(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの世界的な感染再拡大の動きに影響を受けつつも、先進国を中心にワクチン接種が普及し、経済活動の再開が進んだ結果、全体としては景気持ち直しの動きが継続しました。一方で、世界的な半導体等の部材不足、原材料価格の上昇及びサプライチェーンの混乱の影響に加え、ロシア・ウクライナ情勢、またその影響等によりエネルギー・原材料価格がさらに上昇するなど、引き続き先行き不透明な状況が続いています。
このような経済環境のもと、当社グループの事業環境について概観いたしますと、映像関連市場において、世界全般で映画館の営業再開や稼働の改善が進みました。また、半導体・電子デバイス・プリント基板市場においては、5Gの実用化やIoT・AIの活用進展により需要が好調であったほか、フラットパネルディスプレイ市場ではモバイルやモニター向けなど液晶パネルの生産稼働が高水準で推移しました。
その結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産は、3,210億9千6百万円となり、前連結会計年度末に比べ308億2千万円増加いたしました。主な増加要因は、業績の回復及び債権回収による現金及び預金の増加、光学装置等の受注増加による棚卸資産の増加であります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、858億9千3百万円となり、前連結会計年度末に比べ67億9千8百万円増加いたしました。主な増加要因は、仕入高増加に伴う支払手形及び買掛金の増加、業績回復に伴う未払法人税等の増加及び保有投資有価証券の含み益の増加による繰延税金負債の増加であります。一方、主な減少要因は、外部借入の返済に伴う短期借入金の減少であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、2,352億2百万円となり、前連結会計年度末に比べ240億2千2百万円増加いたしました。主な増加要因は、当連結会計年度末にかけて円安が進行したことによる為替換算調整勘定の増加及び親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加であります。一方、主な減少要因は、配当支払による利益剰余金の減少であります。
b. 経営成績
当連結会計年度は、売上高は1,488億2千1百万円(前年同期比25.5%増)、営業利益は130億6千8百万円(前年同期は営業利益7億6千4百万円)、経常利益は151億9千5百万円(前年同期比346.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は126億6百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失6億8千7百万円)となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりであります。
(光源事業)
[放電ランプ]
露光用UVランプについては、半導体・電子デバイス向けで、5Gの実用化やIoT・AIでの活用進展などを背景に販売が好調に推移しました。また、フラットパネルディスプレイ向けは、モバイルやモニター向けなどの液晶パネル需要が堅調で、生産設備の稼働が高水準で推移したことから、販売が増加しました。加えて、液晶パネルの製造工程で使用される当社製光学装置の稼働が高水準で推移したことから、関連する光学機器用ランプの販売が増加しました。シネマプロジェクター用クセノンランプについては、映画館の営業再開や稼働の回復が進んだことから、販売が増加しました。その結果、放電ランプは、前年同期比で増収となりました。
[ハロゲンランプ]
OA用ハロゲンランプについては、OA機器の需要は回復傾向にあるものの、セットメーカーにおける部材不足問題等の影響を受け、販売は前年同期比で同水準となりました。また、半導体市場活況の動きに伴い、半導体製造工程で使用される熱処理用ランプの販売が増加しました。その結果、ハロゲンランプは、前年同期比で増収となりました。
以上の結果、光源事業の売上高は578億2千万円(前年同期比26.2%増)、セグメント利益は82億8千8百万円(前年同期比156.4%増)を計上いたしました。
(光学装置事業)
半導体・電子デバイス・プリント基板市場においては、5Gの実用化やIoT・AI進展に伴うデータセンター向けサーバー需要の高まりなどを背景に、最先端ICパッケージ基板やプリント基板の需要増加及び技術進化に関わる最先端ICパッケージ基板向け分割投影露光装置及びプリント基板向け直描式露光装置の販売が増加しました。また、半導体露光プロセスにおいて最先端のEUVリソグラフィを用いた半導体製造工程の導入が拡大したことから、EUVリソグラフィマスク検査用EUV光源の販売が増加しました。フラットパネルディスプレイ市場においては、液晶パネル向けの投資が継続し、関連する製造装置の販売が増加しました。
以上の結果、光学装置事業の売上高は484億1千万円(前年同期比24.0%増)、セグメント利益は46億2千万円(前年同期比446.2%増)を計上いたしました。
(映像装置事業)
シネマ分野では、前期に全世界の多くの映画館が休止したものの、中国や欧米を中心に経済活動再開とともに、映画館の営業再開や稼働の回復が進み、設備投資需要も回復傾向にあることから、シネマプロジェクターの販売が増加しました。また、一般映像分野においても、商業施設やアミューズメントパーク、イベント等の再開の動きなどから需要回復が進み、一般映像関連製品の販売が増加しました。
以上の結果、映像装置事業の売上高は391億8千万円(前年同期比26.1%増)、セグメント損失は5千3百万円(前年同期はセグメント損失34億9千1百万円)を計上いたしました。
(その他事業)
前期に新型コロナウイルス感染症の影響を受け投資が低調であった各種成型機などで投資が回復し、販売が増加しました。
以上の結果、売上高は34億8千6百万円(前年同期比26.2%増)、セグメント利益は1億1千2百万円(前年同期比98.6%増)を計上いたしました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ112億円増加し816億1千9百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、216億2千8百万円の収入(前連結会計年度は145億1千7百万円の収入)となりました。
この主な内訳は、税金等調整前当期純利益の計上157億6千2百万円、減価償却費の発生69億3千9百万円及び仕入債務の増加41億4千2百万円による収入と、棚卸資産の増加43億2千9百万円の支出によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、55億1千9百万円の支出(前連結会計年度は34億1千8百万円の支出)となりました。
この主な内訳は、定期預金の払戻73億2千9百万円及び投資有価証券の売却及び償還39億3百万円による収入と、定期預金の預入104億4千9百万円、有形固定資産の取得59億5千8百万円及び投資有価証券の取得36億5千2百万円の支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、106億2千5百万円の支出(前連結会計年度は7億8千4百万円の支出)となりました。
この主な内訳は、短期借入金の純増減39億6千万円、長期借入金の返済35億2千万円及び配当金の支払31億3千9百万円の支出によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
光源事業(百万円) |
54,419 |
123.5 |
光学装置事業(百万円) |
52,249 |
115.4 |
映像装置事業(百万円) |
24,194 |
131.7 |
報告セグメント計(百万円) |
130,863 |
121.5 |
その他(百万円) |
- |
- |
合計(百万円) |
130,863 |
121.5 |
(注)上記金額は販売価格にて算定しており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b. 受注実績
当社グループの生産は過去の販売実績及び市場調査による需要の予測並びに将来の予測等を考慮し、生産計画を設定し、これに基づいて勘案された見込生産であります。
c. 販売実績
販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
光源事業(百万円) |
57,811 |
126.3 |
光学装置事業(百万円) |
48,386 |
124.1 |
映像装置事業(百万円) |
39,173 |
126.2 |
報告セグメント計(百万円) |
145,371 |
125.5 |
その他(百万円) |
3,450 |
126.3 |
合計(百万円) |
148,821 |
125.5 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度では、映像関連事業において、前連結会計年度の新型コロナウイルス感染症拡大による影響から、想定より早く市場の回復が進んだこと、また、半導体や液晶パネルなどのエレクトロニクス分野において需要が拡大したこと、更に、「防ぐ戦略」である働き方改善及び構造改革の実施による固定費の削減を着実に進めることで体質改善が進み、収益性が改善し、営業利益率は8.8%となり、当中期経営計画の必達目標として掲げた営業利益率8%以上を、2年目にして達成することができました。
一方、抗ウイルス・除菌用紫外線技術Care222搭載製品の新規製品に関しては、事業の立ち上げは順調に進んだものの、その後、紫外線に対する安全性の理解浸透や認知度不足等の課題が生じ、その解決に時間を要していることから計画を下回り推移しています。また、半導体等部材不足や物流停滞などのサプライチェーン問題が長期化しており、今後の業績への影響拡大が懸念されるなどの新たな課題が生じています。
抗ウイルス・除菌用紫外線技術Care222搭載製品については、課題克服のための対策を強化することで、今後の事業拡大を促進してまいります。半導体等部材不足や物流停滞などのサプライチェーン問題に対しては、その影響を極力低減できるようグループ全体で調達状況を共有し安定した部材の確保が進む体制強化を図ってまいります。また、引き続き、需要が拡大している半導体等の関連事業に対しては、積極的に生産体制や保守メンテナンス体制及び開発への投資を継続することで事業拡大を図ってまいります。それにより、持続的な成長とともに更なる収益性の改善を進めてまいります。
光源事業戦略
「攻める戦略」において、環境衛生分野で安心・安全な社会への関心が高まるなか、抗ウイルス・除菌用紫外線技術Care222搭載製品を立ち上げ、販売を開始したものの、各国の各種規制緩和の遅れや認知度不足、紫外線に対する理解浸透の遅れなどの課題改善に時間を要し、販売は想定を下回り推移しています。一方で、その他の「攻める・防ぐ戦略」は着実に進捗し、収益力は大幅に改善が進みました。
引き続き、課題の残った抗ウイルス・除菌用紫外線技術Care222搭載製品の販売促進強化や「防ぐ戦略」である構造改革の完遂及び経費コントロール強化を重点施策として取り組んでまいります。
光学装置事業戦略
半導体需要拡大を背景に、関連する各種露光装置の販売は想定を上回り推移しています。また、半導体露光プロセスにおいて最先端のEUVリソグラフィを用いた半導体製造工程の導入拡大により、EUVリソグラフィマスク検査用EUV光源の販売も想定通り推移しました。これにより収益性の大幅な改善が進んでいます。一方で、EUVリソグラフィマスク検査用EUV光源については、2023年3月期において、主要部材等の調達の長納期化などの影響から、一時的な調整局面を迎え、販売は想定を下回り推移することが見込まれています。一方で、最先端ICパッケージ基板向け及びプリント基板向け露光装置は、引き続き販売拡大が見込まれています。
旺盛な最先端ICパッケージ基板市場での着実な需要の取り込みのための生産体制の確保及び部材調達リスク回避及び次世代機に向けた開発投資継続による競争優位性を維持する取り組みや、EUVリソグラフィマスク検査用EUV光源については、今後の需要拡大に向けた生産体制等の強化や競争優位性を維持するための開発投資などの取り組みを重点施策として実施してまいります。
映像装置事業戦略
シネマ及び一般映像分野ともに、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けたものの、その後、全世界の経済活動再開とともに投資意欲は回復傾向にあることから需要も戻りつつあります。また、「防ぐ戦略」として実施した構造改革により着実に収益構造改善は進んでいます。引き続き、需要の回復は進むものと見込んでいますが、一方で、部材不足による新たな販売への影響懸念が生じています。引き続き、部材不足対応及び収益力改善に向けた事業範囲の選択と集中などへの取り組みや経営効率化への取り組みを重点施策として継続し、売上高拡大とともに、収益性の向上にも努めてまいります。
なお、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」に記載の通りであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. 財務・資本政策の基本的な方針
当社グループは、財務の健全性・安定性、資本効率の向上、安定的・継続的な株主還元のバランスを追求するとともに、企業価値向上のために経営資源を適切に配分することを財務戦略の基本方針としております。
株主還元については、株主の皆様に対する利益還元が企業として最重要課題の一つであることを常に認識し、安定的な配当の実施に加え、キャッシュ・フローの状況等を勘案しながら自己株式の取得を行っております。なお、自己株式については、保有上限を発行済株式総数の5%を目途とし、その部分を上回る自己株式については毎期消却することを基本方針としております。
b. 資金需要及び資金調達について
当社グループの資金需要として、原材料、商品等の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用に加え、設備投資、研究開発及びM&Aのための資金や配当支払等を見込んでおります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金は基本的に自己資金によって賄い、設備投資やM&A等の長期運転資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの借入も活用しております。なお、当連結会計年度末における借入金の残高は185億8千7百万円となっております。
当社グループは当連結会計年度末において現金及び現金同等物816億1千9百万円を保有しており、また、換金性の高い金融資産も保有していることから、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債及び収益・費用に影響を与える見積りが必要とされますが、これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況に応じ合理的な根拠を有した仮定や基準を設定した上で実施しております。しかしながら、事前に予測不能な事象の発生等により実際の結果が現時点での見積りと異なることも考えられます。
当社グループにおける連結財務諸表作成のための重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
a. 固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により前提条件が変更された場合には、損失が発生する可能性があります。
b. 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、課税主体ごとに将来の課税所得又は税金等調整前損益を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は主に将来の課税所得又は税金等調整前損益の見積りに依存するため、これらの見積り額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
c. 退職給付債務及び退職給付費用
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算されております。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しております。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
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