文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、『品質至上を核に社会の信頼に応える』を経営理念として掲げ、直流安定化電源装置の開発・製造・販売を通じて、今後益々発展、高度化するエレクトロニクス社会に積極的に貢献していく企業でありたいと考えております。 現在、私たちを取り巻く事業・社会環境は、グローバル化の進展とビジネス構造の大きな変化、技術革新に伴う競争の激化、デジタル化の進展・普及などにより、大きな転換点を迎えています。こうした環境変化をチャンスと捉え、お客様の多様化するニーズへの対応による価値提供を通じて、豊かで持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えております。 そのために、社会的責任を果たすための企業経営の基本であるコーポレートガバナンスを継続的に改善・整備し活動してまいります。 |
当社の経営理念「核の概念図」 |
また、ビジョンとして“顧客起点のニーズを捉え、高付加価値製品とサービスの早期実現を図る”を掲げ、「持続的成長に向けた事業改革・改善」、「新しい価値を創造するための技術革新へのチャレンジ」、「一人ひとりの成長・組織の進化」など、全社一丸となって経営基盤の強化を図り、競争優位性の高いビジネスモデルを構築し、持続的成長の実現を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、経営指標として、連結ROE(自己資本利益率)、連結ROA(総資産利益率)が安定的に二桁を維持でき、長期的な指標としては連結売上高経常利益率 20%を安定的に維持できる経営体質を目指しております。
(3)第9次中期経営計画の進捗状況と課題
第9次中期経営計画における2021年度の目標・客観的指標とその達成状況は次のとおりであります。
項目 |
第8次 (最終年度) 2019年度実績 |
第9次中期経営計画 |
|||
2020年度 |
2021年度(当年度) |
2022年度 |
|||
実績 |
計画 |
実績 |
計画 |
||
連結売上高(百万円) |
23,865 |
27,020 |
28,000 |
28,077 |
30,000 |
連結営業利益(百万円) |
1,668 |
3,020 |
3,360 |
2,811 |
4,500 |
連結営業利益率(%) |
7.0 |
11.2 |
12.0 |
10.0 |
15.0 |
連結ROE(%) |
0.7 |
2.8 |
6.0以上 |
4.7 |
8.0以上 |
連結ROA(%) |
3.8 |
7.9 |
10.0以上 |
6.6 |
11.0以上 |
2021年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大による停滞状況から経済活動の正常化が進み、企業活動の回復基調により、今後の生産増加に備えた需要増加が継続し、売上高は目標を上回ることができました。一方で利益面では、世界的な半導体需要の高まり等による部品材料の入手難や、原油高及び物価上昇に伴う部品材料価格の高騰により、営業利益は目標を下回りました。この経営成績の結果、連結ROE及び連結ROAにつきましても、目標を下回る結果となりました。
第9次中期経営計画における2021年度の取り組みと問題・課題は、次のとおりであります。
主要課題 |
取り組み |
問題・課題 |
新しい付加価値製品・ サービスの創出 |
・重点業界向け新製品拡充 ・新製品を含む注力製品の受注増 ・デジタル化を活用した拡販プロセス強化(新規案件の獲得) ・顧客ニーズ把握~企画・開発~拡販 |
・新製品の売上増加 ・成長分野向け高付加価値製品の投入と 市場・ユーザー開拓 ・脱炭素ニーズに応える新製品研究・開発 |
グローバルで競争力あるものづくり体質の創造 |
・自働化の推進による生産効率UP ・重要モデルラインの生産性向上 ・IoT活用による生産情報見える化 |
・生産性向上活動のグループへの展開 ・受注変動に対応できる生産管理統合システムの構築 ・重要モデルの生産性向上活動の継続推進 |
利益体質の確立 |
・高付加価値新製品リリース ・VA/CD推進 (注) ・物流コスト低減 |
・材料費・人件費高騰により、値上げ要求増加 ・VA/CDにつながるサプライチェーンの見直し (注) |
(注)VA:価値分析(Value Analysisの略)、CD:コストダウン
(4)今後の経営環境
新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種や治療薬の開発が進展しているものの、収束時期は依然として不透明な状況となっております。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻等の地政学リスクの高まりなど国際政治情勢の混迷が強まる中、資源・エネルギー価格の高騰などがグローバル経済に波及し、予断を許さない状況が続くものと思われます。
そのような中、当社グループが属するエレクトロニクス業界を取り巻く環境としては、IoT、AI、5G分野の広がりによって、半導体製造装置を中心にFA関連機器、通信機器関連等の需要が堅調に推移すると想定しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
2021年度においては、新型コロナウイルス感染症の拡大による停滞状況からの経済活動の正常化に加え、半導体需要の高まりから当社グループの製品需要が増加した一方で、部品材料調達難が生産活動に支障をきたし、受注残高は前年同期比408.3%と大幅に増加いたしました。
このような経営環境・市場動向の変化への対応も踏まえ、当社グループにおける課題は、部品材料の調達難への対応と生産能力向上により、お客様への製品供給遅延を早期に解決することと捉えております。また、成長性や収益性を高める経営基盤を構築し、競争優位性の高いビジネスモデルに変革していくことが重要と考えており、世界各地域の戦略の実行、そのための新製品開発、利益創出活動、そして、地球温暖化防止のための脱炭素化の取り組みにも重点をおき取り組んでまいります。
(6)持続可能な社会の実現への貢献(ESG推進)
サステナビリティ基本方針
私たちは、経営理念「品質至上を核に社会の信頼に応える」のもと、『エネルギー変換技術を駆使し、技術革新とものづくりで、新たな価値を創り、社会の発展に貢献する』ことで、事業の成長を図るとともに、ステークホルダーとの強い信頼関係を構築し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
そのために、外部環境変化に柔軟に対応すべく、重要な課題に果敢に取り組んでまいります。また、多様な人財の能力を引き出し、活かす組織・風土づくりを推進し、コーポレートガバナンスの一層の充実を図ってまいります。
「ESG行動計画」
“持続可能な社会の実現”に貢献すべく、「ESG」視点で注力すべき重要課題を捉え、具体的な取り組み内容・目標を設定し、実行しております。
「ESG行動計画」 |
|||
ESG 区分 |
ESG重要課題 |
取り組み課題と目標 |
関連する SDGsゴール |
E |
① 気候変動リスク低減 |
■気候変動リスク抽出/分析、TCFDに基づく情報開示 ■脱炭素化の推進(対象:Scope 1,2,3) ・CO2排出量削減 2021年度目標 2,326 t-CO2 以下 2021年度実績 2,928 t-CO2 (参考:2020年度実績 2,448 t-CO2) ・埋立処分廃棄物の削減(ゼロエミッションの実現) 2021年度目標 7.83 kg 以下 2021年度実績 6.95 kg (参考:2020年度実績 11.18㎏) |
|
S |
① 人財の多様性・能力を活かす組織・風土 経営戦略と人事戦略(人財の採用、育成)の連動 ② 従業員エンゲージメント向上 企業理念や企業の存在価値、企業文化などの浸透・定着 |
・多様な人財採用に向けた採用方法検討 ・新人事制度構築、移行 ・一人ひとりの成長機会の充実 階層別:戦略、論理的思考教育「COSEL Business College」 ・企業文化、価値観「COSELMind」の浸透活動 ・育児、介護環境を考慮した働きやすい環境づくり |
|
G |
① コーポレート・ガバナンス体制強化 |
経営における意思決定の透明性向上 ・指名・報酬委員会の設置 ・執行役員制の導入 ・監査等委員会設置会社への移行 ・社外取締役への情報提供強化 取締役会の実効性強化 |
|
1) E:環境(Environment)
① 気候変動リスク低減
当社は、2019年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同し、そのTCFD提言に従い、プロジェクトを設立しシナリオ分析を実施しました。TCFD提言に基づく4つの中核要素と当社の取り組みを次に示します。
ガバナンス:
当社は、「気候変動に係わるリスクと機会」を経営会議・取締役会での議論を経て、気候変動への対応を重要な経営課題として位置づけました。
この経営課題について、有効に管理を行うためのリスクマネージメント体制を構築し、中長期の環境取り組み計画について、社内組織の下、管理・監督を行ってまいります。
戦略:
TCFD提言が推奨する定義を踏まえ、短中長期軸で気候変動に伴うリスクを抽出しております。そのリスクを「調達リスク」、「生産リスク」、「市場・技術リスク」に分類し、事業への影響度が大きいものに対して戦略・対応策を策定しております。また、「需要増」や「コスト低減」につながる機会につきましても分析しております。
リスク管理:
RC(リスクコンプライアンス)委員会主導で、リスクを所管する各部門と協議の上、全社的なリスクの洗い出しを行っております。選定されたリスクについて、事業への影響度と顕在化時期により、影響評価を行い特定された重要リスクに対する対応方針を決定しております。
CO2排出量低減に関する取り組みは、環境委員会が戦略と実行計画を策定し、低減活動を推進しております。その取り組みについて、定期的に取締役会で監督、評価を行っております。
指標と目標:
2030年度目標として「CO2排出量 2020年度比50%以上削減」を掲げ、活動しております。また、モニタリング指標としては「使用電力量」、「化石燃料使用量」を設定しております。
なお、上記取り組み概要に関しては、「TCFDの提言に基づく情報開示」として、当社ホームページにも掲載しております。
(脱炭素社会に向けた取り組み)
2050年カーボンニュートラル(=脱炭素)の実現に向けた、気候変動対策・再エネ・省エネ等の取組みが世界中の企業に求められている中、当社においても脱炭素社会に向けての取り組みを開始しております。
2030年度目標 CO2排出量 50%以上削減(BMを2020年度比)を設定し、
Ⅰ:脱炭素化実現に向けた顧客ニーズに応える製品・サービスの提供と新技術開発
Ⅱ:脱炭素化に向けた省エネ化・再エネ化の推進
これらを取り組み方針とし、小型、高効率、高信頼性の製品開発/そのための新技術開発の強化により、市場におけるCO2排出量低減を推進しております。また、自社のものづくりを中心とする事業活動(Scope1,2)におけるCO2排出量を削減すべく、電力を中心とするエネルギー使用量の低減(省エネ)、太陽光発電設備の増設等による再生エネルギーの活用(創エネ)、CO2フリー電力の導入(再エネ)など、脱炭素化に向けた取り組みを全社一丸となって取り組んでおります。
引き続き、目標達成に向け、全社でⅠ・Ⅱの活動を計画的に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
2) S:社会(Social)
① 人財の多様性・能力を活かす組織・風土
目まぐるしく変化する社会・企業環境において、社会やお客様が必要とする新たな価値を創造し、持続的
成長を実現していくためには、多様性のある人財や個々人の持つ能力を発掘・活かしていくことが重要であ
ると考えております。そして、この実現に向けた重要課題・ポイントとして、「経営戦略と人事戦略(人財の採用、育成)の連動」、「企業理念や企業の存在価値、企業文化などの浸透・定着」を認識し、次の活動を推進しております。
(新規・中途も含め、採用の多様化)
・国内からの採用に拘らず、外国人社員の採用
・女性経営職(課長職以上)の登用
(新人事制度への移行(2022.5.21~))
・職務能力を基軸とする現行制度から職掌別役割を基軸とする新制度への移行
・年齢(経験)、性別に関係なく、役割行動の発揮度に応じた評価・処遇
今後も、多様性ある採用・登用や新人事制度の運用を通して、一人ひとりの成長につなげていくこと、そして、ジェンダー間の公正処遇を実現していくとともに、女性経営職の登用促進等を推進してまいります。
(人財育成・教育内容の見直し:職種や職位ごとの教育/必要な技術・技能の習得など)
事業環境が急速に変化し、価値観も多様化する中、経営基盤の強化や持続的成長・企業価値向上のための戦略の推進には、一人ひとりの成長・働きがいがその原動力になると考えています。 当社グループは、「次世代リーダーの育成につながる階層別教育」、「業務推進のための知識・スキル向上」、「プロを目指す技術・技能の向上(専門性の向上)」など、人財育成体制の充実に取り組んでおります。 今後も引き続き、一人ひとりの能力を引き出し、活躍できる領域を広げ、働きがいにつながるよう基盤構築を推進してまいります。 |
|
(グループ共通の価値観の浸透に関する考え方)
コーセルグループ全員が、大事にすべき企業文化や価値観を共有するということは、戦略の実行、目的・目標の実現のためには、重要な要素であり、経営そのものであると認識しております。
創業以来、当社に脈々と受け継がれてきた大事にすべき文化と価値観を示した「COSELMind」をまとめ、全社共通の文化・価値観の浸透に取り組んでまいりました。
全社一丸となり、第9次中期経営計画の目標を達成すべく、「COSELMind」のさらなる浸透と充実を継続してまいります。
② 従業員エンゲージメント向上
企業が持続的成長に向けて取り組むうえで、ステークホルダーである従業員自身が、誇りとやりがいを持って、生き生きと働ける環境を創り出すことが重要だと考えております。
当社は、これまで、育児・介護制度の見直しなど、働きやすい環境の整備について継続的に取り組んでおります。また、従業員に対しエンゲージメント調査を行い、継続的に改善を図っております。その結果を活かし、引き続きワークエンゲージメントを高めるための議論を進め、働きやすい環境づくりと従業員一人ひとりが誇りとやりがいを持って、生き生きと働ける職場、機会の創出に努めてまいります。
3) G:企業統治(Governance)
① コーポレート・ガバナンス体制強化
(経営における意思決定の透明性向上)
当社は、コーポレート・ガバナンスに関して、経営の重要な課題と位置づけ、様々なステークホルダーの期待と信頼に応えうる企業を目指して、経営効率の向上を図るとともに、経営における意思決定の迅速化、透明性向上に努めております。
ガバナンス体制の大きな変化点として、経営における意思決定の透明性を図り、また、多様性をもった経営・業務執行を行うため、2021年6月に「指名・報酬委員会」を設置したことに加え、2021年8月には執行役員制度を導入いたしました。さらに、監査・監督機能の充実を図るべく、2022年8月に「監査等委員会設置会社」へ移行いたしました。
お知らせ