当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当期の国内経済は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響から徐々に持ち直しの動きが見られていましたが、新たな変異株の蔓延や半導体を中心とした部材不足などの影響を受け先行き不透明感が強まる状況で推移しました。また、北米及び欧州経済も同様に、新型コロナウイルスの感染再拡大や物価上昇による個人消費の落ち込みが懸念される中、全体的に回復傾向を維持しました。アジア経済は、中国市場において経済活動の制限による先行き不透明感から景気は低迷したほか、その他のアジア地域も感染の抑制状況により回復に違いが出る展開となり、経済活動は勢いを欠くものとなりました。
このような情勢のもと、当社グループは従来のものづくりだけでなく、今までにない新たな価値創造に挑戦すべく、時計事業及び工作機械事業の成長促進、サステナブル経営の推進、品質コンプライアンスの強化を図ってまいりました。
当期の連結業績は、売上高は2,814億円(前期比36.2%増)、営業利益は222億円(前年同期は95億円の営業損失)と増収増益となりました。また、経常利益は273億円(前年同期は41億円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は221億円(前年同期は251億円の親会社株主に帰属する当期純損失)といずれも増益となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しています。詳細については、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)をご参照ください。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(時計事業)
ウオッチ販売のうち、“CITIZEN”ブランドの国内市場は、最上位ブランドである「The CITIZEN」のメカニカルモデルや機械式時計ブランド「CITIZEN Series 8」などの新製品を投入し高い評価を得ることができました。しかし、度重なる感染拡大防止対策等により消費の回復は弱いものとなり、売上は小幅な回復に留まりました。
海外市場のうち北米市場は物流の混乱や急激なインフレなどのマイナス要因を抱える中、個人消費の回復が堅調に進み、ジュエリーチェーンや百貨店などの実店舗販売に加えEC販売も好調に推移しました。また、欧州市場においても足元の回復ペースは弱含みながらも、経済活動の再開に向けた動きを背景に安定的に推移しました。アジア市場は、中国市場が前年比増収を確保したものの、景況感の悪化を受け回復ペースは徐々に鈍化傾向をたどりました。また、その他アジア地域は新型コロナウイルスの感染拡大状況によって違いはあるものの、緩やかな回復となりました。
“BULOVA”ブランドは、主力の北米市場においてEC販売、実店舗販売が大きく売り上げを伸ばし、増収となりました。
ムーブメント販売は、機械式ムーブメントが堅調に推移したことに加え、北米市場向けなどで高付加価値アナログクオーツムーブメントも売上を伸ばし、増収となりました。
なお、腕時計の生産規模は、前連結会計年度比50.7%増加し、約1,247億円(販売価格ベース)でありました。
以上の結果、時計事業全体では、依然として新型コロナウイルスの感染拡大の影響が拭えない中、EC販売の強化に向けた取組みの加速や、流通に適した製品展開を進めた結果、売上高は1,310億円(前期比37.1%増)と増収となりました。営業利益においては、主に海外市場の売上回復と2020年度に実施した事業構造改革の効果が寄与したことにより103億円の営業利益(前年同期は81億円の営業損失)と、増益となりました。
(工作機械事業)
工作機械事業は世界的な部材不足の影響による長納期化が進む中、国内市場は自動車向けの回復に遅れが見られているものの、半導体関連をはじめ、建機、住宅設備関連など幅広い業種で引き続き受注は好調を維持し、増収となりました。海外市場は、中国市場で医療、通信、自動車関連等が伸長したほか、欧州市場も特にドイツ、イタリア等において自動車関連を中心に堅調さを保ち、大幅な増収となりました。また、米州市場においても医療関連を中心に積極的な設備投資が継続しており、増収となりました。
なお、工作機械の生産規模は、前連結会計年度比92.9%増加し、約889億円(販売価格ベース)でありました。
以上の結果、工作機械事業全体では従来より取り組んできたLFV(低周波振動切削)技術を搭載した製品の拡大も寄与し、 売上高は810億円(前期比73.4%増)と増収となりました。また、好調な市況を受け大きく売上が伸長したことにより、営業利益は125億円(前期比328.9%増)と、増益となりました。
(デバイス事業)
精密加工部品のうち自動車部品は、世界的な半導体の供給不足による自動車メーカーの減産の影響を受け、足元は苦戦を強いられましたが増収を確保しました。スイッチは、顧客の在庫調整の影響を受けスマートフォン向けが低調に推移し、減収となりました。
オプトデバイスのうちチップLEDは、アミューズメント向け等の受注が落ち込んだものの、車載向けLEDや照明用LEDが順調に売り上げを伸ばし、増収となりました。
なお、オプトデバイスの生産規模は、前連結会計年度比6.3%増加し、約151億円(販売価格ベース)でありました。
その他部品は、水晶デバイスが引き続きIoT製品の拡大やデジタル化の進展に伴い幅広い分野で需要が増加しているほか、小型モーターも医療関連や半導体関連が堅調に推移し、その他の部品全体で増収となりました。
以上の結果、デバイス事業全体では、売上高は500億円(前期比9.0%増)と、増収となりました。営業利益においては、売り上げの回復が寄与し28億円(前年同期は4億円の営業損失)と、増益となりました。
(電子機器他事業)
情報機器は、フォトプリンターの需要が回復傾向にあるものの部材供給の遅れもあり減収となりましたが、POSプリンターやバーコードプリンターが、経済活動の再開に伴い欧州や国内市場などで売上を伸ばし、増収となりました。健康機器は、体温計の特需に一服感があるものの売上は堅調に推移し、また、健康意識の高まりにより個人使用が増えている血圧計も好調に推移した結果、増収となりました。
以上の結果、電子機器他事業全体では、売上高は192億円(前期比4.9%増)、営業利益は11億円(前期比197.5%増)と、増収増益となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ291億円増加し、3,949億円となりました。資産の内、流動資産は、現金及び預金が90億円、棚卸資産が67億円増加したこと等により、256億円の増加となりました。固定資産につきましては、投資有価証券が39億円、建物及び構築物が10億円増加した一方で、建設仮勘定が16億円減少したこと等により、34億円の増加となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ、支払手形及び買掛金が27億円、電子記録債務が48億円増加した一方で、短期借入金が48億円、長期借入金が38億円減少したこと等により33億円増加し、1,562億円となりました。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ、為替換算調整勘定が117億円、利益剰余金が175億円それぞれ増加した一方で、自己株式を71億円取得したこと等により258億円増加し、2,386億円となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度に比べ116億円増加し、当連結会計年度末には、1,112億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度と比べ272億円増加し346億円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が266億円、仕入債務の増加額39億円、減価償却費111億円等の増加要因がありました一方、売上債権の増加額20億円、法人税等の支払額31億円等の減少要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度と比べ19億円支出が増加し、95億円の支出となりました。これは主に有形固定資産の売却による収入23億円等の増加要因がありました一方、有形固定資産の取得による支出95億円、無形固定資産の取得による支出21億円等の減少要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度と比べ382億円支出が増加し、199億円の支出となりました。これは主に長期借入金の返済による支出80億円、自己株式の取得による支出71億円、配当金の支払額35億円等の減少要因によるものであります。
当社グループの生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様でなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことをしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績については、セグメント業績に関連付けて示しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
なお、経営者は見積り及び判断・評価につきまして、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における経営成績等に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの経営戦略の現状と見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料及び部品等の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に生産設備投資であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。自己資金につきましては国内グループ会社間の資金効率を上げるためキャッシュマネージメントシステムを導入しております。設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入と債券市場からの社債等による調達を基本としております。
当連結会計年度末における有利子負債(リース債務含む)の残高は67,241百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は111,237百万円となっております。
不測の事態に備えて、金融機関との良好な関係の維持に努めるとともに、複数の金融機関との間で合計20,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。
なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
当社グループは、2019年度から2021年度までの「中期経営計画2021」において、グループ中期経営ビジョンとして「Innovation for the next ~時を感じ、未来に感動を~」を掲げ、これまでのものづくりにとどまらない新たな価値創造に挑戦してきました。
しかしながら、新型コロナウイルスの 感染拡大の影響が想定以上の規模となり、またその影響も長引いたことから、「中期経営計画 2021」で掲げた数値目標を大きく下回る厳しい結果となりました。一方、各事業の施策を着実に実施し、資本効率が向上したことにより、ROEは目標を上回り、今後の成長に向けた土台作りが行えたものと認識しています。
2022年度から始まる「中期経営計画 2024」では、引き続き時計事業と工作機械事業を、グループの成長を牽引するコア事業と位置づけ、リソースを戦略的に投資していくことで、更なる成長を目指していきます。2024年度までに売上高水準を引き上げながら更なる収益性の改善を進め、売上高3,200億円、営業利益率8%、ROE8%以上の達成を目指します。
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