文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(百万円未満四捨五入)
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス・ワクチン接種の進展や各国の経済活動再開政策により、全般的には回復基調にて推移しましたが、原材料価格の高騰、半導体の供給不足、コンテナ不足による物流混乱、ウクライナ情勢悪化等の下振れリスクも顕在化しました。また、わが国経済においても、世界経済に遅れて景気回復の兆しが見られたものの、資源高や大幅な円安が重しとなり、将来予測は困難な状況と言えます。
このような環境のもと、当社製品の主要需要先である自動車市場及び建設機械市場は、ともに前連結会計年度に比べて需要が回復しております。その結果、当社グループの売上高につきましては、3,884億円と前連結会計年度に比べ603億円の増収となりました。
損益につきましては、需要の回復による売上高増加や、免震・制振用オイルダンパーの製品保証引当金について取崩を行った影響等により、営業利益は300億1百万円(前連結会計年度営業利益182億97百万円)、税引前利益は288億17百万円(前連結会計年度税引前利益163億40百万円)となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は、225億49百万円(前連結会計年度親会社の所有者に帰属する当期利益170億87百万円)となりました。
(建築物用免震・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為の影響について)
2019年3月期において、当社及び当社の子会社であったカヤバシステムマシナリー株式会社(当該子会社は2021年7月1日をもって当社を存続会社とした吸収合併により解散しております)にて、製造・販売してきた免震・制振用オイルダンパーの一部について、性能検査記録データの書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準(※)に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実が判明いたしました。(※)制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はありません。
当連結会計年度において、状況が進捗したことから免震・制振用オイルダンパーの製作費用、交換工事に要する費用、及び補償等の製品保証引当金について繰入及び取崩を行った影響額、並びに対応本部の人件費等の諸費用をその他の費用に計上しております。
なお、当連結会計年度においては、2022年3月31日時点で交換が未完了の不適合品及び不明の対象製品全数(免震用オイルダンパー286本、制振用オイルダンパー898本の合計1,184本)を製品保証引当金の対象としております。
本件に係る製品保証引当金の当連結会計年度末の残高は、135億81百万円であります。
セグメント別の業績は次のとおりです。
当セグメントは、四輪車用油圧緩衝器、二輪車用油圧緩衝器、四輪車用油圧機器とその他製品から構成されております。
ⅰ) 四輪車用油圧緩衝器
四輪車用油圧緩衝器は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞からの回復により、売上高は1,692億円と前連結会計年度に比べ18.5%の増収となりました。
ⅱ) 二輪車用油圧緩衝器
二輪車用油圧緩衝器は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞からの回復により、売上高は349億円と前連結会計年度に比べ33.7%の増収となりました。
ⅲ) 四輪車用油圧機器
パワーステアリング製品を主とする四輪車用油圧機器は、電動パワーステアリングの販売減少により、売上高は239億円と前連結会計年度に比べ3.5%の減収となりました。
ⅳ) その他製品
ATV(全地形対応車)用機器を中心とするその他製品の売上高は49億円と前連結会計年度に比べ27.1%の増収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は2,328億円となり、営業利益は165億27百万円(営業利益率7.1%)となりました。
当セグメントは、産業用油圧機器、システム製品、その他製品から構成されております。
従来、「システム製品」については報告セグメントとしておりましたが、当社グループ再編に伴いセグメント管理区分の見直しを行った結果、当連結会計年度より「HC事業」に含めて開示しております。
ⅰ) 産業用油圧機器
建設機械向けを主とする産業用油圧機器は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞からの回復により、売上高は1,287億円と前連結会計年度に比べ23.8%の増収となりました。
ⅱ) システム製品
舞台機構、艦艇機器、免制振装置を主とするシステム製品の、売上高は46億円と前連結会計年度に比べ22.7%の減収となりました。
ⅲ) その他製品
鉄道用アクティブサスペンションシステム及び緩衝器を主とするその他製品の売上高は82億円と前連結会計年度に比べ11.5%の増収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は1,416億円となり、営業利益は166億53百万円(営業利益率11.8%)となりました。
(c) 航空機器事業
当セグメントは、航空機器用離着陸装置、同操舵装置等から構成されております。
航空機器事業は、売上高は37億円と前連結会計年度に比べ5.2%の減収となり、営業損失は40億61百万円となりました。
当セグメントは、特装車両及び電子機器等から構成されております。
ⅰ) 特装車両
コンクリートミキサ車を主とする特装車両の売上高は92億円と前連結会計年度に比べ10.5%の増収となりました。
ⅱ) 電子機器等
電子機器等の売上高は11億円と前連結会計年度に比べ2.3%の増収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は103億円となり、営業利益は8億99百万円(営業利益率8.7%)となりました。
(百万円未満四捨五入)
流動資産は、現金及び現金同等物が減少する一方、棚卸資産が増加しました。また、非流動資産につきましては、その他の非流動資産が増加しました。この結果、総資産は76億円増加し、4,342億円となりました。
負債につきましては、社債及び借入金が減少したことにより、負債総額は366億円減少し、2,733億円となりました。
資本は、当期利益に伴う利益剰余金の増加、為替影響によるその他の資本の構成要素の増加により、442億円増加して1,609億円となりました。
親会社所有者帰属持分比率は、資本が増加したことから35.3%と前連結会計年度末に比べ9.4ポイント好転しました。
② キャッシュ・フローの状況
(百万円未満四捨五入)
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせて134億円の資金流入、また財務活動によるキャッシュ・フローは327億円の資金流出となり、為替換算により28億円増加した結果、現金及び現金同等物は前連結会計年度末比166億円減少し、521億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により当連結会計年度は242億円の資金流入となりました。これは主に税引前利益288億円、減価償却費及び償却費183億円、棚卸資産の増加84億円、製品保証引当金の減少95億円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、前連結会計年度比73.1%増加の109億円となりました。これは主に有形固定資産の取得93億円の資金流出、定期預金の預入による支出16億円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により流出した資金は、327億円となりました。主な流出は、長期借入金の返済による支出557億円、主な流入は、長期借入金による収入183億円です。
当連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
四輪車用・二輪車用油圧緩衝器およびパワーステアリング製品を主とするAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業、建設機械向け産業用油圧機器およびシステム製品を主とするHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業は、見込み生産を行っております。航空機用の離着陸装置、操舵装置、制御装置等を主とする航空機器事業についても、一部製品においても正式受注が納期間際であることから、その殆どが内示に基づく見込み生産となっております。
特装車両事業および電子機器等についても、同様にその殆どが内示に基づく見込み生産となっております。従って、受注高および受注残高を算出することは困難であることから、記載を省略しております。
当連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主要な販売先(総販売実績に対する割合が10%以上)に該当するものは、ありません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりであります。
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、新型コロナウイルスのワクチン接種進展や世界各国の経済活動再開による全般的な回復基調を受けて、当社製品の主要な需要先である自動車市場、建設機械市場は共に需要が回復し、このため、売上高は前連結会計年度比18.4%増加の3,884億円、セグメント利益は前連結会計年度比85.5%増加の247億円となりました。また、免震・制振用オイルダンパーの適合化が進み製品保証引当金の取崩しを行ったことや、円安進行による為替差益等により、営業利益は300億円となり、セグメント利益・営業利益ともに過去最高となりました。
新型コロナウイルス感染症はワクチン接種による収束の期待が高まっておりますが、変異株の出現による感染拡大が見られることや原材料価格の高騰、半導体の供給不足、コンテナ不足による物流混乱、ウクライナ情勢悪化等の下振れリスクも顕在化しており、翌連結会計年度以降も不透明な状況が続くものと思われます。
なお、不適合オイルダンパーの適合化につきましては、2022年3月末時点で約97%が完了、100%完了に向け引き続き適合化を進めてまいります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、鋼材等の原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、社債の発行および金融機関からの長期借入を基本としております。当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は1,249億円となっております。
なお、資本増強による安定的な財務基盤への回帰と中長期の事業環境を見据えた設備投資及び研究開発に充当するため2021年6月28日を払込日とした第三者割当による総額125億円のA種優先株式を発行いたしました。
また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は521億円となっております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、次のとおりであります。当社グループでは、3年間(2021年3月期~2023年3月期)の2020中期経営計画を策定しております。今般の外部環境を踏まえ、目標の見直しを行い、売上高4,100億円、セグメント利益265億円(セグメント利益率6.5%)、親会社所有者に帰属する持分比率37.0%を2023年3月期に達成することを目標としております。
2022年3月期の経営成績は、それぞれ売上高3,884億円、セグメント利益247億円(セグメント利益率6.4%)、親会社所有者に帰属する持分比率35.3%となっており、更なる業績向上に向けた努力を行って参ります。また、引き続きコンプライアンス遵守とガバナンス強化を経営の根幹に据えながら、経営資源の選択と集中による収益基盤の安定化と、当社を支える2大コア事業であるAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業とHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業の成長戦略を確実に推進することで、2023年3月期の目標達成に向けてグループ会社総力を挙げて取り組んで参ります。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
なお、2大コア事業であるAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業とHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業の2021年度の目指す姿と基本戦略は、以下の通りです。
AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業は、「既存事業とコア技術の深化によるコアサプライヤーとしての地位確立」を目指す姿とし、主要拠点集約及び再編による生産最適化・原価低減活動・市販事業の構造改革による「収益基盤の安定化」、コスト競争力をつけるための「革新的モノづくり」、独自技術の深化(EV化・ CASE・MaaSへの対応)による「高付加価値製品の創出」を基本戦略として取り組んでおります。
HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業は、「お客様に信頼され世界で採用され続けるメーカー」を目指す姿とし、システム対応可能な唯一のメーカーとして産業機械の高度化・電動化に合わせ電子制御・システム化を加速、省エネ・自動運転へ貢献するとともに原低モデル投入による市場競争力の向上による「原価低減・現調化活動推進」を基本戦略として取り組んでおります。
この他、航空機器事業については、2018年度に判明いたしました防衛装備品の不適切事項からお客様からの信頼を取り戻すべく、コンプライアンス強化・安全第一・品質経営のもと、引合いから納入までの一貫した仕組み作りに取り組んでおります。
特装車両事業については、国内ではミキサトップメーカーとして市場ニーズに資する高付加価値製品の開発による利益体質の強化、海外では新たなビジネスプランの策定による特装グローバル体制の基盤整備を基本戦略として取り組んでおります。
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