(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の流行の波を繰り返し、多くの都道府県で緊急事態宣言等が発令される事態が断続しました。その結果社会活動や経済活動に影響が及び、企業収益や個人消費の二極化が進みました。世界経済においても我が国と同様に不透明な状況が継続し、エネルギー等資源価格高騰の影響を受けてインフレ傾向が顕著となり、米中貿易摩擦による影響や金融資本市場の変動、当連結会計年度の終わりに悪化したウクライナ情勢等、我が国の景気低迷につながるリスクを注視しなければならない状況が続きました。
当社グループが属する住宅業界におきましては、消費者の雇用・所得環境が悪化するなかでも、各種住宅取得支援政策やテレワークの普及、住宅ローン金利が低い状態で継続したこと等により、消費者の住宅需要は底堅い動きがみられ、新設住宅着工戸数は前年同月比で回復傾向が続きました。
当社グループの主な顧客層である中小規模の住宅事業者を取り巻く経営環境は、楽観視出来ない状況が続きました。当連結会計年度の初頭に発生した世界的な木材高騰は一過性に終わったものの、世界的な資源価格高騰や円安等の影響により、木材価格の上昇が長期化しました。住宅価格も上昇しましたが、原材料費の値上げに伴う価格転嫁が追い付かないケースが増加し、利益の確保や事業の継続のための資金繰りが困難となるリスクが高まり、厳しい状況となりました。
このような事業環境のもと、当社グループは創業当時から掲げております「住宅事業者の経営を支援するために住宅産業の課題を解決する」という基本方針に基づき、グループ一体となり差別化を訴求する営業活動や、住宅事業者のサポート業務、住宅事業者の課題を解決する戦略商品の開発検討等に注力し、各事業を推進いたしました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
A.財政状態
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比較して2,173,774千円増加し、22,501,260千円となりました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比較して1,316,345千円増加し、15,673,095千円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比較して857,428千円増加し、6,828,165千円となりました。
B.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、営業収益7,689,496千円(前年同期比7.9%増)、営業利益1,696,352千円(同19.1%増)、経常利益1,699,414千円(同20.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,130,594千円(同19.5%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
(A) 住宅金融事業
住宅金融事業におきましては、事業の継続的成長に向け、幅広い商品ラインナップやコンサルティング力等の強みを活かし、住宅事業者への経営支援やサポートを推進いたしました。営業拠点に関しましては、前連結会計年度に開設した代理店運営による8店舗が本格的に稼働したほか、住宅事業者等の利便性向上及び営業体制の強化のため、当連結会計年度において新規に12店舗を開設いたしました。
当連結会計年度における融資実行件数(銀行代理ローン商品及び提携ローン商品を除く)は前連結会計年度比で2.0%減少いたしましたが、内訳については主力商品以外のプロパーローン商品の件数が増加し、多角化が進展いたしました。主力商品である「MSJフラット35」は、住宅ローン業界において手数料の価格競争が激化しているなかで、当社は付加価値の向上により融資手数料率を維持し、1案件当たりの融資金額も増加いたしました。「MSJフラット35ベストミックス」や「MSJプロパーつなぎローン」等のプロパーローン商品については、貸付残高が増えたことにより、利息収入が増加いたしました。
この結果、当連結会計年度の業績は、営業収益3,401,655千円(前年同期比5.1%増)、営業利益959,304千円(同11.1%増)となりました。
(B) 住宅瑕疵保険等事業
住宅瑕疵保険等事業におきましては、主力商品であります戸建住宅及び共同住宅の「新築住宅かし保険」の販売を推進するため、従前より力を入れております住宅事業クラウドシステム「助っ人クラウド」及び「地盤保証」の同時提案による差別化を前面に打ち出した積極的な営業活動を展開し、複数商品のクロス販売を推進いたしました。
住宅業界においては、新設住宅着工戸数が回復傾向で推移したことも後押しし、当連結会計年度における保険証券・保証書・評価書・適合証等の発行件数(時限的な経済政策に関連するものは除く)は前連結会計年度比で10.4%増加いたしました。なお、前連結会計年度末より開始され、当連結会計年度に終了した時限的な経済政策であるグリーン住宅ポイント制度の施行に伴い、対象住宅証明書の発行や各種審査・検査サービスを提供し、これらのサービスが当事業の業績に貢献いたしました。
この結果、当連結会計年度の業績は、営業収益3,714,371千円(前年同期比9.2%増)、営業利益620,169千円(同33.4%増)となりました。
(C) 住宅アカデメイア事業
住宅アカデメイア事業におきましては、住宅事業クラウドシステム「助っ人クラウド」及びこれに連動する「住宅メンテナンス保証」「住宅設備延長修理保証」等の住宅保証サービスの提供を推進いたしました。
顧客である一部の住宅事業者・デベロッパーにおいては、新型コロナウイルス感染症拡大等の影響による竣工・引渡遅延が継続しており、その影響を受け当連結会計年度における住宅保証サービス件数は前連結会計年度比で1.9%減少いたしましたが、この内訳に関しては「住宅メンテナンス保証」が増加し、業績に貢献いたしました。また、住宅瑕疵保険等事業と同様にグリーン住宅ポイント制度の施行に関連し、住宅事業者向けの設計サポートサービス(「住宅フルフィルメント・サービス」)が収益に寄与しました。
この結果、当連結会計年度の業績は、営業収益573,468千円(前年同期比16.3%増)、営業利益116,038千円(同22.3%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、5,023,102千円と前連結会計年度末に比べ77,932千円増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動により減少した資金は、384,859千円(前連結会計年度は1,700,511千円の支出)となりました。主な収入要因は、税金等調整前当期純利益1,699,414千円、減価償却費118,189千円、売上債権の減少10,158千円、営業未収入金の減少727,350千円、前受金の増加192,449千円であり、主な支出要因は、営業貸付金の増加2,799,890千円、営業預り金の減少84,320千円、法人税等の支払額443,282千円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動により減少した資金は、182,459千円(前連結会計年度は221,665千円の支出)となりました。主な要因は、無形固定資産の取得による支出63,697千円、敷金及び保証金の差入による支出99,388千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動により増加した資金は、645,250千円(前連結会計年度は1,654,124千円の収入)となりました。主な要因は短期借入金の増加940,780千円、配当金の支払額293,893千円によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
A.生産実績
当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
B.受注実績
当社グループの事業の性格上、受注状況の記載に馴染まないため、記載しておりません。
C.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
住宅金融事業 (千円) |
3,401,655 |
105.1 |
住宅瑕疵保険等事業 (千円) |
3,714,371 |
109.2 |
住宅アカデメイア事業 (千円) |
573,468 |
116.3 |
合計(千円) |
7,689,496 |
107.9 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては後述の「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」をご参照ください。
また、当社グループでは、固定資産の減損会計や繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りについて、今後の新型コロナウイルス感染症の広がり方や収束時期等に関して先行きを予測することは困難でありますが、当該感染症の影響は当連結会計年度末以降、日本経済が緩やかに回復すると仮定した場合において、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき会計上の見積りを行っております。
なお、経営者は、過去の実績や状況に応じ、合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っております。しかしながら、これらの見積り及び判断は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
A.経営成績等
(A) 財政状態
(資産)
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比較して2,173,774千円増加し、22,501,260千円となりました。主な要因は、売掛金が10,158千円、営業未収入金が727,350千円、ソフトウエアが17,990千円減少する一方、現金及び預金が77,074千円、営業貸付金が2,799,890千円、敷金が93,591千円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比較して1,316,345千円増加し、15,673,095千円となりました。主な要因は、未払金が74,695千円、営業預り金が84,320千円減少する一方、短期借入金が940,780千円、前受金が192,449千円、未払法人税等137,600千円増加したことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比較して857,428千円増加し、6,828,165千円となりました。主な要因は、当連結会計年度において、利益剰余金が836,543千円増加したことによるものです。
(B) 経営成績
(営業収益)
営業収益は、金融事業において、従前より力を入れております多彩な商品ラインナップ等による住宅事業者への経営支援の推進及び前連結会計年度に開設した新規8店舗が本格稼働したことに加え、住宅瑕疵保険等事業、住宅アカデメイア事業においても好調に推移したことが主な要因となり、前連結会計年度と比較して559,698千円増加し、7,689,496千円(前年同期比7.9%増)となりました。
(営業原価、販売費及び一般管理費)
営業原価は、住宅金融事業、住宅瑕疵保険等事業、住宅アカデメイア事業において、営業収益が増加したことにより、前連結会計年度と比較して102,528千円増加し、2,199,070千円(同4.9%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、住宅金融事業において融資実行件数増加に伴う代理店手数料の増加、住宅瑕疵保険等事業においてグリーンポイントに係る取次店手数料の増加により、前連結会計年度と比較して185,109千円増加し、3,794,072千円(同5.1%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益が増加したことにより、前連結会計年度と比較して184,670千円増加し、1,130,594千円(同19.5%増)となりました。
(c) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
B.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、金融サービスを取り扱っており、また主に住宅・不動産関連の業界に属する住宅事業者及び住宅を購入等する消費者を顧客としていることから、金利、住宅の建設・流通、国内の人口等の動向や不動産に関わる税制や消費税の改正等の影響を受けることがあります。
例えば、現在のような極めて低い水準の住宅ローン金利が上昇に転じた場合や、建材・資材価格の急激な上昇、景気悪化等による消費者の住宅取得マインドが低迷した場合、住宅着工・流通戸数が急激に減少した場合等は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、我が国の人口・世帯数は減少し続けることが予想されており、中長期的には新設住宅着工戸数も減少傾向が続くと予想されていることから、当社グループが新築住宅向けの住宅ローンや住宅瑕疵(かし)保険の販売に過度に依存し続けた場合、将来の経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
C.資本の財源及び資金の流動性
当社グループのセグメントのうち、住宅金融事業では、住宅ローンの貸付に必要な資金を銀行より借入れることにより調達しております。当社は顧客への貸付を行うと同時に、当該貸付債権を独立行政法人住宅金融支援機構に譲渡し、この譲渡代金を銀行からの借入金返済に充てております。
住宅瑕疵保険等事業では、当該事業の柱である瑕疵検査業務、及び瑕疵保険業務において、営業収益である検査料収入、瑕疵保険料収入はそれぞれ事業主から前受で受取り、この資金をもって営業原価である検査員への検査料、損害保険会社への再保険料を支出しており、その他の必要資金は自己資金で賄っております。従って住宅金融事業、住宅瑕疵保険等事業においては、特に運転資金の調達は必要としておりません。
住宅アカデメイア事業では、住宅保証サービス提供業務等において、基本的に売掛金の回収と買掛金の支払いはほぼ同時に行われます。また設備投資資金については、当社からの投融資で賄っております。
D.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、長期利益の実現を目指し、「堅実で持続的な増益」を最も重要な経営目標としております。増収も主要な目標のひとつと考えておりますが、顧客・投資家・株主・従業員・社会等のステークホルダーに対する責任を果たすためには、健全で積極的な投資を継続し持続的に成長していくことが肝要であるとの価値観から、増収よりも増益に重きを置き、「営業利益」を重要な指標として位置付けております。
当連結会計年度における「営業利益」は1,696,352千円となり、前連結会計年度と比較して19.1%の増益となりました。
お知らせ