文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)が判断したものです。
当社グループは、2021年5月に中期経営ビジョン「STEP」の進捗報告を行い「STEP2.0」として公表しました。これを機に、従来、複数存在していた企業指針を整理し、以下のとおり改定しました。事業環境が大きく変化する中、ありたい姿「笑顔をつくる会社」に向けて、私たちがお客様に提供する価値である「安心と愉しさ」と経営理念である“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、SUBARUを自動車と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドとして持続的に成長させ、中長期的な企業価値の向上を図っていきます。
(1) ありたい姿、提供価値、経営理念
<ありたい姿> 笑顔をつくる会社
<提供価値> 安心と愉しさ
<経営理念> “お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指す
(2) 基本方針
<品質方針>
私たちは何より品質を大切にしてお客様の信頼に応えます
2.お客様の声に常に耳を傾け、商品とサービスに活かします
3.法令・社会規範・社内規則を遵守し、お客様に信頼される仕事をします
<SUBARUグローバルサステナビリティ方針>
* :SUBARUグループ:株式会社SUBARUおよびすべての子会社
(3) 中期経営ビジョン「STEP」
自動車業界が大変革期にある中で、この大きな事業環境の変化を見極め、スピード感をもって対応していくことが必要であると認識しています。当社グループは「安心と愉しさ」の提供を通じてお客様から共感され信頼していただける存在となることを目指し、2018年7月に中期経営ビジョン「STEP」を公表し、その実現に向け2025年ビジョンとして次の3項目を掲げ、「組織風土改革」「品質改革」「SUBARUづくりの刷新」を重点取り組みとして活動を進めてきました。
<2025年ビジョン>
「STEP」で掲げたこれらの重点取り組みは確実に進捗しています。
「組織風土改革」については、「個の成長」に焦点を当てた活動を推進し、従業員一人ひとりが成長や働き甲斐を実感できるよう、エンゲージメントを高めるフェーズへ移行して取り組みを進めています。
「品質改革」については、品質の高さをSUBARUブランドの大事な根幹、付加価値の源泉であると位置づけ、新技術への対応を含め、品質改革の取り組み結果を実績で示すフェーズとして取り組みを進めています。
「SUBARUらしさの進化」については、2020年1月の技術ミーティングで発表した死亡交通事故ゼロ*と脱炭素社会への貢献に向け、「安心と愉しさ」を支える技術をさらに進化させ電動化の時代においても、「SUBARUらしさ」を強化していきます。
これらの取り組みを通じて「個性を磨き上げお客様にとってDifferentな存在になる」ことを目指しSUBARUとお客様との深い関係性をさらに深化させていきます。
お客様の生活に寄り添い、お客様とともに「愉しく持続可能な社会の実現」に向けて取り組んでいきます。そして、人、社会、地球までをも笑顔にしたい、そのようなSUBARUでありたいとの想いから「笑顔をつくる会社」をありたい姿としています。
*:SUBARU乗車中の死亡事故およびSUBARUとの衝突による歩行者・自転車等の死亡事故をゼロに
(4) SUBARUグループのサステナビリティ
当社グループは「“お客様第一”を基軸に『存在感と魅力ある企業』を目指す」という経営理念のもと、ありたい姿「笑顔をつくる会社」の実現に向け、CSR重点6領域の考え方を取り入れ、SUBARUグローバルサステナビリティ方針に基づいた取り組みを推進しています。これからも企業としての社会的責任を果たし、お客様をはじめとするステークホルダーの皆様に「安心と愉しさ」を提供していきます。そして、真のグローバル企業として従業員一人ひとりが成長の原動力となり、持続的な成長を目指すとともに、愉しく持続可能な社会の実現に貢献していきます。
価値創造プロセス図
(5) 対処すべき課題
① 事業継続計画(BCP)への対応
当社は新型コロナウイルス感染症発生の初期から、CEOをトップとした「新型肺炎特別対策本部」を設置*し、CRMOの全体統括のもと、お客様やお取引先様をはじめ、当社グループの従業員の感染防止と安全確保に努め、従業員とその家族に対しての健康状態の把握や支援、ワクチンの職域接種の実施等、健康と安全確保を最優先に、コロナ禍においても当社グループの持続的な成長に向けて事業活動を継続し中期経営ビジョン「STEP」の取り組みを着実に進めてきました。
自動車事業においては、2020年後半に顕在化した世界的な半導体不足を、引き続き重大な経営リスクとして捉えています。加えて、東南アジアでの新型コロナウイルス感染拡大の影響等により、お取引先様から調達している部品の一部で供給に支障が生じ、2021年1月、4月、9月、12月、2022年1月、2月において数日間、工場の操業を停止する等の生産調整を余儀なくされました。また、2022年3月17日に発生した福島県沖の地震でも、一部の部品で供給に支障が生じたことから3月も2稼働日の操業を停止しました。
*:「新型肺炎特別対策本部」は2022年3月末日に終結し、withコロナの管理体制として、通常の事業活動のなかで必要な新型コロナウイルス対策を図る体制としました。
引き続き、部品の供給は予断を許さない状況ですが、その対応として、執行役員の担当業務の変更を伴うサプライチェーンマネジメントの体制強化、代替品への切り替え促進、商品の仕様の見直し、車種および工場間における部品の振り替え等を実施しています。一日でも早くお客様へ商品を提供することを目指し、調達および製造部門を中心とした全社一丸の取り組みを強力に進めていきます。
また、貴金属や鋼材等の原材料価格の高騰による収益性の悪化についても課題と捉えており、収益確保に向けた取り組みを遅滞なく進めていきます。
なお、ロシア・ウクライナ情勢に関する当社グループへの影響については、当該地域での現地生産を行っておらず、販売規模も小さいことから現時点では限定的と見込んでいますが、当社製品に使用する調達部品や原材料等の供給について引き続き状況を注視していきます。
航空宇宙事業においては、昨年から引き続き、事業部門を越えた人員の配置転換による雇用の確保と事業部門内における固定費の圧縮を強力に推進し、今後の需要回復に備えた対応を進めています。
② 中期経営ビジョン「STEP」の推進
当社は2018年7月に発表した中期経営ビジョン「STEP」の進捗報告を2021年5月に行いました。
重点取り組みとした「組織風土改革」「品質改革」「SUBARUらしさの進化」のこれまでの実績と今後の取り組みの方向性は以下のとおりです。
(組織風土改革)
「意識を変え、行動を変え、会社を変える」を継続して合言葉に掲げ、経営課題の共有や社外を知るための様々な対話会等、全社で活動を推進してきました。具体的には、3年目となる「役員講話リレー」「部長対話リレー」のほか、新たな取り組みとして「社長対話会」や他企業の経営層リーダーを招いての「社外対話会」を実施し、一人ひとりの意識を変え、行動の変革につながる活動を進めてきました。
また、コロナ禍により加速したITツールの充実や活用が追い風となり、部門や職位を越えた全社横断的なコミュニケーションが自発的に行われ、組織の活性化の一助となっています。
加えて、「新人事制度」や「公募型ジョブローテーション」も導入し、従業員が自らのキャリアビジョンを実現するためにチャレンジできる仕組みも整えてきました。今後、「個の成長」をさらに強化し、仕事の成果や達成感を通じて従業員エンゲージメントを高めるとともに、「個の成長」を「組織の成長」につなげることを目指していきます。具体的には、従来から進めてきた「組織風土改革」に加え、中期経営ビジョン「STEP」の進捗により新たに推進している「働き方改革」「人事戦略」を包括し、活動を加速させていきます。
(品質改革)
品質改革は3つの切り口で活動を推進しています。
1つ目は、品質改革の土台としての「品質最優先の意識の徹底と体制強化」。「品質方針」の見直しや品質マニュアルを刷新することにより、SUBARUの目指す姿を再定義し全社での啓発活動や振り返り活動を行うことで、従業員一人ひとりの品質意識の変革を促しています。2つ目は、生産準備以降の領域において、不具合の流出防止を目指す「つくりの品質の改革」。これには市場で発生してしまった不具合に対して、迅速な解決策を講じることも含まれています。重点市場である北米における品質保証体制の強化に向けて品質改善チーム「FAST*」を立ち上げたほか、2022年度以降には「新完成検査棟」を稼働させる予定です。また、不具合に対する調査能力の向上を目的とした「品証ラボ」の設置や部品トレーサビリティの強化を進めることで、品質改善の対応スピードを向上します。3つ目は、初期の検討段階から開発・設計に至るプロセスを改革する「生まれの品質の改革」。開発最上流から生産・物流まで一気通貫での品質確保をします。また、開発責任者の権限の強化や開発プロセスの変更等も進めています。
これら3つの領域での品質改革は着実に進んでいますが、まだ道半ばであり、お客様や販売店に対してその成果を十分に示すことができていない状況にあります。品質の高さはSUBARUブランドの大事な根幹であり、付加価値戦略の源泉でもあります。引き続き品質改革に向けた取り組みを強力に推し進め、着実に実績につなげていきます。
*:Fast Action & Solution Team
(SUBARUらしさの進化)
2020年1月の技術ミーティングで発信した「2030年死亡交通事故ゼロを目指す」「個性と技術革新で脱炭素社会へ貢献していく」ことを実現するために、SUBARUが提供する価値である「安心と愉しさ」を支える技術を強化していきます。
死亡交通事故ゼロに向けては、2020年に市場導入した高度運転支援システム「アイサイトX」に続き、2022年4月には、アイサイトの能力を強化し、さらに広い範囲を認識できる「広角単眼カメラ」を北米市場向けのアウトバックに新採用することを発表しました。今後、採用車種や展開市場の拡大を検討します。SUBARUはこれからも、死亡交通事故ゼロへ向けた取り組みを強力に進めていきます。
脱炭素社会への貢献に向けては、当社がグローバルに展開するBEV*のトップバッターとして「SOLTERRA(ソルテラ)」を発表し、2022年5月12日より日本市場において受注を開始しました。日本・米国・欧州のメディア等を対象に実施したプロトタイプの試乗会にて、モーター駆動によるAWDや動的質感は「SUBARUらしさ」との親和性が高いことを多くの方々に実感いただきました。自動車市場がBEVへと大きく移行していく時期を精緻に見極めることは現状では難しいですが、その変化に確実に対応すべく、今後は自社製BEVを生産するための工場の再編に取り組む予定です。生産体制のロードマップとして、2025年付近をターゲットにBEVの自社生産に着手し段階的に供給能力を高めていきます。まずは検討中のBEV専用ライン化を含めたBEVの自社生産、次世代e-BOXERのユニット生産体制の構築に、5年間で2,500億円の投資を予定しています。
*:Battery Electric Vehicle(電気自動車)
今後の激しい変化に対応しつつ、SUBARUらしい商品を実現しうる技術を培い、高め、蓄積し、将来にわたって市場競争力を維持するため、2021年4月に車体やパワーユニットといった機能組織ベースの開発から、機能軸に価値軸を有機的に組み合せる開発体制に変更しました。これにより、縦割り型の部門最適・車種最適の視点から全社最適へと視座を広げるとともに、将来的な技術の取り入れにも柔軟に対応することを目指していきます。
③ アライアンスの深化
自動車業界を取り巻くイノベーションは加速しており、いわゆる「CASE」領域での対応が求められています。
トヨタ自動車株式会社(以下トヨタ)と電動化技術、コネクテッド領域、自動運転領域等の分野で協業を深化・拡大させることを通じて、変化へ柔軟に対応していきます。
具体的な取り組みとして、「SOLTERRA」は両社の強みを持ち寄り、共通の想いである「もっといいクルマづくり」を具現化しています。
THS(TOYOTA Hybrid System)を採用した「次世代e-BOXER」を複数の車種へ搭載することも着実に進めていきます。
また、内燃機関の活用の選択肢を広げる挑戦として、カーボンニュートラル燃料を使用したレース車両で「スーパー耐久シリーズ2022」に参戦しています。トヨタと協調し、かつ、競いながら、「モータースポーツを基点としたもっといいクルマづくり」を進めるとともに、エンジニアの育成やカーボンニュートラル社会の実現を目指す活動に取り組んでいます。
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