有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月30日)現在において当社グループが判断したものである。
1.世界経済や景気の急激な変動
当社グループの製品・サービスの需要は、それらを提供している国又は地域の経済状況の影響を強く受けている。従って、日本、中国、北米、ヨーロッパ、など当社グループの主要な市場における経済や景気及びそれに伴う需要の変動については正確な予測に努め必要な対策を行っているが、世界同時不況やパンデミック、複雑化する地政学リスクなど予測を超えた急激な変動がある時は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
原油、天然ガス、再生エネルギー等の価格高騰など資源やエネルギー情勢の急激な変化により当社グループの製品・サービスに対する需要も大きく変動する。ガソリン価格が上昇すれば燃費の良い製品に需要がシフトすることが予測され、更に上昇すれば全体の需要は低下することも予測される。鉄、アルミ、樹脂といった従来の自動車の原材料に加えて、リチウム、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウムといった希少金属の価格に予測を超えた急激な変動がある時は、業績の悪化や機会損失の発生等、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
2.自動車市場における急激な変動
自動車業界は世界規模で非常に厳しい競争にさらされている。当社グループもその競争に打ち勝つべく、お客様のニーズにあった製品・サービスを素早く提供できるように技術開発・商品開発や販売戦略において努力している。しかしながら、お客様ニーズに合う製品・サービスをタイムリーに提供できなかった場合や、環境や市場の変化への対応が不十分な場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
例えば、成熟市場では人口の減少や少子高齢化の進行により需要が減退したり変化したりする一方で、新興市場では大きく需要が増える可能性もある。これらはビジネスチャンスとして当社グループに有利な結果をもたらす可能性もある一方、特定商品や特定地域への過度な依存が発生し、次なる変化への対応が十分に行われない場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
また、車両の電動化が急速に拡大、また各国での温室ガス排出に対する規制が強化されており、カーボンニュートラルに向けたライフサイクルでの取り組みが必須となってきている。これらの社会・環境要請に対応する取り組みが遅れた場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
さらに、近年、先進運転支援システムが製品に搭載され販売されてきているが、これらは運転支援技術のさらなる進化に伴い、次世代に向けた大きな成長・発展の機会となる。そのためには、公道走行における新たなルール作りが不可欠であり、各国規制当局との連携、自動車メーカー並びに関連技術を有する会社同士での協調が極めて重要である。その一方で、新技術の開発という点では、各国、メーカー共に激しい競争状態にあり、開発費負担の増大、車両コストの増加等により、当社グループの業績や財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
今後、カーシェアリング、ライドシェアリング、ロボットタクシーといった業態の普及に伴い、「自動車メーカーがハードウエアとしてのクルマを製造・販売し、お客様はそのクルマを購入・所有・使用する」という従来のビジネスモデルが大きく変革していくことが想定される。
また、付加価値の中心がハードウエアとしてのクルマの性能から、クルマに関連したサービスも含め、お客様にどのような体験を提供できるのかといったソフトウエアの方に移っていくことも想定される。
その結果、ソフトウエアの部分での魅力が他社との差異化のポイントとなり、予てより当社の強みであったクルマというハードウエアを開発・量産するというノウハウや専門性がそれ程の付加価値を生まないものとなっていく可能性もある。これら想定される変革を見据えて、ニューモビリティ等も含めた、従来の自動車業界以外からの参入の動きもある。
こういった動きに対して当社グループでは2021年11月には2030年のありたい姿を示す長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表した。これは、当社のコーポレートパーパスを具現化するために、この先目指す方向性をステークホルダーの方々にビジョンとして示したものであり、「ともに切り拓く、モビリティとその先へ」をスローガンに、よりクリーンで、安全で、インクルーシブな、誰もが共生できる世界の実現を目指し、パートナーの皆様とともに、人々の移動の可能性と社会の可能性を広げていく、という当社の想いと決意を込めたものである。
この長期ビジョンの下、ハードウエアの進化(電動化、インテリジェント化、自動運転化、コネクティビティ機能の強化)、ソフトウエアの強化(コネクテッド機能の強化により新たな付加価値の提案)を目指し、積極的な開発投資、多様な人財の採用と育成、異業種企業との戦略的な連携、スタートアップ企業との協業等の対策を進めている。
しかしながら、我々の想定を超えた速度や範囲で変革が起き、そのような変化に対して十分に対応できない場合には、我々は新たな競争相手に対して優位性を保つことができず、競争力を失う可能性もある。
3.金融市場に係るリスク
当社グループは世界17の市場で完成車の生産を行い、およそ160の市場で販売をしている。原材料や部品、サービスの調達も多くの国で行っている。
当社の連結財務諸表は日本円で表示するため、一般的に他の通貨に対する円高は当社グループの業績に悪影響を及ぼし、反対に円安は好影響をもたらすことになる。また、当社グループが生産を行う地域の通貨価値が上昇した場合、それらの地域の生産コストを押し上げ、当社グループの競争力の低下をもたらす可能性がある。
当社グループでは、為替変動リスクを軽減するための根本的な対策として、生産の現地化や、原材料及び部品の外貨建てによる購入等の対応を行っている。しかしながら、為替リスクを完全に取り除くことは不可能であるため、想定を超えた変動が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
市場金利の上昇及びコモディティ価格の上昇は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
また、当社グループは外貨建債権債務の為替変動のリスク回避、変動金利で調達した有利子負債の金利変動リスク回避及び、コモディティの価格変動リスク回避を目的として、デリバティブ取引を行うことがある。こうしたデリバティブ取引によりリスクを回避することができる一方で、為替変動、金利変動、コモディティ価格の変動によってもたらされる利益を享受できないという可能性もある。
当社グループは、戦略的な理由や取引関係維持、キャッシュマネジメント等の理由により市場性のある有価証券を保有する場合があり、それらの有価証券の価格変動リスクを負っている。このため株価や債券価格の変動は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
金融市場では通常の想定を超える環境変化が発生する場合がある。また、リクイディティ・リスクは国内外の格付機関による格付けの引き下げによっても増加する。そのような事態に対処するため、当社グループでは十分な資金の流動性を確保できるよう社内規定を整備し、内部資金の蓄積や金融機関とのコミットメントライン、調達手段や調達地域の多様化等、あらゆる資金捻出・調達ソースの確保に取り組んでいる。また、当社グループは自動車事業において未使用のコミットメントラインや十分な手元資金を維持することにより、これらのリスクを低減させている。しかしながら市場環境に予期せぬ大規模な変化が発生した場合には、当初計画とおりの資金調達に支障をきたす可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に負の影響を及ぼす可能性がある。
販売金融事業は消費者、法人顧客及び販売店に金融ソリューションを提供することにより、これら顧客による日産車の購入又は販売活動に資するものであり、当社グループにとって重要なビジネスのひとつである。販売金融ビジネスユニットは、徹底したリスク管理により適正な収益水準と健全な財務状態を維持しながら自動車販売をサポートしている。しかし、顧客に金融ソリューションを提供するため、販売金融事業は、金利リスク、信用リスク、残存価格変動リスク等のリスクにさらされている。これらのリスク要因が適切に管理されていないと当社グループの業績と財務状況に負の影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクを軽減するため、販売金融ビジネスユニットは健全なポリシーとリスクマネジメントフレームワークを導入している。
金利リスクの場合、当社グループは徹底した資産負債管理により期間と資産負債利率の不一致(固定金利対変動金利)の最小化、及び市場金利の変動に対するエクスポージャーの最小化に努めている。しかしながら、販売金融事業は格付の引き下げによる金利コスト上昇の影響を受ける。
信用リスクは、審査から回収までのサイクル全体に対して管理されている。販売金融ビジネスユニットは、厳格な与信審査ポリシーに従い、顧客の支払能力、支払履歴、資産状況、適切な担保価値及び融資条件を勘案したうえで与信判断を行っている。与信期間中又は支払延滞があった場合、潜在的な損失を最小限に抑えるために綿密な回収戦略が実施される。
残存価格変動リスクについては、当社グループは独立第三者による評価金額と過去の中古車価格の統計分析結果を基準に、部門横断的なチームにより適切な残存価値設定を行っている。また、ブランド価値構築を通じて日産車の将来的市場価値を高める戦略により、残存価格変動リスクの軽減に努めている。
当社グループは販売会社、金融機関、サプライヤーなど様々な地域の数多くの取引先と取引を行っており、取引先の債務不履行などが発生するリスクにさらされている。当社グループは、これらの取引先の財務情報をもとに継続的な評価を行うことで、かかるリスクを削減するよう努めている。しかしながら、世界的な経済危機をきっかけにした、販売会社、金融機関及びサプライヤーの経営破たんのような予期せぬ事態が発生した場合には、当社グループの業績と財務状況に負の影響を及ぼす可能性がある。
また、2022年3月に当社グループの主要サプライヤーであるマレリホールディングス株式会社及びマレリ株式会社を含むその子会社の一部が、日本の裁判外紛争処理手続きの一種である事業再生ADR(Alternative dispute resolution)制度の利用を申請し、銀行団を中心とする債権者との間で事業再生計画の議論が開始されたが、2022年6月24日に開催された債権者集会で、提案された事業再生計画にすべての債権者の合意を得ることができず、代わって民事再生法に基づく簡易再生への移行を想定した再生手続が開始された。簡易再生は、債務者が事業を継続しながら再生を目指す法的整理手続きであることから、現時点までの議論の状況に鑑みれば当社グループに与える影響は限定的と想定される一方、簡易再生における事業再生計画が想定通りに進捗しない場合などには、かかるサプライヤーの債務不履行など信用リスクが顕在化するなどにより、かかるサプライヤーからの供給の停止、遅延又は不足による当社グループの操業の停止、生産の遅延又は減少、もしくは財務的負担の増加やコストの上昇が生じる可能性があり、当社グループの業績と財務状況に大きな負の影響を及ぼす可能性がある。
当社グループの従業員の退職給付に備えるための退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されている。実際の結果が前提条件と異なる場合又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性がある。
4.事業戦略や競争力維持に係るリスク
当社グループは世界17の市場で完成車の生産を行い、およそ160の市場で販売を行っている。海外市場への事業進出の際には以下に掲げるようなリスクの検討も十分行っているが、ロシア・ウクライナ情勢による不安定な世界情勢など進出した先で予期しないリスクあるいは想定を超えるリスクが顕在化した場合には計画どおりの操業度や収益性を実現できず、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
・ 不利な政治的又は経済的要因
・ 法律又は規制の変更
・ 法人税、関税その他税制の変更及び移転価格税制等の国際税務問題による影響
・ ストライキ等の労働争議
・ 優秀な人材の採用と定着の難しさ
・ テロ、戦争、クーデター、デモ、暴動、大規模自然災害、伝染病、その他の要因による社会的混乱
当社グループが開発する技術は、世の中のニーズに即し、有用かつ現実的で使い易いものでなくてはならない。この目的のため当社グループは、将来のニーズを予測し、優先順位をつけ、電動化、自動運転化、コネクティビティ機能の強化、安全面の強化、モビリティサービス等にかかわる新技術の開発に投資している。しかし、予測を超えた環境の変化や世の中のニーズの変化、相対的な開発競争力の低下により、最終的にお客様にその新技術が受け入れられない可能性もあり、その結果当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性がある。
当社グループは、「Nissan Ambition 2030」の達成に向け、より高い競争力を短期間で獲得するために優れた技術・サービスを有する他の企業と戦略的に提携することがある。将来に想定されるビジネスモデルの変革も見据え、従来の自動車業界の企業との提携のみならず、業界の枠を超えた、異業種企業との戦略的な提携等の可能性も含まれる。しかしながら、当該分野の市場環境や技術動向の変化、提携先との活動の進捗状況によっては予定した成果を享受できない可能性もあり、その結果当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性がある。
当社グループは、優れた品質の製品・サービスを提供するため、開発・製造から販売・サービスまできめ細かい管理体制を敷き最善の努力を傾けている。しかしながら、より高い付加価値を提案するための新技術の採用は、それが十分に吟味されたものであっても、後に製造物責任や製品リコールなど予期せぬ品質に係る問題を惹起することがある。また、今後自動運転技術が発展し、かつ広く普及していった場合は、運転者の関与の希薄化に伴い、より製造者側の責任が問われるようになることも想定される。製造物責任については賠償原資を確保するため一定の限度額までは保険に加入しているが、必ずしもすべての損害が保険でカバーされるとは限らない。またお客様の安全のため実施したリコールが大規模なものになった場合には多額のコストが発生するだけでなく、ブランドイメージが低下する等、当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
気候変動に影響を与える温室効果ガスは、2015年に採択されたパリ協定にて世界の温室効果ガスの排出量をできるだけ早い時期にピークアウトし、今世紀後半には人為的排出量のネットゼロ排出を目指すとしている。また、2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)1.5℃特別報告書の公表以降、遅くとも2050年にはネットゼロとする国の政策や企業取り組みが増加している。
当社グループは、事業活動やクルマによって生じる環境への依存と負荷を自然が吸収可能なレベルに抑え、豊かな自然資産を次世代に引き継ぐことを究極のゴールとし、クルマの原材料の調達から輸送、走行時などバリューチェーン各段階での排出量削減をサプライヤーと共に取り組んでいる。中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2022」ではそれぞれのグローバルKPIと目標値を設定し、年次成果を公表している。
自動車のバリューチェーン全体を捉えた時に、クルマの使用時に排出されるCO2量は、企業活動に伴う排出量に比較して著しく多く、全体の80%以上を占めることから、気候変動による規制等のリスクが生じる可能性がある(バリューチェーン全体(Scope1,2,3の合計値)のCO2排出量137,610kton-CO2のうち、販売したクルマの使用時の排出量が119,431kton-CO2、いずれも2020年度実績、比較となる企業からの排出量Scope1,2はそれぞれ738kton-CO2、1,805kton-CO2)。
そこでIPCCの「2℃シナリオ」(産業革命前からの世界の平均気温上昇を2℃未満にするシナリオ)に基づき、2050年までに新車1台あたりのCO2排出量を2000年比で90%削減する長期のビジョンを掲げ、気候変動による移行リスクに対応する電気自動車(EV)の量産化を2010年に世界で初めて実現。今後もグローバル市場での拡大を見込んでいる。欧州や米国の厳しい燃費やCO2排出規制に対しても「e-POWER」/EVなどの電動化技術をモデルチェンジのタイミングで投入し、確実な達成を見込んでいる。日本ではすでに乗用車の2/3程度の車両が電動化(新車販売ベース)されており、2023年度までにグローバルで年間100万台の電動駆動車を販売することを目指している。この様な取り組みを含め、2017年に発表した「ニッサン・グリーンプログラム2022」では新車1台あたりのCO2排出量を2022年に40%削減(2000年比)とする事を目標としており、2020年度は削減成果が37.4%まで到達した。
2021年1月には、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現する新たな目標を発表。その目標の達成に向け、2030年代早期より、主要市場に投入する新型車をすべて電動車両とすることを目指す事とした。CO2排出量の削減や電動化技術の実用化など、これまでに環境対応と社会的価値の創出に向けて取り組んできた活動をさらに発展させ、この新たな目標に取り組んでいく。
気候変動のような不確実な将来事象に起因するリスクと機会に対して、「1.5℃」や「4℃」など複数のシナリオで変化を評価したレジリエントな戦略を検討することが重要と認識しており、シナリオ分析の実施によるインパクトを明確にすることに着手し以下の領域にて影響が拡大、又は機会創出の潜在的可能性が見込まれた。
影響領域の一部については、財務的な影響把握の試みに着手し、気候変動関連リスク管理の価値とその重要性を改めて認識することとした。今後、サステナビリティレポートでの開示を予定している。
しかしながら社会全体の気候変動対策が遅れた場合、カーボンプライシングの導入や国境炭素税などの脱炭素社会への更なる政策や法規制、研究開発業務の増加、市場需要や企業評判の変化による移行リスクや、異常気象災害の増加や海面の上昇などの物理的リスクにより、それぞれのリスクに対応するコスト増とクルマの販売成績の低下によって財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
自動車業界は、(5)にて記載している気候変動以外にも、排出ガス基準、CO2/燃費基準、騒音、化学物質管理、リサイクル、水資源等、環境や安全に係る様々な規制の影響を受けており、これらの規制はより一層厳格になってきている。
多様化する環境課題に対応しながら、グローバル企業として包括的な環境マネジメントを推進するため、当社では各地域、機能部署、さまざまなステークホルダーと対話・連携した組織体制を構築。取締役が共同議長を務めるグローバル環境委員会(G-EMC:Global Environmental Management Committee)には議題に応じて選出された役員が出席し、年2回の開催で全社的な方針や取締役会への報告内容の決議を行う。また、気候変動を含む環境リスクは、内部統制委員会でも定期的に報告され、ガバナンスが効いている状態であると認識している。
法規制を遵守することは当然であるが、企業の社会的責任として、また競合他社に対する優位性を保つために「ニッサン・グリーンプログラム2022」を掲げ、環境に対する継続的な取り組みを社内外にコミットしているが、開発や投資の負担は増加しており、これらコストの増加は当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
また、上記取組みを行ったとしても、株主やお客様等のステークホルダーから、他社との比較において優位性を持たないと評価された場合には株価や販売に負の影響を及ぼし、その結果当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
当社グループが事業活動を進めていく中で、取引先や第三者との間で様々な訴訟に発展することがある。それら訴訟については、当社グループ側の主張又は予測と異なる結果となるリスクは避けられず、場合によっては当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
当社グループは、他社製品と差別化できる技術とノウハウを保持している。これらの技術とノウハウは今後の当社グループの発展に不可欠なものであり、これらの資産の保護については最善の努力を傾注している。
第三者が当社グループの知的資産を侵害して類似した製品を製造・販売する可能性があるが、当社グループは専門の部署を設け、知的資産を保護し、当社グループの知的活動の成果を守る活動を強化している。
当社グループでは人財はモノづくりをはじめとする競争力の源泉であり、最も重要な財産と考えている。「Nissan Ambition 2030」で3,000人以上の先進技術領域の採用を発表したとおり、グローバルで優秀な人財を採用していく。さらには十分に能力を発揮してもらうための「ビジネスリーダー育成プログラム」「成果に基づく評価報酬制度」「多様な働き方を支える制度」等、人財育成の投資や評価報酬制度の充実にも力を入れている。しかしながら優秀な人財確保のための競争は厳しく、計画どおりに採用や定着化が進まなかった場合は、長期的に当社グループの競争力が低下する可能性がある。
2017年に発生した、当社国内車両製造工場における完成検査に係る不適切取扱いの案件を受けて、当社は再発防止に向けた取組みを進めてきた。2020年4月までに、計画していた全93項目の再発防止策につきその実施が完了し運用を継続している。特に、経営会議メンバーの工場訪問などによる風通しの良い職場づくり、コンプライアンス意識向上のためのコンプライアンスイベントの開催やコンプライアンス教育など、完成検査問題の風化を防止するための取り組みを実施し、継続してコンプライアンス強化を図っている。
一方、2018年から2019年にかけて、当社の元代表取締役が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)で起訴されるとともに、元代表取締役会長においては会社法違反(特別背任罪)でも起訴された。併せて当社自身も金融商品取引法違反により起訴された。当社はこの事態を重く受け止め、独立第三者及び独立社外取締役で構成されるガバナンス改善特別委員会を設置し、2019年6月、東京証券取引所に一連の問題の経緯とその改善措置を記載した「改善報告書」を提出し、2020年1月には改善措置の実施状況及び運用状況を「改善状況報告書」として同取引所に提出した。当社は引き続き、ガバナンスの改善、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスを遵守した経営に努めている。
しかしながらコンプライアンスの問題は全ての従業員、全ての執行役員、全ての取締役のあらゆる行動にかかわっており、会社全体でコンプライアンスの重要性を明確に認識するとともにその実効性を担保するための環境を整備し、従業員、執行役員、取締役の一人一人がコンプライアンスの重要性を本当の意味で理解し、常に意識して行動することが定着しない限りは案件の発生を完全に防止することは困難である。もし求められるガバナンスを十分に実現できなかったり、再び重大なコンプライアンス違反の発生を許したりした場合には、当社グループの社会的信用及びブランドや製品に対する信頼は失われ、当社グループの業績に極めて大きな影響を与える可能性がある。2020年より、国連の「国際腐敗防止デー」である12月9日を「日産エシックス・デー」とし、全地域の従業員を対象として業務に関する行動を振り返り、日産の価値観をいかに日々の業務において実践できるかについて全社的な振り返りを行っている。
さらに守るべき法令やルールは年々増加している一方で企業の社会的責任に対する社会の期待や要求も増大している。仮に、企業の社会的責任に照らして不適切な行為を行ったのが2次3次以降のサプライヤーや販売者であったり、あるいは当社グループが想定した販売ルート以外で流通した製品に関連するものであっても、当社グループ自身が社会的責任を追及され、対応の内容や迅速性が不十分な場合には当社グループの社会的信用や評判に悪い影響を及ぼし、売上高の減少等、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
5.事業の継続
日本を本拠とする当社グループとして、地理的リスクについては地震(津波)・水害リスクを重点管理すべきリスクと位置付けている。地震リスクについて当社グループでは、地震リスクマネジメントに関する基本方針を設定するとともに、主要な経営会議メンバーで構成されるグローバルベースの災害対策組織を設置している。また、工場などの建屋や設備などの耐震補強も積極的に推進している。火山の噴火についても地震対策の中で対策を講じるべく検討を推進している。しかし、想定を超えた大規模な地震により大きな損害が発生し、操業を中断せざるを得ないような場合は、当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
さらに、地震(津波)と並び昨今急増している水害(台風・洪水)についても、事前の予防対策及び発生時の緊急対応体制の整備、停電時に電気自動車の電池を非常用電源として活用する仕組みの構築等を行っているが、想定を超えた規模で発生した場合などは当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨や2019年の台風15号・19号等の災害を契機として、下記のような従来想定していなかった様々なリスクも顕在化した。
・ 計画停電の実施や長期にわたる電力不足により、工場の操業が大きく制限されるリスク
・ 原子力発電所からの放射能汚染による立入制限や避難指示により、対象地域内の工場やサプライヤーが復旧又は操業できないリスク
・ 放射能汚染を理由とする、部品・製品の受け入れ制限や遅延のリスク、及び風評による売れ行き低下のリスク
・ 「南海トラフ巨大地震」等で想定される、従来の高さと範囲を大きく超える津波のリスク
・ 日本国内各地に数多く存在する活断層型の地震によりサプライヤーが被災し、工場の操業が大きく制限されるリスク
・ 台風・豪雨(突風)により大きな被害となる土砂崩れや広範囲での停電
当社グループではこれら顕在化した問題に対しても一つ一つ対策を検討・実行し、問題解決の努力を続けているが、当社グループだけでは対応できない問題も多く、また、対応のためのコストも発生するため、業績や財務状況に対する影響は避けられない可能性がある。
当社グループは事業の構造上、多数の取引先から原材料や部品及びサービスを購入している。また、新技術の導入に伴い、産出量が少ないだけでなく産出が特定の国や地域に限られる希少金属の使用も増えている。その結果、需給バランスの急激な変動や、災害、パンデミック、又は人権侵害などの発覚、産出国における政情の変化等のリスクにさらされている。当社グループでは、これらのリスクを最小化するため、サプライヤーと連携した事業継続計画(BCP)レベル向上の活動や、代替サプライヤーの検討、サプライチェーン全体での在庫の確保など、購入品の安定的な供給体制強化に継続的に取り組んでいる。しかし予期せぬ市況状況の変化が起こった場合は、必要な原材料・部品等を継続的・安定的に確保できなくなる可能性もあり、当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
より高い品質や技術をより競争力ある価格で調達しようとすると、発注が特定のサプライヤーに集中せざるを得ないことがある。また、特別な技術や生産工程を要するものについてはそもそも提供できるサプライヤーが限定されることもある。例えば、昨年度来発生している世界的な半導体供給のひっ迫は当社グループの生産計画に対して大きな影響を与えうる。当社グループでは、リスクを最小化するため、2次3次以降のサプライヤーを含めた代替サプライヤーの検討、サプライチェーン全体での在庫の確保など、サプライチェーンの見直しと強化に継続的に取組んでいるが、予期せぬ事由によりサプライヤーからの供給が停止したり、遅延や不足が生じた時は、当社グループの操業も停止し、当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
また、2022年3月に当社グループの主要サプライヤーであるマレリホールディングス株式会社及びマレリ株式会社を含むその子会社の一部が、日本の裁判外紛争処理手続きの一種である事業再生ADR(Alternative dispute resolution)制度の利用を申請し、銀行団を中心とする債権者との間で事業再生計画の議論が開始されたが、2022年6月24日に開催された債権者集会で、提案された事業再生計画にすべての債権者の合意を得ることができず、代わって民事再生法に基づく簡易再生への移行を想定した再生手続が開始された。簡易再生は、債務者が事業を継続しながら再生を目指す法的整理手続きであることから、現時点までの議論の状況に鑑みれば当社グループに与える影響は限定的と想定される一方、簡易再生における事業再生計画が想定通りに進捗しない場合などには、かかるサプライヤーからの供給の停止、遅延又は不足による当社グループの操業の停止、生産の遅延又は減少、もしくは財務的負担の増加やコストの上昇が生じる可能性があり、当社グループの業績と財務状況に大きな負の影響を及ぼす可能性がある。
当社グループのほとんど全ての業務は情報システムに依存しており、システムやネットワークも年々複雑化高度化している。今や、これらシステムネットワークのサービス無くしては業務の遂行は到底不可能である。この状況に対して大規模な自然災害、火災、停電等の事故は引き続き当該システムに対して脅威であり、更にコンピュータウイルスへの感染やより巧妙化しているサイバー攻撃など人為的な脅威も急激に高まっている。
当社グループではそれらのリスクに備え事業継続計画(BCP)の策定、システム及びインフラの老朽化更新、サイバーセキュリティ対策の向上等、ハード面・ソフト面両方にわたる様々な対策を実施している。しかしながら、想定を超える災害の発生、サイバー攻撃の発生やウイルス等への感染が発生した場合には、システムダウンによる業務の停止、重要なデータの消失、機密情報や個人情報の盗取や漏えい等のインシデントを引き起こす可能性がある。その結果、当社グループの業績や信頼性に対する評判、財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
2019年末以来世界的に感染が広がった新型コロナウイルス感染症は、従業員及び家族の健康と安全に脅威を与え、世界各地での生産活動の縮小や中断、新車イベント等の自粛や縮小をもたらしている。
世界全体での新型コロナウイルスの感染は徐々にではあるが減少傾向にあり、社会生活、企業活動においても新型コロナウイルスとの共存が進んできている。
当社グループでは、2009年のH1N1型インフルエンザの発生を契機に、グローバルで感染予防・拡大防止のための基本ポリシーを定め、従業員行動ガイドラインの策定により感染疑い発生時の対応や行動を明確化すると共に、事業継続計画(BCP)を策定し、事業継続のための対応準備を進めてきた。
今般の新型コロナウイルス感染症発生においても対応組織を立ち上げ、従業員及び家族の健康と安全の確保、感染拡大の防止、医療現場に対する支援、事業活動の継続や復旧のための活動をグローバルに行っている。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症が完全に終息したとまでは言えず、再拡大した場合には、生産活動・販売活動継続のリスクの拡大に加え、需要自体が世界的に減退し、キャッシュ・フロー等当社グループの財務状況と、売上や利益等の業績に極めて大きな影響を及ぼす可能性がある。
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