業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度末に比べ11,532百万円増加し、115,797百万円となりました。

当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,718百万円増加し、41,377百万円となりました。

当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ8,814百万円増加し、74,420百万円となりました。
 

② 経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチンの普及により、欧米を中心に全体的に持ち直しの傾向が見られました。我が国経済においても、同感染症の影響に落ち着きが見られ、企業収益や生産活動並びに個人消費において緩やかな回復基調で推移しました。しかしながら、中国でのゼロコロナ政策によるサプライチェーンの混乱や、ウクライナ情勢等を背景としたエネルギーや原材料の価格上昇並びに急速な円安傾向の高まりから、先行きには不透明感が強まっております。

このような状況の中で、当社グループは新型コロナウイルス感染症に対し従業員並びに関係する全ての皆様の安全を最優先として感染防止に努めながら、事業の継続及び拡大に取り組みました。

貴金属関連事業においては、半導体・電子デバイス分野の市場成長を捉えた営業展開と国内外における生産拠点の整備・拡充により、貴金属原料の確保、化成品等の製商品販売及び産業廃棄物処理受託の拡大に取り組みました。また、食品関連事業においては、物流コストの上昇やサプライチェーンの混乱に柔軟かつ適切に対処することで、顧客への安定供給責任を果たすと共に、顧客ニーズを捉えた商品の開拓と提供に鋭意取り組み販売量の拡大に努めました。

これらの結果、当連結会計年度の売上高は272,292百万円(前連結会計年度比17.6%増)、営業利益は12,681百万円(前連結会計年度比57.8%増)となりました。持分法利益などの営業外損益を加えた経常利益は13,734百万円(前連結会計年度比64.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は9,558百万円(前連結会計年度比56.7%増)となりました。

 

セグメント別の状況は以下のとおりであります。

 

(貴金属関連事業)

当事業の主力顧客であるエレクトロニクス業界は、半導体不足に伴う自動車市場などの生産低下はあったものの、スマートフォン市場の回復や5Gの進展に伴う通信インフラの整備拡大などを背景に、半導体・電子デバイス分野の生産活動は回復傾向となりました。また、ウクライナ情勢等に関連した貴金属の供給不安やインフレ懸念などから貴金属相場は総じて上昇しました。

このような状況の中で、当社グループの貴金属関連事業では、貴金属リサイクルの取扱量及び産業廃棄物の処理受託は増加し貴金属製品等の販売量も全般的に増加したことに加え、貴金属相場の上昇も追い風となり、売上高及び営業利益は前連結会計年度に比べ増加しました。

これらの結果、当該事業の売上高は192,938百万円(前連結会計年度比26.0%増)、営業利益は10,350百万円(前連結会計年度比51.5%増)となりました。

 

(食品関連事業)

当事業の主力顧客である食品製造業界は、原材料価格や物流コストの上昇に円安傾向の高まりも加わり、総じて厳しい状況が続いております。また、世界的なサプライチェーンの混乱も拡大しており、食資源の安定的な供給において引き続き注意することが必要な状況となっております。

このような状況の中で、当社グループの食品関連事業では、顧客に寄り添いながらニーズに応えた商品を開拓すると共に、調達力を活かした安定提供などで差別化を図り、水産品、畜産品、農産品の販売量が増加したことに加え、一部の商品市況の高騰も影響し、売上高及び営業利益は前連結会計年度に比べ増加しました。

これらの結果、当該事業の売上高は79,431百万円(前連結会計年度比1.1%増)、営業利益は2,330百万円(前連結会計年度比93.5%増)となりました。

 

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は11,379百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,575百万円の増加となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動により増加した資金は7,032百万円となりました。これは主として税金等調整前当期純利益、減価償却費及び仕入債務の増加による資金の増加と、売上債権、棚卸資産の増加及び法人税等の支払いによる資金の減少の差引によるものであります。なお、前連結会計年度の185百万円の資金の増加に比べ6,847百万円資金が増加しました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動に使用した資金は2,521百万円となりました。これは主として工場設備の新設及び更新等の有形固定資産及びソフトウエア等の無形固定資産取得による支出によるものであります。なお、前連結会計年度の3,181百万円の支出に比べ660百万円の支出減少となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動により減少した資金は2,261百万円となりました。これは主として、長期借入金の返済及び配当金の支払による資金の減少によるものであります。なお、前連結会計年度の261百万円の資金の増加に比べ2,522百万円資金が減少しました。

 

 

(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移

回次

 

第69期

第70期

第71期

第72期

第73期

決算年月

 

2018年3月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

自己資本比率 (注)1

 

70.5

72.8

63.9

62.8

64.2

時価ベースの自己資本比率

 (注)2

 

64.2

45.3

35.3

50.9

55.8

キャッシュ・フロー対有利子負債比率 (注)3

 

1.2

93.2

2.3

インタレスト・カバレッジ・レシオ (注)4

 

111.2

2.6

106.4

 

(注) 1 自己資本比率:自己資本/総資産

2 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

3 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

4 インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

※ 株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに算出しております。

※ キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用
しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

※ 第69期及び第71期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

(生産実績)

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

貴金属関連事業

 

 

 製品

182,093

127.9

 処理

4,829

65.6

 

(注) 1 当社グループにおける生産活動は、貴金属関連事業においてのみ行われております。

2 金額は、販売価格によっております。

 

(仕入実績)

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前年同期比(%)

貴金属関連事業

58,343

121.5

食品関連事業

69,021

96.7

合計

127,365

106.7

 

(注) 金額は、仕入価格によっております。

 

(受注実績)

見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

(販売実績)

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

貴金属関連事業

192,938

126.0

食品関連事業

79,354

101.1

合計

272,292

117.6

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり重要となる会計方針につきましては、「第一部[企業情報] 第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] [注記事項] (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりですが、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に退職給付会計、賞与引当金、税効果会計、貸倒引当金、減損会計、棚卸資産の評価であり、継続して評価を行っております。

また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは、「第一部 [企業情報] 第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] [注記事項] (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

なお、見積り及び判断・評価につきましては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

 

② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ 財政状態の分析

a 資産の部

流動資産は、現金及び預金が2,575百万円、受取手形及び売掛金が2,202百万円、棚卸資産が3,396百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ9,591百万円増加しました。固定資産は、工場設備の新設及び更新などにより有形固定資産が567百万円増加したことに加え、投資その他の資産が1,115百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,941百万円増加しました。これらの結果、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ11,532百万円増加し、115,797百万円となりました。

 

b 負債の部

流動負債は、買掛金が1,486百万円、短期借入金が717百万円、未払法人税等が1,420百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ4,248百万円増加しました。固定負債は、長期借入金が1,588百万円減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,530百万円減少しました。これらの結果、当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,718百万円増加し、41,377百万円となりました。

 

c 純資産の部

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益9,558百万円と配当金の支払1,095百万円の差引によって利益剰余金が8,692百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ8,814百万円増加し、74,420百万円となりました。なお、利益剰余金の増加には「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準という。)等の適用に伴う期首の調整229百万円が含まれております。

 

 

ロ 経営成績の分析

a 売上高

当連結会計年度における売上高は272,292百万円(前連結会計年度比17.6%増)となり、前連結会計年度に比べ40,732百万円増加しました。セグメント別の売上高につきましては、「第一部[企業情報] 第2[事業の状況] 3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりですが、主要な分析は以下のとおりであります。

 

(貴金属関連事業)

金製品の売上高は、前連結会計年度に比べ19,120百万円増加し、101,425百万円(前連結会計年度比23.2%増)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ5.1%上昇しました。

銀製品の売上高は、前連結会計年度に比べ3,782百万円増加し、15,696百万円(前連結会計年度比31.8%増)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ15.4%上昇しました。

白金族製品の売上高は、前連結会計年度に比べ15,322百万円増加し、53,267百万円(前連結会計年度比40.4%増)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ29.3%上昇しました。

 

(食品関連事業)

水産品の売上高は、前連結会計年度に比べ3,945百万円減少し、32,917百万円(前連結会計年度比10.7%減)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ18.3%下落しました。なお、当連結会計年度の期首から収益認識会計基準等を適用しており、当該変更により、従来の方法に比べて食品関連事業の売上高は10,323百万円減少しましたが、この影響の大半が水産品であります。

畜産品の売上高は、前連結会計年度に比べ3,227百万円増加し、31,778百万円(前連結会計年度比11.3%増)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ11.1%上昇しました。

農産品の売上高は、前連結会計年度に比べ518百万円増加し、9,130百万円(前連結会計年度比6.0%増)となり、売上単価は前連結会計年度に比べ2.2%下落しました。


b 売上総利益

当連結会計年度における売上総利益は29,953百万円(前連結会計年度比22.4%増)となり、前連結会計年度に比べ5,481百万円増加しました。売上総利益率は11.0%となり前連結会計年度比0.4ポイント上昇しましたが、この主な要因は、収益認識会計基準等の適用による売上高減少の影響を受けた食品関連事業の売上総利益率の上昇によるものです。


c 営業利益

当連結会計年度における営業利益は12,681百万円(前連結会計年度比57.8%増)となり、前連結会計年度に比べ4,642百万円増加しました。営業利益率は4.7%となり前連結会計年度比1.2ポイント上昇しましたが、この主な要因は、販売費及び一般管理費の増加838百万円を上回る売上総利益の増加によるものです。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性についての分析

イ キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析につきましては、「第一部[企業情報] 第2[事業の状況] 3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

ロ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、貴金属関連事業におけるリサイクル原材料及び食品関連事業における食品加工原材料の仕入れ等の事業運営上必要となる資金の確保に加え、急激な環境変化にも備え流動性を維持する考えの下で、運転資金については営業活動により獲得したキャッシュ・フロー及び金融機関からの短期借入を、設備投資については営業活動により獲得したキャッシュ・フロー及び金融機関からの長期借入を基本としております。なお、当社は資金調達の機動性を高めるため、株式会社みずほ銀行をアレンジャーとする計4行の金融機関との間に3,000百万円の借入枠(コミットメントライン)を設定しております。

当連結会計年度末における有利子負債の残高は、前連結会計年度末に比べ906百万円減少し16,389百万円となりました。売上高の増加等に伴う資金の需要増大に対し流動性の確保を図ると共に、資金調達コストの低減にも努め、金利変動リスクに対してもヘッジ手段として金利スワップ等を活用しております。「第一部[企業情報]第3[設備の状況] 3[設備の新設、除却等の計画] (1)重要な設備の新設等」に記載の設備投資につきまして、必要資金は営業活動により獲得したキャッシュ・フロー及び金融機関からの長期借入により賄う予定であります。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「第一部[企業情報]第2[事業の状況] 1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等] (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、中期経営計画(2022-2025年度)では、計画の最終年度となる2025年度(2026年3月期)の業績目標を連結売上高3,000億円、連結営業利益130億円、連結営業利益率4.3%、連結自己資本利益率(ROE)9.0%、総資産経常利益率10.0%としております。

なお、当連結会計年度を最終年度とする中期経営計画(2019-2021年度)においては、事業戦略の推進、経営基盤の強化等を進めた結果、貴金属関連事業・食品関連事業の両事業ともに総じて好調に推移し、目標としました経営指標である連結売上高、連結営業利益、連結営業利益率及び連結自己資本利益率(ROE)をいずれも達成することができました。

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