文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社グループは「Happiness」「Beauty」「Wellness」をテーマに掲げています。当社グループの目的は、店舗を通して、当社グループの価値観をお客様に明確に提示し、幸福を感じていただける方を一人でも多く増やしていくことです。このテーマの下、当社グループでは年間約2万組(2022年9月期時点の当社のフォトウエディング撮影組数とHAPISTAの撮影組数の合計)のお客様にサービスを提供しており、お客様の「想い」に寄り添い、株主の皆様に信頼され、社会貢献できる経営を確立してまいります。
当社グループでは、3年間の中期経営計画を策定していますが、1年経過するごとに新たな3年間の計画に更新し、経営目標を設定しています。当社は従前より「フォトウエディング市場のリーディングカンパニーからライフフォトカンパニーへ」との将来像を掲げてまいりましたが、現行の2023年9月期から2025年9月期までの中期経営計画においては「フォトウエディングサービスのさらなる成長」と「ライフフォトカンパニーの礎を創る」をテーマとして、フォトウエディングサービスの成長と、アニバーサリーフォトサービス「HAPISTA」の成長、その他のライフイベント領域への事業拡大について、具体的な戦略を策定し、これらスタジオ事業のより一層の成長に注力してまいります。
(2) 経営環境
当社グループを取り巻く経営環境は少子高齢化が一段と進み、厚生労働省が公表している「人口動態統計調査(2021年)」によれば平均婚姻年齢は2005年で男性29.8歳、女性28.0歳から2021年で男性31.0歳、女性29.5歳と上昇しています。また同調査によると年間の婚姻組数は長期に渡り減少傾向が続き、近年では2012年に一時的に増加した後は減少が続き、2019年には599千組に増加したものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けた2020年においては525千組、2021年においては501千組と大きく減少しました。一方で、近年では家族を中心とした少人数での挙式や披露宴を行わない結婚スタイル、ソーシャルネットワークサービスを利用した体験の共有等、従来の結婚式の様式にとらわれない、新たな価値観が醸成されていると当社では考えています。このような環境下において、結婚写真についても従来は挙式会場で当日に撮影を行うスタイルが主流でしたが、当日の式場とは異なるスタジオ、ロケーションの中で、参列者に気兼ねすることなく、挙式当日には撮影できないような写真を残せるフォトウエディングサービスの需要が増加し、今後もその傾向は続いていくものと当社では考えています。また、披露宴を行わない結婚スタイルにおいてもフォトウエディングで花嫁衣裳に袖を通し、結婚の報告等を行うことで花嫁体験をするケースが認知されつつあると考えています。
2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、ブライダル業界においては、従来型の挙式・披露宴業態では参列者への配慮からの「3密」回避や、大人数のイベントの自粛傾向の強まりを受け、挙式・披露宴の延期や中止による実施組数が減少しました。フォトウエディング業態は、新郎新婦だけで「3密」を回避しつつ撮影が可能であり、挙式・披露宴の延期・中止が増える中で思い出を残したいカップルの写真へのニーズが高まったと当社では考えています。2022年に入り新型コロナウイルス感染拡大時の行動制限が緩和され、挙式・披露宴市場は徐々に回復しつつありますが、コロナ禍において加速した結婚式に対する新たな価値観の浸透は今後も続き、フォトウエディングに対するニーズと存在感は今後さらに高まっていくものと当社は考えています。
(3) 経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記の経営の基本方針及び経営環境を踏まえた中長期的な経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。
スタジオ事業では「フレームを超える感動を」を行動指針として、「新しい感動体験をつくり、文化として浸透させる」を使命としています。
2025年9月期までの中期経営計画においては「フォトウエディングサービスのさらなる成長」と「ライフフォトカンパニーの礎を創る」をテーマとして、事業を成長させ使命を果たすために、以下の成長戦略を進めてまいります。
フォトウエディングサービスのさらなる成長
・フォトウエディングのリーディングカンパニーとして自ら市場を広げる活動とともに、出店ペースを上げ、さらなる成長を目指す。
・顧客層の厚い大都市圏への出店を進めつつ、2025年9月期には地方都市型店舗の展開を開始、商圏を拡げていく。
・一部センター化を開始した衣裳管理に加え、オンライン接客のセンター化など、店舗運営の効率化に向けた取組も進める。
ライフフォトカンパニーの礎を創る
・アニバーサリーフォトを提供するHAPISTAの展開を加速、2026年9月期末までに50店舗体制へ拡大。
・成人式写真は事業化に向けた動きを加速、他のライフイベント領域への進出も検討。
これらの成長戦略を実現するため、以下の具体的な取組を実行しています。
①フォトグラファー、メイクアップアーティストの人材確保及び育成
当社グループはフォトグラファー及びメイクアップアーティストについて、外注依存することなく自社で正社員として雇用しています。専門学校の卒業生や未経験者を積極的に正社員として採用し、当社グループの研修を行う専門部署が技術研修・指導を継続的に行うことにより、写真撮影に関わる職種ごとの専門技術・ノウハウを習得したプロフェッショナル人材として育成しています。
研修は当社で設定した技術等級に応じて実施され、等級別に以下の目標を設定しています。
第1等級(入社1年後):一般的・標準的な要求に対し、上位者の指示やマニュアル、研修で教わった内容のもとに対応できる、もしくは習得中の段階であり必要とされる基本的なスキルを知るレベル
第2等級(入社2年後):行動を振り返り習熟することで、一般的・標準的な要求に、独力で対応できるレベル
第3等級(入社5年超):難しさ・複雑さのある要求に、独力で対応できるような、プロとして完成するレベル
整備された教育システムにより、フォトグラファー及びメイクアップアーティストの技術力を高めつつ高水準で均質化し個人差を極小化することで、当社グループが提供するフォトウエディングサービスは安定した品質でのサービス提供が担保されていると当社では考えています。
また、撮影・メイクの専門技術を保有する人員を正社員として確保(2022年9月期末時点において、フォトグラファー:135名、メイクアップアーティスト:148名)していることで、フォトウエディングサービスの平均単価が上昇する春秋の繁忙期の需要を確実に取り込むことを可能としています。また、少人数で日程調整が容易かつ短時間で撮影可能なフォトウエディングの特性を活かし平日に顧客を取り込むことで人員と設備の稼働を平準化し、稼働が土日に集中する結婚式や披露宴と比較してより多くの撮影を可能としています。
当社グループのフォトグラファー及びメイクアップアーティストの人員数の推移
(単位:人)
2018年9月 |
2019年9月 |
2020年9月 |
2021年9月 |
2022年9月 |
266 |
271 |
262 |
280 |
283 |
②Web集客力の強化
当社ではWebサイト制作について制作チームを内製化しており、適時適切なWebサイトの更新、SEO対策(*)、Web集客状況のモニタリング等を行っています。また、社員であるフォトグラファーやメイクアップアーティストからのSNSを通じた情報発信にも積極的に取り組んでいます。
「ゼクシィ結婚トレンド調査2022」(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ)によれば、首都圏における顧客によるフォトウエディング事業者の選定媒体として、SNSが48.7%、その他インターネット上のWebサイトが31.0%と多く利用されています。
別撮りのスタジオ・ロケーション撮影の依頼先を検討する際に利用した情報源
(単位:%、複数回答可)
媒体 |
2020年 |
2021年 |
2022年 |
SNS |
39.4 |
47.4 |
48.7 |
その他Webサイト |
27.6 |
30.6 |
31.0 |
結婚情報サイト |
19.3 |
25.5 |
24.1 |
結婚式場の紹介 |
14.2 |
15.4 |
18.2 |
結婚情報誌 |
11.6 |
13.0 |
9.6 |
友人・知人の紹介 |
11.3 |
10.1 |
8.6 |
挙式会場などのHP |
6.1 |
5.6 |
7.8 |
(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ「ゼクシイ結婚トレンド調査2022」)
当社グループの接客件数のうち90%以上は自社Webサイトでの予約によるものであり、その入口となるWeb検索においては、SEO対策(*)と、競合他社に先行してWebサイトからの集客に注力してきたことによる過去の検索数の蓄積等により、「フォトウエディング」「前撮り」等のキーワード検索で各地域において上位を占める結果を導いています。SNSを通じた情報発信にも積極的に取り組み、当社グループの提供するサービスの認知度を向上させる活動を進めています。スタジオ事業においては、各店舗の公式アカウントに加えて、技術水準等の社内認定基準を満たしたフォトグラファーやメイクアップアーティストについては個人アカウントを開設し、フォロワー数を増やし情報発信力を強化することによる認知度の向上に取り組んでいます。さらに、SNSにおいては当社グループのサービスに満足いただけた顧客自身により情報発信されることで、当社グループ・顧客の双方向からの情報発信が当社グループのサービスの認知度を高める仕組み作りを推進しています。
(*)「Search Engine Optimization」の略であり、インターネット検索結果でWebサイトを上位表示させたり、より多く露出するための一連の取組のことを「SEO」といいます。
③衣裳
和装の品揃えの充実と、洋装ドレスはデザインを内製化して国内外の仕入先に直接発注することで最新のデザインのトレンドを取り入れた衣裳をいち早く提供することを可能とし、品質とコストを自社でコントロールしつつ、顧客に「多くの衣裳の中からお気に入りを選ぶ楽しさ」を提供し満足度を高める取組を進めています。
④地域に根差した店舗展開
当社グループは首都圏で「スタジオAQUA」、関西圏で「スタジオTVB」、名古屋で「スタジオ 8」、福岡で「スタジオAN」、沖縄で「スタジオSUNS」、北海道で「スタジオSOLA」を展開しており、それぞれの地域に応じたブランディング・店舗づくりを行っています。大都市圏の店舗はターミナル駅近辺を中心に出店することにより、地域のお客様にとって利便性の高い店舗展開を行っています。
今後は、大都市圏においては大規模なターミナル店舗とその周辺に展開する中小規模のサテライト店舗を組み合わせ、商圏内のシェアを引き上げる戦略を推進します。また、オンライン接客等のセンターオペレーション化や衣裳管理のリモート化等を進めることで、店舗の業務とスペースの効率化及び既存店稼働率の向上を推進します。これらの施策と併せて、郊外や地方都市における中規模商圏に対応した省スペース・少人数で運営可能な地方都市型店舗の展開、リゾート地におけるフォトウエディングサービスを提供するリゾート型店舗の展開を推進してまいります。
これらの取組により、当社グループでは、2025年9月期までの中期経営計画期間においてフォトウエディングサービスの店舗を11店舗、アニバーサリーフォトサービス(HAPISTA)の店舗を31店舗出店する計画です。
スタジオ事業の店舗数の推移は以下のとおりです。
年 |
2009年 |
2010年 |
2011年 |
2012年 |
2013年 |
2014年 |
2015年 |
店舗数 |
2 |
5 |
7 |
9 |
11 |
12 |
15 |
(ウエディング) |
2 |
5 |
7 |
8 |
10 |
11 |
13 |
(アニバーサリー) |
- |
- |
- |
1 |
1 |
1 |
2 |
出店数 |
0 |
3 |
2 |
2 |
2 |
1 |
3 |
退店数 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
年 |
2016年 |
2017年 |
2018年 |
2019年 |
2020年 |
2021年 |
2022年 |
店舗数 |
17 |
19 |
19 |
18 |
20 |
22 |
26 |
(ウエディング) |
15 |
17 |
17 |
16 |
17 |
18 |
20 |
(アニバーサリー) |
2 |
2 |
2 |
2 |
2 |
3 |
5 |
(ペット・成人式写真) |
- |
- |
- |
- |
1 |
1 |
1 |
出店数 |
2 |
2 |
1 |
0 |
2 |
3 |
4 |
退店数 |
0 |
0 |
1 |
1 |
0 |
1 |
0 |
(注)2009年から2021年は12月末の情報であり、2022年は9月末現在の情報です。
⑤衛生管理
当社グループでは新型コロナウイルス感染症対策を含めた適切な衛生管理体制を構築するため、各店舗への必要な衛生設備の配置及び衛生管理の指導を徹底し、お客様が安心してサービスの提供を受けることができる環境を整備しています。
⑥衣裳の品質管理
当社グループではグループ全体の衣裳を管理する部門を設置し、定期的な衣裳の購入と廃棄、店頭在庫の入替等を行い衣裳デザインの陳腐化や使用過多・経年による劣化品の使用を防止することで品質を確保しています。衣裳の買付けにあたっては仕入先と直接交渉し、デザイン・品質を確認した上で大量購入することで低価格を実現しています。
⑦新型コロナウイルス感染症拡大への対応
当社では新型コロナウイルス感染症への対応として、非接触でコロナ禍においても安心して撮影申込が可能な「オンライン専門相談カウンター」によるオンライン接客の拡充、長距離の移動が制約を受ける中で都市近郊の旅行先でのフォトウエディングを提供する「フォトジェニックジャーニー」の実施等、顧客のニーズをとらえ環境に合わせた施策を実行してまいります。
⑧フォトウエディング事業領域の拡大及びライフイベント領域への展開加速
近郊の旅行先でフォトウエディングを行う「フォトジェニックジャーニー」、新郎新婦だけでなく家族と一緒に撮影する「家族フォトウエディング」、フォトウエディングにオンライン結婚式を組み合わせた「フォトパブリックウエディング」、本格的なチャペルでフォトウエディングを行う「チャペルフォトプラン」等の取組や、入国規制緩和及び円安により市場の再拡大が見込めるインバウンド需要の取込みを推進し、フォトウエディング事業領域の拡大を加速してまいります。
また、スマートフォンやコンパクトデジタルカメラによる手軽な個人撮影とは異なる写真に対する消費者のニーズに対し、当社グループの持つフォトグラフィック技術を活用し、ライフイベント領域への展開に取り組んでまいります。既に多店舗展開を進めている、家族や子供の記念日(アニバーサリー)をテーマとしたフォトスタジオである「HAPISTA」については、中期経営計画において店舗展開をさらに加速し、事業基盤を強固なものとしてまいります。また、成人式フォトサービスの「NALU」については事業化に向けた取組を加速してまいります。この他、貸切スタジオでの撮影や散歩等の日常を切り取るようなペット写真サービス等、様々なライフステージにおいて顧客に寄り添ったサービスの展開を推進してまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社では、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、調整後営業利益による評価を行っています。調整後営業利益は「営業利益±その他の収益・費用+本社費(※)」で算定しています。調整後営業利益の金額・内容は「3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容d.経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について」をご参照ください。
(※)本社費:管理部門等で発生する全社的な管理費用等
お知らせ