当社は、5G、IoT、ADAS、エネルギーマネジメント、デジタルヘルスケア等の普及に伴う事業機会の獲得に向け、社内外の連携強化による新技術、新製品開発に努めています。具体的には、事業ごとに分散していた開発拠点をテーマ別に再編し、好立地に拠点を開設することで、技術力の強化や技術者の獲得、オープンイノベーションの推進に取り組んでいます。
また、2021年4月に実施したセグメント再編により、グループ間連携を強化し、一層の開発のスピードアップに努めています。
各レポーティングセグメントにおける主な活動は次のとおりです。
(1)コアコンポーネント
当レポーティングセグメントでは、創業以来培ってきたファインセラミックスをはじめとする材料、プロセス、設計、加工技術等のコア技術を活かし、産業機械、自動車関連、5Gや半導体などの幅広い市場向けに高付加価値製品の開発に努めています。また、総合力を生かした新製品、新事業の開発強化に向けて、各部門を横断したプロジェクトを進めています。
当レポーティングセグメントの各事業で取り組んでいる主な研究開発は次のとおりです。
a.産業・車載用部品事業
今後も拡大が見込まれる半導体製造装置市場向けには、微細配線、三次元構造等、高集積化の進む次世代装置に向けた部品や材料の開発に取り組むとともに、高温対応を可能にする優れた熱伝導性や機械特性を持つ窒化物セラミックスの開発を、グループ内だけでなく外部と共同で実施する等、社外リソースも積極的に活用して進めています。
自動車関連市場向けには、自動車の安全性向上に寄与する高度な画像センシング技術を活用した車載カメラ等の開発に取り組んでいます。
また、ファインセラミック技術を活かし、環境・エネルギー市場で新たなクリーンエネルギー供給システムとして普及が期待される、SOFC向けセルスタックの高効率化に向けて開発を強化しています。
b.半導体関連部品事業
情報通信市場においては、スマートフォンやタブレット端末等の機器の高機能化と同時に小型・薄型化のニーズが高まっており、これに伴い、搭載される電子部品の小型化や半導体の微細化が進んでいます。また、IoTの進展も加わり、5G等の高速かつ大容量の通信インフラの整備が加速しています。自動車関連市場においてはADASの進展による電装化や低消費電力化への一層の対応が求められています。さらに、これらの主要市場での各種センサーの需要が増加しています。
このような市場動向に対し、セラミックパッケージ事業においては、微細配線が可能で、かつ高強度、高剛性の超小型・薄型の電子デバイス用及びセンサー用パッケージや、5G等のより高い周波数に対応する光通信用パッケージ、高輝度な自動車ヘッドライト向けに放熱性や耐久性に優れたLED用パッケージ等の開発に取り組んでいます。
有機基板事業においては、各市場のニーズに対応したフリップチップパッケージやモジュール基板の開発に取り組んでいます。情報通信市場向けには、データ伝送の高速大容量化対応として、高速信号・広帯域メモリー接続に適した大型高多層製品のパッケージを、ADAS向けには統合ECU用の高信頼パッケージ及びミリ波レーダー用基板の開発を中心に取り組んでいます。
c.その他
主に人工関節や人工歯根を展開している医療機器事業では、患者様のQOL(生活の質)の向上に貢献できる製品開発を進めています。具体的には、人工関節の緩みを抑え長寿命化を実現する3D積層造形技術や、抗菌性を付与した製品開発に取り組んでいます。これら技術の他分野での展開に向けて、社外の研究機関とも連携して研究開発を進めています。また、からだへの負担が少ない再生医療事業の拡大に向けて、豪州Regeneus社と細胞製剤に関する技術提携並びにライセンス契約を締結する等、新規医療分野への取り組みを積極的に推進しています。
(2)電子部品
当レポーティングセグメントでは、京セラ㈱の電子部品事業とKyocera AVX Components Corporationの技術融合による新製品開発の強化に努めています。
5GやIoT関連製品の普及に伴い、スマートフォンをはじめとする通信端末や基地局の高機能化に加え、マルチバンド化により部品の小型化や高機能・高信頼性等が求められています。これらの要求に対し、小型高容量で温度や湿度への信頼性を高めたセラミックコンデンサ、小型低損失かつ高信頼性のSAWデバイス、小型低背化、高周波特性の水晶部品やシリコンMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子、狭ピッチ・低背で高速伝送を可能にするコネクタ、高効率なアンテナ等の開発を進めています。
自動車や産業機器市場向けには、高温信頼性や耐圧性を高めたセラミックコンデンサやコネクタ、小型・高放熱のディスクリート及びパワーモジュールを含むパワー半導体に加え、各種制御部品等の開発を行っています。
(3)ソリューション
当レポーティングセグメントでは多様な事業を有している特長を活かし、ビジネスモデルや開発モデルの共有等を通じ、相乗効果の最大化に取り組んでいます。これまで各事業で培ってきた技術の活用により、IoTやローカル5G、モビリティ、エネルギー関連等において、イノベーションの創出に向けた研究開発を進めています。
当レポーティングセグメントの各事業で取り組んでいる主な研究開発は次のとおりです。
a.機械工具事業
産業機械や建築市場への事業領域の拡大に取り組んでいます。自動車やエネルギー、インフラ、航空機分野等の幅広い市場での金属加工等に使用される切削工具では、材料技術の強化によりユーザーの生産性向上に寄与する高品質・高精度な製品開発に取り組んでいます。また、空圧・電動工具では、京セラグループが有する多様な技術の活用による新製品開発を推進しています。
b.ドキュメントソリューション事業
当社製品の特長である環境性と経済性に優れた製品の開発を進め、競合他社との差別化を図っています。プリンター及び複合機等のオフィス向け製品については、低ランニングコストと高い環境性能の両立を図るため、長寿命な機器及び、廃棄を極少に抑えた消耗部品の開発を進めています。さらに、高品質なトナー開発にも取り組み、付加価値の向上に努めています。
商業用インクジェット事業では、印刷市場に新しい価値を提供できるよう、高画質・高耐久性・高生産性と同時に、多品種大量印刷ニーズの増加に伴うバリアブル印刷やカスタマイズ印刷に対応した製品の開発に取り組んでいます。また、インクジェットプリントヘッド事業で培ったヘッド技術と、ドキュメントソリューション事業のインク技術に加え、商業用インクジェットの開発で培ったノウハウを活かし、デジタル捺染機の市場投入に向けた製品開発を進めています。
ドキュメントソリューションサービス関連では、モバイル機器やクラウド環境、並びに顧客が所有するドキュメント管理システムとの連携によって、情報共有や業務効率に貢献するアプリケーションソフトウェア等の開発を進めています。また、企業内の情報を電子化し、包括的かつ効率的に管理・運用するECM事業をさらに強化し、既存事業との融合による新サービスの開発に取り組んでいます。
c.コミュニケーション事業
通信機器事業については、コンシューマ市場に、防水、防塵、耐衝撃性等の独自機能を活用した5G対応スマートフォン端末の開発を行うと同時に、様々な業種向けに専用タブレット端末や5Gコネクティングデバイスの開発を行っています。さらに、当社が有している部品や端末、システム技術、並びに通信端末事業で培った無線通信技術の活用とともに外部機関との連携による新技術の開発を進めています。ADASや自動運転システムの高まりに伴い需要の増加が期待される車載用通信機器の開発にも取り組んでいます。
情報通信サービス事業においては、多様な端末やネットワークを通じて集まるデータの収集・管理・活用を行うプラットフォームや、セキュリティ製品・サービスの開発等、DXの推進による顧客ニーズの複雑化・高度化への対応を進めています。また、企業等のビジネス分野で利用が拡大するAIの分野についても、技術及びサービスの開発を強化しています。
d.その他
スマートエナジー事業においては、太陽光発電等の再生可能エネルギーの自家消費ニーズに対応し、エネルギーを効率良く使用するための製品及びシステムの開発に努めています。太陽電池モジュールの品質向上に取り組むとともに、高い安全性、長寿命、低コストの蓄電池や、小型・高効率発電のSOFC、電気を効率良く活用するためのエネルギーマネジメントシステムの開発に注力しています。さらに、電力自由化に伴うデマンドレスポンスや分散型電源構築、VPP制御等、事業領域の拡大に向けた技術開発にも取り組み、トータルエネルギーソリューションビジネスの構築に努めています。
通信・交通インフラシステム事業においては、長年培ってきた通信インフラ技術を応用したV2I(Vehicle to Infrastructure)路側機や、5Gサービスが普及しにくく、設置コストが高くなる地域に対して、迅速かつ安価に配備可能な5Gミリ波バックホールシステム等の実証実験を行っています。また、5Gミリ波や6Gのエリア拡大に貢献する透過型メタサーフェス屈折板等の開発にも取り組んでいます。
上記の各レポーティングセグメントでの取り組みに加え、その他の事業においては、中長期的な成長に向けて、人材確保問題の解決に貢献する独自のAI技術等を活用したAI協働ロボット・システム事業や、低炭素社会の実現に貢献する基幹材料である窒化ガリウム(GaN)デバイスの応用システムの開発等、社会課題の解決に資する新規事業の創出に取り組んでいます。
レポーティングセグメント別研究開発費 |
|
|
(百万円) |
|
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減率(%) |
|
コアコンポーネント |
15,611 |
|
5.2 |
|
電子部品 |
15,456 |
|
△12.7 |
|
ソリューション |
38,799 |
|
9.8 |
|
その他の事業 |
5,591 |
|
107.2 |
|
研究開発費 |
75,457 |
|
11.5 |
|
売上高比率 |
4.9% |
4.6% |
- |
(注)当連結会計年度よりレポーティングセグメントの区分を変更しています。この変更に伴い、前連結会計年度の研究開発費についても同様の区分に組み替えて表示しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記6. セグメント情報」を参照ください。
お知らせ