文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
[経営の基本方針]
当社グループは、カワサキグループ・ミッションステートメントにおいて、「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する“Global Kawasaki”」をグループミッションとして掲げ、最先端の技術で新たな価値を創造し、顧客や社会の可能性を切り拓く企業グループを目指しています。
また、「選択と集中」「質主量従」「リスクマネジメント」を指針とし、資本コストを上回る利益を安定的に創出するとともに、社会課題に対するソリューションの提供を通じてSDGs達成に貢献すべく、経済的価値・社会的価値の二つの軸で企業価値を高める経営を推進していきます。
[中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題]
2020年11月に、当社グループの目指す将来像として、グループビジョン2030「次の社会へ、信頼のこたえを-Trustworthy Solutions for the Future-」を定め、その実現に向けた事業方針を以下のとおり掲げ、推進しています。
《注力するフィールド》
当社グループは、地球環境保護のための脱炭素社会の実現、先進国を中心とした高齢化社会・労働力不足への対応、医療などの種々の地域間格差の解消、自然災害の抑止や早期復旧、各種資源・物資やエネルギーの安定供給など、様々な社会課題に対するソリューションをタイムリーに提供するため、以下の3つのフィールドに注力しています。
「安全安心リモート社会」-リモートロボットによる新しい価値の創出
医療・ヘルスケア、ものづくり、産業インフラなど様々な分野で、当社グループが持つ遠隔操作・ロボット技術等を用いて、安全かつ安心して暮らせる社会を創るとともに、リモート社会の実現により全ての人々が社会参加できる新しい働き方・くらし方も提案していきます。
「近未来モビリティ」-人とモノの移動の変化・トレンドに素早く対応
宅配需要やライフスタイルの変化に伴う個人モビリティ需要の増加など、人とモノの移動の変化・トレンドに素早く対応するため、無人で物資を運ぶヘリコプターや自動配送ロボットなど、新しい輸送・移動手段を提案し、豊かでスマートかつシームレスな移動が可能な社会を創造します。
「エネルギー・環境ソリューション」-クリーンエネルギーの安定供給に向けて
カーボンニュートラル社会の早期実現に向けて、世界に先駆けて水素サプライチェーンを構築します。また水素発電を中心として国内事業所のCO2排出を2030年までに実質ゼロにするという、自立的なカーボンニュートラルも進めていきます。
最近の国際情勢により、エネルギーの安定供給など「経済安全保障」がより重要性を増しています。世界各地で、様々な方法で作ることができる水素は、カーボンニュートラルだけでなくエネルギー安全保障面からも期待が高まっており、早期に水素社会を実現できるよう取組みを加速します。
《ソリューション創出のための新事業体制への移行》
2021年4月に船舶海洋事業とエネルギー・環境プラント事業を統合し、社内の将来的な水素関連製品を集約するとともに、コア・コンポーネントを中心としたエンジニアリング事業の推進体制を強化しました。
また、2021年10月にはマーケットの要請に機敏に応える体制を加速するため、車両事業及びモーターサイクル&エンジン事業を分社し、自律的事業運営を強化するとともに、当社グループの事業を、「陸・空輸送システム」「モーションコントロール&モータービークル」「エネルギーソリューション&マリンエンジニアリング」の3つのグループに再編成しました。新会社を含むグループ一体運営により、技術・ノウハウ・経営資源の共有などのシナジー効果を追求し、当社グループの更なる競争力強化を図っていきます。
《成長シナリオ》
当面は2021年度に過去最高益を記録したモーターサイクル&エンジン事業と、引き続き好業績を続けている精密機械・ロボット事業などの量産系事業が全社の収益を支えていきますが、その後は国際線を含む航空需要の本格的な回復に伴い、航空宇宙システム事業をはじめとする受注系事業の収益が安定的に拡大し、当社グループの成長を牽引します。さらに、水素事業や医療ロボット事業、近未来モビリティ等をはじめとする新規事業も収益の柱となり、安定した成長軌道を描くことを目指します。成長シナリオの実現のため、モノ売りからコト売りへのシフトなど、ビジネスモデルの見直しにも取り組み、高収益体質を実現していきます。
こうした成長シナリオの実現に向け、当社グループは様々な施策を講じています。今後の成長を支える主な仕組みとして、2021年度からは「チャレンジ&コミットメント」をコンセプトに、年齢に関係なくチャレンジできる新たな人事制度を導入しました。優秀な人財をそのポテンシャルが最大限発揮できるポストに配置し、様々な改革を絶えず推進できる企業風土を醸成していきます。またデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進により、データ活用による新たなソリューションの創出と業務プロセスの効率化・高付加価値化を追求し、経営の意思決定のスピードアップにも取組んでいきます。
ウクライナ情勢に伴う資源・エネルギー価格の上昇やサプライチェーンの混乱など地政学的な問題が深刻化しています。新たに立ち上げた経済安全保障を推進する組織を中心に、スピーディーに各種対策を実行することで、安定した経営を目指してまいります。
[経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題]
新型コロナウイルス感染症拡大の影響については、先進国を中心にコロナ関連規制を撤廃・緩和する動きが加速しており、ウィズコロナを前提とした経済活動の活発化に向けて進んでいます。当社グループの経営に大きな影響を与えている航空旅客需要も回復傾向にはありますが、コロナ禍前の水準に戻るにはまだ一定程度の時間を要するものと想定されます。加えて、足元の経営環境は、半導体不足や物流混乱に伴う生産遅延リスクや世界的なインフレ進行による調達品価格の高騰リスクなど、先行きを見通す上で懸念すべき多くの課題に直面しています。また、中国のゼロコロナ政策に伴う都市封鎖やウクライナ情勢も新たな懸念材料となっています。
このような状況の下、2022年度は確実に増収・増益を達成すべく、全社的なコスト削減の推進等に取り組むとともに、調達価格の高騰を適切に販売価格に反映する努力やサプライチェーンの多様化といった課題への対応策にも注力し、収益性の向上に努めていきます。また、経営資源の投入については、案件の厳選に努めつつも、注力する3つのフィールドについては、スピード感をもって積極的な投資を実行するなど、メリハリのある意思決定を行っていきます。資金面に関しても、前述の収益性向上や投資選別の他、過剰在庫の回避、資産圧縮などの対応策を進めることで、キャッシュフロー創出力の強化及び有利子負債の削減に努めていきます。
[経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等]
経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標を、利益(営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益)及び資本効率を測る指標である投下資本利益率(税前ROIC =EBIT(税引前利益 + 支払利息) ÷ 投下資本(有利子負債 + 自己資本))としています。そして、世界GDP成長率を上回る売上高の成長を目指し成長分野・新規事業への開発投資を継続しつつ、営業利益率は5~8%、税前ROICは資本コスト+3%以上を確保すべく努めていきます。
これらの経営指標の改善の結果として自己資本利益率(ROE = 親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 自己資本)の向上も図っていきます。(なお、当社は2022年度より国際財務報告基準(IFRS)を適用する予定です。これに伴い、2022年度以降は、営業利益及び営業利益率は事業利益及び事業利益率に、親会社株主に帰属する当期純利益は親会社の所有者に帰属する当期純利益となります。)
[セグメントごとの戦略及び課題]
① 航空宇宙システム事業
P-1固定翼哨戒機・C-2輸送機の修理・部品供給を含めた量産の着実な推進及び派生型機への展開、ボーイング既存機及び民間航空エンジンの収益確保のためのコストダウン推進、市況変化を踏まえた技術戦略の見直し
② 車両事業
品質管理の強化、顧客ニーズに適合した技術・製品による差別化、コスト競争力の強化、海外プロジェクトのリスク管理強化、IoTを活用したメンテナンス事業及び軌道モニタリング事業参入等のストック型ビジネスの拡大、海外生産・海外調達及びパートナーシップの活用などグローバルな最適事業遂行体制の構築
③ エネルギーソリューション&マリン事業
水素関連プロジェクトの研究開発・事業化の推進、コアコンポーネント強化とその組み合わせによる最適システム構築、分散型エネルギー供給システムの提案、新興国・資源国を中心とした海外事業の拡大、アフターサービス事業の強化、ガス関連船建造におけるコスト競争力の強化、船舶海洋事業における中国合弁会社の収益性改善、次期新型潜水艦の受注に向けた研究開発の促進
④ 精密機械・ロボット事業
油圧事業は、製造コストの大幅改善・品質向上・将来差別化技術の開発推進、販売面ではアフターサービス分野の拡大、ショベル分野における高シェアの維持とショベル以外の建設機械/農業機械分野向け拡販。ロボット事業においては、それぞれの市場に応じた差別化による製品の付加価値向上、コストダウン等競争力の強化、オープンイノベーションと協業の推進、デジタルプラットフォーム(Robo Cross)の構築、hinotori™を中心とする医療ビジネスの拡大
⑤ モーターサイクル&エンジン事業
“Kawasaki”らしい魅力ある強いモデルの継続投入、顧客に訴求する高いブランド価値の実現、先進国市場での更なるプレゼンスの向上、新興国市場におけるコスト競争力の一層の強化、連結ベースのマネジメントの徹底と効率化
お知らせ