当社グループを取り巻く事業環境は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (1) 業績」に記載のとおりでありました。
当社グループは、2019年5月に、中期経営計画(2019~2021年度)を発表、計画の完遂を最優先で対処すべき課題として認識し、「新たな収益の柱の創出」「既存事業の収益力強化」を推し進めました。本中期経営計画の総括としては、新型コロナウイルス感染症拡大という予期せぬ事態のなか、着実に前進することができた3年間となりました。なお、2022年4月7日には、新たな中期経営計画(2022年度~2025年度)を発表し、完成品販売中心のビジネスからの進化、次なる収益の柱の育成を推し進めていきます。
■2022年3月期の進捗等
① 経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標等
本計画期間で達成すべき数値目標として、ROE8%以上を掲げていました。2022年3月期のROEは7.5%と、目標の8%には届きませんでした。一方、財務運営面では、バランスシートの最適化を積極的に進めた結果、当社グループは、危機に強く、より筋肉質な企業体質への変革を実現しました。
② 新たな収益の柱の創出
「成長基盤構築」に関しては着実に進展しています。なお、2021年4月より新たな報告セグメントとした「コンポーネント事業」では、光学コンポーネントやEUV関連コンポーネントが拡大し、収益の柱に成長しました。
材料加工ビジネスにおいては、オープン・イノベーションや協業先の販売ネットワークを活用した顧客開発を着実に進めています。
③ 既存事業の収益力向上
映像事業は、構造改革とプロ・趣味層や中高級機へのフォーカス戦略により、安定的に黒字を確保できる体質になりました。
また、精機事業は、FPD装置事業が収益を支えるなか、半導体装置事業で顧客開拓に一定の成果を出すことができました。加えて、既存装置の高い稼働率からサービス収益が堅調に推移するなど、より安定的なビジネスとなってきています。
■ご参考 気候変動への対応
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示
当社グループは、気候変動への対応を重要な社会課題と認識し、脱炭素化の推進をマテリアリティ(重点課題)としています。「脱炭素社会の実現」をニコン環境長期ビジョンと位置づけ、長期ビジョンと連動するニコン環境中期目標では、2031年3月期までにScope1 ※1 およびScope2 ※2 における温室効果ガス排出量を2014年3月期比で71.4%削減すること、Scope3 ※3 の「購入した製品・サービス」「輸送、配送(上流)」「販売した製品の使用」における温室効果ガス排出量を2014年3月期比で31%削減することを目標としています。この目標は、Science Based Targets(SBT)イニシアチブ ※4 の1.5℃水準として認定を受けています。
これらの目標の達成に向け、当社グループでは製品、事業所、物流などのサプライチェーンの各段階での温室効果ガス排出の削減に取り組んでいます。この姿勢を明確化するため、2021年2月にRE100 ※5 に加盟し、同3月にはBusiness Ambition for 1.5℃ ※6 に賛同しました。
また、代表取締役 兼 社長執行役員が委員長を務めるサステナビリティ委員会(原則年に2回開催)による監督の下、リスクと機会を明確にした上で取り組んでいます。実績や取り組み状況は、年に1回取締役会に報告しています。取締役会は、サステナビリティにかかわる取り組みの有効性について管理・監督し、グループ全体の戦略に反映させています。
気候変動への取り組み状況は、サステナビリティを担当する役員や関連の部門長・部門員の報酬に反映されます。
※1 Scope1 敷地内における燃料の使用などによる直接的な温室効果ガス排出のこと
※2 Scope2 購入した電気・熱の使用により発生する間接的な温室効果ガス排出のこと
※3 Scope3 サプライチェーンにおける事業活動に関する間接的な温室効果ガス排出のこと(Scope1、2を除く)
※4 気候変動など環境分野に取り組む国際NGOのCDP、国連グローバルコンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)による国際的な共同イニシアチブ。パリ協定の「世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べて2℃未満に抑える」という目標に向け、科学的根拠に基づく削減のシナリオと整合した企業の温室効果ガス削減目標を認定している
※5 CDPと非営利組織The Climate Groupがパートナーシップのもと運営する国際的イニシアチブ。事業活動で使用する電力の100%を再生可能エネルギーで調達することを目標としている
※6 国連グローバルコンパクト、SBTイニシアチブ、We Mean Businessの3社が世界の気温上昇を産業革命以前のレベルから1.5℃未満に抑え、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにすることをめざし、企業に科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定するよう呼びかけるキャンペーン
当社グループの「脱炭素化の推進」に関する目標
ガバナンス -気候関連リスク及び機会にかかわる組織のガバナンス-
戦略 -ビジネス・戦略・財務計画に対する気候関連リスク及び機会の実際の潜在的影響-
気候変動シナリオ分析について
当社グループでは、気候関連リスクと機会について、事業の特性や生産拠点・事業所の立地条件、近年の気候変動に起因する自然災害の度合いと頻度、業界の動向、関連する法令の動向、IPCCの気候変動予測に用いられているRCP(代表的濃度経路)シナリオや外部の調査機関による調査結果・シナリオを総合的に考慮した分析を行い、2℃および4℃シナリオ下におけるリスクの評価、特定を行っています。
2℃シナリオにおいては、温室効果ガス排出規制などの強化やそれに伴う市場要求、4℃シナリオにおいては洪水などの自然災害の増加や気温上昇、いずれのシナリオにおいても再生可能エネルギーの移行拡大などのエネルギー技術とコストの変化を認識し、財務への影響を考慮して事業戦略として気候変動への適応対策を行っています。シナリオ分析は継続して実施し、レベルアップを図っていきたいと考えています。
気候変動による当社グループへのリスク
<財務影響> 大:100億円以上、中:10億円~100億円、小:10億円以下
<緊急度> 高:3年以内、中:3~10年、低:10年以上
気候変動による当社グループにとっての機会
<時間的範囲> 短期:3年以内、中期:3~10年、長期:10年以上
リスク管理 -気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスと総合的なリスク管理への統合-
指標と目標 -気候関連リスク及び機会を評価・管理するために使用する指標と目標-
2022年3月期の温室効果ガス排出量(Scope1、2、3)及び電力の再生可能エネルギー使用率は以下の結果になりました。引き続き、ニコン中期環境目標に沿って脱炭素化の推進に取り組みます。
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