業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下収益認識会計基準という)等を適用しています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照下さい。

 

当連結会計年度における市場別の受注高・売上高・受注残高

当連結会計年度においては、通信事業者事業、パブリック事業及びパートナー事業を中心に受注が好調に推移し、受注高は2,318億44百万円(前年同期比13.9%増)と、過去最高となりました。

その一方で、半導体不足に起因する機器仕入納期の長期化が継続しており、約120億円にわたる複数案件の売上時期が遅延したことで、売上高は1,885億20百万円(前年同期比6.7%減)となりました。これらの結果、受注残高は1,391億60百万円(前年同期比46.6%増)となり、過去最高となりました。

エンタープライズ(ENT)事業では、製造業において半導体不足による業績影響を背景に投資が控えられ、また、金融業において第2四半期連結会計期間が投資時期の谷間となり、受注高及び売上高が減少しました。ただし、第4四半期連結会計期間では製造業及び金融業双方で受注が回復しました。また、機器納期の長期化によって売上時期が遅延しました。

受注高は532億7百万円(前年同期比7.1%減)、売上高は465億83百万円(前年同期比14.6%減)、受注残高は359億71百万円(前年同期比23.2%増)となりました。

通信事業者(SP)事業では、テレワーク等による通信量増加に対応した回線増強に向けて、機器納期の長期化を見据えた前倒し発注が継続しました。また、MSP及び法人事業の支援は継続して堅調に推移しました。一方で、機器納期の長期化によって売上時期が遅延しました。

受注高は475億76百万円(前年同期比20.6%増)、売上高は429億12百万円(前年同期比17.6%増)、受注残高は228億62百万円(前年同期比30.8%増)となりました。

パブリック(PUB)事業では、自治体情報セキュリティクラウド及びセキュリティ強靭化の受注が好調で、2021年3月期のGIGAスクール案件の受注剥落をカバーしました。売上高においては、機器納期の長期化によって売上時期が遅延しました。

受注高は806億39百万円(前年同期比13.2%増)、売上高は569億61百万円(前年同期比18.4%減)、受注残高は634億59百万円(前年同期比59.8%増)となりました。

パートナー事業(ネットワンパートナーズ株式会社)では、2021年3月期は新型コロナウイルス感染症の影響を受けていた主要パートナーのビジネスが、全体的に回復基調になりました。また、第1四半期連結会計期間に約30億円の5G案件を受注し、MSPビジネスも好調に推移しました。一方で、機器納期の長期化によって売上時期が遅延しました。

受注高は486億59百万円(前年同期比43.7%増)、売上高は402億1百万円(前年同期比1.2%増)、受注残高は167億57百万円(前年同期比101.9%増)となりました。

その他(グローバル事業等)では、受注高が17億60百万円、売上高が18億60百万円、受注残高が1億9百万円となりました。

 

当連結会計年度における商品群別の受注高・売上高・受注残高

機器商品群では、受注高は、通信事業者事業における前倒し発注及びパートナー事業における5G案件を獲得し、前年同期比で増加しました。売上高は、各市場において機器納期の長期化による売上時期の遅れがあり、前年同期比で減少しました。これらに伴い、受注残高が大幅に増加しました。

受注高は1,279億4百万円(前年同期比12.1%増)、売上高は1,046億11百万円(前年同期比10.5%減)、受注残高は479億28百万円(前年同期比94.6%増)となりました。

サービス商品群では、「統合サービス事業」によって、受注高・受注残高が順調に前年同期比で増加しました。その一方で、売上高は、機器と同時に計上される構築サービスの売上時期も遅延し、前年同期比で微減となりました。

受注高は1,039億40百万円(前年同期比16.3%増)、売上高は839億8百万円(前年同期比1.6%減)、受注残高が912億32百万円(前年同期比29.8%増)となりました。

 

損益の状況

機器納期の長期化の影響で約120億円にわたる複数案件の売上時期が遅延したことで、売上総利益は517億86百万円(前年同期比7.4%減)となりました。販売費及び一般管理費が349億95百万円(前年同期比3.4%減)となった結果、営業利益は167億90百万円(前年同期比14.7%減)、経常利益は168億32百万円(前年同期比7.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は112億25百万円(前年同期比8.9%減)となりました。

 

・財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末の資産合計は1,617億13百万円となり、前連結会計年度末に比べ59億30百万円の増加(3.8%増)となりました。

 資産の内訳は、流動資産は1,493億34百万円となり、前連結会計年度末に比べ68億52百万円の増加(4.8%増)となりました。これは主に、現金及び預金が121億48百万円、受取手形売掛金及び契約資産が116億64百万円減少し、一方で、未成工事支出金が184億49百万円、商品が81億62百万円、未収消費税等の増加等により流動資産のその他が25億71百万円、リース投資資産が17億46百万円増加したことによるものです。また、固定資産は123億78百万円となり、前連結会計年度末に比べて9億21百万円の減少(6.9%減)となりました。

 

(負債)

 当連結会計年度末の負債合計は931億65百万円となり、前連結会計年度末に比べて111億78百万円の増加(13.6%増)となりました。これは主に、未払法人税等が34億11百万円、賞与引当金が23億91百万円、買掛金が21億35百万円減少し、一方で、短期借入金が180億円増加したことによるものです。

 

(純資産)

 当連結会計年度末の純資産合計は685億47百万円となり、前連結会計年度末に比べて52億47百万円の減少(7.1%減)となりました。これは主に、自己株式が22億26百万円増加し、親会社株主に帰属する当期純利益112億25百万円の計上と配当金の支払い64億27百万円、収益認識会計基準等の適用に伴い利益剰余金の当期首残高が6億38百万円減少したこと等により利益剰余金が33億59百万円減少したことによるものです。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度においては、棚卸資産の増加による支出等により、営業活動によるキャッシュ・フローは108億74百万円の支出となりました。

 また、投資活動によるキャッシュ・フローについては、有形固定資産の取得による支出等により15億15百万円の支出となり、財務活動によるキャッシュ・フローについては、短期借入れによる収入等により2億33百万円の収入となりました。その結果、現金及び現金同等物は121億48百万円減少し、期末残高は202億81百万円(前期末比37.5%減)となりました。

 なお、前連結会計年度との比較は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による支出は108億74百万円となり、前連結会計年度に比べ206億75百万円の支出増となりました。これは主に、売上債権及び契約資産等の減少による収入が225億32百万円増加し、一方で、棚卸資産の増加による支出が243億2百万円増加、未払消費税等の減少による支出が44億23百万円増加、賞与引当金の減少による支出が39億49百万円増加、仕入債務の減少による支出が33億89百万円増加、法人税等の支払額が27億88百万円増加したことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による支出は15億15百万円となり、前連結会計年度に比べ18億20百万円の支出減となりました。これは主に、敷金の差入による支出が17億84百万円減少したことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による収入は2億33百万円となり、前連結会計年度に比べ57億39百万円の収入増となりました。これは主に、自己株式の取得による支出が100億円増加、配当金の支払いによる支出が23億54百万円増加し、一方で、短期借入れによる収入が180億円増加したことによるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

 a.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

ENT事業

53,207

92.9

35,971

123.2

SP事業

47,576

120.6

22,862

130.8

PUB事業

80,639

113.2

63,459

159.8

パートナー事業

48,659

143.7

16,757

201.9

報告セグメント計

230,084

114.0

139,051

146.8

その他

1,760

106.5

109

52.2

合計

231,844

113.9

139,160

146.6

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 b.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

ENT事業

46,583

85.4

SP事業

42,912

117.6

PUB事業

56,961

81.6

パートナー事業

40,201

101.2

報告セグメント計

186,660

93.1

その他

1,860

119.4

合計

188,520

93.3

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①当期の経営成績の概況

セグメント別業績

セグメント別の情報につきましては、(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりであります。

 

中期事業計画と当連結会計年度の取り組み

当社グループは、2020年3月期~2022年3月期の3年間を対象期間とした以下の中期事業計画を定め、市場の変化に対応した取り組みを進めました。

 

1.注力市場・新モデルの拡大:市場カバレッジの拡張

注力市場として、デジタル化が大きく進展する3つの市場を選定しました。1)大規模病院を対象とした「ヘルスケア」、2)教育委員会や学校を対象とした「スクールシステム」、3)製造工場を対象とした「スマートファクトリー」です。

また、新モデルとして、「所有から利用」への需要の変化を捉えた2つのモデルを選定しました。1)サービス事業者(通信事業者や大手民間企業)と新サービスを共創する「MSP(マネージド・サービス・プロバイダー)の支援」、2)再生品を活用してコスト効率の高いサービスを提供する「リファービッシュメント(再生品)の展開」です。

中期事業計画期間の目標として注力市場及び新モデルそれぞれで受注高50億円の伸長(合計250億円の伸長)を掲げたのに対して、合計322億円の伸長となり、計画達成となりました。各市場・モデルにおける、当連結会計年度の状況は以下のとおりです。

項目

名称

中期事業計画期間における

各年度の受注高の進捗額

当連結会計年度の状況

2019年3月期

2020年3月期

(1年目)

2021年3月期

(2年目)

2022年3月期

(3年目:

当連結

会計年度)

注力

市場

ヘルスケア

40億円

60億円

38億円

52億円

外部要因:新型コロナウイルス感染症の影響は継続したものの、病院においてICT投資が徐々に再開

内部要因:投資総額が増加する中で案件の獲得に努め、受注高が増加

スクールシステム

51億円

76億円

239億円

86億円

外部要因:2021年3月期に発生した、文部科学省のGIGAスクール構想に伴う、学校のネットワーク整備に向けた補正予算が剥落

内部要因:予算金額が減少する中、教育のデジタル化への提案を進め大型案件も獲得したものの、受注高は減少

スマートファクトリー

40億円

67億円

71億円

87億円

外部要因:半導体不足の影響で、製造業におけるICT投資意欲は減少傾向に。一方で、事業成長に向けたデジタル化の投資優先順位は高い状況を維持

内部要因:製造工場のデジタル化に向けた、生産機器等を接続する高品質なネットワーク及び工場特有のセキュリティ対策の提案を進め、当初想定には多少届かなかったものの受注高が拡大

新モ

デル

MSPへの支援

37億円

47億円

86億円

238億円

外部要因:新型コロナウイルス感染症による、情報セキュリティを意識したテレワーク等の働き方改革の需要が拡大

内部要因:拡大需要の獲得に向けて、MSPと新サービスの共創を加速したことで、受注高が大幅に増加

リファービッシュメントの展開

0億円

16億円

20億円

27億円

外部要因:投資・運用コストの最適化に対する需要が継続

内部要因:再生品や第三者保守サービスの新規提案に遅れが発生し、受注高が当初想定に未達。一方で、事業収益性の高さから、利益は計画どおりに進捗

 

2.統合サービス事業の加速:サービス比率の拡大

当社グループでは、お客様への活動の全てを、高付加価値を創出するための「統合サービス事業」と定義し、計画・導入・運用・最適化の全てのICTライフサイクルを支援しています。

当連結会計年度では、運用支援からグランドデザイン提案につなげる取り組みを通じて、お客様のICT基盤全体の支援が大きく進展し、受注高が大きく伸長しました。その一方で、中期事業計画期間の目標としたサービス比率50%については、サービス商品群自体も大きく成長したものの、機器商品群も同時に成長したことで、目標には至りませんでした。

項目

中期事業計画期間における各年度の進捗額

当連結会計年度の

サービス比率

2019年3月期

2020年3月期

(1年目)

2021年3月期

(2年目)

2022年3月期

(3年目:当連結会計年度)

サービス受注高

796億円

888億円

894億円

1,039億円

44.8%

サービス売上高

744億円

797億円

852億円

839億円

44.5%

 

3.働き方改革2.0/DXの実践:生産性の向上

当社グループは2010年より、いつでも・どこでも業務が可能な環境を整備してきました。これを「働き方改革1.0」と称しています。これに加えて、全ての業務を見直してシステムと一体化することで、業務のスピードや品質を向上させ、全社の生産性向上に取り組んでいます。これを、「働き方改革2.0/DX」と称しています。また、「働き方改革2.0/DX」の取り組みを通して得られた成功・失敗の知見をお客様に還元する(netone on netone)ことで、他社が真似できない当社独自の価値の提供に取り組んでいます。

当連結会計年度では、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、恒常的に約8割の従業員がテレワークを実施するとともに、With/Afterコロナを見据えてオフィス勤務者とテレワーカーの共創を加速しました。一方で、DXに関しては、方針の再設定や再発防止策のシステム対応を優先しました。

 

目標とする経営指標に対する業績の状況

 2020年3月期~2022年3月期を対象期間とした中期事業計画にて、中期的な目標として、2022年3月期に、売上高2,200億円、営業利益210億円、営業利益率9.5%、サービス比率50.0%、ROE16.8%を目指すことを定めました。

 これらの目標に対して、成長戦略に沿って、受注高をはじめとして好調に事業が推移したものの、機器納期の長期化の影響で約120億円にわたる複数案件の売上時期が遅延したことで、売上高1,885億円、営業利益は167億円、営業利益率8.9%、サービス比率44.5%、ROE15.8%となり、目標には至りませんでした。

 

②資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資本の源泉及び資金の流動性について、自己資金のほか、金融機関からの借入により調達しております。有価証券報告書提出日現在において支出が予定されている重要な資本的支出はありません。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

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