以下の記載における将来に関する事項は、明示がある場合又は文脈上明らかな場合を除き、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当行グループは、お客さまの声を明日への羅針盤とする「最も身近で信頼される銀行」を目指してまいります。
「信 頼」:法令等を遵守し、お客さまを始め、市場、株主、社員との信頼、社会への貢献を大切にします。
「変 革」:お客さまの声・環境の変化に応じ、経営・業務の変革に真摯に取り組んでいきます。
「効 率」:お客さま志向の商品・サービスを追求し、スピードと効率性の向上に努めます。
「専門性」:お客さまの期待に応えるサービスを目指し、不断に専門性の向上を図ります。
(2) 経営環境
当連結会計年度の経済情勢を顧みますと、世界経済は、新型コロナウイルス感染動向に左右されつつも、概ね回復基調で推移しました。米国、欧州経済は、ワクチン接種の進展を背景にコロナショック前のGDP水準を回復し、中国経済は不動産問題やゼロコロナ政策の下押しはあるものの、底堅い成長が続きました。日本経済は、ワクチン接種の遅れから欧米主要国に比べ回復が後ずれしているものの、緩やかに持ち直しました。しかし、2月下旬のロシアによるウクライナ侵攻以降、景気下振れリスクが急速に高まりました。エネルギーのロシア依存度が高い欧州経済への悪影響が強く懸念されるほか、資源価格高騰やサプライチェーンの混乱を通じた悪影響が懸念されます。更に、3月に入り中国で新型コロナウイルスが感染急拡大するなど、世界的に景気の不透明感が強まっています。
金融資本市場では、米国10年債利回りは、デルタ変異株の感染拡大等により、7月に一時1.1%台まで低下しましたが、想定以上のインフレ高進を受け、12月以降、FRB(米連邦準備理事会)は利上げ姿勢を鮮明にし、3月には2.5%程度まで上昇しました。日本の10年債利回りは、12月まで概ね0~0.1%程度の狭いレンジで上下した後、米金利に追随して上昇し、3月下旬に一時0.25%を上回りましたが、日本銀行の指値オペを受け、月末に0.2%程度まで低下しました。
また、海外のクレジットスプレッドは、12月までは概ね安定的に推移しましたが、ウクライナ情勢や米金利上昇等に伴う企業業績悪化懸念等を背景に、1月以降、急速に拡大する局面も見られました。
外国為替市場では、対ドルで概ね110円前後で推移した後、日米金融政策の方向性の違いを反映し、3月に一時125円台まで円安が進みました。対ユーロでは、欧州の景気動向とECB(欧州中央銀行)の金融政策を背景に、概ね130円前後で推移した後、2月下旬以降、ウクライナ情勢の緊迫化を受けユーロが下落する中、136円程度まで円安が進みました。
日経平均株価は、景気回復の遅れから欧米主要国株価に比べ低迷が続き、感染動向に左右されながら、概ね29,000円を挟んで上下しましたが、ウクライナ情勢の緊迫化を受け下落基調に転じました。その後は円安等を受けてやや持ち直し、3月末にかけて28,000円程度で推移しました。
このように、新型コロナウイルスに関しては、日米欧を中心にワクチン接種が進んだものの、年末から2月にかけて、世界的に新規感染者数が大幅に増加する等、依然として不透明な状況が継続しています。また、インフレ懸念を背景とした米国等の金融政策の転換や、ウクライナ情勢等を背景に、海外短期金利上昇に伴う外貨調達コストの上昇や海外クレジットスプレッドの拡大が生じているほか、今後の金融経済環境についても、不確実性が高い状況となっております。更に、国内の低金利環境も長期化するなど、国内外の有価証券による運用を主たる収益源とする当行グループにとって、厳しい経営環境が継続しております。
(3) 経営戦略、対処すべき課題等
当行グループをとりまく社会環境は、人口減少・超高齢化社会、地域経済の縮小、デジタル革命の進展、コロナ禍を受けた新しい生活様式への変化、超低金利環境の長期化など、大きく変化しております。こうした環境変化への課題認識と当行グループの強み・経営資源を踏まえ、当行グループは2021年5月に中期経営計画(2021年度~2025年度)を策定し、当該中期経営計画で明確化した3つのミッションの下で、急激に変化する社会環境に対応したサステナブルな経営の実現を目指すべく、ESG経営を推進しています。2021年度は、5つの重点戦略を着実に推進し、その基盤を固めました。2022年度は、重点戦略の取組みを加速し、目指す姿の実現に向けた道筋をつけてまいります。
当行グループのパーパス・経営理念・ミッション
中期経営計画(2021年度~2025年度)の基本方針と5つの重点戦略
<財務目標>
中期経営計画期間( 2021 年度~ 2025 年度)の財務目標について、収益性指標として連結当期純利益 ( 当行帰属分)・ROE ( 株主資本ベース ) 、効率性指標としてOHR ( 金銭の信託運用損益等を含むベース )( 注1 ) ・営業経費 (2020 年度対比 ) 、健全性指標として自己資本比率 ( 国内基準 ) ・CET1(普通株式等Tier1)比率(国際統一基準)(注2)を設定しました。
当行グループは、この財務目標の下、約 24,000 の郵便局ネットワークを通じて全国のお客さまに良質な金融サービスを提供しながら、同時に収益性・効率性改善に向けた取組みを進めてまいります。
(注) 1.Over Head Ratioの略。銀行業務の効率性を示す指標の一つで、一般的には、経費の業務粗利益に対する比率のこと。当行は相応の規模で金銭の信託を活用した有価証券等運用を行っていることを踏まえ、金銭の信託に係る運用損益も分母に含めたOHRを指標として設定。経費÷(資金収支等+役務取引等利益)で算出。資金収支等とは、資金運用に係る収益から資金調達に係る費用を除いたもの(売却損益等を含む。)
2.その他有価証券評価益除くベース。2025年度目標はバーゼルⅢ完全実施ベース
(リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革)
○デジタルサービス戦略の展開
安心・安全を最優先に、デジタル人材を強化しつつ、すべてのお客さまが利用しやすいデジタルサービスを拡充してまいります。
「通帳アプリ」等のデジタルサービスについて、機能や使いやすさの継続的な改善に取り組むとともに、お客さまの資産・収支を見える化し、家計管理を支援する「家計簿・家計相談アプリ」の構築に取り組んでまいります。
また、全国の郵便局ネットワークを活用し、通帳アプリ等の各種デジタルサービスの積極的なご案内・身近なサポートを進めてまいります。
更に、通帳アプリ、家計簿・家計相談アプリを起点として、多様な事業者との連携を通じて最適なサービスを提供する、オープンな「共創プラットフォーム」の構築に注力してまいります。
○資産形成サポートビジネスの推進
お客さま本位の業務運営の下、対面チャネルとデジタルチャネルの相互補完により、お客さまニーズに応じ、最適な商品・チャネルを提案いたします。
対面チャネルにおいては、2022年4月から窓口の投資信託商品ラインアップを当行グループのお客さまに理解いただきやすい商品に厳選するとともに、投資初心者には主に積立投資を提案してまいります。また、2022年5月からは「投資一任サービス(ゆうちょファンドラップ)(注3)」を開始しました。加えて、オンラインでの相談環境の一層の充実を図ってまいります。
投資信託の購入時手数料を無料化したデジタルチャネルにおいては、投資信託Webページやアプリの更なる充実に取り組み、よりお客さまに利用いただきやすいチャネルに見直してまいります。
(注) 3.投資一任契約に基づき、投資運用業者がお客さまから投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づきお客さまのための投資を行うに必要な売買・管理等までを行うサービス
○新規ビジネスの推進
キャッシュカード一体型のブランドデビットカード「ゆうちょデビット」の取扱いを2022年5月から開始しております。また、「信託・相続サービス」等、新たなサービスの開始に向けて準備してまいります。
(デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上)
窓口タブレットを全直営店に導入するほか、新規口座開設をスマートフォン上で行う「口座開設アプリ」のサービスを開始する等、お客さまの取引チャネルの選択肢を拡充しながら、窓口業務の効率化を進めてまいります。
貯金事務センターにおいては、BPMS(注4)の機能・拠点の拡大に向けた準備、相続関連業務のシステム化や AI - OCR ( 注5 ) ・RPA ( 注6 ) の更なる拡大 を進める等、今後ともデジタル技術を組み合わせた総合的な事務の自動化を推進してまいります。
これらの取組みを通じ、引き続き窓口等の業務量削減を図る一方、強化分野への人員シフトを継続しつつ、育成の強化を図ることで、より一層、生産性の向上を図ってまいります。
また、引き続き、戦略的なIT投資等、重点分野への投資を強化しつつ、既定経費の削減により、経営の効率性改善を目指してまいります。
(注) 4 .Business Process Management Systemの略。RPAを自動で起動し、人による確認作業等を要求するなど、業務フローをシステム的に制御し、自動的に工程管理を行うシステム
5 . AIを活用し、非定型帳票や手書き文字等の認識率を向上したOCR
6.Robotics Process Automationの略。今まで人間がマウスやキーボードで操作していた、端末操作等を自動化すること等によって、作業時間の短縮や品質向上を図る技術
(多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化)
お客さまからお預かりした大切な資金を地域へと循環するために、特にエクイティ性資金の供給を拡充し、地域活性化への貢献に努めてまいります。
「地域活性化ファンド」や「投資・事業経営会社」への出資を引き続き推進するとともに、連結子会社のJPインベストメント株式会社が2022年4月に設立した「JPインベストメント地域・インパクト1号ファンド」に出資する等、地域経済発展に貢献してまいります。
また、地域金融機関と連携し、「地域の金融プラットフォーム」として、ATM連携や税公金取りまとめ事務共同化等についても継続的に取り組み、多様な手段により、全国の地方創生を多面的に支援してまいります。
(ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化)
ウクライナ情勢、インフレ懸念を背景とした米国等の金融政策の転換等によるマーケット変動に十分留意しつつ、リスク対比リターンやストレス耐性の強化等を意識したポートフォリオ運営を実施します。
リスク性資産については、投資適格領域のクレジット資産(国内外の社債等)を中心に残高を積み上げていくほか、リスク性資産のうち、戦略投資領域(注7)については、中長期的な視点で、優良ファンドへの選別的な投資を継続してまいります。
加えて、ストレス・テスト高度化、モニタリング充実、外貨流動性リスク低減等、リスク管理高度化の取組みを推進してまいります。
(注) 7.プライベートエクイティファンド(成長が見込まれる未上場企業等へ投資するファンド)、不動産ファンド等からなる戦略的な投資領域
(一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化)
○組織風土改革
社長を委員長とする「サービス向上委員会」を中心に、お客さま本位の業務運営の実践に向けた組織風土改革に取り組みます。具体的には、役員等による社内向け動画の活用や、好取組事例の社内共有等を通じた社内コミュニケーション強化等を図ってまいります。
○ステークホルダーとの対話促進・開示充実
各事業部門の責任者によるIR機会の創出等、IR活動・IR態勢を充実してまいります。また、プライム市場上場会社として、気候変動リスク等に係る開示の充実を進めるほか、社会的要請やトレンド等に対応した各種開示の充実に努めてまいります。
○内部管理態勢の強化
日本郵便株式会社及び日本郵政株式会社と連携し、部内犯罪やお客さま情報の漏洩・紛失の防止等、コンプライアンス態勢の更なる強化に努めてまいります。
また、重点点検システムの点検や2023年5月の基幹系システムの円滑な更改に向けた対応等、システムリスク管理の強化を図るとともに、サイバーセキュリティのアクションプランの継続等、高度なサイバーセキュリティ対策の実行を推進します。
加えて、継続的顧客管理の更なる推進や取引モニタリングの強化等、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の高度化に取り組んでまいります。
(ESG経営の推進)
当行グループがESG経営の観点から特に取り組むべき社会課題として設定した4つの重点課題(マテリアリティ)のうち、「日本全国あまねく誰にでも「安心・安全」な金融サービスを提供」と「地域経済発展への貢献」については、前述のとおり、リアルとデジタルの相互補完によるリテールサービスの充実や、多様な枠組みによる地域への資金循環等の取組みを推進してまいります。
当行グループが定めた4つのマテリアリティ
「環境の負荷低減」については、当行グループのCO2排出量削減に向け、引き続き使用電力の再生可能エネルギーへの切り替えを推進します。また、ESGテーマ型投資(注8)の2025年度末の残高目標を従来の2兆円から4兆円に引き上げ、資金運用業務を通じた社会全体の環境負荷低減に努めてまいります。
「働き方改革・ガバナンス高度化の推進」については、強化分野の人材確保・育成、多様な人材を活かす環境整備や健康経営の積極的な推進等の人材投資の強化に加え、社員のキャリア形成支援・人材の見える化実現による人的資本の最大化を目指してまいります。
また、取締役会の任意の諮問機関として「リスク委員会」を設置する等、ガバナンス態勢の一層の強化に取り組んでまいります。
(注) 8.ESG債(グリーン債、ソーシャル債(パンデミック債含む。)、サステナビリティ債)、再生可能エネルギーセクター向け与信、地域活性化ファンド等
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