業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 連結財務諸表等規則の改正(2009年12月11日 内閣府令第73号)に伴い、IFRSによる連結財務諸表の作成が認められることとなったため、第73期(自 2010年4月1日 至 2011年3月31日)よりIFRSに準拠した連結財務諸表を開示しております。

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりであります。

 

a. 財政状態

 当連結会計年度末では、総資産は前連結会計年度末に比べて1,395億49百万円増加し、9,928億39百万円となりました。

 非流動資産は、111億68百万円増加し、3,098億74百万円となりました。これは主として、有形固定資産―純額が47億8百万円、のれんが39億59百万円、長期金融資産が20億72百万円増加した一方、無形資産が13億42百万円減少したことによるものであります。

 流動資産は、1,283億81百万円増加し、6,829億65百万円となりました。これは主として、現金及び現金同等物が845億8百万円、売上債権及びその他の債権が169億23百万円、棚卸資産が140億74百万円、その他の短期金融資産が33億26百万円増加したことによるものであります。

 資本合計は、1,166億44百万円増加し、7,890億56百万円となりました。これは主として、当期利益によって1,653億22百万円、その他の包括利益によって494億98百万円増加した一方、自己株式の取得によって657億64百万円、剰余金の配当によって333億9百万円減少したことによるものであります。

 親会社の所有者に帰属する持分合計は1,158億51百万円増加し、8,038億51百万円となりました。

 負債は、229億5百万円増加し、2,037億83百万円となりました。これは主として、その他の流動負債が63億70百万円、未払法人所得税が60億85百万円、仕入債務及びその他の債務が46億30百万円増加したことによるものであります。

 当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は81.0%となり、前連結会計年度末の80.6%から0.4ポイント上昇しました。

 

b. 経営成績

 当社グループの当連結会計年度の売上収益は6,614億66百万円と、前連結会計年度に比べて20.7%の増収となりました。

 税引前当期利益は2,107億6百万円となり、前連結会計年度に比べて32.3%の増益となりました。

 売上収益税引前当期利益率は31.9%となり、前連結会計年度の29.1%から2.8ポイント上昇しました。

 当期利益は1,653億22百万円となり、前連結会計年度に比べて32.0%の増益となりました。

 また、基本的1株当たり利益は446.45円となり、前連結会計年度に比べて110.68円増加いたしました。

 資産合計親会社所有者帰属持分当期利益率(ROA)は17.9%と前連結会計年度に比べて2.9ポイント上昇し、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は22.1%と前連結会計年度に比べて3.2ポイント上昇しました。

 ライフケア事業については、ヘルスケア関連製品のメガネレンズとコンタクトレンズ、メディカル関連製品の医療用内視鏡と白内障用眼内レンズいずれも大幅増収となり、ライフケア事業全体としても大きく増収となりました。

 情報・通信事業については、エレクトロニクス関連製品の半導体用マスクブランクス、FPD用フォトマスク、ハードディスク用ガラスサブストレート、映像関連製品が大幅増収となり、情報・通信事業全体でも大きく増収となりました。

 

 なお、当連結会計年度、前連結会計年度ともに非継続事業はありませんので、表示の数値及び増減率はすべて継続事業によるもののみであります。

 

 なお、IFRSに準拠した連結財務諸表は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」に記載しております。

 

 

 当社グループの継続事業セグメントごとの業績は次のとおりであります。(各セグメントの売上収益は、外部顧客に対するものであります。)

(ライフケア事業)

 

<ヘルスケア関連製品>

 メガネレンズ、コンタクトレンズとも新型コロナウィルスにより事業活動に影響を受けた前年と比べ、経済活動再開に伴う回復により大幅増収となりました。

 メガネレンズは海外がけん引し、高付加価値製品の販売増も増収に寄与しました。

 コンタクトレンズは日本国内での緊急事態宣言発令期間を中心に、専門小売店「アイシティ」では一部店舗の臨時休業や時間短縮営業により販売活動が影響を受け、また外出機会の減少に伴い一時的な需要の減少が見られましたが、アイシティ会員への宅配サービスが順調に推移し、さらに経済活動再開に伴う需要の回復などにより大幅増収となりました。

 

<メディカル関連製品>

 医療用内視鏡、白内障用眼内レンズとも新型コロナウイルスにより事業活動に影響を受けた前年と比べ、経済活動再開に伴う回復により大幅増収となりました。

 医療用内視鏡は、病院における設備投資の回復が見られ当社販売も回復傾向にありましたが、一部の部材供給不足の影響がありました。

 白内障用眼内レンズは、海外を中心に白内障の手術件数の回復が見られ当社販売も回復傾向にありました。

 

 この結果、当セグメント(ライフケア事業)の売上収益は4,075億49百万円と、19.2%の増収となりました。セグメント利益については862億69百万円と、対前連結会計年度で35.8%の増益となりました。

 

(情報・通信事業)

 

<エレクトロニクス関連製品>

 半導体用マスクブランクスは、EUV(Extreme Ultraviolet)向けを含む先端品における活発な研究開発や量産開始のための需要を取り込んだことで大幅に増収となりました。

 FPD用フォトマスクは、研究開発向けのフォトマスク需要の回復が見られ、当社の売上収益も一時の落ち込みから回復し大幅に増収となりました。

 ハードディスク用ガラスサブストレートは、今後大きな成長が見込まれる3.5インチ製品は最終顧客であるデータセンターでニアライン向けの需要が続いたことにより売上収益が大きく増加しました。2.5インチ製品も、HDD(Hard Disk Drive)からSSD(Solid State Drive)への置き換えが継続しておりますが、新型コロナウイルスの影響によるパソコン出荷数増加に伴い、上期を中心に外付けHDDへの需要が増え当社の製品需要も増加し、売上収益は大きく増加しました。その結果、事業全体でも大幅に増収となりました。

 

<映像関連製品>

 カメラ向けのレンズは、コンパクトデジタルカメラ向け・交換レンズ向けともにスマートフォンによる侵食の影響は継続していますが、新型コロナウイルスにより事業活動に影響を受けた前年と比べ経済活動再開に伴う回復により大幅増収となりました。

 

 この結果、当セグメント(情報・通信事業)の売上収益は2,484億3百万円と、対前連結会計年度で23.6%の増収となりました。セグメント利益は1,228億86百万円と、対前連結会計年度で29.5%の増益となりました。

 

(その他)

 その他事業は主に、音声合成ソフトウェア事業や情報システムサービスを提供する事業等です。

 

 当セグメント(その他)の売上収益は55億14百万円と、対前連結会計年度で7.0%の増収となりました。セグメント利益は29億86百万円で、対前連結会計年度で増益となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、為替変動による影響額304億73百万円を含め、前連結会計年度末に比べ845億8百万円増加し、4,194億4百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動の結果得られた資金は1,900億55百万円(前連結会計年度比382億42百万円収入増)となりました。これは、税引前当期利益2,107億6百万円(前連結会計年度比514億88百万円収入増)、減価償却費及び償却費430億19百万円(前連結会計年度比66億83百万円収入増)、仕入債務及びその他の債務の増加額57億円(前連結会計年度比120億52百万円支出減)などで資金が増加した一方、売上債権及びその他の債権の増加額86億96百万円(前連結会計年度比10億92百万円収入増)、棚卸資産の増加額70億92百万円(前連結会計年度比111億9百万円支出増)、支払法人所得税472億91百万円(前連結会計年度比124億16百万円支出増)などで資金が減少したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動の結果使用した資金は、292億98百万円(前連結会計年度比4億92百万円支出減)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出288億72百万円(前連結会計年度比23億73百万円支出減)などによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の財務活動の結果使用した資金は、1,067億22百万円(前連結会計年度比89億51百万円支出減)となりました。これは、自己株式の取得による支出657億64百万円(前連結会計年度比109億11百万円支出減)、支払配当金332億1百万円(前連結会計年度比5億20百万円支出減)などによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 

a. 生産実績

 当連結会計年度の生産実績を報告セグメント(継続事業)ごとに示すと、次のとおりであります。

報告セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

ライフケア

278,158

125.1

情報・通信

245,755

132.2

合計

523,913

128.3

  (注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

b. 受注実績

 当社グループは、主として需要と現有設備を勘案した見込生産のため、記載を省略しております。

 

c. 販売実績

 当連結会計年度の販売実績を報告セグメント(継続事業)ごとに示すと、次のとおりであります。なお、セグメント間の取引については相殺消去しております。

報告セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

ライフケア

407,549

119.2

情報・通信

248,403

123.6

その他

5,514

107.0

合計

661,466

120.7

  (注)主な販売先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
なお、ビジネスへの影響が懸念されるため主な販売先の社名の公表を控えさせていただきます。

販売先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

A社

51,627

9.42

67,813

10.25

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループでは、「事業ポートフォリオ経営」、「小さな池の大きな魚」の考え方に基づき、光学製品で培った技術を軸として、「ライフケア」及び「情報・通信」の二つのセグメントを中心に競争力の高い事業をグローバルに展開しています。
 当社グループは、世界的な高齢化の進展、新興国での経済成長による生活水準の向上により、長期的な市場の拡大が見込まれているライフケア事業や、情報化社会の進展により中期的な市場成長が見込まれる情報・通信事業の半導体・HDD関連製品などの成長分野に効率的に経営資源を投入しています。

 当期における業績は売上収益、税引前利益のいずれも過去最高を更新することができました。

 ライフケア事業の当連結会計年度の業績については、新型コロナウィルスにより事業活動に影響を受けた前年と比べ、経済活動再開に伴う回復により大幅増収となりました。

 情報・通信事業においても、半導体微細化技術であるEUV(Extreme Ultraviolet)露光向けのマスクブランクスやデータセンターで使われるHDD用ガラスディスク基板で強い顧客需要を獲得できたこと、カメラ向けレンズの需要回復により大幅な増収を達成することができました。

 今後も事業環境を考慮しながら成長のための投資と株主還元を積極的に行う資本効率重視の経営を行っていきます。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループのキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 当社グループの資本政策につきましては、財務の健全性や資本効率など当社にとって最適な資本構成を追求しながら、会社の将来の成長のための内部留保の充実と、株主への利益還元との最適なバランスを考え実施していくことを基本としております。

 当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債残高は215億99百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,194億4百万円となっております。

 将来の成長のための内部留保については、成長分野における、シェア拡大、未開拓市場への参入、新技術の育成・獲得のための投資に資源を優先的に充当してまいります。既存事業の成長に加え、事業ポートフォリオのさらなる充実のためのM&Aも積極的に可能性を追求してまいります。

 当連結会計年度における設備投資については、ライフケア事業では、メガネレンズ増産のための投資等を行いました。情報・通信事業においては、主に半導体用マスクブランクス、FPD用フォトマスク、ハードディスク用ガラスサブストレートの増産を目的とした投資を行いました。この結果、当連結会計年度における有形固定資産の取得による支出は288億72百万円となりました。

 これらの投資のための所要資金は、自己資金にて賄っております。

 

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針の要約 4.重要な判断及び不確実性の見積りの主要な源泉」に記載しております。

 

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