①財政状態及び経営成績の概要
当社グループはVision2030の達成に向け、2020年4月からの3カ年は第14次中期(20-22中期)「さらなる成長の基盤づくり」と位置づけ、生産基盤の安定化、グローバルでのオペレーションの安定化を図ることで事業基盤を盤石なものとするため、5つの全社重点施策を掲げ事業を推進してきました。
「競争力強化・ものづくり進化」においては、サンルーフ、燃料タンク、樹脂製品について将来の市場性を考慮し、顧客の要望に合致した仕様の開発を推進し、競争力のある技術、商品性の確立を進めてまいりました。サンルーフでは開閉機構のないガラスルーフの開発を推進し新たなラインアップの拡充を図りました。中国では広州モーターショーに出展するなどし、現地の自動車メーカーからロールサンシェードを受注しました。樹脂製品では樹脂バックドアについて顧客から要求されるコストに見合った製品の開発を推進し、さらに将来に向けた新たなモジュール製品の検討を開始しました。そして、樹脂成形の領域では小型ボートで使用される船外機のカバーについて新たな機種を受注し、生産を開始しました。カーボン製品では2019年6月に販売を開始したHonda S660用カーボンルーフが好評であることから増産対応を行ったほか、新たなラインアップとしてカーボンリアフードの発売に向け開発を推進しました。従来から開発を推進してきた水素容器では車載用をはじめ、多岐にわたる仕様の開発を継続しております。樹脂製燃料タンクにおいては、安定した品質で生産できる製造技術を確立するなど、作りの観点から競争力を向上させる施策を推進しました。新たな販路の拡大においては自動車メーカーに対し、積極的な製品プレゼンテーションを実施しました。
「事業基盤の盤石化」においては、生産現場での大幅な効率改善により生産体質を向上させ、原価率の低減を図りました。樹脂製燃料タンクの生産ラインでは、機種によって異なる作業工数に柔軟に対応できるよう工程を見直しました。米州地域ではさらなる生産の安定化を目指し、多岐にわたる施策を実施しました。この結果、適正な要員配置で生産設備の稼働率が向上し、生産過程における不良率も削減するなど、総合的に生産性が向上しました。また、サンルーフ、燃料タンクに付随する部品を内製化し、コストダウン施策を展開しました。間接領域においては業務のさらなる効率化を目指し、RPA(※1)に対する取り組み、DX(※2)への検討を開始しました。そのほか、新機種の企画では、機種毎の推進体制を強化することで目標コストを守り切ることができました。当連結会計年度は半導体の供給不足等による受注の減少、原材料の高騰などによる減益要因がありましたが、盤石化に向けた施策を推進し、事業実績は計画を上回り、増収増益となりました。
「品質保証体質の強化」においては、過去に発生させてしまった重要品質不具合の反省と教訓を活かし、開発、量産、生産体質の領域で品質に対する施策を定着化させ、不具合を発生させないために、作りやすさを考慮した製品設計、生産準備段階での品質熟成を実現し、より強固な未然防止策へと進化させました。また、既存製品の品質を安定化させる精度向上施策と、取引先の品質安定化強化施策を追加推進するとともに、生産に関わる従業員に対し徹底した品質基礎教育を実施することで、品質保証体質の向上を図りました。これらの取り組みにより不具合発生件数をさらに減少させることができ、米州及び中国の生産拠点において客先から品質、納入に対する優良表彰をいただくことができました。
「人と組織の活性化・人材強化」においては、企業としての魅力をさらに向上させるため、経営と従業員が直接対話ができる機会を増やし、様々な視点から働く環境の改善を図りました。また、これまで以上に会社に対する理解度を高めることを目的として経営からの情報発信を積極的に実施しました。そして、今後の厳しい事業環境への変化に対応できる企業となるため、風土改革に着手しました。その変革への志は「一致団結」「自ら挑戦し進化する集団」と定め、それに伴う施策を実施しました。その一つとして従業員自らが発想を湧き立たせ、アイデアを具現化できるチャレンジの場としてアイデアコンテストを実施し、従業員一人ひとりが挑戦する機運を高めてきました。このほか、組織力を向上させるため、企業理念を浸透させる活動の継続、マネジメント層の意識改革と活性化を図る施策なども展開しました。
「企業価値向上に向けたサステナビリティー展開」においては、環境目標、法令の遵守などで当初の目標を達成することができました。環境負荷低減への取り組みでは太陽光発電による再生可能エネルギーへの転換を推進したほか、CO2排出量、水使用量の削減、廃棄物削減で目標値を達成することができました。さらに高い目標である2050年カーボンニュートラルの達成に向けてプロジェクトを発足し、取り組みを開始しました。社会貢献活動では地域の社会福祉法人と連携し、従業員の家庭にある生活用品などを融通しあう取り組みに貢献したほか、食糧、奨学金の寄付などを行いました。
当連結会計年度の売上収益は、半導体供給不足による受注の減少などはあったものの、為替換算上の増収影響などにより、1,642億3千万円と前年度に比べ69億9千9百万円、4.5%の増収となりました。利益につきましては、営業利益は、受注の減少はあったものの、105億1千8百万円と製品保証引当金繰入額を計上した前年度に比べ48億8千9百万円、86.9%の増益となりました。税引前利益は、119億7百万円と前年度に比べ57億9千7百万円、94.9%の増益、親会社の所有者に帰属する当期利益は、51億5千4百万円と前年度に比べ44億8千8百万円、674.2%の増益となりました。
(※1)RPA:Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略。PCやクラウド上で動くソフトウェアで、これまで人がPCで行ってきた作業をロボットで自動化すること。
(※2)DX :Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略。デジタル技術を活用し、ビジネス、生活を変革し、より良いものに変化させること。
セグメントの経営成績等は次のとおりであります。
(日本)
日本においては、売上収益は、半導体供給不足による受注の減少などはあったものの、新型コロナウイルス感染症による受注の減少からの持ち直しなどにより、238億6千5百万円と前年度に比べ24億5千6百万円、11.5%の増収となりました。税引前利益は、受注の増加、原価改善効果や減損損失の減少などにより、11億5千9百万円と前年度に比べ33億9千6百万円の改善となりました。
(米州)
米州においては、売上収益は、新型コロナウイルス感染症による受注の減少からの持ち直しはあったものの、半導体供給不足による受注の減少などにより、285億4千8百万円と前年度に比べ5億4千9百万円、1.9%の減収となりました。税引前損失は、受注の減少はあったものの、原価改善効果などにより、22億7千2百万円と製品保証引当金繰入額を計上した前年度に比べ36億7千8百万円の改善となりました。
(中国)
中国においては、売上収益は、為替換算上の増収影響はあったものの、半導体供給不足による受注の減少などにより、531億6百万円と前年度に比べ45億8千6百万円、7.9%の減収となりました。税引前利益は、原価改善効果はあったものの、受注の減少などにより、101億7千4百万円と前年度に比べ20億1千6百万円、16.5%の減益となりました。
(アジア)
アジアにおいては、売上収益は、依然として新型コロナウイルス感染症影響はあるものの、大幅な受注の減少があった前年度に比べ、587億1千1百万円と96億7千8百万円、19.7%の増収となりました。税引前利益は、受注の増加などにより、27億6千1百万円と前年度に比べ6億9千9百万円、33.9%の増益となりました。
当連結会計年度末の資産合計は、1,432億7千9百万円と前年度末に比べ168億3千万円の増加となりました。増加した要因は、その他の金融資産が27億6千3百万円減少したものの、現金及び現金同等物が105億1千5百万円、棚卸資産が43億2千5百万円増加したことなどによるものであります。
負債合計は、668億8千万円と前年度末に比べ54億4千7百万円の増加となりました。増加した要因は、引当金が18億3百万円減少したものの、その他の金融負債が23億1百万円、営業債務及びその他の債務が19億1千7百万円増加したことなどによるものであります。
資本合計は、763億9千9百万円と前年度末に比べ113億8千3百万円の増加となりました。増加した要因は、その他の資本の構成要素が50億3百万円、利益剰余金が49億7百万円増加したことなどによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、有形固定資産の取得による支出62億2千1百万円、法人所得税の支払額48億1千4百万円などはあったものの、税引前利益119億7百万円、減価償却費及び償却費76億3千6百万円などにより、322億5千3百万円となり、前年度末に比べ105億1千5百万円増加しました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの前年度に対する増減要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、法人所得税の支払額48億1千4百万円、棚卸資産の増加額30億8千2百万円などはあったものの、税引前利益119億7百万円、減価償却費及び償却費76億3千6百万円などにより、前年度に比べ39億5千万円増加し、128億3千9百万円(前年度は88億8千9百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、有形固定資産の取得による支出62億2千1百万円などはあったものの、定期預金の払戻19億6百万円などにより、前年度に比べ20億4百万円減少し、53億3千4百万円(前年度は73億3千7百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、長期借入金の返済による支出20億円、配当金の支払額8億7千6百万円などはあったものの、短期借入金の純増額34億7千3百万円などにより、前年度に比べ67億3千3百万円増加し、1億4千4百万円(前年度は65億8千9百万円の支出)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、ホンダオブアメリカマニュファクチュアリング・インコーポレーテッドは、2021年4月1日付でホンダディベロップメントアンドマニュファクチュアリングオブアメリカ・エル・エル・シーに統合されております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成には、資産、負債、収益及び費用の測定等に関する経営者の見積り及び仮定を含んでおります。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要な会計方針 4. 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の概要」に記載のとおりであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
(資金需要)
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用による運転資金及び設備投資資金であります。
(財務政策)
当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達を行っております。なお、内部留保資金を借入金の返済及び設備資金に充て財務体質の強化を図っております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の概要」に記載のとおりであります。
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