(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、株式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載しております。
(2) 経営成績
経営を取り巻く経済環境
当連結会計年度の世界経済は、一部の国や地域で新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の進展により経済活動が再開しつつあるものの、新型コロナウイルス感染症の新たな変異ウイルスの世界的な感染再拡大により経済活動の回復が鈍化しました。加えて、半導体等の供給不足や海運等の流通網の停滞により広範な物価の上昇に直面し、経済活動は一進一退の状況となりました。
このような経済情勢の中で、当社のメイン市場であるオフィスにおいても、変異ウイルスまん延に伴う各国における経済活動に対するさまざまな規制・要請により、オフィスの出社率が引き続き低位に推移し、プリンティング需要は限定的な回復に留まりました。また、部材不足や物流の問題により供給が制約され、物価指数が主要国において上昇しており、地政学リスクの顕在化とあわせて先行きの不透明さが増しております。
なお、当連結会計年度の主要通貨の平均為替レートは、対米ドルが 112.36円(前年度に比べ 6.31円の円安)、対ユーロが 130.55円(同 6.85円の円安)となりました。
当連結会計年度の業績
当社グループは、当連結会計年度からスタートした第20次中期経営計画(以下、20次中計)期間の2年間で「“はたらく”の生産性を革新するデジタルサービスの会社への変革」の実現を目指しております。
当連結会計年度は、オフィスプリンティング事業および商用印刷事業において一昨年から続く新型コロナウイルス感染症拡大による事業影響は継続しているものの、欧米での経済活動の再開等によりノンハードを中心に回復基調となりました。また、開発・生産、サービス体制の最適化等の体質強化をさらに進めながら、20次中計の目標達成に向けて成長に舵を切り、オフィスサービス事業を中心としたデジタルサービスの成長と資本収益性向上を実現することで企業価値の向上を図ってまいりました。
当連結会計年度の連結売上高は、前連結会計年度に比べ 4.5%増加し、17,585億円となりました。世界的に新型コロナウイルス感染症が再拡大したことによる販売の減少と生産ラインの停止、コンテナ船の不足、部材不足による供給の制約等多くの外的要因により事業活動が制限されましたが、前連結会計年度に比べ増収となりました。オフィスプリンティング事業では製品の供給不足によるハードウェア販売の回復の遅れがありながらも、ノンハードは日本を除く全地域で増収となりました。オフィスサービス事業においてもサービスの構成要素である複合機やIT商材の品不足が販売活動に影響を及ぼしましたが、ソフトウエア等を中心としたパッケージ販売等が前年に対し堅調に推移したことにより、増収となりました。この他、商用印刷事業においても、顧客である印刷業の事業活動の回復によりノンハードを中心に増収となりました。なお、社内カンパニー制導入に伴い当連結会計年度より採用しております新事業セグメントであるデジタルサービス、デジタルプロダクツ、グラフィックコミュニケーションズ、インダストリアルソリューションズのすべての事業セグメントで増収となりました。
地域別では、日本では主要都市での緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の継続による断続的な行動制限や、部材不足による供給の制約等もあり販売の回復が遅れました。また前連結会計年度のGIGAスクール案件による売上増の反動もあり、国内売上高全体では前連結会計年度に比べ 6.3%の減少となりました。米州においては、製品の不足や港湾問題によるサプライチェーンの混乱等販売活動への影響が続いているものの、ワクチン接種の進展に伴い経済活動が再開し、売上高は前連結会計年度に比べ 14.8%の増加となりました(為替影響を除くと 8.3%の増加)。欧州・中東・アフリカにおいても同様にワクチン接種の進展により経済活動が再開された一方で、製品の供給が間に合わない状況が続きましたが、オフィスサービス事業での買収による事業成長やパッケージ販売の展開により成長を持続し売上高は前連結会計年度に比べ 14.4%の増加となりました(為替影響を除くと 8.4%の増加)。その他地域は、オフィスプリンティング事業の増収等により、売上高は前連結会計年度に比べ 7.1%の増加となりました(為替影響を除くと 0.2%の増加)。
以上の結果、海外売上高全体では前連結会計年度に比べ 13.4%の増加となりました。なお、為替変動による影響を除いた試算では、海外売上高は前連結会計年度に比べ 7.1%の増加となりました。
売上総利益は、前連結会計年度に比べ 8.8%増加し 6,226億円となりました。売上高の増加による利益の回復に加え、利益率の高いノンハードの回復、開発・生産プロセスの効率化、製品原価の低減活動やサービス改革等の体質強化策により利益率が改善し、前連結会計年度と比べ大幅に増益となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ 3.1%減少し 6,002億円となりました。前連結会計年度は、商用印刷事業等における有形固定資産及び無形資産等の減損損失 248億円や体質強化のための費用等を計上していました。当連結会計年度においては、前連結会計年度からの売上の回復や成長投資により費用が増加しましたが、体質強化や機動的な経費コントロール等により支出を抑制しました。
その他の収益については、当連結会計年度において米国子会社における土地をはじめ遊休資産売却等による利益を計上し、前連結会計年度に比べて大幅に増加しました。
のれんの減損については、前連結会計年度において商用印刷事業等における減損損失 37億円を計上していましたが、当連結会計年度は大幅に減少しました。
なお、当社グループは、2021年4月より社内カンパニー制を導入いたしました。上記の通り、当連結会計年度は部材逼迫、物流費の高騰、そして新型コロナウイルス感染症の変異ウイルスまん延などの外部要因により約570億円もの大きな減益要因となりましたが、社内カンパニー制による権限委譲を受けた各ビジネスユニットが自律的な体質強化や、機動的に経費コントロールに取り組んだ結果、約430億円のリカバリーを実現しました。
以上の結果、営業利益は、前連結会計年度に比べて 854億円増加と大幅に改善し、400億円となりました(前連結会計年度 営業利益 454億円(損失))。
金融収益及び金融費用は、前連結会計年度では為替差益を計上していましたが、当連結会計年度は為替による差損益は少額となり前連結会計年度に比べて金融収支は悪化しました。また、持分法による投資損益は、持分法適用会社の業績改善により前連結会計年度に比べ増加しました。
税引前利益は 443億円となり、前連結会計年度に比べて 854億円増加しました(前連結会計年度 税引前利益 410億円(損失))。
法人所得税費用は税引前利益が大幅に改善したこと等により、前連結会計年度に比べて 221億円増加しました。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は 303億円 となり、前連結会計年度に比べて 631億円 増加しました(前連結会計年度 親会社の所有者に帰属する当期利益 327億円(損失))。
当期包括利益は、親会社の所有者に帰属する当期利益や在外営業活動体の換算差額の増加等により、前連結会計年度に比べ 312.4%増加し、909億円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。 (単位:百万円)
a. デジタルサービス
当連結会計年度は、国内において、中小企業のお客様にエッジデバイス*1やソフトウエア、クラウドサービスを組み合わせて、業種業務ごとに固有のプロセスをデジタル化し課題解決を行うスクラムパッケージを、また、中堅企業向けには、これまでシステムエンジニアがお客様に提供してきた開発事例・導入事例に最新技術を組み合わせて水平展開できるようモデル化したスクラムアセットの拡販を進めました。欧州では、重点国でのITサービスの販売やサービス基盤の強化・拡大に向けてICT*2企業3社の買収を行いデジタルサービスを提供する能力の強化を図るとともに、在宅・リモートワーク向け等のパッケージ型ソリューション販売が進展し、売上高を伸ばすことができました。さらに、オフィスサービス事業のさらなる強化に向けシステムエンジニアの育成も進めました。加えて、2019年に買収したドキュウェア社のソフトウエアは、グローバル 45か国の販売会社で販売・サポート体制を構築し、グローバルでの水平展開を開始しました。
当連結会計年度のデジタルサービスの売上高は、前連結会計年度に比べ 3.7%増加し 14,281億円となりました。オフィスサービス事業は、PCやサーバー、ネットワーク機器等のIT商材不足等による販売機会への影響があったものの、日欧でのパッケージ展開が引き続き堅調に推移しました。オフィスプリンティング事業は、複合機やプリンター等エッジデバイスが部材不足の影響を受けたことにより回復が鈍化したものの、新型コロナワクチン接種の進展等に伴うオフィスへの回帰によりノンハードが回復しました。営業利益は、オフィスサービス事業の収益性が改善し利益率が上昇したことに加え、オフィスプリンティング事業においても保守サービス体制の体質強化をはじめとした構造改革や経費削減策の効果により、前連結会計年度 26億円(損失)から、当連結会計年度は 162億円と前連結会計年度に比べて増益となりました。
*1 エッジデバイス:文字・写真・音声・動画等のさまざまな情報の出入り口となる複合機やカメラをはじめとしたデータ処理機能を持つネットワーク機器
*2 ICT(Information and Communication Technology):情報通信技術
b. デジタルプロダクツ
デジタルプロダクツは、「変動原価低減」「ものづくりの体質強化」等コスト構造の見直しを推し進めています。当連結会計年度は「変動原価低減」では部材価格の高騰による影響を大きく受けましたが、部品の共通化やAI(人工知能)を活用した生産の自動化等の取り組みを着実に進めました。また、「ものづくりの体質強化」では、設計業務のデジタル化推進を強力に進め、生産面では、主にデジタルマニュファクチュアリングと生産拠点の集約・再編を進めました。さらに、沖電気工業株式会社とA3モノクロプリンターのプリンターエンジン(印刷機構)の共同開発を行う等、他社との協業を積極的に進めて開発コストの低減に取り組みました。
デジタルによるコミュニケーションを支えるエッジデバイスにおいては、2022年3月に電子黒板の教育現場向けモデル「RICOH Interactive Whiteboard A6500-Edu」を発売しました。1人1台端末時代の授業に対応した、児童・生徒のパソコン/タブレットからの無線投影機能を標準搭載しており、分割投影による回答の比較や、電子黒板からのリモート指導も可能です。
当連結会計年度のデジタルプロダクツの売上高は、前連結会計年度に比べ 2.2%増加の 3,649億円*となりました。営業利益は、部材不足や海外生産拠点周辺での新型コロナウイルス感染症の拡大により生産に大きな影響を受けましたが、製品原価の低減や開発・生産の効率化等の体質強化による収益改善、米国子会社での土地売却益等もあり、前連結会計年度に比べ 252億円増加し 417億円となりました。
*セグメント間売上高消去後の売上高は 8.8%増加 の 131億円
c. グラフィックコミュニケーションズ
商用印刷事業においては、高画質や高生産性、幅広い用紙への対応力のみならず、新たなビジネスを切り開く付加価値の高い印刷物の生産を目指す印刷業のお客様のニーズにお応えしながら、お客様のビジネス成長に貢献することで事業拡大を図っています。産業印刷事業においては、さまざまなインクへの高い対応力を有するリコーのインクジェットヘッドを核として、産業向けの新たな市場・お客様の獲得を目指しています。
当連結会計年度は、商用印刷事業では、印刷業のお客様、ビジネスパートナーとのナレッジ共有を通じてお客様のビジネス拡大を目指す価値共創プラットフォーム「RICOH BUSINESS BOOSTER」を立ち上げました。この取り組みは、オンデマンド*ブック、カスタマイズドカタログ等新しい印刷アプリの共有、印刷プロセスの自動化・省人化ソリューションの提供等を通じて印刷業のお客様の事業規模拡大や経営品質向上に寄与し、総合的なパートナーになることを目指しています。産業印刷事業では、2021年9月に北米に続き高速ガーメントプリンター「RICOH Ri 2000」を国内でも発売し、Tシャツ等の服飾品生地に直接印刷するガーメントプリント市場において、衣料印刷業、総合印刷業のお客様のビジネス効率化や業務拡大を支援することで事業拡大を図っています。また、2021年11月に産業用インクジェットヘッドの最上位機種となる「RICOH TH6310F」の受注をグローバルで開始、2022年3月に産業用インクジェットヘッド「RICOH MH5422シリーズ」を発売し、さらなる事業拡大に向け、インクジェットヘッドのラインアップ拡充を進めました。
当連結会計年度のグラフィックコミュニケーションズの売上高は、前連結会計年度に比べ 17.0%増加し 1,870億円となりました。商用印刷事業では主力市場である欧米での経済活動の再開により回復し、特にノンハードの売上が大きく改善しました。産業印刷事業では競争力のあるインクジェットヘッド等が大きく伸長しました。また、開発・生産のデジタル化の展開やサービス活動の効率化による原価低減活動も引き続き順調に進みました。営業損益は、前連結会計年度に商用印刷事業にかかるのれん、有形固定資産及び無形資産等の一部について減損損失 265億円を計上していたことから、前連結会計年度に比べ 469億円増加と大きく改善し 4億円(損失)となりました。
*オンデマンド:さまざまな可変情報を必要に応じて印刷するシステム
d. インダストリアルソリューションズ
サーマル事業においては、eコマースの拡大による配送ラベルへのニーズが全世界的に拡大する等、需要が堅調に拡大する中で、当社グループが長年培ってきた材料技術等を活かし、耐熱性、耐擦過性、印字精細性、保存性、環境配慮等に優れたサーマルペーパーや熱転写リボン等を提供し、事業を着実に拡大しています。産業プロダクツ事業においては、安全運転支援システムの普及が進む自動車業界へのステレオカメラ等の光学デバイスの提供をはじめとして顧客基盤の拡大を図っています。
当連結会計年度は、サーマル事業では、2021年6月に生産工程向け高速印刷ソリューション「RICOH FC-LDA Printer 500」を発売しました。大量生産ラインで高速搬送されているフィルムやラベル等の包装材に対して、レーザーにより最大毎分300mの速度で可変情報印字が可能なシステムで、生産工程内での印刷業務効率向上や省資源化による環境負荷の低減に貢献します。産業プロダクツ事業では、産業車両業界向けに、フォークリフト用ステレオカメラを株式会社豊田自動織機と共同開発しました。人と物が混在するフォークリフトの作業現場において、周辺の障害物の中から人、物を立体的にとらえ、高精度に検知することを可能にし、フォークリフト作業における安全性向上に貢献します。
当連結会計年度のインダストリアルソリューションズの売上高は、前連結会計年度に比べ 3.5%増加し 1,192億円となりました。サーマル事業では剥離紙を使用しないラベルや流通分野での需要が堅調に推移しました。産業プロダクツ事業では自動車関連の顧客生産調整の影響を大きく受けました。営業利益は前連結会計年度に比べ改善し 13億円となりました(前連結会計年度 営業利益 16億円(損失))。
e. その他
その他において、社会課題解決に貢献するという強い思いのもと、デジタル技術を活用し、特許やノウハウといった知的財産を強みとするビジネスモデルを描き、新しい事業の創出に取り組んでいます。さらに、自社のみでは成し得ない新たな未来の価値は、オープンイノベーションで創り出します。Smart Vision事業では、リコーの強みであるキャプチャリング技術や画像処理技術を活かした360°カメラと物件案内をバーチャルに行うアプリケーションを不動産業界に提供し、好評をいただいています。当連結会計年度は、2014年から日本市場において提供していたバーチャルツアー作成サービス「THETA 360.biz」に加え、海外市場で展開していた「RICOH360 Tours」の日本市場での提供を2021年7月から開始しました。バーチャルツアーの需要は全世界で伸長しており、
「THETA 360.biz」と「RICOH360 Tours」を合わせて現在、全世界で6万を超えるお客様にご利用いただいています。
また、新規事業として、2022年1月に植物由来の新素材「PLAiR(プレアー)」のテスト販売を開始しました。「PLAiR」は、トウモロコシやさとうきび等に含まれるデンプンを原料としたポリ乳酸(PLA)を、独自の「CO2微細発泡技術」で発泡させた、しなやかさと強さを兼ね備えた発泡PLAシートです。「PLAiR」のテスト販売を通じて、さまざまな用途への活用可能性の検証を実施し、温暖化による気候変動や廃棄物による環境汚染といった社会問題の解決に貢献します。
当連結会計年度のその他の売上高は、主にリコーリース株式会社(以下、リコーリース)の持分法適用会社への移行の影響により前連結会計年度に比べ 11.3%減少し 355億円となりました。なおこの影響を除くと、カメラ事業で新製品の販売が好調に推移し増収となりました。その他全体の営業損益は新規事業への先行投資もあり 155億円(損失)となりました(前連結会計年度 営業損益 138億円(損失))。なおリコーリースの持分法適用会社への移行による影響を除くと実質 144億円(損失)となりました。
(注) 当社グループは2021年4月1日より社内カンパニー制を導入しました。そのため、当連結会計年度より、事業の種類別セグメントを変更しております。この変更に関して、前連結会計年度についても遡及適用した数値で表示しております。
なお、事業セグメントとしてのデジタルサービスはオフィスサービス事業及びオフィスプリンティングの販売を主とした事業に限定した事業セグメントであり、当社グループが目指す「はたらく場をつなぎ、はたらく人の想像力を支えるデジタルサービスの会社」への変革、として掲げるデジタルサービスすべてを網羅しているものではありません。当社グループが「デジタルサービスの会社」として掲げる「デジタルサービス」は、事業セグメントではデジタルサービスの他、すべてのセグメントの事業内容に含まれております。
前連結会計年度及び当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2 当社グループは2021年4月1日より社内カンパニー制を導入しました。そのため、当連結会計年度より、事業の種類別セグメントを変更しております。また、当連結会計年度よりサービスに係る生産実績を除き、製造に係る生産実績としました。事業構造の変化により当社グループの提供するサービス事業はハードウエアの設置・保守サービスからクラウド型サービス、ライセンス提供型及びその他保守サービス等のソフトウエアサービスまで広範かつ多種多様となってきており、サービスの生産実績を一様の定義で示すことが困難であることから、製造に係る実績のみを対象とすることで、より適切な生産実績を示すと考えております。これらの変更に関して、前連結会計年度についても遡及適用した数値で表示しております。
当社グループは見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しております。
前連結会計年度及び当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が10%以上の主要な相手先はありませんので、記載を省略しております。
3 当社グループは2021年4月1日より社内カンパニー制を導入しました。そのため、当連結会計年度より、事業の種類別セグメントを変更しております。この変更に関して、前連結会計年度についても遡及適用した数値で表示しております。
(3) 財政状態
資産合計は、前連結会計年度末に比べ 346億円減少し 18,532億円となりました。前連結会計年度末と比較して為替レートが大幅に円安となったことから海外資産の換算差額が発生し、為替影響を除いた試算では 1,137億円の減少となりました。当連結会計年度の主要通貨の期末日レートは、対米ドルが 122.39円(前連結会計年度に比べ11.68円の円安)、対ユーロが 136.70円(同 6.90円の円安)となりました。
資産の部は、前連結会計年度末の販売により減少した棚卸資産の在庫形成に加え、部材不足による仕掛品の増加や海運等の流通網の停滞の影響もあり棚卸資産が 405億円増加しました。また、欧州でのサービス事業に関わる一連の買収や開発資産の増加等により、のれん及び無形資産が 339億円増加しました。また、株主還元策として自己株式の取得を行ったこと等により現金及び現金同等物が 945億円減少しました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ 165億円減少し 9,474億円となりました。為替影響を除いた試算では 494億円の減少となりました。負債の部では、営業債務及びその他の債務は取引先との支払い条件の見直しによる支払期間の短縮により 186億円減少しました。また、金利上昇による割引率の上昇等により退職給付に係る負債が 247億円減少しました。
資本合計は、前連結会計年度末から 180億円減少し、9,058億円となりました。2021年3月3日開催の取締役会において決議した自己株式の取得を実施し、資本が 927億円減少しました。また、2021年3月以前に取得していた自己株式と合わせ、2022年2月28日に 1,372億円の自己株式の消却を実施しました。円安により在外営業活動体の換算差額が 468億円増加しました。
親会社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末に比べ 182億円減少し 9,020億円となりました。親会社所有者帰属持分比率は 48.7%となり、引き続き安全な水準を維持しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金収入が 445億円減少し 824億円の収入となりました。当期利益は前連結会計年度に比べ大幅に増加しましたが、前連結会計年度では現金の支出を伴わない有形固定資産、のれん及び無形資産の減損を計上していたことに加え、当連結会計年度は、前連結会計年度と比べ棚卸資産が増加し、また営業債務及びその他の債務が減少した結果、収入額が減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金支出が 42億円減少し 593億円の支出となりました。当連結会計年度においては、米国子会社の土地等の有形固定資産の売却による現金収入が増加しました。一方で事業拡大のための開発投資による無形資産の取得の増加やITサービス、ソフトウエアサービス会社の継続的な買収により支出が増加しました。
以上の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計となるフリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金収入が 402億円減少し 231億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金支出が 1,276億円増加し 1,316億円の支出となりました。前連結会計年度は新型コロナウイルス感染症拡大による事業環境悪化リスクに備えた調達を実施し収入額が増加した一方、当連結会計年度では株主還元策として自己株式の取得等を実施したことに伴い、支出が増加しました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末に比べ 963億円減少し 2,340億円となりました。
当社グループでは、事業投資によって創出した営業キャッシュ・フローは、さらなる成長に向けた投資と株主還元に対して計画的に活用していきます。デジタルサービスの会社への転換に向けて、成長投資に5,000億円程度を投じる予定としています。投資原資は、営業キャッシュ・フローに加えて有利子負債も活用しながら、メリハリを効かせて戦略的に実施します。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
親会社所有者帰属持分比率:親会社所有者帰属持分/資産合計
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計
債務償還年数:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/支払利息
※いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
※キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
有利子負債は連結財政状態計算書に計上されている負債のうち社債及び借入金を対象としております。
当社グループの流動性と資本源泉は次のとおりです。
事業発展に充分な資金流動性を確保し、堅固な財務体質を維持することが当社グループの方針です。この方針に従って、当社グループはここ数年、連結子会社が保有する流動性資金残高の効率的運用に努めてまいりました。その方策のひとつとして実施しているのが、各地域及びグローバルにおけるキャッシュマネジメントシステムの推進です。各地域にキャッシュマネジメントの要として設置している金融子会社を中心に地域内外のグループ企業間で手元流動性を有効活用するグループ内の資金融通の制度を構築、推進しております。この一環として、グローバルキャッシュプーリングシステムを導入し、グローバルベースでの更なる資金効率向上を実現しました。
また、当社グループは資産並びに負債の管理においてデリバティブを締結しております。為替変動が外貨建て資産と負債に与える潜在的な悪影響をヘッジするため、為替予約等を設定しております。当社グループはリスクの低減を目的として、定められた方針に従ってデリバティブを利用しております。自己売買、あるいは投機目的でデリバティブを利用しておらず、またレバレッジを効かせたデリバティブ取引も行っておりません。
当社グループは主に手元資金及び現金同等物、様々な信用枠及び社債の発行を組み合わせて資金を調達しております。流動性と資金源泉の必要額を判断する際、連結キャッシュ・フロー計算書の現金及び現金同等物の残高、並びに営業活動によるキャッシュ・フローを重視しております。
当連結会計年度末において、現金及び現金同等物の残高は 2,340億円、信用枠は 3,693億円であり、そのうち未使用残高は 3,690億円でありました。当社は 1,500億円(信用枠 3,693億円の一部)のコミットメント・ラインを金融機関との間に設定しております。これらは信用枠の範囲内で、各国市場の金利で金融機関から借入が可能です。
当社及び一部の連結子会社は、銀行借入及び社債の発行により資金を調達しております。また、当社グループはグローバルでキャッシュマネジメントシステムを活用してグループ資金を効率的に管理し、有利子負債残高の削減に取り組んでおります。
当社は大手格付機関(スタンダード・アンド・プアーズ・レーティング・サービス(以下「S&P」)、及び格付投資情報センター(以下「R&I」))から格付を取得しております。当連結会計年度末現在、当社の格付はS&Pが長期BBB+及び短期A-2、R&Iが長期A+及び短期a-1となっております。
当社グループは現金及び現金同等物、営業活動により創出が見込まれる資金、並びに借入金・社債等の調達資金で少なくとも翌連結会計年度の必要資金を充分賄えると予想しております。お客様の需要が変動し、営業キャッシュ・フローが減少した場合でも、現在の手元資金、及び当社グループが満足できる信用格付けを持つ金融機関に設定している信用枠で少なくとも翌連結会計年度中は事業用資金を充分賄えると考えております。さらに、足元の業務にとって必要な資金、及び事業拡大並びに新規プロジェクトの開発に関連する投資に対し、充分な資金を金融市場又は資本市場から調達できると考えております。各国の経済動向等による金利の変動は、当社グループの流動性に悪影響を及ぼす可能性がありますが、手元の現金及び現金同等物は充分であり、営業活動からも持続的にキャッシュ・フローが創出されキャッシュマネジメントシステムを活用していることから、こうした影響はあまり大きくないと考えております。
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