課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は、「新たな食体験を創り上げ、人生をもっとHappyに。」をビジョンに掲げ、「食」という多くの人にとって生活に密着した領域で、テクノロジーを駆使して新しい価値を創造し、食に関わる人々をより豊かにしていくことで社会に貢献していきたいと考えております。具体的には、実名型グルメプラットフォーム「Retty」を通じて、人々が最適な「食」と巡り合える機会を創出することで、日常の中にある「食」をより楽しめるものに、より豊かなものにしていきたいと考えております。また、これらに加え、アフターコロナにおいて飲食店を経営する上で必要不可欠なデジタル・トランスフォーメーション(DX)を支援するプロダクトを展開していくことで既存集客領域のみに留まらず、人々の食に関わる様々な体験に対してより幅広く貢献して参りたいと考えております。

 

(2)経営環境と中長期的な経営戦略

 国内における飲食店市場は、一般社団法人 日本フードサービス協会「令和2年外食産業市場規模推計について」によると15兆2,908億円(飲食店、宿泊施設、喫茶・居酒屋等、料亭の合計)の市場規模と推計されております。飲食店における販促費市場は、飲食市場全体の3%程度と言われており、4,500億円程度がFRMの市場規模と当社は見込んでおります。

 また、株式会社電通「2021年 日本の広告費(2022年2月24日)」において日本の総広告費は6兆7,998億円(前年比110.4%)に対して、インターネット広告費は2兆7,052億円(前年比121.4%)となっております。このうち、当社の対象となる業種に絞り込むと、1兆841億円程度(インターネット広告市場 × 業種別構成比にて市場規模を試算(4マス媒体の業種別広告費率を引用))が広告コンテンツにおける市場規模と当社は見込んでおります。

 一方で当社は、飲食店から収受する定額のサービス利用料が主な収益となっており、2020年3月頃より新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」といいます。)による影響を大きく受けております。当該影響により、特に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が適用されている期間は、飲食店の販促意欲が低下することで、当社の最重要KPIであるお店会員(固定)プランにおける有料保有店舗数が2020年9月期第2四半期の10,422件から徐々に減少傾向となっており、当事業年度末では6,921件となっております。当該お店会員(固定)プランにおける有料保有店舗数の減少によって当社は継続して売上高が減少、またそれに伴い営業損失及び当期純損失の幅が拡大していることから、当社は①2022年11月11日に発表した平尾丈氏(以下、「平尾氏」といいます。)及び株式会社じげん(以下、「じげん社」といいます。)との資本業務提携による成長加速と、②コスト構造の改革やFRMの営業効率改善による収益構造の改革を同時に実行することが急務と認識しております。具体的には以下のとおりです。

 

①  平尾氏及びじげん社との資本業務提携による成長加速

 上述のとおり、当社は2022年11月11日に平尾氏及びじげん社との資本業務提携を発表しており、当該提携により685百万円の資金調達を行うことで当社の財務基盤を強化すると同時に、以下の様な業務提携を実施することで当社の成長を加速させることを狙っております。

 

(ⅰ)平尾氏の取締役就任によるじげん社経営ノウハウの当社への提供

 じげんグループの売上高150億円、EBITDA40億円を達成した、じげん社代表取締役であり、創業起業家である平尾氏が個人としても出資を行い、また当社社外取締役に就任することによって、事業戦略立案の伴走など経営ノウハウの提供を行う予定です。なお、当社は、2022年12月23日に開催された第12期定時株主総会において、平尾氏を取締役として選任致しました。

 

(ⅱ)じげんグループが有するマーケティングノウハウの当社への提供

 じげん社は、これまでM&Aや自社開発を通じて、多領域のメディアやサービスを運営し、マネタイズさせてきた経験を有しております。当社は、じげん社から、これらの経験により蓄積されたノウハウの提供を受け、マーケティングの側面では当社の運営する実名型グルメプラットフォーム「Retty」の利用者拡大を、サービスづくりの観点では「Retty」の利便性の向上による飲食店予約の増加に寄与させていくことを企図しております。

 

 

(ⅲ)両社のアセットを活かした新たな収益源の創出

 じげん社と当社は、じげんグループのメディア事業運営のノウハウ・多領域の事業展開から獲得した約2万社の顧客基盤や、当社の保有する2,600万人程度の月間利用者、無料・有料を含めると4万店舗を超える飲食店の顧客資産を活かし、飲食隣接領域において新規事業を立ち上げ、両社にとっての事業シナジーの創出を企図しております。今後、案件の具体化のために両社でタスクフォースを組成し、じげんグループが既に知見を有するHR領域、不動産領域などを中心に案件を推進していく予定です。

 

②  コスト構造の改革やFRMの営業効率改善による収益構造の改革

(ⅰ)コスト構造の改革

 当社は上述のとおり、COVID-19影響により売上高が継続的に減少していることから、まずは固定費を中心とした徹底的なコスト削減を実施することでコスト構造の適正化を目指します。具体的にはオフィスの縮小移転に伴う支払家賃の削減、外注費やアルバイトの工数見直しによる人件費及び採用費の削減等を予定しております。なお、当該コスト削減により、代理店への投資等の一過性費用が発生しない通常月での月次固定費が当事業年度から翌事業年度において凡そ50百万円ほど削減される見込みです。

 

(ⅱ)FRMの営業効率改善

 上述コスト削減の実施だけでなく、主要事業であるFRMにおいても従前の営業戦略を見直すことで収益性の改善を狙ってまいります。具体的にはコロナ禍において一時的に販売が増加したものの、足許では解約率が他プランと比較して高止まりしているテイクアウトプランの販売を抑え、よりLTV(※)の高いプランの販売比率を向上させることや、他代理店と比較して解約率の高い一部代理店について関係性を再検討することを通じた代理店チャネルの生産性向上等を実施する予定です。

 

(※)「顧客生涯価値」を意味するLife Time Valueの略称。飲食店1件当たり、当社と取引を開始してから終了するまでの期間にどれだけの売上をもたらすかを表す指標のこと。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社では、利用者の実名に基づく飲食店オススメ口コミ情報及び全国の飲食店情報等を蓄積した実名型グルメプラットフォーム「Retty」を運営しており、その価値を図る指標として、月間利用者数を重要指標としております。月間利用者数を維持・拡大することは、FRMにおける送客効果の維持・向上につながるとともに、広告コンテンツ売上の増加にもつながりますが、それだけではなく、「Retty」上の飲食店情報の精度や口コミの充実度を保ち、長期的な成長を可能とする観点からも重要であると考えております。

 サービス別では、当社の主力サービスであるFRMにおいては「Retty」を通じたオンラインでの販促を提供することで、飲食店からサービス利用料を得ていることから、参画店舗数を重要指標として運営を行っております。当該参画店舗数は、営業人員数、一人当たり獲得件数、解約率に分解できますが、現時点ではこれらのうち、営業人員数を増加させることが参画店舗数の増加に対し最も効果的であると考えており、当該営業人員数を重視して運営を行っております。また、広告コンテンツにおいては、売上高を構成する要素である月間利用者数及び月間利用者当たり売上高のうち、先述の月間利用者数を増加させることを重視して運営を行っております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社の今後の経営課題とその対策は以下の3点になります。なお、外部環境については足許徐々に回復傾向にあるものの、依然COVID-19による外部環境への影響は不透明であることから、翌事業年度については2023年春頃までは現在の様に外部環境がコロナ前の状態までは回復しきっておらず、飲食店の販促意欲も停滞している一方で、春以降は飲食店の販促意欲が徐々に回復することで当社の新規参画店舗数もそれに伴い回復するという前提を置いております。

 

①  「Retty」の利便性向上を通じた月間利用者数・ネット予約利用者数の増加

 当社が今後において中長期的な成長を実現していくためには、運営サービスである「Retty」の知名度を向上させることによる新規ユーザーの獲得、及び実名型グルメサービスを基軸としたおすすめによるお店選びやRettyを通じたシームレスな予約体験を提供することによるリピートユーザーの増加が必要不可欠であると考えております。当事業年度においても、未だCOVID-19の影響から脱したとは言えず、2022年5月には、月間利用者数が2,600万人となっており、COVID-19影響前の状態には依然回復しておりません。一方で足許徐々に外部環境が回復しつつある状況を踏まえると、アフターコロナを見据えて更に「Retty」の利便性を向上させることで月間利用者数やネット予約利用者数の回復を図ってまいります。

 

②  営業体制の拡充

 当社の新規参画店舗数は、営業稼働人員数に応じて増加するものであり、販売代理店の営業体制の拡充及び当社従業員による営業体制の構築が必要不可欠と考えております。当社は、これまで多くの販売代理店と契約を締結することによって営業稼働人員数を増加させ、それに伴って参画店舗数を拡大してまいりました。今後については参画店舗を拡大させていくための営業体制の拡充と同時に販売商品や獲得コストの見直しによる営業効率の改善を実施することで更なる販売力の向上を図ってまいります。

 

③  技術力の強化について

 今後、更なるサービスの拡充・強化に向けてビッグデータの分析・活用を加速させていくためには、その基盤となる技術力を継続的に強化していく必要があります。現時点において、開発者比率(「Retty」の開発及び改善を担当するプロダクト部門・エンジニアリング部門の人員数の合計を総従業員数で割り返した数値です)は、半数程度となっておりますが、今後は更に優秀な技術者の育成、先端技術への投資、技術志向な風土の維持等を通じて、技術力の向上に取り組んでまいります。

 

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