課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。本項目を含む、本書における当社に関連する見通し、計画、目標などの将来に関する記述は、当社が現在入手している情報に基づき、本書提出日時点における予測等を基礎としてなされたものであり、実際の結果は記載内容と大きく異なる可能性があります。

 

(1) 会社の経営の基本方針等

当社は、「仕事の成果の保証」と「新しい価値の提供」を通じて、お客様の課題を解決し、医療の未来に貢献することを経営理念としております。これが、当社が事業を通じて成したいことです。

当社が顧客とする日本国内の製薬業界においては、人口増加や国民皆保険制度等に支えられ大きく成長してまいりましたが、市場を取り巻く環境は昨今、大きな変化を迎えております。

AIやビッグデータといったデジタル化技術や、遺伝子治療や細胞医療などの医療技術が実用化を迎えるとともに、医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインの適用といった法令順守体制の整備・強化が求められるようになり、製薬企業が持続的に成長していくうえで大きな転機を迎えております。さらに、少子高齢化を背景とした社会保障費の抑制機運の高まりに伴い薬価制度の抜本改革のもとで薬剤費抑制政策が加速するとともに、政府方針で定められた後発医薬品使用促進が進み、製薬企業の収益構造が大きく変化をしております。

また、既にCROへの委託を活用している製薬企業においては、CROに対する期待も従来のような業務処理を行うだけの受け身な姿勢ではなく、コスト削減等の顧客ニーズを先回りして把握し、CRO自ら改善や課題解決提案を行うといったパートナーとしてより主体的な姿に変化をしています。

このような事業環境において、当社は、最新のテクノロジーと優れたビジネスモデルを用いて、顧客に最適な業務プロセスを提案・実施し、製薬企業にとって不可欠なパートナーとしてサービスの提供を行うよう努めてまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社は、売上高経常利益率を重要な経営指標と捉えております。今後も収益力の拡大に注力し、株主価値の向上に努めてまいります。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

① 事業領域

安全性情報管理サービスを主軸に、ドキュメントサポートサービス、開発サポートサービス、臨床開発支援サービスを提供いたします。各サービスは、委受託契約によるサービス提供のみならず、一部、人材派遣契約によるサービス提供も行っております。

CROの歴史において最初に医薬品開発の委託対象となったのはモニタリング業務です。この業務は臨床開発において治験を実施している時期のみの期間限定的な業務であり、製薬企業が固定費を流動化するために、外部委託化した業務です。これにより、受託するCRO側には、案件終了後に待機社員を抱えるリスクが生じます。そのため、CROでは受託したモニタリング業務を、一握りの常用雇用社員がマネジメントを行い、実務は主に実務経験の豊富な派遣社員を中心とした有期雇用社員を配置することで実行する体制が作られました。しかし、実務経験豊富な人材が業務にあたることから業務実施やその品質は人に依存する形となり、また、委託期間が限定されていることから標準化など業務安定化の仕組みの構築は図られてきませんでした。

これに対し、当社では、従来は経験者が行っていた業務を標準化した上で分業が可能な状況に組み直し、新たに採用した未経験者を育成し、配置するという方針でサービスの提供を行います。また、人材の配置にあたっては、全て当社の直接雇用かつ常用雇用社員を中心とし、継続的な業務効率改善に取り組むことで高品質と低価格を両立したサービスの提供を行います。また、業務プロセスを常に最適化するための仕組みであるオプティマル・プロセス・マネジメント(OPM)※ の構築を進め、継続的な改善が図られる仕組みを整えています。業務プロセスの最適化は、豊富な業務実施経験によって蓄積されたノウハウの活用とRPA(Robotic Process Automation;ソフトウェア型のロボットが作業を代行、自動化する概念・手法)等最新の自動化テクノロジーの導入による抜本的な変革をはじめとした複数のアプローチを用いて実施します。このサービスの提供方法を活かし、安全性情報管理を中心に現在提供しているサービスと同様に、製薬企業特有かつ恒常的に実施されている他の業務についても、将来的にサービス範囲を広げていきます。なお、臨床開発支援サービスにおいては、臨床試験、医療機器の臨床開発の分野において実績を積むことを方針としております。

 

※ OPMとは、Optimal Process Managementの略。業務プロセスを継続的に最適化していく当社独自の仕組み。法規制の変化や最新のテクノロジーやビジネスモデルの調査、それらを基にした業務プロセス開発、業務プロセスの実施、実施されている業務の集中管理、の4つの機能から構成される。

 


 

② 戦略

RPAやAI等の自動化テクノロジーの進展は、現在の労働集約的なCROの業務処理方法を短期間で変革する可能性があります。しかし、当社は、そのテクノロジーそのものを生み出し、提供する会社ではありません。今までも、これからも製薬企業の業務の一部あるいは全てを担うサービス会社としてあり続ける方針です。

当社は、あくまでも業務プロセスに着目して事業を展開していきます。その理由は、「業務プロセスを最適化する」ということが、事業環境が変化したとしても、当社の価値としてあり続けると考えているからです。よって、現状や特定の業務の実施方法にとらわれることはありません。世の中の変化を捕捉し、テクノロジーを柔軟に取り入れながら常に最適な業務実施方法を構築・提案・実施していき、製薬企業の課題を解決するために現在のやり方に固執することなく柔軟に変化していく方針です。

当社は、「最新のテクノロジーと優れたビジネスモデルを用いて、最適な業務プロセスを提案し、実施までする会社」として、製薬企業から最も必要とされる、なくてはならない会社になり、成長を続けていくために以下のような戦略を実施していきます。

・RPA等の自動化テクノロジーを用いた、業務の自動化

・顧客の利便性を高めるサービスプラットフォームの安全性情報管理サービスへのリリースと、他サービスセグメントへの応用展開

・問題解決とプロセス構築ができる人材の育成による製薬企業へのサービス提供

・当社の進みゆく方向性、組織の考え方、企業カルチャーといったコーポレートアイデンティティの確立と浸透

 

(4) 会社の対処すべき課題

当社の経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めております。デジタル化技術や医療技術の実用化、診療報酬制度や薬価制度の抜本的な改革、さらに新型コロナウイルス感染症の影響を受け、製薬業界を取り巻く経営や創薬の環境は大きく変化しており、製薬企業が抱える課題の内容や難易度は高度化、複雑化しています。これらの課題に対しては、従来の手法ではなく、抜本的な業務プロセスの変更や組織横断的な対応策が求められる状況となっています。

このような状況の中、当社は、「仕事の成果の保証」と「新しい価値の提供」、すなわち、業務品質の保証と、最適なプロセスの構築・提案導入を通じて、製薬企業が抱える課題解決に貢献することで成長を期してまいります。具体的には以下の取り組みを行います。

 

① 業務の品質の向上・維持

既存の仕組みの強化に加え、ICT(情報通信技術)を用いた業務の効率化に積極的に取り組みます。更に、業務の進捗、品質や効率等の成果指標について可視化することにより、課題の把握、改善のサイクルを高め、業務の品質の向上・維持に努めてまいります。

 

② サービスプラットフォームの開発

顧客の課題を解決し、より付加価値のあるサービスを提供するために、業務プロセスそのものを変革し顧客の利便性を高めるサービスプラットフォームの開発を推進します。

 

③ 人材の確保・育成

上記の取り組みに伴い、業務効率化のためのITツールや業務プロセスの検討、より難易度の高い非定型受託業務、顧客が抱える課題の抽出と解決提案といった付加価値の高い職種の増員、育成に努めてまいります。

 

④ 原価の削減

RPA等の自動化テクノロジーを用いて各種業務の自動化等を推進し、受託業務の原価をはじめとした社内コスト削減を徹底してまいります。

 

⑤ CRO事業領域の拡大と差別化

経営資本の「選択と集中」を行い、医薬品開発の安全性情報管理サービスに特化していくとともに、安全性情報管理と同様に競争力が発揮できるサービス領域の拡大も継続して進めてまいります。

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