業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

当連結会計年度の世界経済は、オミクロン株などによる新型コロナウイルス感染症の再拡大の中で、期末にかけて勃発したロシアによるウクライナ侵攻により、世界情勢は急激に不透明なものとなりました。

 

事業別では、映像事業においては、半導体不足等による部品調達の制約により、デジタルカメラ市場の製品供給不足が継続しました。精機事業においては、FPD関連分野は大型パネル用、中小型パネル用、いずれも設備投資は堅調に推移しました。また、半導体関連分野の設備投資は拡大基調となりました。ヘルスケア事業においては、ライフサイエンスソリューション及びアイケアソリューション分野で市況は回復しましたが、半導体等電子部品の需給ひっ迫による製品供給への影響が継続しました。コンポーネント事業においては、デジタルソリューションズ事業では、光学部品・光学コンポーネントやエンコーダ関連市場が堅調に推移し、カスタムプロダクツ事業では、EUV関連市場が好調に推移しました。

 

当社グループでは、2019年5月に発表した中期経営計画の下、持続的・中長期的な企業価値向上に向けて、ビジネスモデルの変革に取り組んでまいりました。

まず、映像事業のより一層の構造改革に努めるとともに、精機事業においては装置販売のみならず、サービスビジネスや周辺ビジネスの拡大にも取り組みました。また、コンポーネント事業においては光学・EUV関連コンポーネントの拡販に注力するとともに、材料加工事業ではアライアンスやM&Aを実施するなど、事業の育成に取り組みました。さらに、ガバナンス強化のため、取締役会の実効性向上に加え、リスクマネジメントの強化などにも引き続き取り組みました。

このような状況の下、当社グループの連結業績は、売上収益は5,396億12百万円前期比883億88百万円19.6%)の増収営業利益は499億34百万円(前期は562億41百万円の営業損失)、税引前利益は570億96百万円、(前期は453億42百万円の税引前損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益は426億79百万円(前期は344億97百万円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。

 

セグメント情報は次のとおりです。

なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.事業セグメント (1) 報告セグメントの概要 (報告セグメントの変更に関する事項)」に記載のとおり、当連結会計年度より報告セグメントに変更があり、以下の前期比較においては、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しています。

 

① 映像事業

2021年12月に発売したフラッグシップモデル、フルサイズミラーレスカメラ「Z 9」の販売が好調に推移するとともに、ミラーレスカメラ用交換レンズのラインナップを拡充させ、プロ・趣味層向け中高級機の拡販に努めました。

製品ミックスの改善による平均販売単価上昇効果に加え、為替の影響もあり、当事業の売上収益は1,782億34百万円前期比18.7%増営業利益は190億69百万円(前期は363億91百万円の営業損失)となりました。

 
② 精機事業

FPD露光装置分野は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限の影響がある中でも据付作業は概ね順調に進み、中小型パネル用装置の販売台数が大幅に増加したことにより、増収増益となりました。

半導体露光装置分野は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う物流混乱による出荷延期や渡航制限の影響により新品装置の販売台数が減少しましたが、中古装置の販売台数増加及びサービスビジネスの増益により、廃棄・評価損を計上した前期と比べて、増収増益となりました。

これらの結果、当事業の売上収益は2,112億16百万円前期比14.3%増、営業利益は277億19百万円(前期は6億43百万円の営業損失)となりました。

 

 

③ ヘルスケア事業

ライフサイエンスソリューション及びアイケアソリューション分野は、半導体をはじめとする電子部品の需給ひっ迫による生産への影響が継続しましたが、過去最高の売上を計上し、新型コロナウイルス感染症の影響が大きかった前期に比べ、大幅な増収となりました。

これらの結果、当事業の売上収益は732億43百万円前期比16.5%増営業利益は43億85百万円前期は30億91百万円の営業損失)と黒字化を達成しました。

 

④ コンポーネント事業

デジタルソリューションズ事業は、光学部品・光学コンポーネントやエンコーダの販売が好調に推移し、増収増益となりました。カスタムプロダクツ事業は、EUV関連コンポーネントの販売が大きく伸び、増収増益となりました。

この結果、これらの事業を含む当事業の売上収益は408億69百万円、前期比58.5%、営業利益は127億21百万円(前期は1億87百万円の営業利益)となりました。

 

⑤ 産業機器・その他

産業機器事業は、半導体、電子部品、EV関連市場等の活況を背景に、画像測定システムや工業用顕微鏡、X線検査装置の販売が好調に推移したことにより、増収増益となりました。

この結果、産業機器・その他の売上収益は360億50百万円前期比30.6%増営業利益は29億64百万円(前期は12億5百万円の営業損失)となりました。

 

(注) 事業別の営業損益には、当社グループ内取引において生じた損益を含んでおります。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税引前利益 570億96百万円 、減価償却費及び償却費 248億57百万円 の計上に加えて、仕入債務及びその他の債務の増加があった一方、前受金の減少、売上債権及びその他の債権の増加、法人所得税の支払があり、 313億51百万円の収入 (前年同期は 49億66百万円の収入 )となりました。

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、主に投資有価証券の売却による収入が 204億59百万円 、有形固定資産の売却による収入が 54億84百万円 あった一方、有形固定資産の取得による支出が 179億81百万円 、無形資産の取得による支出が 58億44百万円 、投資有価証券の取得による支出が 42億24百万円 あり、 3億85百万円の支出 (前年同期は 180億24百万円の収入 )となりました。

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、主に短期借入金の増加が 131億89百万円 あった一方、配当金の支払が 110億24百万円 、長期借入金の返済による支出が 108億3百万円 、社債の償還による支出が 100億円 、リース負債の返済による支出が 74億38百万円 あり、 261億51百万円の支出 (前年同期は 49億91百万円の支出 )となりました。

また、現金及び現金同等物に係る換算差額は 136億64百万円の増加 となりました。

この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ 184億78百万円増加し、3,702億77百万円となりました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日

(百万円)

前期比(%)

映像事業

105,998

△1.9

精機事業

90,591

△24.0

ヘルスケア事業

32,137

31.8

コンポーネント事業

48,727

44.3

産業機器・その他

15,716

65.5

合計

293,168

△0.6

 

(注) 金額は製造者販売価格によって算出し、付属品仕入額を含んでおります。

 

(2) 受注状況

当連結会計年度における受注残高は、次のとおりであります。

なお、精機事業を除いては見込生産を主としておりますので記載を省略しております。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日

(百万円)

前期比(%)

精機事業

196,877

4.0

合計

196,877

4.0

 

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日

(百万円)

前期比(%)

映像事業

178,234

18.7

精機事業

211,216

14.3

ヘルスケア事業

73,243

16.5

コンポーネント事業

40,869

58.5

産業機器・その他

36,050

30.6

合計

539,612

19.6

 

(注) 当社グループは、主要な顧客グループであるIntel Corporation及びそのグループ会社に対し、精機事業及び産業機器・その他において、前連結会計年度に53,230百万円(総販売実績に占める割合:11.8%)の販売をしております。なお、当連結会計年度は連結売上収益の10%以上を占める顧客グループが存在しないため、記載を省略しております。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループは、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上や、グループ内の会計基準統一による経営基盤の強化を目指し、2017年3月期有価証券報告書における連結財務諸表からIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針、4.見積り及び判断の利用」をご参照ください。

 

(2) 財政状態の分析

当連結会計年度末における資産の残高は、前連結会計年度末に比べて498億30百万円増加し、1兆395億66百万円となりました。これは主に、現金及び現金同等物が184億78百万円、有形固定資産、使用権資産、のれん及び無形資産が181億45百万円、売上債権及びその他の債権が176億71百万円それぞれ増加したためです。

当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べて114億11百万円減少し、4,396億円となりました。これは主に、リース負債の増加等により流動負債及び非流動負債に含まれるその他の金融負債が97億79百万円、仕入債務及びその他の債務が45億45百万円それぞれ増加した一方、前受金が238億10百万円、借入金の返済等により流動負債及び非流動負債に含まれる社債及び借入金が40億11百万円それぞれ減少したためです。

当連結会計年度末における資本の残高は、前連結会計年度末に比べて612億41百万円増加し、5,999億67百万円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上等により利益剰余金が435億60百万円、在外営業活動体の換算差額の増加や保有する株式の時価上昇等によりその他の資本の構成要素が163億39百万円、Morf3D Inc.の子会社化等により非支配持分が11億44百万円それぞれ増加したためです。

 

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

(3) 経営成績の分析

当連結会計年度における売上収益は映像事業、精機事業を中心に全事業で増収し、883億88百万円増5,396億12百万円前連結会計年度は4,512億23百万円)となりました。映像事業は、ラインナップを拡充したミラーレスカメラ・交換レンズを中心に販売額が増加し、280億31百万円の増収となりました。精機事業は、FPD露光装置は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限等で遅延していた据付が順調に進み中小型パネル用装置の販売台数が増加、また半導体露光装置は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う出荷遅延や渡航制限の影響により新品装置の販売台数減少も、中古装置の販売台数増加及びサービスビジネスの拡大により販売額が増加し、264億41百万円の増収となりました。

売上原価は主に映像事業や精機事業において、前連結会計年度に計上した棚卸資産廃棄・評価損の剥落により一時費用は減少したものの、全事業で増収となったことに伴う増加により、82億23百万円増3,035億41百万円前連結会計年度は2,953億18百万円)となりました。

販売費及び一般管理費は、業績改善に伴う労務費や広告宣伝費及び販売促進費の増加や、渡航制限の緩和に伴う旅費交通費の増加等により、81億26百万円増の1,894億65百万円前連結会計年度は1,813億39百万円)となりました。

その他営業収益は、遊休地の売却に伴う土地売却益等により、19億59百万円増の53億22百万円となりました。その他営業費用は、前連結会計年度に計上した減損損失や構造改革関連費用が大きく減少したこと等により、321億77百万円減19億94百万円となりました。

これらの結果、営業利益は499億34百万円前連結会計年度は562億41百万円の営業損失)となり、1,061億75百万円の増益となりました。

税引前当期利益は1,061億75百万円の営業増益が大きく影響し、570億96百万円前連結会計年度は453億42百万円の税引前当期損失)となり、1,024億38百万円の増益となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は法人所得税費用148億43百万円の計上により426億79百万円前連結会計年度は344億97百万円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。なお、当社グループの課題につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を、またセグメント別の分析は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(業績等の概要) (1)業績」をそれぞれご参照ください。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、一定の財務健全性の確保を前提に置きながら、自己資本比率55%~60%を目安として、投資資本の運用効率を重視し、持続的な成長のために資本コストを上回る収益が見込める投資(戦略投資、R&D、設備投資)に資金を活用することで企業価値の最大化を実現すると同時に、安定的な株主還元を実施することで株主の要求にも応えることを資本管理の方針としております。

運転資金や経常的に発生する設備投資資金については、現在保有する現金や預金で賄い、持続的成長に向けた投資については、配分可能な現金や預金、及び営業活動から創出されるキャッシュ・フローを源泉とした資金で賄うことを原則としております。また、機動的な資本配分を実現するため、国内外のグループ会社が保有する資金をグローバル・キャッシュ・マネージメント・システムにより効率的に管理することでグループ内の資金の流動性を高め、これを有効活用しております。

なお、当社は市場の混乱や、当社が事業を遂行する上でのリスクに晒されているため、こうした要因が資金繰りを圧迫する事態への備えとして十分な手元流動性(現預金、コミットメントライン等)の確保に努めており、事業環境に急激な変化を与え得る様々な不確実性を前提としても当面安定的な経営が可能な状態にあります。

 

当社グループの資金状況は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しておりますとおり、当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは313億51百万円の収入となり、投資活動によるキャッシュ・フローは3億85百万円の支出であったため、309億66百万円のプラスのフリー・キャッシュ・フローとなりました。また、有利子負債を控除したネットキャッシュ残高は2,171億79百万円になりました。

なお、当連結会計年度後1年間の設備投資計画は400億円を予定しており、主に生産能力の最適化と設備の維持・更新を図るためのものであります。また、当連結会計年度後1年間の研究開発投資は640億円を予定しております。当該設備投資及び研究開発投資の資金は、主に営業キャッシュ・フローを源泉とした資金の範囲で賄うことを予定しております。設備投資計画の詳細につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。

 

以上の記載事項のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月29日)現在において判断したものであります。また、分析に記載した実績値は百万円未満を四捨五入して記載しております。

 

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