(1) 経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、日本を含めてコロナ禍からの経済活動の復調傾向が継続している中での推移となりました。しかしながら、近年類を見ない災禍からの急激な回復局面で、需要に供給が追い付かず資源高・原材料市況や輸送運賃の高騰・サプライチェーンの混乱を引き起こしており、米国のインフレ高進なども生じて、様々な業種で生産及びコスト面に大きな影響を及ぼしています。また、2月にはロシアによるウクライナ侵攻もあり、世界経済の今後の不透明感は増すばかりとなっています。
このような中、フォークリフトを始めとする物流機器市場は、国内においては、コロナ禍前と同様の水準で堅調に推移、海外においては、一部地域で顕著に観察された反動需要が一巡したものの、物流ニーズの高まりによりコロナ禍前を上回る水準で推移しています。
当社においても、グループ各社の受注は引き続き好調ではあるものの、半導体不足の影響を始めとした様々な部品供給の遅れによるリードタイムの長期化、原材料費・輸送費を始めとしたコスト高の影響を大きく受けております。受注増加に応じた生産・出荷を実現し納期順守すべく、部品供給の確保・整流化に取組むとともに、コストの削減にも引き続き注力しているところです。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の収束が依然として見えない中で生じたロシアによるウクライナ侵攻が世界経済の回復に深刻な影響を及ぼすことは間違いなく、世界経済の不確実性の高まりは未曽有の水準にあると思われます。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末における資産合計は4,056億1百万円となり、前連結会計年度末より422億4千3百万円の増加となりました。主な要因は、売上債権の増加、棚卸資産の増加によるものです。
負債合計は3,418億6千3百万円となり、前連結会計年度末より339億1百万円の増加となりました。主な要因は、仕入債務の増加によるものです。
また、純資産につきましては、新株予約権及び非支配株主持分を除くと、631億3千1百万円となり、前連結会計年度末より82億7千8百万円増加しました。主な要因は、為替換算調整勘定の増加によるものです。
この結果、自己資本比率は15.6%(前連結会計年度末は15.1%)、1株当たり純資産額は592円02銭(前連結会計年度末は514円70銭)となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における連結売上高は4,654億6百万円(前連結会計年度比18.9%増加)となりました。フォークリフト需要のコロナ禍からの復調が売上高の増加に寄与しています。
利益面につきましては、原材料や輸送運賃の高騰影響を受けながらも、売上高の増加と固定費の抑制効果により、営業利益は35億9千2百万円(同125.3%増加)、経常利益は32億4千万円(同60.9%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益7億1千7百万円(前連結会計年度26億8千3百万円の純損失)となりました。
なお、のれん等償却の影響を除くと、営業利益は130億1千3百万円(前連結会計年度比18.4%増加)、営業利益率は2.8%(同ポイント増減なし)となっております。
また、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度の売上高が17億9千9百万円減少、売上原価が4億7百万円減少、販売費及び一般管理費が16億4百万円減少し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益がそれぞれ2億1千2百万円増加しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(国内事業)
国内事業は、フォークリフト需要がコロナ禍前と同様の水準で堅調に推移していることもあり、売上高は1,739億5千4百万円(前連結会計年度比3.2%増加)となりました。セグメント利益は、特にアフターサービス・補用部品、産業用エンジンの売上高の増加が寄与し、15億3千7百万円(同122.5%増加)となりました。
なお、のれん等償却の影響を除くと、セグメント利益は63億5千8百万円(同12.3%増加)となっております。
(海外事業)
海外事業は、フォークリフト需要がコロナ禍前を超える水準で推移しており、売上高は2,914億5千1百万円(前連結会計年度比30.7%増加)となりました。セグメント利益は、売上高の増加が寄与する一方で、原材料市況や輸送運賃の高騰等により減殺され、20億5千5百万円(同127.4%増加)となりました。
なお、のれん等償却の影響を除くと、セグメント利益は66億5千5百万円(同24.9%増加)となっております。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ24億3千7百万円減少し、125億6千2百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により増加した資金は、前連結会計年度334億8千万円に比べ、128億5千9百万円減少し、206億2千1百万円(前年同期比38.4%減少)となりました。これは主に、売上債権・棚卸資産の増加によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動で支出した資金は、前連結会計年度224億7千5百万円に比べ、32億3千1百万円減少し、192億4千3百万円(前年同期比14.4%減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出は増加したものの、短期貸付金の減少が進んだものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は、前連結会計年度119億3千1百万円に比べ、73億3千万円減少し、46億1百万円となりました。これは主に、前連結会計年度には非支配株主への払戻による支出があった影響と借入金返済の減少によるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
国 内 事 業 |
205,643 |
113.8% |
海 外 事 業 |
256,172 |
152.1% |
合計 |
461,816 |
132.3% |
(注)金額は、販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前連結会計年度比(%) |
受注残高 (百万円) |
前連結会計年度比 (%) |
国 内 事 業 |
186,622 |
109.7% |
46,219 |
137.8% |
海 外 事 業 |
417,494 |
166.8% |
207,354 |
255.0% |
合計 |
604,117 |
143.7% |
253,574 |
220.8% |
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
国 内 事 業 |
173,954 |
103.2% |
海 外 事 業 |
291,451 |
130.7% |
合計 |
465,406 |
118.9% |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
当社グループの当連結会計年度における経営成績は、増収増益となったものの、依然として営業利益率は同業他社を下回っております。引き続き、国内事業、海外事業のいずれにおきましても、一層の売上増加、シェアアップを目指すとともに、原価低減の推進、固定費の削減等の業務効率化に取組んでまいります。また、当社グループの財政状態については、116期において、ユニキャリア株式の取得に伴う多額の借入れを行ったため、有利子負債が事業規模に比べ多額な状態が続いておりますが、フリーキャッシュ・フローの獲得を通じ、自己資本比率の向上を目指し、財務基盤の一層の強化を図ってまいります。
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因として、「2 事業等のリスク」に記載のとおり様々なものがありますが、各種市場情勢の変化に細心の注意を払い、変化への柔軟かつ迅速な対応を継続していくことに尽力いたします。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要」及び上述のとおりとなっております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析
フリーキャッシュ・フロー
当社は、フリーキャッシュ・フローを営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動に支出されたキャッシュ・フローの合計として定義しています。当社の経営者は、この指標を戦略的投資又は負債返済に充当可能な資金の純額、或いは、資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、投資家に有用な指標と考えており、以下の表のとおりフリーキャッシュ・フローを算出しています。
(単位:億円)
|
120期 |
121期 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
335 |
206 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△225 |
△192 |
フリーキャッシュ・フロー |
110 |
14 |
当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、14億円となりました。これは、営業キャッシュ・フローが
前連結会計年度に比べ128億円減少した一方で、投資キャッシュ・フローの支出が、有形固定資産の取得による支出が増えたものの、短期貸付金の回収により前連結会計年度に比べ32億円減少したことによります。
当社グループは、フリーキャッシュ・フローの増加を図るため売上債権の流動化、棚卸資産の削減、アセットマネジメントに引き続き取り組んでまいります。
当連結会計年度におきましては、運転資本は、前連結会計年度より242億円増加(前連結会計年度比28.3%増加)して1,097億円となっております。
(単位:億円)
|
119期 |
120期 |
121期 |
売上債権 |
846 |
802 |
893 |
棚卸資産 |
620 |
613 |
967 |
仕入債務 |
△641 |
△560 |
△763 |
運転資本 |
825 |
855 |
1,097 |
前期比増減 |
△3 |
30 |
242 |
b.資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローに加えて他社からの借入れにより事業活動に必要となる資金を調達しております。借入先は金融機関及び当社の親会社である三菱重工業㈱並びにその金融子会社です。
当社グループの資金の流動性につきましては、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を126億円有しており、事業活動のために必要な流動性を確保していると認識しておりますが、加えて当座貸越契約の締結や国内外で当社グループのCMS(キャッシュマネジメントシステム)及び三菱重工業㈱の金融子会社が提供するCMSの利用により機動的な資金需要に対応しております。
c.株主還元策
当社は、期中における急激な経済環境変動による業績変動に左右されない安定的、継続的な配当を実施する目的で、配当性向のみならず、「自己資本配当率(DOE※)」も考慮に入れながら、配当を決定しております。
※Dividend On Equity ratio=配当総額÷自己資本(=配当性向×ROE)
DOEは利益を積み上げた自己資本に対して、どの程度を配当に充てるかを表す指標であり、これを指標とすることで、自己資本に対する利益率の指標であるROEと株主還元の指標である配当性向のバランスを図ることが可能となります。
当連結会計年度は、株主各位への配当の充実と企業基盤確立のための内部留保とのバランスに配慮した利益配分を行うという基本方針に則り、1株当たり8円としております。(配当性向:118.9%、DOE:1.4%)
(参考)120期 8円/株(配当性向:-、DOE:1.6%)
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成に際し、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、財政状態及び経営成績に影響を与える見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
詳細については、「第5 経理の状況」の(重要な会計上の見積り)をご参照ください。
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