当連結 会計年度は、「グループビジョン2030」で掲げた「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」の実現に向けて、事業部門と本社の社長直轄プロジェクト本部や技術開発本部、水素戦略本部が一体となって当社グループの持ち得る技術を結集し、技術のシナジーや最新のデジタル技術等も活用しながら、将来にわたる顧客への価値提供に向けた研究開発に取り組みました。
特に、2020年12月に経済産業省が関係省庁と策定し、2021年6月に具体化された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を受け、国際的な液化水素サプライチェーンの構築を目指した商用化実証への取り組みのほか、水素モビリティの実用化技術やCO2分離回収・利用技術など、2050年までのカーボンニュートラルの実現に貢献する各開発に注力しています。
当連結会計年度における研究開発費は
航空宇宙システム事業
航空宇宙事業では、防衛省向け固定翼機や回転翼機の近代化・派生型事業、民間機開発事業、宇宙空間の利活用に向けた宇宙機器システム等の研究開発を推進するとともに、ロボット事業とのシナジーによる生産自動化、ICT/IoTを活用したスマートファクトリー化への取り組みを進めています。また、無人化・遠隔化、並びに自律化や知能化といったAI技術を活かした研究開発についても取り組んでいます。
航空エンジン事業では、自社開発エンジンであるKJ14の防衛事業への展開実績を足掛かりとして、高出力型エンジンの実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。また、将来の航空エンジンに求められる環境性や効率化を踏まえた圧縮機・燃焼器技術、ギアシステム技術や革新的な生産技術に関する研究開発への取り組みを進めています。
更に、カーボンニュートラル社会の実現に向け、水素航空機のコア技術に関する研究開発に取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は
車両事業
鉄道でのカーボンニュートラルを目指すために、内燃車両に代わる次世代車両開発、水素を鉄道車両の動力源としての適用実証、車両信頼性向上・安全対策・メンテナンス性向上等のための高機能装置の開発、自動化・ロボット化による合理的生産技術の開発等に取り組んでいます。また、ストック型ビジネスの拡大を目指して、各種センシング・デジタル技術を活用した車両・軌道の状態監視等による効率的なメンテナンスシステムの開発を推進しています。
当事業に係る研究開発費は
エネルギーソリューション&マリン事業
エネルギー事業では、ガスタービンの高効率化、 ガスエンジンの次世代機、熱と電気の最適なエネルギー供給を実現する蓄電ハイブリッドシステムやエネルギー機器の信頼性向上に向けた技術開発等に取り組んでいます。
プラント事業では、生産年齢人口の減少、労働力人口の構成の変化に対応するため、ロボット分野とも連携した遠隔操縦型のグラインダーロボットシステム「Successor-G」や、双腕型スカラロボット「duAro」とAI技術を活用した廃棄物処理施設での瓶選別システムの開発に取り組んでいます。
舶用推進・船舶海洋事業では、自動運航船の実現を目指し、船舶の信頼性向上、乗組員の負担軽減を目的として、AIを活用した故障予知・診断、状態監視保全、最適運転支援を行う舶用機関プラントの運転支援システム開発に取り組んでいます。
更に、カーボンニュートラル実現を目指し、水素サプライチェーンの早期確立に向け、液化水素貯蔵・積荷基地・揚荷基地の技術実証を推進しているほか、液化水素運搬船の商用化に向けた大型運搬船のための研究開発や、水素ガスタービン及び水素ガスエンジンの開発に取り組むとともに、CO2分離回収システムの実用化開発を実施しています。
当事業に係る研究開発費は
精密機械・ロボット事業
精密機械事業においては、ショベル分野におけるシェア維持を目指し、製品競争力の強化に加えて、高付加価値の電動化・自動化/自律化に対応した将来建機油圧制御システムの開発に取り組んでいます。また、ショベル以外の建設機械分野や農業機械分野への拡販を見据え、マーケットニーズに応じた小型軽量・高効率・高機能な油圧ポンプ・モータ、コントロール弁の開発並びにシリーズ展開を進めるとともに、水素関連事業として燃料電池車用高圧水素ガス弁・水素供給システム・油圧式水素圧縮機等の開発に取り組んでいます。
ロボット事業では、遠隔協調で熟練技術者の動きを再現するロボットシステム「Successor」を、塗装や研削等へ適用範囲を拡大するための開発を推進しています。また、将来市場の大きな伸びが期待される医療・ヘルスケア分野への展開を目指した医療用ロボット「hinotori™」や、堅牢な体と柔軟な環境対応能力を兼ね備えたヒューマノイド、「TRanbo」・「Vambo」をはじめとする物流分野の自動化に向けたロボット等の研究開発にも取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は
モーターサイクル&エンジン事業
Kawasakiのブランド力強化を目指して、スーパーチャージドエンジンによる究極の性能とロングツーリングでの快適性を追求した唯一無二のハイパフォーマンス・スポーツツアラー「Ninja H2 SX/Ninja H2 SX SE」や、モダンでカジュアルなスタイリングを備えた新たなレトロスポーツ「Z650RS」、更に、スーパーチャージドエンジンを搭載し最大出力300PSを発揮するJET SKIのフラッグシップモデル「JET SKI ULTRA 310LX/JET SKI ULTRA 310LX-S」を追加する等の新機種開発を行いました。また、カーボンニュートラルの実現に向けて、モーターサイクルやオフロード四輪車の電動化に加え、水素エンジンの研究開発も推進しています。
当事業に係る研究開発費は
本社部門・その他
本社社長直轄プロジェクト本部では、新型コロナウイルスの感染拡大や物流分野の労働力不足などの直面する社会課題に対して、自動PCR検査システムや無人VTOL※1機、配送ロボット、多用途UGV※2などを活用した物流ソリューションの開発を進め、早期市場展開を目指しています。
本社技術開発本部では、当社グループの更なる企業価値向上を目指し、事業部門と一体となって「新製品・新事業」の開発に取り組むとともに、「グループビジョン2030」で掲げた注力フィールドを中心に、自律化、遠隔化、電動化、CCUS※3など、将来の社会課題解決の実現を目指し、ソリューション型ビジネスに必要な技術開発にも積極的に挑戦しています。また、足元の収益向上を目指し、デジタル技術を活用したエンジニアリングチェーン、サプライチェーンの高度化にも取り組んでいます。
本社水素戦略本部では、褐炭から製造した水素を液化水素運搬船で海上輸送・荷役する世界初の実証試験を完遂し、将来の商用水素サプライチェーンの実現に向けた大型化・高効率化技術の開発のほか、液化水素燃料供給システムなどの共通技術の開発を推進しています。
これら本社部門に係る研究開発費は
(※1 VTOL: Vertical Take-Off & Landing)
(※2 UGV: Unmanned Ground Vehicle)
(※3 CCUS: Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)
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