業績

3【経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績および財政状態の状況

当連結会計年度の経済環境は、日本におきましては、新型コロナウイルスの感染状況により、経済活動の制限と緩和が繰り返される中、生産・輸出は堅調に推移し、緩やかな景気の持ち直しが続いたものの、年明け以降、新型の変異株感染急拡大の影響などにより回復は鈍化しました。海外におきましては、米国・欧州を中心に経済活動の正常化が進み回復基調を示しましたが、中国ではゼロコロナ政策による厳しい活動制限などを背景に景気の回復が鈍化し、また、エネルギー・原材料価格高騰の影響に加え、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、先行き不透明感が一層強まる状況となりました。

半導体業界につきましては、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大を契機とする、社会・経済におけるデジタル化の急速な進展等を背景に、パソコンやサーバーをはじめ幅広い分野において需要が大きく拡大し、また、自動車市場向け等において半導体の需給逼迫状況が続くなど、旺盛な需要環境が継続しました。

このような環境下において、当社グループにおきましては、引き続き新型コロナウイルスの感染防止対策を実施し、ICT(情報通信技術)社会に欠かすことのできない半導体サプライチェーンの一翼を担う企業として、事業活動の継続に努めてまいりました。また、デジタル化の加速等により半導体需要が大きく拡大する中にあって、当社各製品についてかねてより取り組んでまいりました成長市場向け設備投資による生産能力増強等が寄与し、当連結会計年度において大きく業績を伸長させることができました。主力のフリップチップタイプパッケージについては、高丘工場(長野県中野市)などにおいて2018年度より着手した大型設備投資等による生産体制強化が、高性能半導体の需要増加に対応するとともに、半導体製造装置、先端メモリー向け等についても旺盛な需要のもと生産増加に注力するなど、引き続き成長分野向けに重点的に経営資源を投下しました。さらに、競争が激化する市場環境にあって、収益力・競争力の一層の強化をはかるべく、生産性・品質向上等の取り組みを強化しました。

それらの結果、フリップチップタイプパッケージは、パソコン、サーバー向けの需要拡大ならびに生産体制強化により売上が大幅に増加し、また、リードフレームは、自動車向けをはじめとして大幅な増収となりました。半導体製造装置向けセラミック静電チャックは、好調な半導体市場を背景に受注が大きく増加し、ハイエンドスマートフォン向けのIC組立が大幅な増収となりました。

この結果、当連結会計年度の経営成績および財政状態は以下のとおりとなりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細は「第5 経理の状況 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

 

a.経営成績

当連結会計年度の売上高は2,719億49百万円(対前連結会計年度比44.6%増)、営業利益は713億94百万円(同206.0%増)、経常利益は758億20百万円(同186.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は526億28百万円(同192.1%増)となりました。

セグメント別の状況は次のとおりであります。

(プラスチックパッケージ)

当連結会計年度の売上高は1,694億30百万円(対前連結会計年度比49.5%増)、経常利益は508億54百万円(同199.1%増)となりました。

なお、生産実績は1,552億48百万円(対前連結会計年度比37.3%増)、受注高は1,896億22百万円(同60.6%増)、受注残高は419億39百万円(同131.0%増)であります。

(メタルパッケージ)

当連結会計年度の売上高は928億70百万円(対前連結会計年度比39.9%増)、経常利益は235億23百万円(同158.1%増)となりました。

なお、生産実績は863億3百万円(対前連結会計年度比28.9%増)、受注高は1,002億98百万円(同41.9%増)、受注残高は218億3百万円(同86.4%増)であります。

 

b.財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ784億83百万円増加し3,194億61百万円となりました。

当連結会計年度末の負債の部は、前連結会計年度末に比べ298億79百万円増加し1,174億63百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産の部は、前連結会計年度末に比べ486億3百万円増加し2,019億97百万円となりました。

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における「現金及び現金同等物」(「②キャッシュ・フローの状況」において、以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ262億49百万円増加し687億58百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は671億73百万円(対前連結会計年度比98.7%増)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は421億62百万円(対前連結会計年度比31.1%増)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は1億77百万円(対前連結会計年度比66.9%減)となりました。

 

③生産、受注および販売の実績

「生産、受注および販売の実績」につきましては、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載したセグメントにより表示しております。なお、生産および受注の実績については、「①経営成績および財政状態の状況」に含めて記載しております。

a.生産実績

「①経営成績および財政状態の状況」に含めて記載しております。

b.受注実績

「①経営成績および財政状態の状況」に含めて記載しております。

c.販売実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

プラスチックパッケージ

(百万円)

169,430

149.5

メタルパッケージ

(百万円)

92,870

139.9

報告セグメント計

(百万円)

262,301

145.9

その他

(百万円)

9,648

115.9

合計

(百万円)

271,949

144.6

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

INTEL CORPORATION

69,495

37.0

105,577

38.8

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、連結会計年度末における資産・負債の金額および連結会計期間における収益・費用の金額に影響を与える重要な会計方針および各種引当金等の見積り方法(計上基準)につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。また、これらのうち主な会計上の見積りは以下のとおりでありますが、各種引当金等の見積り数値につきましては、見積り特有の不確実性があるため実際の結果とは異なる場合があります。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響につきまして、当社グループへの影響は、事業や地域によってその影響や程度が異なるものの、売上等への影響が限定的であることから、固定資産の減損や繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りに関して、当連結会計年度末の見積りに大きな影響を与えるものではないと判断しております。

 

a.繰延税金資産

法人税等の算定に際しては、当社グループが事業活動を行う各国の税法規定の解釈や税法の改正、将来課税所得の金額および時期など、様々な要因について合理的な見積りおよび判断が必要になります。繰延税金資産は、将来課税所得を合理的に見積もった上で回収可能性を判断し計上しておりますが、実際の課税所得が予測と異なり、回収可能性に疑義が生じた場合、もしくは税率の変更等を含む各国の税制に変更があった場合には、繰延税金資産の計算の見直しが必要となります。その結果として、繰延税金資産の残高が増減する可能性があります。

b.確定給付型退職給付制度

当社グループは、確定給付型およびリスク分担型ならびに確定拠出型の退職給付制度を設けております。確定給付型の退職給付制度の積立状況(退職給付債務から年金資産を控除した額)について、運用収益の悪化により年金資産が減少した場合や、退職給付債務算出にあたっての種々の前提条件(割引率、退職率、死亡率等)が変更され退職給付債務が増加した場合には、積立状況が悪化し、退職給付に係る負債(資産)や退職給付に係る調整累計額などに影響を及ぼす可能性があります。

c.棚卸資産

当社グループは、棚卸資産が適正な価値で評価されるように売却可能性や収益性等を定期的に見直しており、需要動向および市況の変化に基づく過剰または長期滞留や陳腐化を考慮して評価損を計上しております。実際の需要動向または市況が想定より悪化した場合、追加で評価損の計上が必要となる可能性があります。

d.固定資産の減損

当社グループは、事業用の設備、不動産など様々な有形・無形の固定資産を所有しております。こうした資産は、時価の下落や、期待していたキャッシュ・フローを生み出さない状況になるなど、その収益性の低下によって投資額の回収が見込めなくなることにより、減損損失が発生する可能性があります。

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

a.経営成績等

1)経営成績

(売上高)

当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ838億90百万円(44.6%)増加し2,719億49百万円となりました。

このうち、海外売上高は、フリップチップタイプパッケージがパソコンおよびサーバー向けに受注が大きく増加するとともに、半導体製造装置向けセラミック静電チャックも旺盛な需要が継続し、増収となりました。また、リードフレームは自動車向けに受注が大きく増加するとともに、IC組立はハイエンドスマートフォン向けの需要が拡大しました。プラスチックBGA基板は先端メモリー向けの売上が増加し、CPU向けヒートスプレッダーも増収となりました。これらの結果、前連結会計年度に比べ49.5%増加し2,422億47百万円となりました。

国内売上高は、リードフレームおよびプラスチックBGA基板が自動車向けに需要が拡大し、ガラス端子は光学機器向けの受注が増加しました。これらの結果、前連結会計年度に比べ14.0%増加し297億1百万円となりました。

当連結会計年度における海外売上高比率は89.1%となり、前連結会計年度より3.0ポイント上昇しました。なお、当連結会計年度における米国ドルの平均為替レートは111円となり、前連結会計年度に比べ6円の円安となりました。

また、新型コロナウイルスの感染拡大は継続したものの、米国・欧州を中心に経済活動の正常化が進み景気は回復基調を示すとともに、半導体業界におきましては、社会・経済におけるデジタル化の急速な進展等を背景に幅広い分野において半導体需要が拡大し、旺盛な需要環境が継続しました。当社グループにおきましては、半導体需要が大きく拡大する中にあって、成長市場向け設備投資による生産能力増強等が寄与し、当連結会計年度における新型コロナウイルス感染拡大による売上抑制等の影響はほとんどありません。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)

売上原価は、前連結会計年度に比べ338億32百万円(22.2%)増加し1,858億91百万円となりました。

売上総利益は、前連結会計年度に比べ500億57百万円(139.0%)増加し860億57百万円となり、売上総利益率は前連結会計年度より12.5ポイント増加し31.6%となりました。

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ19億91百万円(15.7%)増加し146億63百万円となりました。

この結果、営業利益は、前連結会計年度に比べ480億66百万円(206.0%)増加し713億94百万円となり、営業利益率は前連結会計年度より13.9ポイント増加し26.3%となりました。

(経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)

経常利益は、前連結会計年度に比べ493億12百万円(186.0%)増加し758億20百万円となりました。

経常利益率は、前連結会計年度より13.8ポイント増加し27.9%となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ346億9百万円(192.1%)増加し526億28百万円となりました。

売上高に対する親会社株主に帰属する当期純利益の比率は、前連結会計年度より9.8ポイント増加し19.4%となりました。

また、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

セグメントごとの経営成績および財政状態の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

(プラスチックパッケージ)

フリップチップタイプパッケージは、パソコンおよびサーバー向けに需要が拡大する中にあって生産能力増強が寄与したことなどにより、売上が大幅に増加しました。IC組立は、ハイエンドスマートフォン向けに受注が大きく増加し、また、プラスチックBGA基板は先端メモリーや自動車向けの受注が拡大し、増収となりました。収益面では、フリップチップタイプパッケージの売上が、高付加価値製品をはじめとして大きく増加し、また、為替相場において円安基調が継続したことなどに伴い、収益性が向上し、増益となりました。

これらの結果当セグメントの売上高は1,694億30百万円(対前連結会計年度比49.5%増)、経常利益は508億54百万円(同199.1%増)となりました

(メタルパッケージ)

リードフレームは、自動車市場向けが好調に推移したことに加え、幅広い用途において需要が増加したことを背景に大幅な増収となりました。セラミック静電チャックは、引き続き半導体製造装置市場における旺盛な需要に支えられ売上が大きく増加しました。ガラス端子は、光学機器向けの受注が増加し、CPU向けヒートスプレッダーは、増収となりました。収益面では、リードフレーム、セラミック静電チャックの増収効果および為替相場において円安基調が継続したことなどにより、増益となりました。

これらの結果、当セグメントの売上高は928億70百万円(対前連結会計年度比39.9%増)、経常利益は235億23百万円(同158.1%増)となりました。

 

(注)セグメント資産は、事業セグメントに資産を配分していないため、記載しておりません。

 

2)財政状態

(資産の部)

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ784億83百万円増加し3,194億61百万円となりました。

流動資産は、手許流動性預金、売掛金および棚卸資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ682億94百万円増加し1,928億28百万円となりました。

固定資産は、設備投資に伴う有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ101億88百万円増加し1,266億32百万円となりました。

(負債の部)

負債は、未払法人税等、買掛金および短期借入金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ298億79百万円増加し1,174億63百万円となりました。

(純資産の部)

純資産は、前連結会計年度末に比べ486億3百万円増加し2,019億97百万円となりました。

この結果、1株当たり純資産額は1,495.28円(前連結会計年度末は1,135.49円)となりました。

また、自己資本比率は63.2%(前連結会計年度末は63.7%)となりました。

 

3)キャッシュ・フロー

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローで得られた資金は671億73百万円(対前連結会計年度比98.7%増)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益、減価償却費および仕入債務の増加などにより資金が増加し、売上債権の増加および棚卸資産の増加などにより資金が減少したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローでは421億62百万円(対前連結会計年度比31.1%増)の資金を使用しました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローで得られた資金は1億77百万円(対前連結会計年度比66.9%減)となりました。主に、短期借入金の増加により資金が増加し、配当金の支払により資金が減少したものであります。

これらの活動の結果に為替換算差額を加味した当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末の425億8百万円から262億49百万円増加し687億58百万円となりました。

b.資本の財源および資金の流動性

当社グループの資金需要の主なものは、原材料の購入等の製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金および設備投資によるものであります。また、当社ではプラスチックパッケージにおいて半導体用フリップチップタイプパッケージの生産体制強化に、メタルパッケージにおいてはセラミック静電チャックの生産能力増強に向けた設備投資などを進めております。

これらに必要な資金については自己資金をもって充当することを基本とし、必要に応じて銀行借入等を行うこととしております。当連結会計年度中に設備投資等のための資金調達を行いました結果、当連結会計年度末における短期借入金残高は300億円となりました。

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容 a.経営成績等 3)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。

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