(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①財政状態の状況
(流動資産)
当事業年度末における流動資産の残高は、2,930,504千円(前事業年度末は2,778,008千円)となり、152,496千円増加いたしました。その主な要因といたしましては、営業活動によるキャッシュ・フローの収入が投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローの支出を上回ったことにより現金及び預金が66,989千円、売上の増加により売上債権が90,897千円それぞれ増加したことによるものであります。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産の残高は、261,139千円(前事業年度末は247,304千円)となり、13,834千円増加いたしました。その主な要因といたしましては、東京本社の移転や旧ニコール事業部(現横浜ファクトリー)増床等により敷金が15,746千円増加したためであります。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債の残高は、309,917千円(前事業年度末は284,454千円)となり、25,462千円増加いたしました。その主な要因といたしましては、仕入の増加により買掛金が12,222千円、期末間際に市場変更を行ったことに伴い関連費用を未払計上したため未払金が18,572千円それぞれ増加したことによるものであります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債の残高は、128,747千円(前事業年度末は126,883千円)となり、1,864千円増加いたしました。その主な要因といたしましては、繰入により役員退職慰労引当金が6,163千円増加したものの、返済によりリース債務が4,349千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は、2,752,979千円(前事業年度末は2,613,975千円)となり、139,004千円増加いたしました。これは、剰余金の配当50,600千円の減少要因はあったものの、当期純利益189,604千円を計上したことによるものであります。
②経営成績の状況
当事業年度における我が国経済は、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響が継続しており、一部の地域において緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置が適用されました。ワクチン接種が進んでおり経済の回復が期待されますが、一方で、海外における感染拡大、半導体不足、原油価格の上昇といった問題もあり、いまだ先行きが不透明な状況が続いております。
このような状況の中、当社は引き続き従業員の安全を確保し、柔軟な時差出勤の実施、在宅勤務の一部実施等の各種感染防止策を実行した上で、お客様からの信頼にお応えするべく、営業体制・制作体制の両方の維持継続を図ってまいりました。
販売促進用広告制作については、第1四半期会計期間においては新型コロナウイルス感染症の影響による売上落ち込みが続きましたが、第2四半期に入ってからは回復基調となりました。また、生活資材・製品制作については、ホテルの壁紙の受注等により順調に売上を伸ばすことができました。
一方、「リアル領域」と「デジタル領域」を融合させたビジネスモデルへの挑戦として、当事業年度より新たにデジタルサイネージ事業、インターネット通販サポート事業を開始いたしました。デジタルサイネージについては、大阪本店と東京本社にショールームを開設し、第2四半期会計期間から販売を開始いたしました。さらに、3月には株式会社ピースリーと業務提携契約を締結し、インテリア市場に向けたデジタルサイネージの展開への道筋がつきました。今後の事業拡大に向けて引き続きお客様に積極的な提案を行ってまいります。インターネット通販サポートについては、第3四半期会計期間から営業を開始し、来期からの本格展開に向けて積極的な営業活動を行っております。
また、生産のオートメーション化を推進するためのソフトウエアを導入し、生産の効率化に向けて取り組みました。
8月には東京本社を移転し、東京事業部の営業部門とニコール事業部の営業部門を新東京本社に統合いたしました。また、東京事業部の生産部門とニコール事業部の生産部門を横浜ファクトリー(ニコール事業部を増床のうえ改称)に集約しました。これにより首都圏エリアにおける営業機能の強化と生産体制の効率化が実現し、今後の事業拡大と収益性向上を図ります。
さらに、10月29日付けで当社株式の上場市場が東京証券取引所マザーズ市場から東京証券取引所市場第二部へ市場変更されました。「リアル領域」と「デジタル領域」を融合させたビジネスモデルを構築することにより、さらなる成長と企業価値の向上を目指します。
以上の結果、売上高は2,549,241千円(前年同期比4.4%増加)となり、営業利益は、市場変更に関連する一時的な費用が発生したものの、コスト意識が定着し経費削減に努めたため、222,122千円(前年同期比6.9%増加)となりました。経常利益は、東京本社の移転に係る補償金41,250千円や新型コロナウイルス感染症対策関連の補助金を営業外収益に計上したことにより、271,291千円(前年同期比28.2%増加)となり、当期純利益は189,604千円(前年同期比35.0%増加)となりました。
売上高につきましては、第2四半期以降は回復基調となり、第3四半期まではほぼ想定通りに進捗しましたが、第4四半期については緊急事態宣言の延長等により当初想定していたほどの回復には至りませんでした。この結果、売上高、営業利益については期初想定を下回りましたが、経常利益、当期純利益については期初想定を上回る結果となりました。
なお、当社はインクジェットプリント事業を主要な事業としており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント別の経営成績の記載はしておりません。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、2,331,333千円となり、前事業年度末から66,989千円増加いたしました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は、次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は196,422千円(前年同期比26.0%減少)となりました。これは主に、売上債権の増加額90,897千円の資金減少要因があったものの、税引前当期純利益268,827千円の資金増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は70,328千円(前年同期は29,384千円の減少)となりました。これは主に、敷金の回収による収入が44,453千円あったものの、有形固定資産の取得による支出が55,050千円、敷金の差入による支出が51,784千円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は59,104千円(前年同期は126,152千円の減少)となりました。これは主に剰余金の配当によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
当社はインクジェットプリント事業を主要な事業としており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント情報に関連付けた記載はしておりません。
イ.生産実績
当社の事業は、提供する商品の性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
ロ.受注実績
当社は受注生産を行っておりますが、受注から販売までの期間が短いため、記載を省略しております。
ハ.販売実績
区分 |
第36期事業年度 (自 2020年11月1日 至 2021年10月31日) |
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
販売促進用広告制作 |
2,043,627 |
1.7 |
生活資材・製品制作 |
505,613 |
17.1 |
合計 |
2,549,241 |
4.4 |
(注)1.金額は販売価額によっており、消費税等は含まれておりません。
2.当事業年度より、販売区分を一部見直し、従来販売促進用広告制作に区分していたアミューズメント施設等への売上を生活資材・製品制作に区分しております。なお、前年同期比については前事業年度を変更後の区分に組み替えて算出した数値を記載しております。また、デジタルサイネージ及びインターネット通販サポートについては売上が僅少であるため、販売促進用広告制作に含めております。
3.主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
相手先 |
第35期事業年度 (自 2019年11月1日 至 2020年10月31日) |
第36期事業年度 (自 2020年11月1日 至 2021年10月31日) |
||
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
フリュー㈱ |
292,281 |
11.9 |
360,966 |
14.2 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。
この財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、不確実性が内在しているため、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下の通りであります。
イ.固定資産の減損
固定資産のうち減損の兆候のある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。過年度の損益実績や事業計画に基づき減損の兆候の有無を検討しておりますが、市場環境の変化等により、事業計画の前提条件に変更が生じた場合には、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
ロ.繰延税金資産の回収可能性
過年度の課税所得の実績や事業計画に基づく課税所得の見積りに基づき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提条件に変更が生じた場合には、繰延税金資産を取り崩し税金費用の計上が必要となる可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症に関する会計上の見積りに係る仮定は、「第5 経理の状況 1財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しております。
②当事業年度の経営成績の分析
当事業年度の経営成績は、第1四半期は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けましたが、第2四半期以降は回復基調となり、通期では前年同期と比較して増収増益となりました。
イ.売上高
当事業年度の売上高は、2,549,241千円となり、前年同期と比較して4.4%増加しました。第1四半期は新型コロナウイルス感染症の影響を受けたため、影響がなかった前年同四半期と比較して27.2%減少しましたが、第2四半期以降は回復基調となりました。この結果、通期では4月以降新型コロナウイルス感染症の影響を受けた前年同期と比較して増収となりました。
ロ.売上原価、売上総利益
当事業年度の売上原価は、1,548,126千円となり、前年同期と比較して3.8%増加しました。主な要因は、売上高の増加により材料費が18,472千円増加したことや、取引量の増加や旧東京本社の生産部門を横浜ファクトリーへ移転する特殊業務があり労務費が16,599千円増加したことによるものであります。
この結果、当事業年度の売上総利益は、1,001,115千円となり、前年同期と比較して5.4%増加しました。
ハ.販売費及び一般管理費、営業利益
当事業年度の販売費及び一般管理費は、778,993千円となり、前年同期と比較して5.0%増加しました。主な要因は、東京証券取引所市場第二部への市場変更に関連して上場料金、審査料、アドバイザリー報酬等が発生したことや、東京本社移転関連の費用が発生したことによります。
この結果、当事業年度の営業利益は、222,122千円となり、前年同期と比較して6.9%増加しました。
ニ.営業外収益、営業外費用、経常利益
当事業年度の営業外収益は東京本社移転に係る補償金41,250千円や新型コロナウイルス感染症対策関連の補助金により49,489千円、営業外費用は支払利息で320千円となりました。
この結果、当事業年度の経常利益は、271,291千円となり、前年同期と比較して28.2%増加しました。
ホ.特別損益、税金費用、当期純利益
前事業年度、当事業年度ともに特別利益は発生しておりません。特別損失は、前事業年度は機械及び装置を除却したことに伴う固定資産除却損50千円が発生しました。当事業年度は、機械及び装置を除却したことに伴う固定資産除却損1,429千円と東京本社移転に係る固定資産除却損1,035千円の合わせて2,464千円が発生しました。また、課税所得の増加により、税金費用は79,223千円となり、前年同期と比較して11.3%増加しました。
以上の結果、当期純利益は、189,604千円となり、前年同期と比較して35.0%増加しました。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。
当社の運転資金及び設備投資資金は原則として自己資金で賄う方針でありますが、必要に応じて借入の実行も検討いたします。
当社は、資金の源泉と流動性を安定的に確保することを基本方針としております。営業活動によるキャッシュ・フロー及び2019年7月に実施した増資により、当事業年度末の現金及び預金は2,331,333千円となっており、これを主として設備投資資金・成長のための投資資金に充当する予定であります。
④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、重要な経営指標として「売上高」と「売上高成長率」及び「売上高経常利益率」を掲げ、売上高成長率10%を目指しております。当事業年度の売上高は2,549,241千円となり、新型コロナウイルス感染症による影響により前年同期に対して4.4%の増加にとどまりました。売上高経常利益率は10.6%となり、前年同期と比べて1.9ポイント増加しました。新型コロナウイルス感染症の収束には至っておらず、先行き不透明な状況が続いておりますが、「リアル領域」と「デジタル領域」を融合させたビジネスモデルを推進してこの状況を改善し、今後もこの3つの指標を重視しつつ、自己資本利益率を意識した経営を行うことにより、企業の成長性及び効率性の確保を図ってまいります。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の経営成績は、新型コロナウイルス感染症や、特定取引先への依存、同業他社との競合、人材の確保等、様々な要因の変動による影響を受ける可能性があります。このため、当社事業を取り巻く環境に注視し、内部統制システムの強化等によりこれらのリスク要因に対応してまいります。
⑥経営者の問題意識と今後の方針について
今後の見通しにつきましては、いまだ新型コロナウイルス感染症は収束に至っておらず、新たな変異株の発生が報じられる中、国内企業の販売促進活動は抑制的であり、イベント・展示会関係に対しても一定の制限が継続し、完全な回復には時間を要すことが考えられます。そうした中でも国内経済は回復基調にあり、当社の事業領域である販売促進用広告の分野においても状況が好転するものと考えております。
しかしながら、当社を取り巻く環境は、引き続き、他社との受注獲得競争が続き、それに伴う価格競争の激化などの影響を受け、経営環境は厳しさを増すものと考えます。こうした課題に向けて、当社は従来のインクジェットプリント事業を軸としつつ、2021年10月期より開始した新規事業を成長させることにより、「リアル領域」と「デジタル領域」の融合を進めてまいります。
当社の主力事業であるインクジェットプリント事業においては、事業拠点である大阪、東京、横浜の各エリアの営業部門において顧客対応・目標達成・育成・管理の各面での営業力の強化を図ります。名古屋、福岡の両拠点では、景気の回復に合わせて新規顧客の開拓を加速させるとともに、設備の増設による生産体制の強化を行います。また、インテリア内装分野を強化するべく、デジタル壁紙やガラスフィルム等の商材を全国に展開いたします。さらに、対面営業での受注に加えてWEBによる全国からの受注に応えるため、ECサイトを全面リニューアルし、売上拡大を図ります。
生産体制については、高利益体質を構築するべく、原価低減や設備導入、業務の自動化による生産性向上に取り組みます。
2021年10月期より開始した新規事業のうち、デジタルサイネージ事業については、2022年10月期に入り大型受注を獲得することができ、また、従来のハード機器の販売に加えてCMSによる映像配信システムの導入提案を積極的に進め、売上拡大を目指します。インターネット通販サポート事業については、ネットショップの運営サポートに加えて、インクジェットプリント事業の既存顧客に対してWEBプロモーションの支援を開始し、売上拡大を目指します。これに伴い、インターネット通販サポート事業の名称をデジタルプロモーション事業に変更いたします。
また、今後の当社のさらなる成長および企業価値の向上を実現させるには、M&A戦略が非常に重要と考えており、M&Aに関する各種調査を積極的に行い、具体的に計画を進めてまいります。
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