業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
 なお、中期経営計画の進捗については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)対処すべき課題 ②  中期経営ビジョン「STEP」の推進」をご参照ください。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだこと等により、回復基調となりました。一方、新型コロナウイルスの変異株による感染症の再拡大、経済活動の再開に伴う物流の混乱、ロシア・ウクライナ情勢の悪化等により、依然として先行きの不透明な状況が続いています。
 このような経営環境のなか、当社グループは新型コロナウイルス感染症の予防と拡大防止を継続しつつ、事業活動を進めてきました。中期経営ビジョン「STEP」の重点取り組みである「組織風土改革」「品質改革」「SUBARUらしさの進化」を推進し、その進捗状況を2021年5月に公表し、その後も改革を着実に推し進めてきました。
 当連結会計年度の連結決算は、年間を通じた半導体の供給不足が発生したことに加え、第2四半期連結会計期間には東南アジアでの新型コロナウイルス感染症拡大により、当社がお取引先から調達している部品の供給制約が継続し、米国および国内の生産拠点において生産調整や操業の一時停止を余儀なくされました。

 

(売上収益)

自動車売上台数の減少等により2兆7,445億円と前連結会計年度に比べ857億円3.0%)の減収となりました。

 

(営業利益)

販売奨励金の抑制や保証修理費の低減を行ったほか、為替変動による増益効果等があったものの、原材料価格の高騰や自動車売上台数の減少等により905億円と前連結会計年度に比べ120億円11.7%)の減益となりました。

 

(税引前利益)

1,070億円と前連結会計年度に比べ70億円(6.1%)の減益となりました。

 

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

700億円と前連結会計年度に比べ65億円8.5%)の減益となりました。

 

(単位 金額:百万円、比率:%)

 

売上収益

 

 

親会社の所有者

為替レート

営業利益

税引前利益

に帰属する

(利益率)

(利益率)

当期利益

 

 

 

 

(利益率)

 

2022年3月

2,744,520

90,452

106,972

70,007

112円/米ドル

 

3.3

(3.9)

(2.6)

130円/ユーロ

2021年3月

2,830,210

102,468

113,954

76,510

106円/米ドル

 

3.6

(4.0)

(2.7)

123円/ユーロ

増減

△85,690

△12,016

△6,982

△6,503

 

増減率

△3.0

△11.7

△6.1

△8.5

 

 

 

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりです。

(単位 金額:百万円、比率:%)

 

売上収益

セグメント利益

2021年3月

2022年3月

増減

増減率

2021年3月

2022年3月

増減

増減率

自動車

2,737,503

2,677,465

△60,038

△2.2

109,067

92,541

△16,526

△15.2

航空宇宙

87,693

62,291

△25,402

△29.0

△9,811

△7,005

2,806

28.6

その他

5,014

4,764

△250

△5.0

3,070

4,782

1,712

55.8

調整額

142

134

△8

△5.6

合計

2,830,210

2,744,520

△85,690

△3.0

102,468

90,452

△12,016

△11.7

(注)1.売上収益は、外部顧客への売上収益です。

   2.セグメント利益の調整額は、セグメント間取引消去です。

 

 
(自動車事業)

当連結会計年度の自動車業界は経済とともに需要も回復基調にありますが、世界的な半導体の供給不足等により、各国の自動車の生産が滞り、販売にも影響を及ぼす結果となりました。当社の重点市場である米国の自動車全体需要は約1,450万台と前期を約4%下回りました。また、国内の自動車全体需要は約420万台と前期を約9%下回る結果となりました。このような事業環境のなか、当社もお取引先から調達している部品の供給制約が継続し、米国および国内の生産拠点において生産調整や操業の一時停止を行ったことにより、海外の売上台数は64.5万台と前期比11.4万台15.0%)の減少、国内の売上台数は8.9万台と前期比1.2万台12.1%)の減少となりました。
 以上の結果、海外と国内の売上台数の合計は73.4万台と前期比12.6万台14.7%)の減少となりました。売上収益は2兆6,775億円と前連結会計年度に比べ600億円2.2%)の減収となりました。また、セグメント利益は925億円と前連結会計年度に比べ165億円15.2%)の減益となりました。

 

なお、当連結会計年度の連結売上台数は以下のとおりです。

 

(単位 台数:万台、比率:%)

 

2021年3月

2022年3月

増減

増減率

国内合計

10.2

8.9

△1.2

△12.1

 

登録車

8.2

7.3

△0.9

△11.3

 

軽自動車

2.0

1.7

△0.3

△15.5

海外合計

75.8

64.5

△11.4

△15.0

 

北米

66.1

55.5

△10.6

△16.0

 

欧州・ロシア

1.8

1.9

0.1

4.8

 

豪州

3.1

3.3

0.2

5.8

 

中国

2.4

1.4

△1.1

△43.4

 

その他地域

2.3

2.3

0.0

0.6

総合計

86.0

73.4

△12.6

△14.7

 

 

(航空宇宙事業)

新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受け、「ボーイング787」の引き渡しが減少したこと等により、売上収益623億円と前連結会計年度に比べ254億円29.0%)の減収となりました。また、セグメント損失は70億円と前連結会計年度に比べ28億円28.6%)改善しました。

 

(その他事業)

売上収益は48億円と前連結会計年度に比べ3億円5.0%)の減収となりました。また、セグメント利益は48億円と前連結会計年度に比べ17億円55.8%)の増益となりました。

 

 

生産、受注および販売の実績は、次のとおりです。

 ① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。なお、自動車の生産台数は、年度を通じた半導体の供給不足に加え、第2四半期に発生した東南アジアでの新型コロナウイルス感染症拡大による部品の供給制約等の影響を受け、前期を下回りました。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日

前年同期比(%)

自動車

 

 

 

小型・普通自動車

(万台)

72.7

△10.3

航空宇宙

(百万円)

66,773

△23.2

 

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

 ② 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。航空宇宙事業の受注高は、新型コロナウイルス感染症拡大により激減した民間航空機の生産が徐々に再開しつつあることや、ヘリコプター事業の拡大等により、前期を上回りました。
 なお、自動車事業については見込生産を行っています。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

航空宇宙

146,951

+163.2

300,547

+40.1

 

(注)セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日

前年同期比(%)

自動車

(百万円)

2,677,465

△2.2

航空宇宙

(百万円)

62,291

△29.0

その他

(百万円)

4,764

△5.0

合計

(百万円)

2,744,520

△3.0

 

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しています。

  

(2) 財政状態

当連結会計年度末の資産は、3兆5,438億円と前連結会計年度末に比べ1,320億円の増加となりました。主な要因は、部品および原材料の在庫が増加したこと等により「棚卸資産」が641億円増加したこと、開発資産等が増加したことにより「無形資産及びのれん」が342億円増加したこと、自動車事業において延長保証に係る前払費用が増加したこと等により「その他の非流動資産」が333億円増加したこと等です。
 負債は、1兆6,427億円と前連結会計年度末に比べ174億円の増加となりました。主な要因は、自動車事業において延長保証に係る前受収益が増加したこと等により「その他の非流動負債」が570億円増加したこと、製品保証を中心に「引当金」が458億円減少したこと等です。
 資本は、1兆9,010億円と前連結会計年度末に比べ1,146億円の増加となりました。主な要因は、為替換算および有価証券評価差額金の影響により「その他の資本の構成要素」が818億円増加したこと、当期利益の計上および配当の支払いにより「利益剰余金」が310億円増加したこと等です。

 

                                          (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日

増減

資産合計

3,411,712

3,543,753

132,041

負債合計

1,625,329

1,642,734

17,405

資本合計

1,786,383

1,901,019

114,636

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、8,831億円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金の増加は1,957億円(前連結会計年度は2,894億円の増加)となりました。主な要因は、減価償却費及び償却費2,241億円、税引前利益1,070億円、引当金及び従業員給付に係る負債の減少469億円、棚卸資産の増加423億円、法人所得税の支払額259億円等です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金の減少は1,797億円(前連結会計年度は2,722億円の減少)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出(売却による収入との純額)994億円、無形資産の取得及び内部開発に関わる支出850億円等です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金の減少は985億円(前連結会計年度は140億円の増加)となりました。主な要因は、リース負債の返済による支出556億円、親会社の所有者への配当金の支払額429億円等です。

 

 

                                          (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

289,376

195,651

△93,725

投資活動によるキャッシュ・フロー

△272,174

△179,723

92,451

財務活動によるキャッシュ・フロー

13,966

△98,502

△112,468

現金及び現金同等物の期末残高

907,326

883,074

△24,252

 

 

(4) 資本政策の方針

① 財務戦略の基本的な考え方

当社グループは、“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、選択と集中を進め、経営資源を最大限活用することで高収益なビジネスモデルを展開し、強固な財務体質と高い資本効率を維持し、中長期的な企業価値の向上を図っています。中期経営ビジョン「STEP」において、「資本収益性」「財務健全性」「株主還元」の3つの要素を資本政策の重要な指標とし、中長期的に自己資本利益率(ROE)と自己資本比率のバランスを高次元で保ちつつ、適切な株主還元を行うことを基本方針としています。具体的には、自己資本比率は50%を維持し、高い財務健全性の確保にも努めつつ、業界高位の営業利益率(8%)、ROE10%以上を目指していきます。「2030年に死亡交通事故ゼロ」、「個性と技術革新による脱炭素社会実現への貢献」に向けて、「SUBARUらしさ」を進化させる取り組みをより加速させるために必要な設備投資・研究開発支出に加え、人財への投資にも注力しています。また、今後の電動車開発の拡大・加速を見据え、国内生産体制の戦略的再編に向けて2024年3月以降の5年間で2,500億円の投資を予定しています。株主還元の考え方は不変とし、配当を主に継続的かつ安定的な還元を基本としつつ、業績連動の考え方に基づき、毎期の業績、投資計画、経営環境を勘案して決定(連結配当性向:30%~50%)します。なお、自己株式取得については、キャッシュ・フローに応じて機動的に実施します。

 

② 経営資源の配分に関する考え方と資金調達及び資金の流動性に係る分析 

当社グループは、経営環境を考慮しつつ、適切な手元資金水準を維持しながら、資金調達計画を経営会議において審議し、戦略的投資と研究開発費等の成長に向けた経営資源の適切な配分を安定的に行っています。当社グループの資金調達および資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、主要銀行からの借入とコミットメントライン契約の締結、ならびに社債の発行を行っており、現在必要とされる流動性の水準を満たしていると考えています。当連結会計年度末における有利子負債の残高(リース債務を含まず)は3,340億円と、前連結会計年度に比べて1億円の微増となりました。デット・エクイティ・レシオは0.18と、安全性を維持しています。今後の設備投資や研究開発の投資計画によっては資金の追加調達、現預金残高の取り崩しをする可能性があります。
 コミットメントライン約2,000億円に加え、社債ならびにコマーシャル・ペーパー発行枠を設定する等、合計約4,500億円の資金調達枠を確保し、資金需要に機動的に対応できる体制を整えています。
 また、当社は 国内の格付機関である格付投資情報センターから格付を取得しており、有価証券報告書提出日現在においての格付は「 シングルAマイナス(安定的)」となっています。強固な財務体質を維持し、上記資金調達枠を保持していることから、当社グループの事業運営に必要な運転資金および投資資金に関しては問題なく確保できるものと認識しています。

 

(5) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、様々な見積りによる判断が行なわれていますが、見積りに内在する不確実性により、実際の結果は異なることがあります。
 連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針、4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しており、特に重要な見積りを伴う会計方針は以下のとおりです。

 

① 損失評価引当金

当社グループは、 各報告日において、金融商品に係る信用リスクが当初認識以降に著しく増大したかどうかを評価 しており、当該信用リスクが当初認識以降に著しく増大していない場合には、当該金融商品に係る損失評価引当金を12ヶ月の予想信用損失に等しい金額で測定しています。また、当該金融商品に係る信用リスクが当初認識以降に著しく増大している場合には、当該金融資産に係る損失評価引当金を全期間の予想信用損失に等しい金額で測定しています。ただし、営業債権、リース債権および契約資産については、常に損失評価引当金を全期間の予想信用損失に等しい金額で測定しています。
 将来、取引先等の財務状況が悪化する等により支払能力が低下した場合、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があるため、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えています。

 

 製品保証引当金

当社グループは、製品販売時に付与した保証約款に基づく製品保証とともに、主務官庁への届出等に基づいて個別に無償の補修を行っています。
 保証約款に基づく製品保証の対象は、各国における保証約款に基づき、期間および走行距離や不具合の原因等により決定しています。
 保証約款に基づく製品保証の保証修理費用は、製品を販売した時点で引当金を認識しており、保証期間内に不具合が発生して部品を修理または交換する際に発生する費用の総額について、過去の補修実績、過去の売上台数を基礎として将来の発生見込みに基づく最善の見積りにより引当計上しています。
 主務官庁への届出等に基づく個別の保証修理費用は、経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高く、その債務の金額について信頼性をもって見積ることができる場合に引当金を認識しており、製品の不具合に関する過去の経験を基礎として算定した1台当たり将来保証修理費用等および対象台数に基づく最善の見積りにより引当計上しています。
 当社グループは、発生が見込まれる保証修理費用について、現在入手可能な情報に基づき必要十分な金額を引当計上していると考えていますが、製品保証引当金の計算では将来複数年にわたり生じる保証修理費用を予測しているため、実際の保証修理費用が見積りと乖離することにより、製品保証引当金を追加計上する必要が生じる可能性があることから、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えています。

 

③ 従業員給付

当社グループは、従業員給付のうち退職給付について、将来の退職給付の支払いに備えるため、当連結会計年度末における退職給付債務および年金資産の見込額に基づき、 退職給付を計 上していますが、この計算は主として数理計算上で算定される前提条件に基づいて行われています。この前提条件には、割引率、将来の給与水準、退職率、死亡率等が含まれており、それぞれの条件は現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されています。当社は、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合には、将来期間において認識される費用および債務に影響を与える可能性があるため、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えています。

割引率が変動した場合の確定給付制度債務に与える影響額については、連結財務諸表注記の「19 従業員給付(4)数理計算の仮定の主要なものは、以下のとおりです。」を参照ください。

 

④ 金融資産

当社グループは、 価格変動性の高い公開会社の株式、株価の決定が困難である非公開会社の株式、国債、社債および投資信託等を保有しています。
 純損益を通じて公正価値で測定する金融資産については、投資価値の変動により損失が発生することがあるため、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えています。

 

⑤ 繰延税金資産

繰延税金資産は将来減算一時差異等を使用できるだけの課税所得が稼得される可能性が高い範囲内で認識し、繰延税金負債は原則としてすべての将来加算一時差異について認識しています。当該見積りは、将来の不確実な経済条件の変動等によって影響を受ける可能性があり、実際に発生した課税所得の時期および金額が見積りと異なった場合、翌連結会計年度の有価証券報告書において、繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

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