文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「for Startups」という経営ビジョンを掲げ、挑戦者に対し必要な支援を行う成長産業支援インフラとなることを目指しております。企業成長を支える原動力は「人材」と「資金」であり、イノベーションを担うスタートアップ企業の成長やスタートアップエコシステムの継続的な発展には、人材と資金の確保がなければ成り立たたないことから、当社グループは、主に人材と資金の側面から成長企業を支援することで、成長スピードと成長確度を高め、社会に貢献してまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、持続的な事業拡大と企業価値向上のため、経営の効率化を図るとともに、売上高及び営業利益を重要指標としてとらえ、各種経営課題への対応を図っております。
(3)経営環境及び中長期的な経営戦略
・経営環境
近年、AI、IoT、ロボット、ビッグデータ、ブロックチェーン等、第4次産業革命と呼ばれるデジタル技術の発展を背景に、新産業が創出され、「GAFAM(Google Apple Facebook Amazon Microsoftの総称)」と呼ばれるような巨大新興企業が世界で台頭しております。また、米国・中国を中心に世界では新たな産業やユニコーン企業(注1)が続々と誕生しており、国際競争力の確保において新興企業は大変重要な存在となっております。
国際競争力において日本は、1990年代初頭には世界1位であったところ、直近の2021年では世界31位まで低下しております(注2)。国際競争力の低下には、様々な要因がありますが、一つの要因としてスタートアップエコシステム(注3)の構築が発展途上であることが挙げられます。グローバリゼーションを勝ち抜く国際的な競争力を有した企業を生み出すには、如何にイノベーションを創出できるかが重要であり、イノベーションの創出にはスタートアップエコシステムの構築・発展が必要不可欠と当社グループは考えております。
我が国においても、政府の成長戦略において、産業競争力強化の観点からスタートアップ企業の支援及びスタートアップエコシステム強化の重要性が提唱され、各種取組みが実行されています。そのような状況の中、2021年(暦年)における我が国のスタートアップ企業(注4)への投資額は過去最高値を記録したほか、ディープテックベンチャーへの民間融資に対する債務保証制度やファンドによる海外投資規制の緩和など、制度面の拡充についても積極的に図られています。加えて、政府よりスタートアップ企業の育成のための5か年計画の策定が発表されるだけでなく、経団連より「スタートアップ躍進ビジョン~10X10Xを目指して~」が提言されるなど、従来と比較して官民を挙げての支援の拡充が見込まれています。
当連結会計年度末現在における我が国のスタートアップ・成長企業を取り巻く環境は、マクロ環境の変化(国内外の地政学リスクや金融資本市場の変動)を受け、注視が必要な状態が続いております。
考えうるリスク要因としては、アセットオーナーのベンチャーキャピタルへの資金配分の減少、未上場企業の評価額低下によるスタートアップ企業側の調達額の規模の減少、並びにそれらに伴う人材採用活動の停滞が挙げられます。ただし、国内のベンチャーキャピタルは、過去のファンド組成状況からみて投資余力が存在すると考えられることから、投資者側の投資判断は厳格化するものの、成長性の高いスタートアップ企業へは引き続き積極的な投資が行われると考えております。当社グループは、スタートアップ・成長企業のうち、成長性の高い企業にフォーカスして支援を行っていることや、多少の需要減少は支援ポートフォリオの変更により対応が可能であることから、上記マクロ環境変化の影響は軽微と考えております。
・経営戦略
上記経営環境の中、当社グループは、既存のタレントエージェンシーをより一層強化していくほか、オープンイノベーションの拡大により大手企業や、官公庁・自治体などと協力体制を築いてまいります。加えて、タレントエージェンシーのクライアント等に対して資金支援を開始することで、スタートアップ企業の更なる成長を加速させ、「成長産業支援」のインフラとなることを目指してまいります。中期的な定量目標としては、主にタレントエージェンシーサービスにおいて、人材の採用及び育成の強化を図り、既存領域における支援人数の増加を図るだけでなく、中長期を見据え支援領域拡大への投資も実行することで、2025年3月期に連結売上高50億円を目指してまいります。
具体的な経営戦略については以下の通りです。
①成長産業支援インフラとしてのポジショニング確立
我が国のスタートアップ企業への投資は増加傾向にありますが、ベンチャーキャピタル投資額の対GDP比は0.03%(注5)と諸外国と比較して未だ小さく、人材がスタートアップ企業へ流入する潮流も未だ発展途上であることから、当社グループが属するマーケットは成長余地が大きいと認識しております。このような中、日本を代表するグローバル企業を生み出すためには、人材と資金を質・量ともに提供する企業の存在が不可欠であると考えております。
既存のタレントエージェンシーサービスのより一層の規模拡大により、人材支援企業としてのポジショニング確立を図ります。また、当連結会計年度から開始したベンチャーキャピタル事業を通じた資金支援企業としてのポジショニングの確立にも努め、今後の収益機会の拡大を目指してまいります。
②持続的な競争優位の確保
当社グループは、事業運営を通じて、スタートアップ企業に関する定量・定性情報を蓄積しております。当該情報は、独自アルゴリズムを用いた「数値化されたスタートアップ企業情報」として可視化され、当社グループの競争優位の源泉となっております。スタートアップ業界は日々目まぐるしく変化していることから一般的に情報が陳腐化しやすく、参入障壁が低い人材紹介やコンサルティングビジネスにおいて、当該「数値化されたスタートアップ企業情報」は障壁として有効に機能するものと考えております。今後も、ベンチャーキャピタル・起業家等イノベーションに関わるプレイヤーとのより緊密な連携により、当該競争優位性の維持・確保に努めてまいります。
③スタートアップエコシステムの形成による自律的成長サイクルの構築
スタートアップエコシステムの形成においては、①起業家人材の創出、②資金の供給、③優秀人材の確保、④大手企業や研究機関の協力、⑤会計・法務・知財等の専門知識のサポート、⑥起業文化の醸成、⑦EXIT環境の整備等が必要と当社グループは考えております。当社グループは「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、独自のアルゴリズムを用いて各スタートアップ企業を数値化し、当社グループが成長性の高いと考えるスタートアップ企業(有力スタートアップ企業)を選定し、優先的に支援サービスを提供する仕組みを構築しております。これは、有力スタートアップ企業を優先的に支援することが、結果的に次のユニコーン企業を生み出し、新産業の創出につながると当社グループが考えていることに因ります。また、人材と資金の両側面から支援をすることで、更なる企業成長を促進し、その結果、新たな需要(人材・サービス)を生み出す、自律的な成長サイクルの構築を目指してまいります。
④バリューを体現した人材採用及び育成
当社グループの最も重要な資産は「人」であり、企業成長には人材成長が欠かせないと認識しております。当社グループは、経営ビジョンである「for Startups」を実現するために、従業員の目指すべきバリュー(価値観)として、以下の3つを重視しております。
・「Startups First」
全ては日本の成長のために。スタートアップスのために。
※スタートアップス=『進化の中心』にいることを選択する挑戦者達
・「Be a Talent」
スタートアップスの最たる友人であり、パートナーであり、自らも最たる挑戦者たれ。そして、自らの生き様を社会に発信せよ。
・「The Team」
成長産業支援という業は、Teamでしか成し得られない。仲間のプロデュースが、日本を、スタートアップスを熱くする。
当社グループは、当該バリューを体現した「強い個人」を一人でも多く輩出することが、組織成長に寄与すると考えていることから、従業員に対し、社内外において様々な成長機会の提供を行っております。今後も、社内外での様々な教育研修機会の提供を通じて、人材の採用・育成を強化してまいります。
⑤コアコンピタンスを活用した事業領域の拡大
当社グループは、創業以来一貫してスタートアップ企業のサポートに特化した事業運営をしており、当該事業アセットを活用し、事業領域の拡大を図ってまいります。
・データベースを活かした収益機会の拡大
我が国のスタートアップマーケットに関する情報は網羅的に一元化されていないことが課題と当社グループは考えております。当社グループが運営する「STARTUP DB(スタートアップデータベース)」はスタートアップ企業に関するデータベースとして13,000社(2022年4月末現在)以上を収録しているほか、独自のアルゴリズムを背景に「数値化されたスタートアップ企業情報」を有しております。当社グループが有するタレントデータベースとスタートアップデータベースの双方を活かし、収益機会の拡大を図ってまいります。
・当社グループブランドの確立による収益機会の拡大
当社グループは、成長産業支援を事業目標としており、当社グループとスタートアップ企業、ベンチャーキャピタル、大企業、大学・研究機関、政府・自治体、メディア、専門組織等との連携を強めていくことで、スタートアップエコシステムの中心的存在になることを目指しております。成長産業支援の中核的企業としてのブランドを確立させ、収益機会の拡大を図ってまいります。
[脚注、用語の説明]
注1.ユニコーン企業
企業価値または時価総額10億ドル以上で、設立10年未満の未公開企業
2.出典:IMD World Competitiveness ranking 2021
(IMD:International Institute for Management Development)
3.スタートアップエコシステム
起業家・人材・投資家・大手企業・研究機関・起業風土等の社会的な環境が有機的に連携し、スタートアップ企業が自律的・持続的に創出される環境
4.スタートアップ企業
高い成長性を有し、社会にイノベーションをもたらす企業
5.出典:内閣官房成長戦略会議第8回(令和3年3月17日開催)配布資料「基礎資料」
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの対処すべき課題としては、既存事業の拡大、収益性の向上、内部管理体制の整備が重要であると認識しております。
①優秀人材の確保
企業成長にとって最も重要な要素は「ヒト」であり、タレントエージェンシーサービスにおけるヒューマンキャピタリスト(営業担当者)のみならず、全社において優秀人材の確保が課題と考えております。積極的な採用活動(全社的な採用KPIの設定・採用部門の人員強化・採用関連費用の増加)により、人材確保に努めてまいります。
②人材育成の強化
積極的な人材採用により急激な組織拡大が予測され、今まで以上に社員の育成やエンゲージメントの強化が必要になると認識しております。このため、組織の拡大に応じた人事制度を設計することや、教育制度等を拡充することにより、人材育成に努めてまいります。
③タレントエージェンシーサービスにおける生産性の向上
タレントエージェンシーサービスの売上規模の拡大には、ヒューマンキャピタリストの増員のほか、一人当たりの生産性向上も必要であります。社員間のコミュニケーションの活性化や教育研修といった人材育成施策のほか、社内業務管理システムの機能強化や業務プロセスの改革による業務効率の改善を通じて、更なる生産性の向上に対応してまいります。
④新規事業における売上高の拡大
当社グループは、主力サービスであるタレントエージェンシーを中心に堅調に成長している一方で、タレントエージェンシーの収益力への依存度が高い状態にあります。長期的な会社の発展及び成長産業の支援インフラ構築のためにも、既存サービスの周辺領域の開拓や新規事業への進出に取り組んでまいります。
⑤内部管理体制の強化
当社グループは、ビジネス上、個人情報や企業情報を含め、機密性の高い情報を有しております。定期的な社内教育の実施や管理体制の強化に取り組んでおりますが、内部統制の整備と実効性ある運用を通じて、組織の健全なる発展に努めてまいります。
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