本書に記載した事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、リスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社の財政状態、経営成績等に与える影響の内容については、合理的に予見することが困難であるものについては具体的には記載しておりません。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であり、リスク管理体制として代表取締役社長を最高責任者とするリスクマネジメント委員会を設置しております。管理部管掌の取締役執行役員CFOの下、管理部が中心となり重要リスクを特定し、当該委員会で審議のうえ、対策を講じております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが属するUI/UXデザイン市場は、その市場の拡大とともに競合他社の参入が増加しており、一定の競争環境があるものと認識しております。例えば、これまで数多くのアプリケーションが世の中にリリースされており、スマートフォンアプリマーケット(iPhoneではApp Store、AndroidではGoogle Playストア)においては、同様の機能を提供するアプリケーションが複数リリースされております。先例のUI/UXを模倣し、デザイン制作を実施することも可能な市場環境になりつつあり、低価格でアプリケーションデザインの開発を請け負う企業も存在しております。また、当社グループに比べ大きな資本力にて新規でデザイン事業への参入、又は既存のデザイン事業を強化する等を行う企業や産学連携にてデザイン事業の強化を行う企業も存在しております。今後、低価格で優れたデザインを提供する競合企業、又は大きな資本力で優秀な人材獲得を行う競合企業が現れた場合、プロジェクト獲得や人材獲得競争等の競合状況の激化により、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループは、UI/UXデザイン領域にフォーカスし、成長するUI/UXデザイン市場における新たなニーズ(戦略策定やマネタイズ設計、組織支援等)に応えられるよう、デザイン組織のスキル及び規模の拡大を図りつつ差別化を図っております。またUI/UXデザインの認知拡大に伴い様々なナレッジやデザイン手法に注目が集まる中で、さらなる顧客への価値提供となる先行事例研究等にも取り組んでおります。
また、UI/UX市場の拡大とともに市場への新規参入も活発になり、プロジェクト獲得においても他社との競争が徐々に激化するため、マーケティング・セールス体制の強化が、成長を実現するためにも欠かせないものと考えております。当社グループは、UI/UXデザイン分野において培ったブランド力を活かし、マーケティング・セールスにおける取り組みや行動を強化し、エンタープライズ企業(大企業)の意思決定者層に対して、当社サービスの付加価値の理解を浸透させ、リードの獲得、プロジェクト提案の増加、プロジェクト獲得数の向上を目指してまいります。
② UI/UXデザイン市場の成長性について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、デザインパートナー事業を中心にUI/UXデザイン市場に属しております。現時点においては企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への投資の一環で、UI/UXデザインに関する注目度が高まり、それにかかるデザイン投資も順調に拡大しております。しかしながら、当社グループの想定を上回る景気悪化等により長期的に市況が低迷した場合は、プロジェクト依頼の問い合わせ減少やプロジェクトの終了又はプロジェクト稼働人数縮小に伴い品質が低下するなど、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループは、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させるために、急速に変化する顧客の環境を意識しながら柔軟な思考で最適なサービス設計を行うという、UI/UXに直結する要素が欠かせないと考え、デザインが企業の戦略遂行や新規事業開発等のビジネスに貢献することを周知し、当社のデザイン支援サービスへの認知を拡大しております。
また、企業によるデザインへの投資が継続的に行われるために、「ReDesigner」を通じて必要な人材をより多くの企業へ提供し、UI/UXデザインが企業内でも広く浸透し、UI/UXデザイン市場が安定的に成長できるように働きかけてまいります。
③ 新型コロナウイルス感染拡大の影響について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行に伴い、多数の従業員が同時期に感染する等、事業継続が困難な状況が発生し、当社の予想を超えて感染拡大の影響が長期化した場合、当社グループの財政状態が悪化する可能性があります。また、感染拡大による顧客の企業活動の停滞し、事業の縮小や事業の継続が困難となる状況が予想され、取引停止や著しい取引額の低下など、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループでは、従業員の安全確保のため、全社に向けた注意喚起を行うとともに、リモートワーク(在宅勤務)の活用、検温機器や消毒液の常備設置等の施策を実施しております。またデザインプロジェクトのリモートワーク(在宅勤務)による実施やセミナー等のイベントのオンライン実施のほか、フルリモートによるデザイン支援「Goodpatch Anywhere」のさらなる推進、オンラインホワイトボードツール「Strap」の販売拡大等、収益力の分散を図ることを計画しております。
引き続き、お客様や社員等の安全確保を最優先に、関係各所と連携し適切に対応してまいります。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループでは、当社の持続的な成長のために継続的に優秀なデザイナーとなりうる人材を確保し続けることが重要な要素であると認識しております。しかしながら、当社の想定を超える人材市場の逼迫や業務拡大・業務内容の変化のため、育成や採用が想定の通りに進まず、適正な人材配置がなされない場合、退職による人材流出が想定を上回った場合には、プロジェクト量の縮小やプロジェクト品質低下など当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。また労務環境が悪化した場合には、従業員の心身の健康が保てなくなり、労働生産性の低下や人材流出につながる可能性があります。
[リスクへの対応策]
既存事業の需要拡大を見据えた計画的なデザイナー人員の採用・育成を計画しております。「ReDesigner」等の運営によりデザイナー人材の市場動向を迅速に把握することや、人材市場に向けて、デザイナーにとってやりがいのある仕事があること、当社グループが、ミッション、ビジョンの観点を踏まえて、社会・顧客・ユーザーに対し、どのような価値提供を実現するか発信すること等の取り組みにより、当社グループへの理解を促し、人材採用を加速しております。また、従業員が自身の成長へ取り組めるよう、品質向上のためのナレッジ共有や書籍購入補助などの福利厚生等を整備し、ジュニアメンバーを含む全従業員の成長を促すように努めております。加えて、働き方や価値観の多様化に対応し、副業制度等の人事制度の構築やフルフレックス制度、リモート勤務等の労務環境の整備を実施し、従業員の心身へのケア、労働生産性低下防止、人材流出の予防に努めております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
デザインパートナー事業におけるプロジェクト推進にあたっては、当社のデザイナーによるデザインプロセスの遂行状況やアプリやウェブページ等のデザイン品質の提供状況をスキルに定評のある上位職のデザイナーが確認しながら進める管理体制を採用し、プロジェクトの提供品質を確保しております。しかしながら、上位デザイナーのリソース確保が十分に行われない場合、プロジェクトの提供品質にばらつきが生じ、顧客満足に影響を及ぼし、当社のブランドを棄損する可能性があり、その結果、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
稼働中のプロジェクト品質及び上位デザイナーの監修リソース、その他デザイナーの稼働把握を目的に、管理役職者らを中心に、週次単位でのプロジェクトメンバーヒアリング、ヒアリング結果を基にプロジェクト状況の評価を全プロジェクト対象に実施しております。また、社内の品質評価だけでなく、顧客満足度をパートナー企業へヒアリングし、品質基準と顧客満足度の改善にも努めております。
③ 技術革新について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、インターネット関連技術に基づいて事業を展開しております。当該領域は技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が極めて速く、それらに基づく新機能や新サービスの導入が相次いで行われる変化の激しい市場であります。このような環境の中で、当社グループは、最新技術の開発を率先して行っております。しかしながら、今後何らかの革新的な技術が開発され、当社グループの対応が遅れた場合や、そのような革新的な技術に対応するために多額のシステム開発費用が追加的に発生する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
最新技術に関する情報収集や試用、技術への深い理解をもつ有識者の採用を積極的に行っており、従業員がナレッジとして、情報集約したのち、全社へと公開・共有することで、技術革新のトレンドを収集、激しい環境変化への順応を実現しております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが保有する有形固定資産及びM&Aに伴い発生するのれんや無形資産等は減損リスクにさらされております。今後、当社の想定を上回る景気悪化、市況の低迷、競合状況の変化等により、保有する固定資産から得られる将来キャッシュ・フローの状況等が悪化し、経済価値が著しく低下した場合には減損処理が必要となります。こうした場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当連結会計年度においては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係) ※4 減損損失」に記載のとおり、減損損失(47,213千円)を計上しております。
[リスクへの対応策]
当社グループが保有する上記の有形固定資産は営業活動において使用するオフィス設備やPCが主なものであります。従って、当社グループの事業運営において、収益力の維持向上を図ることが当該リスクの低減につながるものと考えております。本稿記載の各種[リスクへの対応策]を講じ、収益力の維持向上に努めてまいります。
また、のれんや無形資産等については、当社から連結子会社等へ役員を派遣し経営参画するなど、連結子会社等の業績の適時把握や収益性改善施策の実施、管理体制の強化、当社とのシナジーの醸成等を行い、収益性向上に努めております。
⑤ M&A実施について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、M&Aによる戦略的投資を推進し、デザインパートナー事業のケイパビリティ強化(強みの拡大)をはじめとした既存事業の強化、事業間シナジーの強化、新規事業機会の創出等により成長を図りたいと考えております。当該推進については、対象企業の顧客、業績、財政状況、競争優位性、当社グループ事業とのシナジーやリスク分析結果等を十分に考慮した上で進めてまいります。しかしながら、当社の想定を超える国内外の経済環境の変化、M&A後に未認識債務の判明や偶発債務の発生等事前の調査で把握できなかった問題が生じること、当初の期待どおりに事業を展開できないこと等が発生する際には、当社がM&A後の経営、事業、資産等に対して十分なコントロールを行えない場合があり、そのため当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループでは、「デザイン領域と親和性の高い開発領域の企業」、「顧客サービス運用支援を行う企業」等、開発及びグロース領域に位置する企業を検討対象としており、M&Aを実施する場合には、対象企業の峻別を図ってまいります。また、当該対象企業については外部機関を活用した十分な調査の実施、対象となる企業の財務内容や事業についてデューデリジェンス、買収メリット等を総合的に勘案し検討してまいります。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、デザインの価値を引き上げるために複数の新規事業又はサービスを企図しております。新規事業を立ち上げる場合、安定した収益獲得までには一定の時間がかかることが想定され、その間、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、新規事業の採算性には不透明な面も多く、予想通りの収益が獲得できない場合は、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
新規事業への投資にあたっては、当社グループの各事業とのシナジー、事業計画等を慎重に調査・検討し、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合に実行をしております。また、新規事業への投資後は、事業の推移等を定期的にモニタリングし、計画の修正や再生等が必要な場合には、取締役会又は経営会議にて審議を行っております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社代表取締役社長の土屋尚史は、デザインパートナー事業開始以来当社グループの事業推進において重要な役割を担ってまいりました。同氏は、多数の企業へのデザインプロジェクトの経験からデザインのビジネスへの展開において豊富な経験と知識を有しております。急な病や事故、そのほかの理由により、同氏が経営執行を継続することが困難になった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループでは、取締役会等において役員及び従業員への情報共有や権限委譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。また代表からの説明機会や従業員と代表間の学習機会を開催し、土屋の経験と知識を全社へと還元する取り組みを行っております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、未だ成長途上にあると考えており、今後の事業及び経営成績を予測する上で必要な経験等が十分に蓄積されていないものと考えております。当社グループの事業運営において、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しており、管理体制の整備と連携強化、及び体制拡大のための人材確保・育成へと取り組んでおります。
③ ハラスメントについて
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、従業員一人一人を尊重し、パフォーマンスを発揮できるよう、フルフレックス制度やフルリモート等の柔軟な就業規則や勤務形態、環境を用意するよう努めております。しかしながら、各種ハラスメントが発生した場合には、職場環境の悪化にとどまらず、労災補償やブランド価値の毀損などが発生し、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
ハラスメントに対しては、ハラスメント行為を禁止行為と定め、入社時の説明、役員・管理職への教育活動、など予防を徹底しております。また内部通報用のホットラインを監査役・法務宛に設置し、いつでも通報・対応することができる状態であり、早期に発見し適切に対処する体制を設けております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
デザインパートナー事業では、受託案件の一部を他社へ委託することがあり、その場合は下請代金支払遅延等防止法の規制を受けることとなります。また、デザインプラットフォーム事業では、「ReDesigner」において職業安定法、オンラインホワイトボードツール「Strap」において電気通信事業法、プロトタイピングツール「Prott」において電気通信事業法及び特定商取引に関する法律の規制をそれぞれ受けております。
特に、「ReDesigner」は、職業安定法に基づき、有料職業紹介事業として厚生労働大臣から許可を受けておりますが、当該事業活動の継続には有料職業紹介事業の許可が不可欠であるため、何らかの理由により許可の取り消しがあった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当該許可の取り消しとなる事由は職業安定法第32条の9において定められており、当社グループが認識している限りでは、当該許可の取り消しとなる事由に該当する事実はありません。なお、当社グループが保有している有料職業紹介事業許可の許可番号及びその取得年月は以下のとおりです。
今後、新たに当社のデザインプラットフォーム事業に関する規制等の制定等又は改正が実施された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社では、コンプライアンス経営の確立に努め、顧問弁護士等を通じて、新たな規制の情報を直ちに入手し、影響を検討・対応する体制や法務担当者による法令適合性の審査や、契約書のリーガルチェック、法令違反の発生を防止する社内管理体制を構築し、法律、条例、関連諸規則等の遵守体制を強化しております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが使用する商標、ソフトウェア、システム等について、現時点において第三者の知的財産権を侵害するものはないと認識しております。万が一、第三者の知的財産権を侵害した場合は、当該第三者より、損害賠償請求、使用差止請求等が発生する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
顧問弁護士へと相談する体制を整え、侵害を回避するための法務担当者による著作権等の監視、管理等を行っていく方針であります。
③ 情報管理体制について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、提供するサービスに関連して多数の顧客企業の機密情報や個人情報を取り扱っております。不正アクセス、コンピュータウィルスの侵入、情報セキュリティの欠陥等により重要な情報資産が外部に漏洩した場合には、当社の社会的信用の失墜、損害賠償請求の発生、ブランドの毀損等により、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
これらの情報資産を保護するため情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しております。また、当社は従業員への教育、アクセス権限の設定、アクセスログの管理等、情報漏洩のリスクの回避を図っております。
当社グループは、内部留保の充実よりも迅速な事業拡大を図ることが重要であると考え、創業以来配当を実施しておりませんが、今後については株主に対する利益還元も経営の重要課題であると認識しております。当社は未だ成長過程にあると考えており、さらなる内部留保の充実を図り、経営体質の強化、事業拡大のための投資等に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。現時点においては配当の実施及びその時期については未定でありますが、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び当社を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針であります。
お知らせ