課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、経営理念として「ペットと人とが共に健やかに暮らせる社会をつくる」を、また経営ビジョンとして「ペットと人の幸せを考え続ける会社」を掲げております。当社グループは、ペット保険、オンラインペット健康相談事業を通じ、ペットの健康に貢献することはもちろんのこと、ペットと共に暮らすことで人も心身ともに健康でいられるように、また、ペットを飼育している人もそうでない人も健やかに共存できる社会を実現できるように、当社グループの事業を通じて貢献してまいりたいと考えております。今後はペット保険事業を主軸としつつ、グループシナジーの創出を通じて、経営理念、経営ビジョンの実現と、中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。

 

(2)経営環境等

当連結会計年度において、わが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の適用等により、長期にわたり経済活動の制限を余儀なくされました。今後も、感染動向やこれに対応する公衆衛生上の措置によって経済活動を大きく左右される状況が継続するものと見込まれます。こうした極めて不透明な状況のもと、アイペット損保では、当初の計画を上回る成長を実現しました。また、時差出勤や在宅勤務の制度化等、感染動向や業務の内容に応じた柔軟な対応を積み重ねた結果、影響を最低限にとどめながら事業継続を確保し、更なる働き方改革につなげることができました。

ペット関連の事業を取り巻く環境については、一般社団法人ペットフード協会の調査によると、全国の犬の飼育頭数(推計)は近年減少傾向にあり、直近では2020年の7,341千頭から2021年の7,106千頭となっております。一方、猫の飼育頭数(推計)は、直近数年は微減傾向にありましたが、2021年には微増に転じ、2020年の8,628千頭から8,946千頭となりました。また、2021年の犬・猫の飼育頭数合計値(推計)16,052千頭は15歳未満の総人口14,650千人(2022年4月1日現在概算値、総務省統計局人口推計)を超えており、わが国の世帯におけるペットの位置付けが大きくなっていることがうかがえます。加えて、当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外出自粛による生活様式の変化を受け、新たにペットを迎える人は引き続き増加傾向にあり、犬・猫の新規飼育頭数合計値は2020年の876千頭から2021年の886千頭に増加しました(「令和3年 全国犬猫飼育実態調査」、一般社団法人ペットフード協会)。また、ペットを大切な家族の一員と考える飼い主さまが増えていることを背景に、ペット一頭当たりへの支出が増加しており、今後もペット関連市場は拡大していくものと予測されております。

こうした環境のもとで、当社グループの中核事業であるペット保険の市場も拡大を続けております。ペット保険の市場規模は、2020年は870億円(対前年比16.0%増)、2021年には更に拡大し1,017億円(同16.9%増)となりました(「2022年ペット関連市場マーケティング総覧」、株式会社富士経済)。国内でペット保険を取り扱う事業者も増加傾向にあり、アイペット損保、ペッツファースト少短を含めて17社が参入する競争の激しい市場となっています。その中で、アイペット損保の保有契約件数のシェアは2020年12月末の25.6%から2021年12月末には26.8%へ拡大し(「2022年ペット関連市場マーケティング総覧」、株式会社富士経済)、市場における確固たる地位を築いてまいりました。ペット保険の普及率はスウェーデンの約65%、イギリスの約25%に対し、わが国では約16%にとどまります。拡大はしているもののなお成長余地の大きいペット保険市場において、当社グループは更に存在感を発揮し、ペットと人とが共に健やかに暮らせる社会の実現に寄与してまいります。

 

(3)経営戦略等

当社グループは、中核子会社であるアイペット損保、アイペット損保の100%子会社であるペッツファースト少短、及び当社の100%子会社でオンラインペット健康相談事業を手掛けるペッツオーライを傘下としており、ペット保険事業とオンラインペット健康相談事業に取り組んでおります。今後も、グループとしての事業領域の拡大や、シナジーの創出、収益力の強化に取り組んでまいります。

① アイペット損保について

アイペット損保では、2021年度からの3か年を対象期間とする中期経営計画の重点方針として、「質を伴うトップラインの向上」、「生産性の向上」、「経営基盤の強化」を掲げ、当連結会計年度においてこれらに基づく取組みに着実な進捗がみられました。

「質を伴うトップラインの向上」の取組みとして、ペットショップチャネルでは、収益管理を厳格にしつつも、全国の営業拠点で、長年培ってきたペットショップとの強固な関係を活かしながら継続的に販売代理店支援を行い、販売強化に注力してまいりました。インターネットチャネルにおいても、コロナ禍による顧客の行動変容を見越し、それぞれのお客さまに対応したOne to Oneマーケティングの推進により、前連結会計年度同様に安定した実績となりました。その結果、新型コロナウイルス感染症の影響による旺盛なペット需要も背景に、アイペット損保の新規契約件数は好調に推移し、2021年12月には過去最速で保有契約件数が5万件増加し70万件を突破しました。2022年3月末の保有契約件数は728,724件となり、対前年度比17.1%増と順調に拡大しております。アイペット損保の強みの一つである、動物病院の窓口で保険証又はマイページ画面を提示すると、その場で自己負担分のみのお支払いで診療を受けられる「アイペット対応動物病院制度」についても、対応動物病院は順調に拡大し、2022年4月1日時点で5,550施設となり、ご契約者さまの利便性向上に引き続き取り組んでおります。2021年5月には商品改定を行い、若齢層の保険料を一部引き上げた結果、収入保険料の増収と損害率上昇の抑制に貢献しております。その一方で、ペットの高齢化によるニーズに対応すべく、高齢層の保険料を引き下げ、保険料に一定の年齢での上限を設定したことにより、継続率向上にも寄与するものと考えております。

「生産性の向上」としては、事業基盤を強固にすべく基幹システムのアップデートに取り組んでおり、確実な進捗をしております。また、経営効率の向上、事業費の合理化を推進するため、前述した在宅勤務の制度化とともに、本社移転の検討を行いました(2022年6月23日に本社を東京都港区から東京都江東区へ移転しております)。また、商品改定による損害率抑制のほか、予防啓蒙、適切な契約引受・保険金支払態勢の強化等、損害率の上昇抑制に向けた取組みも実施しております。

「経営基盤の強化」としては、人財力強化のため、人事制度・教育体制を改革いたしました。女性の活躍の場が広がるよう、女性の積極的な管理職登用、多様なキャリアを形成可能な「キャリアコース転向制度」の導入、また、仕事と育児が両立できる労働環境整備を行いました。これらの取組みが評価され、厚生労働大臣より女性の活躍推進に関する取組みが優良な場合に認定を受けることができる「えるぼし認定」で最高位3つ星を取得しました。

② ペッツオーライについて

2021年3月に子会社となったペッツオーライは、オンラインでペットの健康に関し、獣医師、ドッグトレーナー、ホリスティックケア・カウンセラーに相談できるサービスを提供しております。今後は、当社グループの強みであるペットショップチャネルを活かして新規契約の獲得を推進し収益を拡大するとともに、ペットライフを豊かにする様々なサービスの提供を行うことにより、アイペット損保の継続率の向上にも貢献する等のシナジーの創出を目指します。ペッツオーライは、ペットの健康に関して、オンラインで獣医師、ドッグトレーナー、ホリスティックケア・カウンセラーに相談できるサービスを提供しております。当連結会計年度末のユーザー登録者数は前連結会計年度末の約2.2倍まで増加し、事業規模は順調に拡大しております。当連結会計年度からは新たに、アプリケーション「Wan!Pass」(ワンパス)の実証を開始いたしました。「Wan!Pass」を使用することで「ペットのワクチン接種状態」、「飼い主の知識」、「ペットのしつけ習得レベル」をデジタルで認証することが可能となります。認証を得た飼い主さまはペット同伴不可の商業施設に愛犬と入店できるような仕組みを検討しており、ペットと一緒に行動できる場所が広がる社会を目指します。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループが扱う事業はストック型のビジネスモデルであるため、主要なKPI(Key Performance Indicators)として「1契約換算あたりLTV(注1)」、「1契約換算あたりPAC(注1)」、「保有契約件数(注1)」及び「グループIRR(注1)」を重視し、持続的な成長と企業価値の向上を目指しております。

なお、当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する当社グループ内指標(以下「Non-GAAP指標」といいます。)及び日本基準に基づく指標(以下「J-GAAP指標」といいます。)の双方によって、経営成績を開示しております。両者の差異は、責任準備金の計算方法によるもので、Non-GAAP指標は未経過保険料方式、J-GAAP指標は初年度収支残方式に基づいております。また、未経過保険料方式に異常危険準備金影響額を加味した調整後経常利益及び調整後当期純利益を開示しております。詳細については、「(注2)普通責任準備金及び異常危険準備金の取扱いについて」をご参照ください。

(注1)用語の定義・前提

KPIの定義及び計算方法は以下の通りです。

 

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(注2)普通責任準備金及び異常危険準備金の取扱いについて

損害保険会社は、保険業法施行規則第70条第1項第1号に基づき、未経過保険料残高と初年度収支残高の大きい方を責任準備金として負債計上し、当事業年度の残高と前事業年度の残高の差分を繰入額として当期に費用計上します。

当社グループの中核子会社であるアイペット損保では、初年度収支残高が未経過保険料残高を上回って推移しており、現状、財務会計上は初年度収支残高によっていますが、当社グループは社内管理用の指標として未経過保険料方式による損益を重要視しております。理由としまして、未経過保険料方式により算定された利益は、発生主義による利益と近似するため、期間比較が可能となり当社グループの経営実態を適切に反映していると考えております。一方で、初年度収支残高方式は、収支相等の原則に立脚しており、当年度に係る保険料から保険金、事業費を差し引いた残額が、翌年度以降の保険金支払い等の原資になるという考え方であり、初年度収支残高方式により算出された利益は、発生主義による利益と必ずしもならないことから期間比較ができないと考えております。また、上場企業のうち、初年度収支残方式に基づく損害保険会社が限られているため、競合他社との比較の観点からも、投資家が当社グループの業績を評価する上で有用な情報として未経過保険料方式に基づき業績予想の開示を行っております。なお、これらの数値は金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査又は四半期レビューの対象とはなっておりません。

また、異常危険準備金は、異常災害による損害の填補に備えるため、収入保険料の一定割合を毎期積み立てる責任準備金の一種であり、大蔵省告示第232号第2条の別表で記載されている損害率を超える場合に、その損害率を超える部分に相当する金額を取崩すこととされています。アイペット損保は損害率が基準よりも低いため、収入保険料に3.2%を乗じた金額を毎期積み立てております。

当社グループにおける未経過保険料方式に異常危険準備金を加味した調整後経常利益及び調整後当期純利益は、競合他社の同指標あるいは類似の指標と算定方法が近似するものであり、比較可能性を高めるものであります。

 

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、「事業計画および成長可能性に関する事項」に基づく経営を推進するにあたり、以下のような優先的に対処すべき課題への取組みを行ってまいります。

① ペット保険事業の基盤の強化

「事業計画および成長可能性に関する事項」の策定にあたり、従来は単年毎に取組みや計画を見直しておりましたが、2022年度からの3年間を1サイクルとして取組みや計画を固定する方式へと改めました。直近の計画のもとで、この3年間を今後の成長に向けた基盤固めの期間と位置付け、事業効率を高め、強固な経営体質を追求していきます。当連結会計年度は旺盛なペット需要を背景にアイペット損保において新規契約件数が増加し、保有契約件数が当初の計画以上に増加しました。前述のように、ペット保険事業は成長余地の大きい市場であり、アイペット損保も更なる成長が見込まれます。更なる成長を目指し、より多くのお客さまにご契約いただく過程で、今後も高い業務品質を保ったサービスを提供し続けるため、一層の基盤固めを行う必要があります。ペット保険事業については、中期的な重点方針として「質を伴うトップラインの向上」、「生産性の向上」、「経営基盤の強化」を掲げております。「質を伴うトップラインの向上」では保有契約件数を増加させるとともに、PACを意識した施策を行います。「生産性の向上」においては、更なる成長に向けて事業基盤を強化するために、事務・システムの投資や事業費の合理化等の取組みを遂行します。「経営基盤の強化」では、人財力強化のための施策、リスク管理態勢の更なる強化を目指します。

 

② グループシナジーの創出

当社グループの経営理念を実現するため、グループでのシナジーを創出するための取組みを推進してまいります。グループ各社のリソース、データなどを活用して事業の効率化や新たなサービスの提供、付加価値向上などに向けた取組みを行うとともに、将来的には、グループの強みを活かし、お客さまのニーズに合致し、社会的課題の解決にも資するような事業の創出を目指します。

 

③ ESG経営の推進

当社グループは、ESGの取組みを通じて、ペット保険会社を中核子会社とするグループとしての社会的責任を果たしつつ、事業を更に強固にし、成長につなげていくことを目指しております。ESGを経営課題と捉え、投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまにより信頼していただけるよう、これまでに行ってきた取組みの継続、進化、新たな取組みへの挑戦などを行ってまいります。

 

 

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