課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

 当社グループは、全社員が共有する理念・行動体系である「Futaba Way」の下、Futaba哲学の「本質之直視」により、事業戦略策定から業務執行全般・モノづくりの現場に至るまで、常に本質を見失うことなく事業を推進することにより、「なくてはならない器材・サービスを創出し世界の発展に貢献する」ことを企業理念としています。

 この理念を実現するためには、日々進化し続ける現代においてスピード感を持った対応が求められており、AIやIoTなどの技術を取り込んだ「モノづくりの進化」、世界各地のネットワークを活用した「グローバル経営」およびFutabaテクノロジーを進化・融合させた「新製品開発力」に注力し、さらに「モノづくりを基軸としたソリューション」による事業領域の拡大、「市場ニーズ」をダイレクトに商品企画や製造に反映させるとともに、「選択と集中」により成長市場に向けた差別化と効率化を進め、企業価値の継続的向上を図っています。

 また、コンプライアンスの徹底による公正で透明性の高い経営を実践するとともに、当社グループの製品やサービスの提供を通じて企業価値を高めつつ、自然の営みを尊重し、環境負荷の低減に取り組んでいます。さらに持続可能な社会の実現を目指し、事業活動を通じ課題解決の責任を果たすことにより、真に社会に有用な企業となることを目指しています。

 

(2)経営環境

 当社グループを取り巻く環境は、長引く新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により国内外企業で、操業停止や生産調整などが発生しており、主たる市場である民生・自動車分野での生産および販売台数が伸び悩みました。また、当社グループおよび取引先の生産拠点においてもロックダウンによる操業停止や供給体制問題、受注の減少等から稼働率の低下が生じました。さらに半導体不足や原油需要に対する供給不足から材料価格や運送費の高騰など厳しい経営環境となりました。一方で半導体需要に伴う設備投資増加に関連した電子デバイス関連事業および生産器材事業の一部で伸長がありました。

 このような経営環境の変化を取締役会、経営会議等で電子デバイス関連事業および生産器材事業の主要製品ごとに影響を検討し適時対応してきました。

 今後の状況については、全世界的に新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う影響は、地域や製品により状況は異なるものの、各国での感染拡大の抑制策等により、経済活動は回復に向かうものと予測しています。

 米国経済はインフレへの懸念はあるものの、堅調な個人消費を背景として成長の持続が見込まれ、欧州経済はウクライナ情勢によるエネルギー価格の高騰に伴い成長ペースが鈍化する見込みです。中国経済はゼロコロナ政策の懸念もありますが持ち直しが続くと見込まれ、その他アセアン諸国経済の成長ペースは緩やかなものに留まる見通しです。日本経済においても各種経済政策の効果や世界経済の改善もあり持ち直すと見込んでいますが、ウクライナ情勢等による不透明感や原材料価格の上昇、金融資本市場の変動、供給面での制約等による下振れリスクがあります。総じて世界経済は各国の経済政策により回復が見込まれますが、新型コロナウイルス感染症の再拡大による経済影響、資源価格および運送費の高騰、半導体をはじめとする部品の供給不足等の懸念やウクライナ情勢等の地政学的な緊張があり、依然として先行きに不透明感があります。

 当社グループの関連市場は、自動車分野については半導体等の供給不足による生産調整や物流の混乱の問題はありますが、世界の自動車需要の回復を見込み、さらにサービス、エネルギー、デジタル、インフラをシステム化した多様なモビリティの関連領域が構築されると予想されることから、電子デバイス関連事業のディスプレイやタッチセンサー、システムソリューション製品、生産器材事業の金型用器材や成形・生産合理化機器の需要が見込まれます。

 産業機器用分野においては各地域の需要の増加が予想されることから、電子デバイス関連事業のシステムソリューション製品および生産器材事業の金型用器材や成形・生産合理化機器の伸びが見込まれます。また、インフラの老朽化による検査・監視ニーズや感染症対策を含めた省人化・無人化ニーズから、IoT機器やサーボ関連機器およびUAV関連機器への需要を見込んでおります。今後も変化を続ける市場ニーズをタイムリーにとらえ、成長分野を見極めていきます。

 

 

(3)中期経営計画と目標とする経営指標

当社グループは次々変化する経営環境に対処するため、3カ年の中期経営計画を策定しています。なお、詳細については当社ホームページのIR情報のIRライブラリをご参照ください。

① 構造改革による収益改善とともに積極的な投資により、前中期経営計画の期間に取り組んできた新製品や新規事業の「萌芽ステージ」として、継続的な成長を確実なものにすべく取り組んでいます。

 その基本方針は次のとおりであります。

「体質の改革」:事業ポートフォリオの再構築、組織再編、コスト構造改革により実現

「深化と拡張」:固有技術を進化させ、利便性の高い製品を供給し、合理化ソリューションを提供することで、新たな領域へと事業を拡張

「投資と挑戦」:積極的な投資を行い、新たな価値を持続的に創出するための挑戦を促進

 

 具体的には「体質の改革」は、まず「事業ポートフォリオの再構築」が必要であり、モノづくり企業として培ったハードを核として、そこにソフト・サービスを組み合わせて、競争優位性のある製品を創出し事業領域を拡大するとともに、技術・製品の用途拡大による次期主力事業の創出も並行して行います。

 次に「深化と拡張」については、後述の「(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」において事業別に記載した施策のとおりであります。

 なお、「投資と挑戦」は、事業ポートフォリオを再構築し、新たな挑戦を進め長期的な企業価値を向上させる新規事業に向けた戦略投資、また、利益の中核となる事業の収益性改善や生産能力強化に向けた成長投資も行っていきます。

 さらに発展ステージへ向けて当社の能力を強化し、組み替えていくためにも、M&Aは適宜行っていく予定です。

 

② 中期経営計画(Futaba Innovation Plan 2023)の進捗状況

当社グループは、中期経営計画「Futaba Innovation Plan 2023」(2020年度~2022年度)により事業活動を展開し、各経営指標のモニタリングを行い経営環境の変化や計画の進捗状況に応じて、必要な対策を講じ、体質改善に取り組んでまいりました。2020年度に中期経営計画「Futaba Innovation Plan 2023」の策定以降、新型コロナウイルス感染症の再拡大の影響や半導体をはじめとする材料・輸送費等の高騰、米中対立やウクライナ情勢の国際情勢の変化の影響等による産業構造や需要構造の変化により収益性が低下し、当初の計画値を下回る進捗となっています。

なお、2021年度の具体的な結果については「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績および (4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」をご参照ください。

 

③ 目標とする経営指標

当社グループは事業の収益性改善を重要課題と認識し、「連結売上高」「連結営業利益(連結営業利益率)」を目標とする経営指標として取り組んでいますが、中期経営計画の最終年度(2023年3月期)については、経営環境の変化により、計画値の達成が困難な状況と認識し、2022年5月20日付「2022年3月期決算短信」にて公表したとおり、連結売上高610億円、連結営業利益2億円を見込んでいます。なお、経営環境を的確に捉え産業や需要の構造変化に対応することにより、中期経営計画の各施策をさらに一段進めていきます。

 

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 全社共通事項では、世界的な部材費、エネルギー費や運送費などの高騰に対する、一層の生産性向上や固定費削減の取り組みおよび売価の適正化を実行してまいります。また、部材調達の長期化に対応し、部品の共通化を進め、さらに顧客との情報共有を徹底してまいります。

 事業別には、電子デバイス関連事業のタッチセンサーは、選択と集中による生産・管理の集約を加速することで体質強化を図り、マルチデザインプレート、耐環境タッチセンサー、3D形状タッチセンサーなどの高付加価値製品の市場開拓を図っていきます。また、有機ELディスプレイは、生産委託や外注の最大活用による収益性の抜本的改善を推進します。

 さらに、新領域としてモビリティのEV化に伴い、リチウムイオンキャパシタ・リチウムイオン電池用「タブリード」の市場開拓および高機能化を推進します。

 続いて、システムソリューションは、ドローン関連製品は開発を促進するとともに、ハード製品を核に機体メンテナンス・スクールなどのサービス事業への領域拡大と市場開拓を行います。また、各種センサーと無線技術を融合させた製品の開発および市場開拓を図ります。

 ホビー用ラジコン機器については、BtoCとして継続的にカー用・空用の新商品を投入し、SNS等を活用した情報の発信・収集による市場の活性化とシェア拡大を目指します。また、UAV/ドローンの航続距離延長を目的としたエンジン、スターター、発電機が一体となったシステム「レンジエクステンダー」を産業用途へ拡販していきます。

 生産器材事業の金型用器材・プレート製品は、多様化する市場要求に合わせ、合理的な自動化生産体制を構築し、納期や品質で顧客満足度の向上を図ります。また、BCPの観点から部品供給拠点の分散・安定化や、材料費変動に即した適正価格での売価政策を実施します。さらにWEB受注システムやオンデマンド受託製造サービスによるお客さまへの合理化支援サービスを強化するとともに、省エネ・加工時間短縮に寄与するCFRP製切削加工用厚板プレート「フェルカーボ」の用途開拓と拡販を図ります。

 成形・生産合理化機器(金型内計測システム、ホットランナシステム)の海外販売強化と売上構成比の拡大を図ります。また、新たな販売・マーケティングツールであるランディングページの充実やウェビナーのさらなる活用およびお客さまへのSDGs貢献を提案し、IoTモニタリングシステム等の拡販を図っていきます。

 なお、新型コロナウイルス感染症への対応としては、電子デバイス関連では半導体の供給逼迫による生産遅れのリスクを最小化すべく、設計変更や代替品採用など、その対策をグローバルに実施します。また、長期的には災害時の状況確認のための製品やデジタル関連、テレワーク需要、医療関連といった新たな市場や機会が再認識され、独自の技術による高付加価値製品の開発やアッセンブリーなど事業領域の拡大を行います。生産器材関連では部品供給体制についてBCP観点でのサプライチェーンの再検討、人手不足による自動化投資、遠隔操作やデータ取得による生産性の向上への寄与など、ハードを中心としたソフト・サービスへ事業ポートフォリオの転換を推進していきます。また状況確認等の情報収集および感染拡大に伴う影響を最小限に止めるための対応を迅速に行い、社員およびお客さまをはじめとするステークホルダーの皆様の安全確保を最優先に考えており、テレワークや、Web営業・会議の導入、マスクの着用や衛生関連品の設置利用を徹底するなど、感染症防止のための対策を講じております。なお、新型コロナウイルス感染症の収束見通しは不透明なことから、今後とも感染拡大に伴う経済活動への影響を注視することにより、リスクや不測の事態を想定し、経営環境の変化に臨機応変に対応できる体制の構築を図るとともに、生活様式の変化に対応すべく迅速かつ的確な研究・製品開発と生産体制の構築を推進していきます。

 

 

(5)サステナビリティ経営について

 当社グループは、SDGs・環境の基本方針として『商品・サービスの提供を通じて企業価値を高めつつ、自然の営みを尊重し、次世代へ「負の遺産」を残さないよう、環境負荷の低減に取り組み、持続可能な社会の実現を目指す』とし、社会的課題に対してマテリアリティ(重要課題)を特定し、リスクや機会をふまえ、具体的な取組みと2030年度の目標(KPI)を定めました。これらの取り組みを着実に実行することで持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努めます。

 また、当社は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を予定しており、当社HP上での開示の準備を進めています。

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 今後も事業活動を通してステークホルダーの皆様との信頼関係の構築に努め、環境や社会、ガバナンスを重視し、製品やサービスの提供による新たな価値の創造により、社会課題の解決に貢献すべく事業活動を展開していきます。

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