文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)企業理念
当社グループは、2023年3月期から2025年3月期を対象期間とする中期経営計画(10ページ~12ページに記載)の策定に先立ち、ICTの利活用を通じ、社会課題の解決に取り組むために、新しく理念体系を再定義しました。
Purpose(志、大義) |
人とネットワークの持つ可能性を解き放ち、伝統と革新で、豊かな未来を創る |
Mission(使命) |
我々は、一人一人が卓越した専門性と高い倫理観を持つプロフェッショナルであり、社会とお客様の課題解決に貢献する |
Vision(目標、Goals) |
ネットワークのリーディングカンパニーとしての高い誇りを持つ ネットワンならではの付加価値を創出し、継続した成長を実現する 絶え間ない自己研鑽で心と技術を鍛える精鋭集団であり続ける 幅広いステークホルダーへの責任を果たすため、適切な収益構造を維持する |
Values(価値観) |
People:私たちは大切な人に誇れる仕事をします Governance:私は社会に評価される行動を取り続けます Social:私はお客様と一緒に、価値を創造し展開します Environment:私は未来を想い、未来の仕組みをつくります |
WAY |
netone、一歩先へ。不祥事を忘れない、誠実に丁寧に、心と体を大切に、お互いに半歩踏み込む、失敗も成功も次への糧に、進化し続ける「匠」、ワクワクを広げる、期待値を超えていく。 |
(2)経営方針
当社グループは、2023年3月期から2025年3月期を対象期間とする中期経営計画に則り、再定義した新理念体系(Purpose、Mission、Vision、Values)に向けて、「成長戦略の遂行」と、それを支える「経営基盤の強化」を目指します。また、社会的責任として、「サステナビリティ」に取り組みます。
(3)経営環境
当社グループは、デジタル化の需要が高まる中、社会課題の解決に貢献できるビジネスにこそ商機があると捉え、当社の特徴を活かして更なる成長発展を目指します。
具体的には、社会では「少子高齢化・地域格差」「脱炭素・サステナブル」「地方創生」等の課題が生じており、市場では「モノからコトへシフト」「2025年の崖」「ICT技術の革新的進歩」等の大きな変化が生じています。また、お客様では「デジタル化による企業変革」「ICT投資の優先度の変化」が生じています。
当社グループは、「ICTインフラインテグレート」「モノとサービスをつないで提供」「システム運用サービスの提供」という特徴を活かし、「サステナビリティ・社会課題への貢献」という社会価値を創造し、「当社の継続的成長」という経済価値も創造します。
(4)目標とする経営指標
当社グループは、社会課題解決型にアプローチを変遷させながら価値提供領域を拡大し、収益性・効率性の更なる向上によって企業価値を向上してまいります。
中期的な目標として、2023年3月期~2025年3月期の3年間を対象期間とする中期経営計画にて、中期経営計画期間の最終年度となる2025年3月期に、売上高2,260億円、営業利益率12.0%、サービス比率55.0%、ROE20.0%を目指すことを定めました。
(5)対処すべき課題及び事業戦略
不正事案の再発防止:当連結会計年度の総括
当連結会計年度では、再発防止策を計画どおり推進し、二度と不正を起こさない企業文化醸成の基盤を着実に構築しました。2023年3月期以降も、社員の意見を反映した再発防止策の実効性強化、企業文化改革の推進、モニタリングを継続し、信頼回復の流れを盤石にしてまいります。
1.当連結会計年度に達成した事項
経営ビジョン・行動指針の見直し |
経営陣と社員が一丸となり、企業文化改革の基盤となる新しい企業理念体系(当社の存在意義、使命、目標、価値観、行動指針)を策定しました。 |
内部統制システムの整備・強化 |
代表取締役社長を統括責任者とし、外部専門家も参加する内部統制強化協議会による全社横断的かつ継続的な再発防止策を推進しました。より現場に近い立場から第1ラインの牽制と支援を行う第1.5ライン(業務統制本部)を創設しました。第3ライン(内部監査室)の体制と機能を強化しました。 |
現場の意見も反映した各種改善取組み推進 |
各種取組みは、社員の意見も集約し、フィードバックを行いながら推進しました。 |
ステークホルダーへの再発防止策に関する情報の開示 |
東京証券取引所へ改善状況報告書を提出しました。当社ホームページ上で、月次での進捗状況や半期での詳細運用状況を開示しました。 |
2.2023年3月期以降の更なる飛躍に向けた活動方針
機関設計の見直しによるコーポレート・ガバナンスの強化 |
監査等委員会設置会社への移行による業務執行の監督強化、迅速かつ柔軟な業務執行体制の確立を図ります。 |
新経営ビジョン・行動指針の浸透 |
経営陣・社員の全員が一丸となり、新しい企業理念体系の浸透に向けた活動を推進してまいります。 |
風化させない仕組みの構築 |
不正事案を含む過去の振返りと今後の企業発展に向けた経営陣・社員の気付きの場を構築します。内部統制システムの更なる運用の強化を図ります。取組み内容の実効性をさらに高める工夫を継続します。再発防止策の履行状況のパトロール(内部監査以外の定期的な調査)を実施します。 |
グループ会社ガバナンスの強化 |
グループ会社共通の目的を掲げることによる共通認識の醸成と各社の実務に則した改善活動を推進します。グループ会社共通の内部通報窓口を設置し、運用します。 |
長期ビジョン
当社グループは、2023年3月期から2025年3月期を対象期間とする中期経営計画の策定に先立ち、長期ビジョンとして、以下を定めました。
1.ネットワングループの宣言
8ページに記載の「企業理念」のとおり、当社グループの新理念体系(Purpose、Mission、Vision、Values)を再定義しました。
2.事業の変革:過去9年間の主要な取り組み
続いて、過去9年間の主要な取り組みを整理しました。
2014年3月期から2016年3月期では、ネットワーク専業から、クラウド・セキュリティ・IoT等のICT基盤全体へビジネスモデルを変革しました。通信事業者市場への依存から脱却し、全セグメントで付加価値ビジネスを拡大しました。
2017年3月期から2019年3月期では、クラウド・セキュリティを中核事業として実績を拡大しました。機器販売主体のビジネスから、収益性・付加価値の高いサービスも含めた事業にシフトしました。
2020年3月期から2022年3月期では、お客様への活動すべてを高付加価値を創出するための「統合サービス事業」と定義し、ICTの将来像に向けたライフサイクル全体(計画・導入・運用・最適化の一連の流れ)を支援し、案件規模拡大や収益性改善を実現しました。
3.外部環境認識及び目指す価値創造
8ページに記載の「経営環境」のとおり、当社グループは、デジタル化の需要が高まる中、社会課題の解決に貢献できるビジネスにこそ商機があると捉え、当社の特徴を活かして更なる成長発展を目指します。
4.サステナビリティ方針
当社グループは、ネットワークのリーディングカンパニーとして、お客様や社会の変革を支える高付加価値なサービスを提供することで成長してまいりました。
当社グループは「人とネットワークの持つ可能性を解き放ち、伝統と革新で、豊かな未来を創る」を存在意義として、お客様の成功、社員の幸福、パートナーとの共創関係の構築、株主価値の向上、自然環境の保全に事業を通じて貢献することが、企業価値の向上につながると考えています。「優れたネットワーク技術」「マルチベンダ対応」「お客様との共創」から生まれるICTの目利き力と知見を磨き、社会価値と経済価値を創出するサービスを提供することで持続可能な社会への貢献と当社の持続的成長を両立していきます。
これを踏まえ、当社グループが取り組むマテリアリティ(重要課題)を「安心・安全な高度情報社会の実現」「プロフェッショナル人財の活躍」「脱炭素社会への貢献」「持続可能な成長を実現するガバナンス体制の維持強化」と特定しました。
前中期事業計画期間における機会と課題認識
当社グループは、2020年3月期から2022年3月期を対象期間とした前中期事業計画期間を振り返り、機会と課題認識を以下のように整理しました。
機会 |
顧客の事業ICT投資・サステナビリティ投資の拡大 |
顧客との深いリレーションから、上流のDX戦略・グランドデザインに参画・支援する機会を獲得することで、顧客の事業ICT投資、サステナビリティ投資に関連する対応領域が拡大しました。 |
共創によるビジネス機会の拡大 |
サービス事業者などと共創する「MSPへの支援」が加速しました。共通化・自動化を進めることによる更なるビジネス展開がみえました。 |
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顧客接点の拡大 |
営業担当者及びエンジニアの品質・効率を最大化する組織や働き方を実現することで、顧客の深耕・拡大を実現しました。 |
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課題 |
ガバナンス・企業文化 |
複数の不祥事が発生し、再発防止の徹底に留まらず、企業文化そのものの継続的な改革が、経営基盤をより強固にするための課題となります。 |
ストック型ビジネスの推進 |
新型コロナウイルス感染症拡大や、半導体不足に起因する機器納期遅延による、短期的な売上高の低下が発生しました。安定した経営を可能にするためのストック型ビジネスの推進が課題となります。 |
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データの見える化 |
ビジネス構造の複雑化に対して管理体制の整備が追いつかず、収益・事業リスクのモニタリング方法におけるスピード感や網羅性に課題がみえました。 |
中期経営計画
長期ビジョン及び前中期事業計画期間での機会と課題認識を踏まえ、当社グループは、2023年3月期から2025年3月期を対象期間とする中期経営計画を策定しました。
1.外部環境の認識と当社グループの強み
デジタル化は、IT企業・製造業・サービス業にとどまらず、全ての産業の根幹となりました。社会のデジタル化が加速度的に進む中、これらの課題を解決するためにはネットワークインフラの強化は必要不可欠です。
当社グループは、ネットワーク技術力、マルチベンダ対応、大規模な顧客基盤から培われた目利き力により、中立的な立場から最適なシステムを実現します。さらに、顧客に先駆けて自社内への導入で蓄積した利活用ノウハウを駆使することで、導入後の使い方まで考慮したサービスを提供します。
2.経営基本方針
これらを踏まえ、再定義した新理念体系(Purpose、Mission、Vision、Values)に向けて、「成長戦略の遂行」と、それを支える「経営基盤の強化」を目指します。また、社会的責任として、「サステナビリティ」に取り組みます。
「経営基盤の強化」では、以下3点に取り組みます。
(1)企業文化改革
過去の不祥事を二度と繰り返さないため「企業文化改革」を重要施策と位置づけ、「内部統制強化協議会」と「企業文化改革委員会」を統合した専門組織「ガバナンス・企業文化諮問委員会」を取締役会の諮問委員会として設置しました。2023年3月期以降も、9ページに記載の「2023年3月期以降の更なる飛躍に向けた活動方針」に沿い、企業文化改革と再発防止策の履行・浸透のさらなる推進を図ります。
(2)徹底した見える化
現状の「中途半端な見える化」では、ビジネス構造の複雑化に対して、管理体制の整備が追いついていない状態でした。具体的な問題点としては、「データ統合基盤の整備遅れ、データ管理の分散」「案件単位での採算管理の不徹底」「組織が縦割り体制になっており、連携が不十分」が挙げられます。
これに対して、「徹底した見える化」を実現することにより、経営状況・経営課題に関するデータやファクトをタイムリーに把握することで業績を向上させます。具体的には、「経営の見える化」「業務プロセスの見える化」「組織・人の見える化」に取り組みます。この「徹底した見える化」を通じて、全従業員共通の情報に基づくコミュニケーションを活性化し、意思決定に資する経営基盤を支えます。
(3)人財戦略
成長意欲を持つ人財が心置きなくチャレンジし、その力を最大限発揮できる環境を整えます。
まず、プロフェッショナル人財の育成として、担当する業界や技術領域、コーポレート機能などにおいてそれぞれが「目利き力」を発揮し、高い品質での価値提供ができるよう、個人の専門性向上を支援します。具体的には、コーポレート・事業部門双方で、強い専門性を持った人財の育成、コンサルティング人財の拡充、サービス事業に対応するデジタル化やカスタマーサクセス人財の拡充を図ります。
そして、人財が活躍するための環境の提供として、専門領域や価値観が異なる人財が互いを尊重し、顧客のニーズに合わせた最適なチームで価値を創出できる環境・仕組みを構築します。具体的には、全社一丸となって顧客接点を拡大するための環境整備を意図した技術組織の再編や営業事務の集約化、多様な成長を支援する人事制度への移行を通じたチームでの活動を評価する仕組みの整備、産学連携による学びの提供に取り組みます。
「成長戦略の遂行」では、以下3点に取り組みます。
(1)事業戦略
社会課題の解決に貢献するため、既存事業に隣接する3つの注力領域「デジタルガバメント」「Society5.0を実現する社会基盤」「スマートマニュファクチャリング」で事業成長を加速します。中期経営計画期間の最終年度である2025年3月期において、3つの注力領域で売上高合計300億円の伸長(2022年3月期比)を図ります。
「デジタルガバメント」では、自治体を対象として、強靭化や情報セキュリティクラウド、地域社会のICTインフラ高度化、デジタル化による地域課題解決や地域活性化に取り組みます。
「Society5.0を実現する社会基盤」では、通信/社会インフラ、民間企業、医療を対象として、通信インフラ高度化、電力・ガス・鉄道インフラの高度化、運用高度化による社会基盤の安定化に取り組みます。
「スマートマニュファクチャリング」では、自動車・電機・機械などの製造業を対象として、データ利活用による事業価値向上、事業領域セキュリティ強化、脱炭素経営に向けた見える化に取り組みます。
(2)サービス戦略
ニーズの変化に対応した収益力の高いサービスを開発し、これまでの実績を活かして“システムの共通化・自動化”を行い、事業戦略と先端技術知見の連動により“顧客のICT利活用向上”を実現します。中期経営計画期間の最終年度である2025年3月期において、サービス比率55%を目指します。
具体的な注力サービスとして、ICT利活用の在り方や事業貢献に向けたIT戦略策定を支援する「DX戦略コンサルティングサービス」、顧客システムの継続的な稼働を行うための機能と運用をトータルで提供する「マネージドサービス」、ICTシステムの様々な機能が事前準備された環境により、ネットワークを通じてセキュアに利用できる「自社クラウドサービス」に取り組みます。
(3)財務戦略
戦略的な投資による収益力強化、最適な資本構成の追求、積極的な株主還元の3本柱で企業価値を向上します。基本方針として、成長戦略遂行のために積極的に資本投下を行い、成長の加速と収益力の強化を実現します。投資の原資は手元資金をベースとするほか、借り入れによる調達も活用します。株主還元は配当性向40%を目安に、引き続き積極的に実施します。
3年間の中期経営計画期間において、前中期事業計画期間の1.5倍となる300億円規模の戦略的な投資を実施する計画です。具体的には、改善投資として「徹底した見える化、社内デジタル基盤、セキュリティ強化」、また、成長投資として「人財の育成・獲得、新サービス向け調査研究、事業用サービス基盤、サステナビリティ、M&A」です。
「サステナビリティ」では、特定した4つのマテリアリティについて、KPIを定めました。
(1)安心・安全な高度情報社会の実現
課題・領域別ソリューション・サービスの提供:社会課題解決型ソリューション(中期経営計画の注力3領域)の売上高を2025年3月期に300億円に。
サービスビジネスの拡大と推進:サービス比率を2025年3月期に55%に。
(2)プロフェッショナル人財の活躍
次世代を担うIT人財の育成:セキュリティ人財として、CISSP取得者を2031年3月期に80名、安全確保支援士を2031年3月期に100名に。クラウド人財を2031年3月期に50%増(2022年3月期比)。デジタル化人財として、コーポレート部門では2031年3月期までに150名増加させ、業務改善提案を2023年3月期から2031年3月期の累計件数で100件に。また、産学連携などを通じた次世代IT人財育成プログラムを拡充。
ダイバーシティ&インクルージョンの推進:女性役職者比率を2031年3月期に15%に。新卒採用女性比率を2031年3月期に50%に。男性の育休及び出産時の特別休暇取得率を2031年3月期に90%に。
(3)脱炭素社会への貢献
ビジネスを通じた温室効果ガス排出量削減:グリーンソリューションを拡大。
自社の事業プロセスにおける排出量削減:中長期目標の策定。
(4)持続可能な成長を実現するガバナンス体制の維持強化
企業文化の醸成と内部統制強化:企業文化の醸成に向けた取り組みとして社員意識調査を毎年実施(※将来的には調査結果を開示する予定)、再発防止策の進捗報告。
健康経営®の実現:2025年3月期に健康経営優良法人に認定。
3.業績目標
このように、当社グループは、社会課題解決型にアプローチを変遷させながら価値提供領域を拡大し、収益性・効率性の更なる向上によって企業価値を向上してまいります。中期経営計画の最終年度となる2025年3月期の連結業績につきましては、売上高2,260億円、営業利益率12.0%、サービス比率55.0%、ROE20.0%を目指します。
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