業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

①財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言等が断続的に発出されるなかで、力強さを欠いてきました。行動制限が段階的に緩和され、経済社会活動は再開しているものの、オミクロン株の感染拡大もあり、新型コロナウイルス感染症による経済への影響には引き続き注意が必要な状況にあります。

 生命保険業界においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、保険金・給付金請求手続きの簡易取り扱い、みなし入院に関する取り扱い、保険料の払込猶予期間延長等の特別な取り扱いにより、生命保険事業の社会的使命を果たすべく、お客さまに寄り添った対応を行いました。

 このような状況のなか、当社は、「正直に経営し、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスを提供することで、お客さま一人ひとりの生き方を応援する」という経営理念のもと、インターネットを主な販売チャネルとする生命保険会社として開業から14年目を迎えました。当事業年度においても、新商品の発売、スマートフォンを活用したサービスの拡充、パートナー企業との協業を通じて、お客さま視点での商品・サービスの提供に努め、過去最高となる新契約件数を達成、保有契約件数は50万件を突破しました。

 

(契約の状況)

 当事業年度の新契約の年換算保険料*1は、前事業年度比97.4%の4,089百万円、新契約件数は過去最高を更新し、前事業年度比100.0%の100,636件となりました。

 当事業年度末の保有契約の年換算保険料は、前事業年度末比115.0%の21,511百万円、保有契約高は、前事業年度末比111.9%の3,351,278百万円となりました。保有契約件数は、2022年2月に50万件を突破し、前事業年度末比115.3%の507,428件となり、保有契約者数は、322,231人となりました。また、当事業年度の解約失効率*2は、新型コロナウイルス感染症に伴う特別取り扱いの一環として、保険料の払込猶予期間を延長した契約を失効契約として計上した影響を含み、6.6%(前事業年度6.0%)となりました。

*1.年換算保険料とは、1回当たりの保険料について保険料の支払い方法に応じた係数を乗じ、1年当たりの保険料に換算した金額をいいます。当社商品の保険料は全て月払いのみとなっているため、1ヶ月当たりの保険料に12を乗じたものを年換算保険料としております。

*2.解約失効率は、解約・失効の件数を月々の保有契約件数の平均で除した比率を年換算した数値です。

 

(収支の状況)

 当事業年度の保険料等収入は、保有契約の増加に伴う保険料の増加及び修正共同保険式再保険における再保険収入の増加に伴い、前事業年度比125.3%の25,420百万円となりました。また、資産運用収益は、主に有価証券売却益の増加により、前事業年度比153.4%の665百万円となりました。その他経常収益は、81百万円となりました。この結果、当事業年度の経常収益は、前事業年度比125.9%の26,167百万円となりました。

 保険金等支払金は、修正共同保険式再保険における再保険料の増加などに伴い、前事業年度比143.7%の8,668百万円となりました。保険金及び給付金支払額の保険料に対する割合は、前事業年度の19.5%から20.7%となりました。責任準備金等繰入額は、前事業年度比109.4%の6,903百万円となりました。責任準備金繰入額の保険料に対する割合は、前事業年度の36.2%から34.1%となりました。事業費は、広告宣伝費を中心とした営業費用の投下等により、前事業年度比121.0%の12,140百万円となりました。事業費のうち、営業費用は前事業年度比123.1%の8,262百万円、保険事務費用は前事業年度比119.3%の1,278百万円、システムその他費用は前事業年度比115.7%の2,599百万円となりました。その他経常費用は、前事業年度比112.6%の1,693百万円となりました。これらにより、当事業年度の経常費用は前事業年度比123.2%の29,413百万円となりました。

 以上の結果、当事業年度の経常利益は、前事業年度のマイナス3,089百万円に対して、マイナス3,245百万円となりました。当期純利益は、前事業年度のマイナス3,114百万円に対して、マイナス3,319百万円となりました。

 また、生命保険会社の収益性を示す指標のひとつである基礎利益は、前事業年度のマイナス2,874百万円に対して、マイナス3,213百万円となりました。内訳は、危険差益3,348百万円、費差益マイナス6,648百万円、利差益86百万円です。

 当社は、継続的な新契約業績の成長を目指すとともに、財務健全性の維持を目的として、2019年度から新契約の一部(以下、出再契約)を対象とした修正共同保険式再保険を行っております。修正共同保険式再保険は、出再契約のリスク及び収支構造の一部を一定期間再保険会社に移転するもので、当該再保険を活用することで、新契約に係る費用の負担が、会計上の資本を急激に減少させる状況を緩和することが可能となります。具体的には、当該再保険では、新契約獲得の初年度に、出再契約に係る新契約費の一部を出再手数料として収受します。そのため、経常収益が増加します。一方、収受した出再手数料は、再保険貸に資産計上された後、一定の期間において再保険収支に基づいて段階的に償却されます。そのため、当該期間において、経常利益及び純利益は減少することとなります。再保険貸の償却が完了し、再保険契約を終了させると、その後の出再契約の利益は当社に帰属することとなります。以上により、当事業年度においては、当該再保険により経常収益は4,852百万円増加(前年同期は2,778百万円増加)、経常利益及び当期純利益は1,283百万円増加(前年同期は804百万円増加)しています。

 

(財政状態)

 当事業年度末の総資産は、67,820百万円(前事業年度末54,501百万円)となりました。主な勘定残高として、高格付けの公社債を中心とする有価証券は、47,425百万円となりました。また、再保険貸3,881百万円のうち、修正共同保険式再保険に係る未償却出再手数料の残高は3,657百万円となりました。

 負債は、責任準備金が増加したことから、45,749百万円(前事業年度末38,694百万円)となりました。主な勘定残高は、責任準備金42,558百万円、支払備金984百万円となりました。なお、当社は、2018年度の新契約より、責任準備金の積立方式を5年チルメル式*3から標準責任準備金*4へ移行しております。2018年度期初における5年チルメル式責任準備金と標準責任準備金との差額(以下、当差額)を、2018年度から2022年度の5事業年度にわたって解消するように積立を行ってきました。この度、「保険会社向けの総合的な監督指針」を踏まえ、事業環境の変化に対応した財務基盤の強化のため2022年度に積み立てる予定であった当差額を2021年度において積立を行いました。これにより、当事業年度において標準責任準備金への移行を完了しました。

 純資産は、当期純損失を計上したものの、海外市場における募集による新株式発行を行ったことにより22,071百万円(前事業年度末15,806百万円)となりました。なお、修正共同保険式再保険の活用により、純資産のうち利益剰余金には、未償却出再手数料の残高分を増加させる効果を含んでおり、資本の急激な減少を緩和しております。一方、収受した出再手数料は、再保険貸に資産計上された後、一定の期間において再保険収支に基づいて段階的に償却されます。それに応じて、当該期間において、純資産が減少することとなります。

 また、当事業年度末のソルベンシー・マージン比率は、3,182.8%(前事業年度末2,647.1%)となり、充分な支払余力を維持しております。

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりです。

*3.5年チルメル式とは、責任準備金の積立方式のひとつで、生命保険の契約当初から5年間は、保険料積立金の積立額を平準純保険料式より小さく積み立てる方式であり、生命保険会社は、その事業特性上、契約獲得費用を含む契約初年度の事業費が多額になる傾向にあることを考慮した積立方式です。また、平準純保険料式とは、保険料払込期間における事業費の想定を毎回一定額(平準)とし、責任準備金を計算する方式です。

*4.標準責任準備金とは、保険会社が設定する保険料水準にかかわらず、監督当局が保険会社の健全性の維持、保険契約者保護の観点から定めた責任準備金の積立水準のことで、平準純保険料式により計算されます。

 

(商品・サービスなどの取組み)

 当事業年度において、当社は「グロース」と「トランスフォーメーション」の加速を目指して、2021年9月に海外市場における募集による新株式発行を行いました。金融のデジタル化という構造的な変化を背景に、この数年間、当社の保有契約業績は力強い成長を継続しております。このようなオフラインからオンラインへの構造的かつ不可逆的な変化を好機と捉え、オンライン生保のリーディングカンパニーとして確固たる地位を築き、オンライン生保のプラットフォーマーへの変革を力強く推進していくべきと考え、前事業年度に引き続き資本調達を実施しました。

 商品の提供においては、2021年6月に、就業不能保険「働く人への保険3」を発売しました。病気やケガで働けなくなった時の生活費から、就業復帰後も生じる治療費の負担や収入減少もサポートする、新しいコンセプトの商品です。また、サービスの提供においても、AIを活用したチャットボットの導入やライフネット生命アプリのリニューアルなど、お客さまとの接点に関わる領域でさまざまな取組みを推進しました。当社は、このような顧客体験の革新への積極的な投資が、競争優位性向上に繋がると考えております。

 外部機関からの多数の評価も獲得しました。商品面では、定期死亡保険「かぞくへの保険」と就業不能保険「働く人への保険2」が「価格.com保険アワード2021年版」で5年連続総合第1位を獲得したことに加え、サービス面では、コンタクトセンターとウェブサイトが「2021年HDI格付けベンチマーク(生命保険業界)」において業界最多記録となる9回目の最高評価を受賞しました。さらに、実際に契約手続きをされたお客さまが評価する「J.D. パワー2022年生命保険契約満足度調査SM」では、ダイレクト型チャネル部門で2年連続第1位に選ばれました。

 当事業年度は、中長期的な成長を見据えた取組みも推進しました。まず、ホワイトレーベル事業においては、株式会社マネーフォワードと、2021年7月から「マネーフォワードの生命保険」の提供を開始しました。

 また、オンラインの生命保険プラットフォームを構築し、オンライン生保市場の拡大を牽引することを目的に、2021年5月に株式会社MILIZEとの合弁会社「ライフネットみらい株式会社」を設立し、7月からオンライン保険代理店事業及び保険証券管理サービスの提供を開始しました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、主に保険料収入の増加により、2,783百万円の収入(前事業年度2,937百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有価証券の取得により、7,749百万円の支出(前事業年度10,435百万円の支出)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、主に海外市場における募集による新株式発行を行ったことにより、9,668百万円の収入(前事業年度8,879百万円の収入)となりました。

 以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、7,761百万円(前事業年度末3,059百万円)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

 生命保険業においては、該当する情報がないため記載しておりません。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。本項における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

①当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営状況の分析等

 当社は、EEV(ヨーロピアン・エンべディッド・バリュー)を当社の企業価値を表す最も重要な指標と位置づけ、経営方針の経営目標に掲げております。当社は、2018年11月の経営方針の策定当初の経営目標としていた「EEVの早期の1,000億円到達」が間近となったことを踏まえ、2021年5月に、経営目標を「EEVの早期の2,000億円到達を目指す」ことに変更し、より一層の成長と高い収益力の実現を目指します。なお、経営方針については、第2〔事業の状況〕1〔経営方針、経営環境及び対処すべき課題等〕の(3)中長期的な経営戦略及び優先的に対処すべき課題をご参照ください。

 また、EEVの持続的な成長を支える経営指標として、成長性指標・収益性指標・健全性指標を設定しております。各指標の説明、成果及び分析は以下のとおりです。

(EEVについて)

 EV(エンベディッド・バリュー)は、「修正純資産」と「保有契約の将来利益現価」を合計した指標であり、当社が用いるEEV(ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー)は、EV(エンベディッド・バリュー)の種類のひとつです。

 「修正純資産」は、期末の純資産に調整額(負債中の内部留保等)を合計して算出します。当年度の純利益がプラスの場合は、修正純資産を増加させる要因となり、マイナスの場合は、修正純資産を減少させる要因となります。「保有契約の将来利益現価」は、現在の保有契約から生じる将来の利益を現在価値に割り引いたもので、新契約を獲得すると、一般的には、保有契約の将来利益現価が増加します。

(EEVを経営指標として定めた理由)

 生命保険契約は、一般的に、新規の契約を獲得する時に多くの費用がかかるものの、収益となる保険料収入を生み出す期間は長期となるため、費用と収益の発生にタイムラグが生じます。現在の法定会計上の損益計算書では、新規の契約獲得に係る費用を初年度に一括計上する一方で、収益となる保険料収入は長期にわたって計上されます。そのため、新規の契約が増加するほど当年度に計上される費用が増加し、当期の利益にマイナスの影響を与える構造となっております。さらに、当社のように保有契約に占める新契約の割合が大きい生命保険会社は、当期の損益計算書上の損益は、損失となる傾向にあります。当社は、超長期となるビジネスである生命保険会社の企業価値を評価するためには、法定会計に加えて、将来の利益も含めた長期の収益性を示すEV(エンベディッド・バリュー)も考慮する必要があると考え、経営方針の経営指標として定めております。

(EEV計算結果と変動要因分析)

 当事業年度末のEEVは、116,604百万円となりました。修正純資産は25,168百万円、保有契約の将来利益現価は91,435百万円となりました。

(百万円)

 

2021年3月末

2022年3月末

増減

EEV

95,140

116,604

21,464

修正純資産

18,990

25,168

6,177

保有契約の将来利益現価

76,149

91,435

15,286

 また、前事業年度末から当事業年度末までのEEVの変動要因分析は以下のとおりです。

(百万円)

2021年3月末EEV

95,140

 

2021年3月末EEVの調整*1

635

 

修正EV増加額

6,109

 

2021年度の新契約価値

4,679

 

将来利益現価の割り戻し

1,313

保険関係の前提条件と実績の差異

116

保険関係の前提条件の変更

4,652

 

経済的前提条件と実績の差異

219

 

2022年3月末EEVの調整*2

9,846

 

2022年3月末EEV

116,604

 

*1.リスクフリー・レートとして参照する金利を 金利スワップレートから国債利回りに変更したことによる影響。

*2.資本の増減による項目。主に2021年9月の海外公募増資による資本調達の影響。

 前事業年度末から当事業年度末にかけて、EEVは21,464百万円増加しました。主な要因は、修正EV増加額、保険関係の前提条件の変更、資本調達による増加です。

 まず、修正EV増加額につきましては、EEVの変動のうち、「新契約価値」「将来利益現価の割り戻し」「保険関係の前提条件と実績の差異」の合計額を修正EV増加額と定義したもので、当社の期間業績を表す指標と位置付けております。修正EV増加額の構成要素のうち、当事業年度獲得した新契約から生じた新契約価値が主にEEVの成長に寄与しました。次に、保険関係の前提条件の変更につきましては、主に、保険事故発生率(死亡率及び罹患率)の前提の見直しを行いました。最後に、資本調達につきましては、上記の変動要因分析のうち「2022年3月末EEVの調整」にその影響額が計上されておりますが、2021年9月に実施した海外市場における募集による新株式発行などにより純資産が増加したことによってEEVが増加しました。

 

(EEVの持続的な成長を支える経営指標)

 当社は、成長性指標として保有契約業績及び新契約業績、収益性指標として営業費用を除く事業費率及び営業費用効率、健全性指標としてソルベンシー・マージン比率を設定し、EEVの持続的な成長を支える経営指標としております。各指標の結果分析は以下のとおりです。

 成長性指標について、当事業年度末の保有契約業績は、年換算保険料が前事業年度末比115.0%の21,511百万円、件数が前事業年度末比115.3%の507,428件となりました。保有契約業績は、主に新契約業績及び解約失効率により増減します。2021年度の新契約業績においては、年換算保険料が前事業年度比97.4%の4,089百万円、件数が前事業年度比100.0%の100,636件となりました。前事業年度は、新型コロナウイルス感染症拡大及び2020年4月の緊急事態宣言の影響を受け、生命保険ニーズが高まったことなどにより新契約業績が伸長しましたが、当事業年度は、特に下半期の緊急事態宣言の解除以降、生命保険のニーズが一時的に低下したことなどにより、成長速度が緩やかとなった結果、前事業年度と同水準となりました。また、解約失効率においては、前事業年度の6.0%から6.6%となりました。前事業年度は、主に新型コロナウイルス感染症拡大によるお客さまの健康不安の増大の影響等を受けたことなどにより当社の過去の水準と比べ低下しましたが、当事業年度は、新型コロナウイルス感染症拡大以前の従来の水準に落ち着いております。成長性指標については、3〔経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析〕(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況もご参照ください。

 収益性指標については、営業費用を除く事業費率(事業費*3のうち、営業費用を除いた事業費を保険料収入で除した割合)と、営業費用効率(営業費用を新契約件数で除した新契約1件当たりの営業費用)を指標としております。当事業年度の営業費用を除く事業費率は、保有契約の増大に伴い保険料収入が増加した一方、人材等への投資を行ったため、19.5%(前事業年度19.6%)とわずかな改善になりました。営業費用効率は、前事業年度の6.6万円から8.2万円となりました。前事業年度は、特に上半期において新型コロナウイルス感染症拡大に伴い一時的に生命保険ニーズが高まったことが営業費用効率の改善に大きく寄与しました。一方、当事業年度は、特に下半期の緊急事態宣言の解除以降、生命保険のニーズが一時的に低下したことなどにより新契約業績の成長速度が緩やかとなったものの、足元の事業環境等を踏まえて営業費用を積極的に投下した結果、営業費用効率は低下しました。

 健全性指標のソルベンシー・マージン比率は、3,182.8%(前事業年度末2,647.1%)で、充分な水準を確保しております。ソルベンシー・マージン比率についての詳細については、3〔経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析〕(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容①当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容のc. ソルベンシー・マージン比率もご参照ください。

*3.当社は事業費を、営業費用、保険事務費用、システム・その他費用の3つに分類しております。営業費用を除く事業費とは、保険事務費用とシステム・その他費用の合計を指します。なお2021年度の営業費用を除く事業費は3,877百万円です。

 

b. 経常利益等の明細(基礎利益)

(a) 基礎利益

 基礎利益とは生命保険業における収益性を示す指標のひとつです。具体的には、保険契約者から収受した保険料等の保険料等収入、資産運用収益及び責任準備金戻入額等その他経常収益等で構成される基礎収益から、保険金等支払金、責任準備金等繰入額、資産運用費用、事業費及びその他経常費用等から構成される基礎費用を控除したものとして計算されます。

 基礎利益と経常利益との差及びその内訳は、以下のとおりです。

                               (単位:百万円)

 

前事業年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

基礎利益                  A

△2,874

△3,213

キャピタル収益

65

190

 

金銭の信託運用益

62

11

売買目的有価証券運用益

有価証券売却益

2

178

金融派生商品収益

為替差益

その他キャピタル収益

キャピタル費用

0

0

 

金銭の信託運用損

売買目的有価証券運用損

有価証券売却損

有価証券評価損

金融派生商品費用

為替差損

0

0

その他キャピタル費用

キャピタル損益               B

65

190

キャピタル損益含み基礎利益         A+B

△2,809

△3,023

臨時収益

 

再保険収入

危険準備金戻入額

その他臨時収益

臨時費用

280

222

 

再保険料

危険準備金繰入額

280

222

個別貸倒引当金繰入額

特定海外債権引当勘定繰入額

貸付金償却

その他臨時費用

臨時損益                  C

△280

△222

経常利益                              A+B+C

△3,089

△3,245

注1.当事業年度の基礎利益には、金銭の信託運用益59百万円を含んでおります。

 2.前事業年度の基礎利益には、金銭の信託運用益48百万円を含んでおります。

(b) 三利源について

 基礎利益は「危険差損益」、「費差損益」及び「利差損益」に分解することも可能であり、これらを三利源と呼んでおります。生命保険料の計算は、予定発生率(死亡率、入院率など)、予定利率、予定事業費率(付加保険料部分)の3つに基づいております。これらの「予定」と実績との差によって生命保険会社の利益(基礎利益)が生じていると考え、それぞれの差分を算出することによって、基礎利益がどのような要因から生じているのかを明らかにするのが利源分析の考え方です。

 

危険差損益

想定した保険金・給付金の支払額(予定発生率)と実際に発生した支払額との差

費差損益

想定した事業費(予定事業費率)と実際の事業費支出との差

利差損益

想定した運用収支(予定利率)と実際の運用収支との差

(注)当社の利源分析は、保険数理上合理的な方法を採用しておりますが、具体的な計算方法は他の保険会社と異なることがあります。当社では保険料の内訳計算等について責任準備金の積立方式を考慮した方式とし、解約・失効による利益(解約失効益)は、費差損益に含めております。

 

(c) 基礎利益の内訳(三利源)

 当事業年度の基礎利益及び三利源の状況は以下のとおりです。前事業年度の2,874百万円のマイナスに対して、3,213百万円のマイナスとなりました。

(単位:百万円)

 

前事業年度

(自 2020年4月1日
  至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日
  至 2022年3月31日)

基礎利益

△2,874

△3,213

 

危険差損益

3,274

3,348

 

費差損益

△6,164

△6,648

 

利差損益

16

86

 

c. ソルベンシー・マージン比率

(a) ソルベンシー・マージン(支払い余力)の考え方

 ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株式市場の暴落など、通常の予測の範囲を超えて発生するリスクに対応できる「支払い余力」を有しているかどうかを判断するための経営指標・行政監督上の指標のひとつです。具体的には、純資産などの内部留保と有価証券含み益などの合計(ソルベンシー・マージンの総額=支払い余力)を、定量化した諸リスクの合計額で除して求めます。なお、ソルベンシー・マージン比率が200%以上であれば、行政監督上、健全性についてのひとつの基準を満たしているとされます。

ソルベンシー・マージン比率 =

ソルベンシー・マージン総額

 × 100(%)

リスクの合計額 × 1/2

 

(b) ソルベンシー・マージン比率

 当事業年度末のソルベンシー・マージン比率は、3,182.8%となり、支払余力は引き続き高水準を維持しております。

                                   (単位:百万円)

項   目

前事業年度末

(2021年3月31日)

当事業年度末

(2022年3月31日)

(A) ソルベンシー・マージン総額

28,455

37,758

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

資本金等

14,846

21,373

価格変動準備金

76

102

危険準備金

2,003

2,226

一般貸倒引当金

(その他有価証券評価差額金(税効果控除前)・繰延ヘッジ損益(税効果控除前))×90%

(マイナスの場合100%)

1,200

872

土地の含み損益×85%

(マイナスの場合100%)

全期チルメル式責任準備金相当額超過額

10,328

13,184

持込資本金等

負債性資本調達手段等

控除項目

その他

(B) リスクの合計額

0102010_002.png

2,149

2,372

 

 

 

 

 

 

保険リスク相当額        R1

1,113

1,077

第三分野保険の保険リスク相当額 R8

358

379

予定利率リスク相当額      R2

3

3

最低保証リスク相当額      R7

資産運用リスク相当額      R3

1,440

1,745

経営管理リスク相当額      R4

87

96

(C) ソルベンシー・マージン比率

0102010_003.jpg

2,647.1%

3,182.8%

(注) 以上の数値は、保険業法施行規則第86条、第87条及び平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、主に保険料収入の増加により、2,783百万円の収入(前事業年度2,937百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有価証券の取得により、7,749百万円の支出(前事業年度10,435百万円の支出)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、主に海外市場における募集による新株式発行を行ったことにより、9,668百万円の収入(前事業年度8,879百万円の収入)となりました。

 以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、7,761百万円(前事業年度末3,059百万円)となりました。

 当社の資本の財源及び資金の流動性については以下のとおりであります。

 当社は、保険料収入を主な資金の源泉としております。また、保険金・給付金の支払いに対応するために必要な一定程度の預貯金を含め、手元流動性を確保したうえで資産運用を行っております。

 当事業年度においても、公社債など高格付けの円金利資産を中心とした運用を継続しました。なお、適切なリスク管理のもとで株式及び国内外の債券などを対象とした投資信託への投資を通じて資産の多様化を行っております。

 また、当社の成長のさらなる加速を目指して成長資本を拡充するため、2021年9月に海外市場における募集による新株式発行を行い、資金調達を実施しております。調達した資金は新契約獲得のためのマーケティング費用、システム開発費用、新規事業投資等に活用し、保有契約の拡大や「インターネットの生命保険会社」から「生命保険のインターネット企業」への変革の実現を目指してまいります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成は経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の開示に影響を与える見積り及び予測を必要とします。経営者は、これらの見積りや予測について、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実績はこれらと異なる可能性があります。

 当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表」の「重要な会計方針」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針の適用が、その作成において用いられる見積り及び予測により、当社の財務諸表に大きな影響を及ぼします。

 なお、新型コロナウイルス感染症拡大による会計上の見積りへの影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表」の「追加情報」に記載しております。

 

a. 金融商品の時価の算定方法

 有価証券は、時価法に基づいて評価しております。時価は、原則として市場価格に基づいて算定しておりますが、市場価格がない場合には将来キャッシュ・フローの現在価値等に基づく合理的な見積りによることとしております。将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、見積り額は変動する可能性があります。

 

b. 有価証券の減損処理

 売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価が取得価額に比べて著しく下落した場合、回復する見込みがあると認められる場合を除き、合理的な基準に基づく減損処理を行うこととしております。今後の金融市場の状況によっては、多額の有価証券評価損を計上する可能性があります。

 

c. 繰延税金資産及び繰延税金負債

 繰延税金資産及び繰延税金負債については、「税効果会計に係る会計基準(平成10年10月30日企業会計審議会)」に基づき、認められる額を計上しております。

 

d. 貸倒引当金の計上基準

 当社は、債権の貸倒れによる損失に備えるため、資産の自己査定基準及び償却・引当基準に則り、債務者の状況に応じ、債権の回収不能時に生じる損失の見積り額について、貸倒引当金を計上することとしております。将来、債務者の財務状況が悪化し支払い能力が低下した場合には、引当金の計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

e. 支払備金の積立方法

 保険契約に基づいて支払義務が発生したと認められる保険金等について、事業年度末時点の未払いの金額を見積り、支払備金として積み立てております。今後、見積りに影響する新たな事実の発生や裁判の判例等により、支払備金の計上額が当初の見積り額から変動する可能性があります。

 

f. 責任準備金の積立方法

 保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てております。当社は責任準備金の見積りに使用される基礎率は合理的であると考えておりますが、実際の結果が著しく異なる場合、あるいは基礎率を変更する必要がある場合には、責任準備金の金額に影響を及ぼす可能性があります。なお、当事業年度において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響はありません。

 責任準備金の積立方法は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表」の「重要な会計方針」に記載のとおりです。

 

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