研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、将来にわたって持続性のあるモビリティ社会の実現に向けて、環境や安全など様々な分野での研究開発活動を積極的に行っている。

当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は4,841億円であった。

当社グループの研究開発体制及び活動成果は次のとおりである。

 

(1) 研究開発体制

当社グループの日本における研究開発は、日産テクニカルセンター(神奈川県厚木市)を中心に、車両開発を日産車体(株)、(株)日産オートモーティブテクノロジー、ユニット開発をジヤトコ(株)などの関係各社が担当し、当社と密接な連携のもとで推進している。

米欧地域においては、米国の北米日産会社、メキシコのメキシコ日産自動車会社、英国の英国日産自動車製造会社、スペインの日産モトール・イベリカ会社において、一部車種の設計開発業務を行っている。また、米国のアライアンス イノベーション ラボ シリコンバレーにおいて、自動運転車の研究、最先端のICT(Information and Communication Technology)技術開発を行っている。

アジア地域では、中国の日産(中国)投資有限公司、東風汽車集団股份有限公司との合弁会社である東風汽車有限公司、台湾の裕隆汽車製造股份有限公司との合弁会社である裕隆日産汽車股份有限公司、タイのアジア・パシフィック日産自動車会社及びインドのルノー日産テクノロジー&ビジネスセンターインディア社において一部車種のデザイン及び設計開発業務を行っている。また、ルノーとの合弁会社アライアンス研究開発(上海)有限公司を2019年に設立し、自動運転車、電気自動車(EV)、コネクテッドカーに重点を置いた研究開発を行っている。

また、南米地域のブラジル日産自動車会社、南アフリカの日産サウスアフリカ会社においても現地生産車の一部開発業務を行っている。

ルノー、三菱自動車工業(株)および当社は2022年1月に発表したアライアンスのロードマップである「Alliance 2030」に基づき、さらなる経営資源の効率化を目指し、次世代技術、プラットフォーム、パワートレインの開発を分担し共用化を推進している。

 

(2) 新商品の開発状況

国内にて、「ノート オーラ」、「日産アリア」を発売した。海外では、北米において新型「QX60」、「QX55」、新型「フロンティア」、新型「パスファインダー」、欧州において新型「キャシュカイ」、「タウンスター」、中国において新型「エクストレイル」を発売した。

 

(3) 新技術の開発状況

環境面においては、引き続き、中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2022」のもと、新車からのCO2排出量を2022年までに2010年比40%削減することを目指しており、車両の電動化をはじめとするモノづくりの技術革新により、燃料消費量やCO2排出量を削減していく。さらに、より高い目標に取り組んでいくため、日産は2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクルでのカーボンニュートラルを目指すこととし、その実現に向けたマイルストーンとして2030年代早期より、主要市場で投入する新型車全てを電動車とする。

Nissan Ambition 2030で、2030年度までに15車種の電気自動車(EV)を含む23車種の電動車を投入することを発表した。

本目標の達成に向け、2026年度までにEVと「e-POWER」搭載車を合わせて20車種導入し、各主要市場における電動車の販売比率を欧州75%/日本55%/中国40%/米国2030年度までに40%(EVのみ)まで向上させることを目指す。

2028年度までに自社開発の全固体電池(ASSB)を搭載したEVを市場投入することを目指し、2024年度までに横浜工場内にパイロット生産ラインを導入する計画である。

電気自動車(EV)では、63ヵ国・地域に投入されている「日産リーフ」の販売台数は着実に増加しており、「日産リーフ」のグローバル累計販売台数は58万台を突破、「e-NV200」、「シルフィ ゼロ・エミッション」、ヴェヌーシアブランドの「e30」、「D60EV」、「T60EV」、さらに東風ブランドを含めたEV全体のグローバル累計販売台数では81万台を超えた。

 

また、2022年にこれまで培った電動化技術を更に進化させた、日産初のクロスオーバーEV「日産アリア」を発売した。新開発されたモーターは高速巡行時の消費電力を低減し、B6モデル(2WD 66kWhバッテリー搭載モデル)では、470km(WLTCモード)の航続距離を実現した。さらに、最大610km※の航続距離を実現する高容量バッテリーグレードの発売を予定している。「日産アリア」では水冷式バッテリー温度調節システムを搭載したことにより、出力130kW以上の急速充電器を利用した場合、30分で最大375㎞分※を充電することが可能となった。

※ 2WD 90kWhバッテリー搭載モデル WLTCモード社内測定値

 車両の電動化では、ガソリンエンジンで発電した電力を利用し、モーターの力で走行する「e-POWER」を2016年より採用している。2020年12月には第2世代「e-POWER」を搭載した新型「ノート」を発売、さらに、2021年8月には「ノート オーラ」を発売した。新型「ノート」、「ノート オーラ」は、2021-2022「日本カー・オブ・ザ・イヤー」、「第31回(2022年次)RJCカー オブ ザ イヤー」、「2021~2022日本自動車殿堂カーオブザイヤー」を受賞、併せて2021年度下半期の国内登録車販売において、ハイブリッド車を含む電動車販売台数No.1*を獲得している。(*「ノート」、「ノート オーラ」の合計台数。電動車とは、バッテリーに蓄えた電気エネルギーをクルマの動力のすべてまたは一部として使って走行する自動車を指す。電動車順位は2021年10月~2022年3月の自動車登録情報(新車新規登録情報)に基づく日産調べ。)また両車種に搭載された第2世代「e-POWER」が「RJCテクノロジー オブ ザ イヤー6ベスト」を受賞。さらに、グローバル市場においても採用拡大を進めており、中国での「シルフィ」、欧州での「キャシュカイ」へ「e-POWER」搭載モデルを設定している。

今後も「e-POWER」は環境性能と走行性能を高い次元でバランスさせながら、幅広い車種に搭載可能な技術として進化を続けていく。EV同様、コストのさらなる低減に向け、発電専用エンジンの開発及び定点運転に特化するシステムの簡素化に取り組む。さらに次世代の「e-POWER」向け発電専用エンジンでは、世界最高レベルの熱効率50%を実現する技術を開発し、一層のCO2排出量の削減(燃費向上)を目指す。

車両の軽量化も燃費向上に向けた重要な取り組みのひとつであり、材料、工法、構造合理化の3つの手法により推進している。材料では、高強度と高成形性を両立できる超ハイテン材の採用拡大をいち早く進めており、軽自動車からインフィニティに至るまで、幅広い車種の車体骨格部材に採用している。2020年「ローグ」には980MPa級高成形性ハイテン材を、「ノート」には強度を1470MPaまで高めた超ハイテン材を採用している。さらに「ローグ」、「キャシュカイ」においては、クローズドループ・リサイクルプロセスを適用したアルミニウム材をフード、ドアなどに採用している。クローズドループ・リサイクルプロセスは、廃アルミニウムをリサイクルすることで、原材料から同程度のアルミニウムを作るのに必要なエネルギーの90%以上を節約することができる環境に配慮した技術である。これらの技術については、幅広い車種への採用拡大を進め軽量化を推進するとともに、材料使用量低減やリサイクルの活用によりエネルギー使用量の削減に貢献している。

また、構造合理化においては、新設計したモーター、インバーターを適用した「e-POWER」システムを2020年発売の新型「ノート」に採用した。6%の出力向上を図りながら、モーターでは15%、インバーターでは30%の軽量化を実現している。

当社グループは「EVを作って売る」だけでなく、環境の整備をはじめEVのある生活・社会をより豊かなものにするための様々なソリューション「ニッサン エナジー」を提供しており、それらを合わせた「EVエコシステム」を構築してきた。「ニッサン エナジー」は次の3つの領域で構成される。

・ニッサン エナジー サプライ:安心・便利なEVライフのための各種充電ソリューションを提供

・ニッサン エナジー シェア:EVのバッテリーに貯めた電力を、住宅と「シェア」することで、新たな価値を提供。さらにビル、地域社会へ拡大する取り組みを推進

・ニッサン エナジー ストレージ:日産のEVのバッテリーはクルマで使用された後でも高い性能を有しており、EVがさらに普及する将来を見据え、二次利用のためのソリューションを提供

フォーアールエナジー(株)と協働で神奈川県内のセブン‐イレブン10店舗で「日産リーフ」のバッテリーを再利用した「定置型蓄電池」、太陽光パネルと卒FIT電力を活用した「再生エネルギーによる電力調達の実証実験」も開始している。

また、JR東日本は、踏切保安装置用の電源として、「日産リーフ」の24kWhバッテリーのモジュールを再利用した再生リチウムイオン蓄電池(エネハンドグリーン)を導入した。この電源装置は、従来の鉛酸バッテリー電源との比較で高寿命かつ運用コスト低減を実現しつつ、再生バッテリーの活用による環境にやさしく循環型システムの実現に貢献する。

 

加えて、EVを活用し日本が抱える地球温暖化、災害対策、再生可能エネルギーの推進、地方での観光の活性化や交通課題といった課題を解決するための活動、日本電動化アクション『ブルー・スイッチ』に取り組んでいる。再生可能エネルギーの利活用に有効な手段であるEVは、地球規模の課題である脱炭素社会の実現に大きく貢献するものであり、2022年3月末時点で自治体・企業との連携によるブルー・スイッチ活動は170件以上となった。

安全面において、日産は事故による犠牲者を減らすため、事故そのものを減らすことに取り組み、安全性能に係わる技術の進化と採用拡大を推進する。

日本では、自動車アセスメント(JNCAP)にて、「日産ルークス」、「ノート/ノート オーラ」、「日産キックス」において最高評価となるファイブスター賞を獲得した。米国では、米国新車アセスメントプログラム(US-NCAP)にて「日産リーフ」、「日産リーフe+」、「ムラーノ」、「アルティマ」、「マキシマ」、「セントラ」、「ヴァーサ」、インフィニティ「QX50」が最高評価となる5つ星を獲得した。また、米国道路安全保険協会(IIHS)にて、「マキシマ」、「アルティマ」、「ローグ」、「ムラーノ」がトップセーフティーピック+(TSP+)を獲得、「セントラ」がトップセーフティーピック(TSP)を獲得した。欧州では、欧州新車アセスメントプログラム(ユーロNCAP)にて、「キャシュカイ」が最高評価となる5つ星を獲得した。

また、当社グループは交通事故低減に大きな効果が期待できる運転支援技術の採用を推進している。2016年より「プロパイロット」、2019年より高速道路で同一車線内ハンズオフが可能なナビ連動ルート走行を実現した「プロパイロット2.0」を販売、これらの販売台数は2022年3月末までにグローバルで累計163万台に達している。

さらにNissan Ambition 2030では、2026年度までにプロパイロットを、ニッサン、インフィニティ両ブランドあわせて250万台以上、販売することを目指している。また、運転支援技術をさらに進化させ、2030年度までにほぼすべての新型車に高性能な次世代LiDAR(ライダー)技術を搭載することを目指している。

当社グループは、Nissan Ambition 2030に基づき、今後も競争力のある商品、将来に向けた先端技術等のための研究開発活動に積極的に取り組んでいく。

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