研究開発活動

5【研究開発活動】

当社グループにおける研究開発は、「イノベーションによる社会課題の解決」を基本方針に掲げ、地球の環境保全・改善や、人々の生活の質の向上のための新製品や新サービス、新規事業を創造することを目指しています。「粘着技術」「塗工技術」「高分子機能制御技術」「高分子分析・評価技術」の4つのコア・テクノロジーをベースに様々な技術を組み合わせて新たな価値を提供しています。

全社技術部門は、研究開発本部、新規事業本部、核酸医薬開発本部、新規モビリティ事業開発部の4つの部署と技術知財戦略本部が密接に連携し、将来の事業とそれを支える技術を育成しています。研究開発拠点として、2016年3月に大阪府茨木市に開設した“inovas”(イノヴァス)を中核に、海外にNitto Denko Technical Corporation(U.S.A.-Oceanside)、Nitto BioPharma, Inc.(U.S.A.-San Diego)、Nitto Denko Asia Technical Centre Pte. Ltd.(Singapore)、Nitto (Qingdao) Technology Research Institute Co., Ltd.(中国-青島市)を配置しています。

当社ではオープンイノベーションに積極的に取組み、様々な新製品・新技術開発を行っています。当連結会計年度においては、株式会社aceRNA Technologiesとスイッチ付mRNA治療薬の共同開発、並びに出資に関する契約を締結しました。同社は京都大学 齊藤博英教授による合成生命システム研究で生まれたRNAデザイン技術を基に設立されたバイオベンチャー企業で、同社がもつmRNA技術と当社のドラッグデリバリー技術と組み合わせ、生体内でより安定的かつ精緻な作用制御を可能とする治療薬の開発を進めます。

情報通信領域においても、外部技術と当社の光学材料の設計技術を融合し、高速大容量通信を変革するプラスチック光ファイバーケーブルを開発しています。当連結会計年度では、事業化に向け着実に進展しました。

また、当社では特許戦略を重視して研究開発を進めており、研究開発で確立した技術を戦略的な特許出願で支えながら着実に事業につなげています。この活動の結果として、当連結会計年度において「クラリベイト Top 100 グローバル・イノベーター2022」に選出されました。これは、クラリベイト・アナリティクス社が「数量」「影響力」「成功率」「グローバル性」「技術分野の広さ」の5つの基準から優れた研究開発活動、知的財産管理を行っている企業や研究機関100社を選出したもので、2012年の開始から当社は9度目の受賞となります。

 

当連結会計年度の研究開発部門の人員は、当社単体で1,021名、グループ全体で1,619名です。また、当社グループの研究開発費の総額は37,271百万円です。このうち、各事業セグメントに直接関連しない全社技術部門の研究開発費は8,116百万円です。

セグメント別の研究開発活動成果は下記のとおりです。

 

(1)インダストリアルテープ

粘着テープ製造工程の環境負荷低減のために、粘着剤の無溶剤化やバイオマス材料を用いた環境配慮製品の開発を進めています。環境配慮ニーズはますます高まっており、今後も原材料調達から製造工程、廃棄までを含めて、環境負荷低減に貢献できる製品開発に注力してまいります。

モバイル機器分野では有機EL(OLED)ディスプレイの表示品位の向上や薄層化、フレキシブル化が進んでいます。このようなデバイス周辺で使用されるテープには、光学性能や衝撃吸収性能の向上、折り曲げ耐性の付与など、さらなる品質や性能の向上が求められています。お客様の高い要求に応えつつ、環境負荷を低減する製品を開発していきます。

半導体・電子部品・金属加工の産業分野に対しては、弊社の強みである剥離技術を活かした新製品開発を進めています。次世代ディスプレイの製造工程でご使用いただくプロセステープ、薄ガラス用の保護テープなど、テープをきれいに簡単に剥離できる技術により、お客様の製造工程での生産性向上、ロス低減に貢献できる製品を開発していきます。

また、フッ素系の機能性材料を用いた製品の用途拡大を進めており、モバイル機器分野、半導体や電子部品、さらに衛生用品分野に向けた製品開発に注力しています。また、フッ素系産業廃棄物を減らすための環境貢献型の製品開発にも注力していきます。

自動車・鉄道車両・航空機などの輸送機分野におきましては、モーター/オルタネータ用絶縁材料、燃料電池用材料(バストラック)、電装部品用内圧調整材料など、電動車両の急速な市場拡大を見据えてラインアップの拡充をはかっています。今後はリチウムイオンバッテリーの性能向上にかかわる新製品開発にも注力していきます。

当連結会計年度における研究開発費の金額は7,066百万円です。

 

(2)オプトロニクス

スマートフォンをはじめ、各種ディスプレイでOLEDの比率が高まっており、OLED向けの製品開発を強化しています。OLEDは、表示品位の向上、低消費電力、フレキシブル化が進んでおり、偏光フィルムに加えて位相差フィルム、粘着剤トータルでの設計を最適化し、お客様のご要望にお応えしています。また、偏光フィルム以外ではOLED工程材、機能性フィルム等の開発にも注力しており、ディスプレイとその周辺部材をご提案しお客様へ価値提供を行っています。

自動車業界では自動運転技術の発展により、車内ディスプレイ数の増加及び大型化が進んでいます。それに伴い、使用される偏光フィルムも大型化し、従来品より耐熱性、耐紫外線(UV)性、低収縮性が要望されており、これらの要望に応える製品を開発しています。

ディスプレイ以外では、透明導電性フィルムに用いているスパッタ技術を活用し、自動車の調光ルーフや様々なセンサ向けの電極フィルムの製品開発も行っています。

ESG、SDGsへの取組みとしては、環境への影響を配慮し、無溶剤化製品の開発や、リサイクル材料、バイオベースの材料を取り入れた新製品開発を推進しています。

プリント回路製品は、データセンターで使用されるハードディスク(HDD)向け回路基板の需要が増加しており、今後もHDDの記録密度向上に貢献するため、微細配線技術や新規メッキ技術の開発を進めています。また、HDD向け回路基板を応用してスマートフォン向けにも「高精度基板」として展開しており、増産を進めています。新しい市場への挑戦では、当社独自の多孔化技術を用いた低誘電回路基板材料を開発中で、お客様へ提案を行っています。

ESGに対する取組みでは、回路基板製造時の環境負荷低減を可能にする新たな廃液処理技術を開発、自社製品への適用を推進していきます。

当連結会計年度における研究開発費の金額は11,050百万円です。

 

(3)ライフサイエンス

核酸プロセス材料は、合成の足場材料であるポリマービーズの需要が大きく伸長しました。今後は、さらなる高性能化や溶剤使用量の低減を行い、お客さまや地球環境に貢献できる開発に注力します。

医療材事業では、培ってきた肌に貼る粘着技術をベースにウェアラブルデバイス向けの長期貼付用粘着剤を上市しました。また、ESGを見据えて、粘着剤の無溶剤化にも積極的に取組みます。さらには新事業創出に向けた取組みでは、社内外の連携を強化し、早期に社会に提供できるように開発を進めていきます。

当連結会計年度における研究開発費の金額は5,081百万円です。

 

(4)その他

分離膜・メンブレン事業関連では、2021年度に中国の浄水施設に省エネに貢献する新製品が採用されました。中国の浄水施設には安全な水の提供を従来よりも省エネで運営していく事が計画されており、分離膜への期待がいっそう高くなっています。

また、中国、インドでは排水・廃液のゼロ化(ZLD;Zero Liquid Discharge)の動きが速く、世界に先んじて設備の導入が進んでおり、弊社製品の導入実績数も増加しています。これらの製品は従来捨てられていた水を再利用するばかりではなく、処理に必要なエネルギーを従来に比べ低減し、お客様のCO2排出量低減に寄与しており、それだけではなく従来廃水とともに捨てられていた有価物の回収に役立っています。

また、新規事業では、当連結会計年度においてネオジム磁石の開発を中止しました。

当連結会計年度における研究開発費の金額は5,956百万円です。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得