課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営の基本方針

① 住宅産業の課題を解決する

 当社グループは、「住宅事業者に対する経営支援」を事業目的として、住宅分野に特化したローン・保険・保証等の金融サービスを販売しております。事業目的を達成するための最も重要な戦略として、「住宅産業の課題を解決する」ことを掲げており、経済動向や社会情勢等の変化が激しい環境下において、金融サービスとITを融合させることにより住宅産業のDX化と新しい仕組みづくりを推進し、顧客である中小の住宅事業者を強力に支援するリーディングカンパニーとして持続的な成長を目指しております。

 

② 8つの経営方針

 経営方針としては、以下の8つを掲げております。

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(2)目標とする経営指標

 当社グループでは、長期利益の実現を目指し、「堅実で持続的な増益」を最も重要な経営目標としております。

 増収も主要な目標のひとつと考えておりますが、顧客・投資家・株主・従業員・社会等の当社グループを取り巻くあらゆるステークホルダーへの責任を果たすためには、増益により健全で積極的な投資を継続し、持続的に成長していくことが肝要であるとの価値観から、増収よりも増益に重きを置いております。

 増益を重要視しているという観点に加え、当社グループでは各セグメント及び各サービスによって粗利率が異なり、売上をセグメント共通の指標にしづらいといった側面(注)もあるため、最も重要な指標として「営業利益」を位置付けております。

(注)住宅金融事業の主力サービスである住宅ローンは融資手数料のみを売上として計上し、住宅瑕疵保険等事業の主力サービスである住宅瑕疵(かし)保険は原価を含む総額表示にて計上し、住宅アカデメイア事業の主力サービスである住宅保証サービス等は売上から原価を差し引いた純額表示にて計上している等の差異があります。また、業績への貢献度が最も高い住宅ローンの粗利率が高いことから、連結損益計算書においては、営業収益が小さく相対的に利益率が高くなる傾向にあります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループでは中期経営計画を毎期更新しており、現在は2023年3月期から2025年3月期における3カ年を対象とした中期経営計画として「MSJグループ中期経営計画2025年3月期」(以下、「本中期経営計画」)を策定しております。顕著なインフレ傾向等の不透明感が重なる経営環境であることと、住宅業界においては強い供給制約が今後も続くと予想されることから、2021年5月に公表した「MSJグループ中期経営計画2024年3月期」を1年スライドし、2025年3月期までに連結営業収益90億円(当連結会計年度比1.2倍)、連結営業利益20億円(当連結会計年度比1.2倍)を計画しております。

 従来、住宅事業者が行っている新築住宅事業(新築住宅の建設・販売益を収益構造とする市場)が急速に縮小すると予想されることから、本中期経営計画においては住宅事業者の業態転換支援を柱とし、中古住宅向けの各種サービスの販売・提供に注力する計画としております。当中期経営計画における戦略ターゲット、コンセプト等は次のとおりです。

 

① 背景・動向

 グローバル経済の終焉を示唆するかのように、世界の分断とインフレ傾向が急速に進み、日本の住宅産業にも大きな影響が出ております。住宅は原材料の多くを輸入するため、円安・インフレ下では原価が高騰します。消費者価格も上昇しておりますが、それでも価格転嫁が追い着かず、なかでも注文住宅の建設を行う住宅事業者は非常に厳しい経営環境にあります。

 一方で、消費者にとっても住宅価格の上昇に所得が追い着かず、新築住宅の購入が難しくなりつつあります。今後は新築住宅より相対的に安い中古住宅のニーズが急速に高まり、新築住宅の建設・販売を中心とする従来の産業構造から、中古住宅のリフォーム・売買を中心とする産業構造へとシフトしていくことが考えられます。

 当社グループではこれらの背景から、現在住宅産業が大転換期を迎えていると分析しており、今後は従来の「家をお金で買う」時代から「家をお金に換える」時代へと大きく転換すると考えております。

 

② 戦略ターゲット

 当社グループでは、注文住宅の建設を行う工務店・ビルダー等の中小規模の住宅事業者を主力顧客層としております。注文住宅はオーダーメイドの受注生産となり、契約金額の確定後に原材料発注を行い、半年から1年程度をかけて完成させるため、インフレが進行する環境下では契約時に見込んでいた利益を出せないという厳しい経営環境となり、現在当社グループの主力顧客層の多くが苦しい環境に置かれております。当社グループでは、住宅事業者がこうした経営環境の変化に柔軟に対応するための支援に力を入れ、金融サービスの販売件数増加につなげてまいります。

 

③ 戦略の重要な切り口

 当社グループでは、「家をお金に換える」住宅の資産化をあらゆる事業の起点としております。人生100年時代と言われながらも、所得拡大は期待できず、多くの日本人が老後資金に不安を抱えており、消費者の資産形成が大きな課題となっております。

 日本では、欧米のように自宅を投資対象として資産形成する社会制度が整っておらず、またそうした文化も醸成されておりません。米国では住宅に対する資産意識が高く、ライフスタイルの変化等に応じた住み替えも盛んで、自宅をできるだけ高値で売却できるようメンテナンスやリフォームを積極的に行う文化がある故に住宅品質も維持され、中古住宅売買が活発に行われる等の好循環につながっております。日米で比較をすると、米国は住宅投資額に見合う資産額が積みあがっているのに対し、日本は投資額に対する資産額が累計で500兆円も下回っているとの指摘があります(出所:国土交通省)。

 当社グループでは、自宅売却等により家をお金に換え、老後資金等に活用していくことが、今後日本人が豊かに生きるために残された数少ない道だと考えており、インフレによる住宅価格の上昇は、住宅所有者にとって保有資産の上昇を意味する「自宅の売り時」であり、消費者が住宅の資産意識を持つ好機ととらえております。

 

④ ソリューションのコンセプト

 当社グループでは、本中期経営計画において、住宅事業者に提案する新業態戦略として「住宅再生・流通ビルダー」をコンセプトに掲げております。これは、従来の新築住宅の建設の副業として中古住宅仲介業を行うのではなく、「家をお金に換える」ミッションを中心に据え、再生と流通を行う今までにない新しい業態です。

 住宅の資産価値形成(家をお金に換える)には、長きにわたり住宅所有者とともにアフターメンテナンスをはじめ省エネ改修やリフォームを、計画的かつ適切に実施することが不可欠です。住宅再生・流通ビルダーは、10年、20年とこうした積み重ねを行うことで、住宅所有者を「将来的な中古住宅売主」へ、住宅を「将来的な質の高い売物件」へと育て(再生)、中古住宅売買ビジネス(流通)へとつなげていきます。

 住宅事業者は、住宅性能や断熱改修等の建築技術、住宅所有者との信頼関係や地域ネットワークといった、不動産仲介事業者等の他業種には真似がしにくい独自の強みを持っております。住宅再生・流通ビルダーはこれらの強みを活かしきり生き残るための独自の戦略となります。

 

⑤ 提供サービスと売上計画

 当社グループでは、来たる「中古住宅新時代」における住宅事業者支援のリーディングカンパニーとして、住宅事業者の業態支援戦略を足掛かりに、中古住宅向けの各種サービスの新規開発や販売増加により、中長期的な成長を目指してまいります。本中期経営計画においては、2025年までに住宅再生・流通ビルダー登録数500社を目指し、中古住宅向け各種サービスの売上構成比を上げていくことを計画しております。

 

(4)対処すべき課題

 当社グループは、住宅産業の課題解決を行うことで、企業価値の向上と持続的成長を目指しております。

 

① 当社グループが認識する住宅産業の課題

 世界的な資源価格高騰や円安、国際社会情勢の悪化等が日本の住宅産業にも大きな影響を及ぼしております。原材料のインフレに対して消費者への価格転嫁が追い着かず、特に当社グループの主な顧客層である「新築住宅の建設を行う中小規模の住宅事業者」は受注生産型の事業となるため、インフレ下では厳しい経営環境にあります。

 消費者にとっても価格上昇により住宅取得が難しくなりつつあり、今後は相対的に新築住宅より割安な中古住宅の購入ニーズが高まると予想されます。また、既に住宅を保有する消費者にとっては保有資産の価値上昇を意味し、経済が成熟する高齢化社会においては「老後資金等のために自宅を売却し、家をお金に換える」ことの必要性が高まり、中古住宅の売却ニーズも高まると予想されます。

 そこで当社グループでは、住宅事業者の強みを活かして新築住宅事業と中古住宅事業を複合的に行う、住宅事業者の新しい業態「住宅再生・流通ビルダー」をコンセプトにし、新たな金融サービスやシステム等を開発し、住宅事業者を強力に支援するコンサルティングに力を入れ、住宅産業における事業者・消費者双方の課題解決に取り組んでまいります。

 

② 当社グループの持続的成長における課題

 当社グループは、住宅事業者の経営支援を行うことにより差別性を高め、住宅金融サービスの販売につなげております。現在のような変化の激しい経営環境においては、住宅事業者の経営支援ニーズが高まるため当社グループにとってはチャンスとなりますが、住宅事業者が生き残れるソリューションを提供ができるかどうかが、中長期的な当社グループの業績に影響します。そこで当社グループでは、新たな商品やソリューションの開発を重要な経営課題と位置付け、積極的で健全な投資や人材の育成、企業文化の醸成等に力を入れております。また、1軒の住宅により多くのサービスを販売するクロスセルや、1社の取引先から何度も申し込みを頂くリピート販売ができる営業やクラウド等の仕組み構築にも力を入れ、1軒の住宅当たり・1社の住宅事業者当たりの単価を上げ、収益力向上に取り組んでおります。

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