場合には繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
④ 退職給付費用
当社の従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期収益率などが含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、翌期において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
期待運用収益率と実際の結果が異なる場合、又は予定利率等前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
売上高:280億77百万円(前期比3.9%増)、経常利益:29億82百万円(同13.1%減)、売上高経常利益率は10.6%(前期:12.7%、2.1ポイント低下)、親会社株主に帰属する当期純利益は18億95百万円(同75.9%増)となりました。
① セグメント別業績
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② 売上原価、売上総利益
前連結会計年度に比べ材料費等の変動費比率が2.3ポイント上昇したことで、売上原価率が2.4ポイント上昇しました。その結果、売上総利益率は28.3%(前期30.7%)となりました。
③ 販売費及び一般管理費、営業利益
前連結会計年度末に比べ、減価償却費が43百万円、研究開発費が59百万円、支払手数料が30百万円増加した一方で、人件費が1億27百万円、のれん等の償却が1億52百万円減少したことにより、販売費及び一般管理費は1億31百万円減少しました。この結果、売上高営業利益率は10.0%(前期11.2%)となりました。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループでは、生産活動に必要となる運転資金、販売費及び一般管理費等の営業活動費用、研究開発費によるものの他、投資活動において、生産設備の増強、新製品開発等を目的とした設備投資を適宜行う予定としております。
これらの資金に対しましては、自己資本比率が89.4%と十分な資本を維持しているため、自己資金にて充当する方針であります。今後も安定した収益基盤を確立し、一層の利益追求に取り組んでまいります。
3)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、長期的財務目標として、連結ROE、連結ROAが安定的に二桁を維持できる経営体質を目指しており、第9次中期経営計画において、最終年度である2022年度の数値目標値「連結売上高300億円、連結営業利益45億円」を掲げ、連結ROE 8.0%以上、連結ROA 11.0%以上を目指し、持続的成長と企業価値向上を実現すべく経営体質の改善に取り組んでまいります。
お知らせ