業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
 文中の将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末(2021年3月31日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、世界規模で拡大する新型コロナウイルス感染症が個人消費や企業活動へ大きく影響し、厳しい状況が続きました。各種政策の効果などにより、景気の持ち直しの動きも見られましたが、先行きは不透明な状況が続いており、今後も新型コロナウイルス感染症拡大による社会経済活動への影響や金融資本市場の変動などの影響を注視する必要があります。世界経済においても、同様に未だ予断を許さない状況にあります。

当社グループを取り巻く環境におきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大による消費活動および企業活動の停滞、それに伴う企業の経費削減の徹底や需要構造の変化による紙媒体の減少、人件費の上昇など、依然として厳しい状況が続いております。一方で、企業や行政機関のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や非対面型ビジネスモデルの広がり、ワークスタイル変革などによる新たな需要が見込まれることに加え、各種の経済対策関連施策など社会情勢に伴う案件も顕在化しています。また働き方の多様化によるテレワークの拡大に伴う情報漏えいリスクや標的型攻撃などのサイバー攻撃による脅威が増大するなか、情報セキュリティ対策の重要性がより一層高まりました。

このような状況のなか、当社グループは持続的な成長の実現に向け、従来型のソリューションと最先端のデジタル技術を掛け合わせることで、独自性の高い新たな価値を提供する「デジタルハイブリッド」を軸とした成長戦略を実行し、市場でのプレゼンスを強化するとともに、グループ全体での構造改革に継続して取り組み、事業体制の最適化や製造拠点の再編などの効果創出により、中長期における収益力の強化に取り組みました。

具体的には、ビジネスフォーム(BF)の生産効率の向上とカード製品やICタグ・ラベルなどのIoT関連製品の生産能力増強を目的に東海エリアを中心とした6拠点を集約した袋井工場が本格稼働しました。

また中長期的な成長ビジョンの実現に向けて、業界横断型の共通手続きプラットフォーム「AIRPOST(エアポスト)」のサービス提供先や対応手続きの拡大、セキュリティ強化を推進したほか、メッセージサービスと紙の通知物を組み合わせたハイブリッド配信サービス「EngagePlus(エンゲージプラス)」の提供を本格化しました。さらに、デジタル技術を活用し行政事務の効率化・自動化を支援するデジタル・ガバメントの取り組みを加速するなど、デジタル分野を中心に新規領域への取り組みを推進しました。

これらの取り組みにより、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)やデジタルソリューション、情報機器の拡販などが進みましたが、金融機関および製造・流通などの業界を中心に新型コロナウイルス感染症が各事業に影響を与えたことに加え、BFの改元需要の反動減や、データ・プリント・サービス(DPS)における電子化の影響、カード関連、サプライ品の縮小などにより、売上高は前年を下回りました。一方、BPO需要の取り込みやペイメントサービスにおける決済プラットフォーム利用料収入の増加などにより、営業利益における収益性は大幅に向上しました。

以上の結果、前連結会計年度に比べ売上高は2.6%減の2,182億円、営業利益は7.1%増の87億円となりました。また袋井工場設立に伴う自治体からの補助金収入などにより、経常利益は36.4%増の98億円、親会社株主に帰属する当期純利益は85.7%増の43億円となりました。

セグメント別の業績を示すと、次のとおりです。

 

 

データ&ドキュメント事業

売  上  高

1,528億円

(対前連結会計年度  0.8%減)

 

セグメント利益(営業利益)

112億円

(対前連結会計年度 13.7%増)

 

データ&ドキュメント事業のうちDPSでは、経済対策や新型コロナウイルスワクチン関連など行政機関を中心とした通知物需要の取り込みなどはありましたが、一部案件における電子化の進展や、新型コロナウイルス感染症の影響による事務通知物やダイレクトメール(DM)の縮小などがあり、前年からわずかに減収となりました。

デジタルソリューションでは、金融機関などを中心に共通手続きプラットフォーム「AIRPOST」関連や、法改正に伴う新たな需要、経済対策関連案件の取り込みなどにより前年から大幅な増収となりました。

BPOでは、前述の経済対策関連に加え、行政機関やエネルギー関連、金融機関などからのアウトソーシング需要の取り込みにより、前年から大幅な増収となりました。

BFは、金融機関を中心とした非対面手続きの促進に伴う各種窓口帳票の減少や、前年度の改元や税率引き上げに関連した一時的な需要増の反動減、新型コロナウイルス感染症の影響による旅客需要減退に伴う関連帳票の減少、製品仕様の簡素化による単価下落や電子化に伴う数量減などの影響により、前年から大幅な減収となりました。

また通信販売業界におけるパンフレットやカタログなど、各種DM類に関連するその他の印刷物も大幅な減収となりました。

以上の結果、データ&ドキュメント事業全体の売上高は前年並みとなりました。

また売上減に伴う利益減や新工場の生産体制強化に伴う償却費の増加、IT費用を含む製造コストの増加、成長分野への先行投資などによる販管費増の影響はありましたが、BPOの増収や再編効果による収益性向上などの影響により、営業利益における収益性は大幅に向上しました。

 

ITイノベーション事業

売  上  高

 277億円

(対前連結会計年度  4.6%減)

 

セグメント利益(営業利益)

 26億円

(対前連結会計年度  4.2%減)

 

ITイノベーション事業では、各種電子マネーやコード決済に対応した決済プラットフォーム「シンカクラウド」の利用料収入の拡大や、システム運用管理サービスにおける受託範囲の拡大、在庫管理用ICタグ・機器などのIoT関連の拡販がありましたが、カード関連の減少などにより減収となりました。

なお「シンカクラウド」の利用料収入の増加などがありましたが、カード関連の売上減に伴う利益減やシステム運用管理サービスにおけるコスト増加などがあり、営業利益における収益性は低下しました。

 

ビジネスプロダクト事業

売  上  高

 268億円

(対前連結会計年度   5.9%減)

 

セグメント利益(営業利益)

 6億円

(対前連結会計年度  19.5%増)

 

ビジネスプロダクト事業では、情報機器や温度管理サービスなどの開発商品、新型コロナウイルス感染症対策商品の拡販などがありましたが、テレワークの拡大によるサプライ品の需要減やコピー用紙を中心とした低差益案件の見直しに伴う縮小などにより、減収となりました。

なお開発商品の拡販やサプライ品における低差益案件の見直しと納入運賃の削減などの影響により、営業利益における収益性は大幅に向上しました。

 

グローバル事業

売  上  高

 107億円

(対前連結会計年度  13.0%減)

 

セグメント利益(営業利益)

 3億円

(対前連結会計年度  45.9%減)

 

グローバル事業では、中国におけるカード関連需要や、香港における政府系案件の取り込みはあったものの、新型コロナウイルス感染症の影響や、価格競争の激化、デジタル化の進展に伴う受注減などにより、大幅な減収となりました。

また中国におけるカード関連の売上増や、香港・シンガポールにおける製造コストの削減などはありましたが、売上減に伴う利益減の影響により、営業利益における収益性は大幅に低下しました。

 

 

(2) 生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

データ&ドキュメント事業

153,993

△0.1

ITイノベーション事業

7,026

△11.7

ビジネスプロダクト事業

934

34.4

グローバル事業

10,738

△13.0

合計

172,693

△1.4

 

(注) 1  金額は販売価格で表示しております。

2  上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前期比(%)

受注残高
(百万円)

前期比(%)

データ&ドキュメント事業

153,678

0.0

1,985

△13.7

ITイノベーション事業

6,738

△17.3

345

△45.5

ビジネスプロダクト事業

798

△7.1

44

△75.5

グローバル事業

10,751

△13.0

37

50.6

合計

171,966

△1.7

2,413

△23.1

 

(注) 1  金額は販売価格で表示しております。

2  上記金額には、消費税等は含まれておりません。

3  各生産部門への製造指図書の送達実績を受注高として表示しております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

データ&ドキュメント事業

152,871

△0.8

ITイノベーション事業

27,745

△4.6

ビジネスプロダクト事業

26,874

△5.9

グローバル事業

10,738

△13.0

合計

218,231

△2.6

 

(注) 1  上記金額には、消費税等は含まれておりません。

     2  主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

 

(3) 財政状態

当連結会計年度末の財政状態は前連結会計年度末に比べて、以下のとおりとなりました。

総資産は、56億円(2.6%)増加し、2,246億円となりました。うち、流動資産は62億円(5.9%)増加し、1,113億円、固定資産は5億円(0.5%)減少し、1,132億円となりました。

流動資産の増加の主な要因は、現金及び預金の増加57億円によるものです。

固定資産のうち有形固定資産は29億円(3.6%)減少し、791億円となりました。投資その他の資産は12億円(4.4%)増加し、292億円となりました。

有形固定資産の減少の主な要因は、建物及び構築物の減少12億円のほか、土地の減少12億円、建設仮勘定の減少7億円によるものです。

投資その他の資産の増加の主な要因は、投資有価証券の増加14億円のほか、敷金及び保証金の増加13億円、繰延税金資産の減少17億円によるものです。

負債は、16億円(3.3%)増加し、516億円となりました。うち、流動負債は31億円(6.8%)増加し、489億円、固定負債は14億円(35.7%)減少し、26億円となりました。

流動負債の増加の主な要因は、未払消費税等の増加20億円によるものです。

固定負債の減少の主な要因は、退職給付に係る負債の減少15億円によるものです。

純資産は、40億円(2.4%)増加し、1,729億円となりました。これは主にその他有価証券評価差額金の増加20億円のほか、利益剰余金の増加15億円によるものです。

以上の結果、自己資本比率は、0.1ポイント減少し75.7%となりました。また1株当たり純資産額は35円81銭増加し、1,531円99銭となりました。

 

(4) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ57億円増加し、545億円となりました。

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動により得られた資金は、前連結会計年度に比べ30億円増加し165億円となりました。これは主に減価償却費76億円、税金等調整前当期純利益74億円および未払又は未収消費税の増減額25億円によるものであります。

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果支出した資金は、前連結会計年度に比べ129億円減少し74億円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出61億円、無形固定資産の取得による支出26億円によるものであります。

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果支出した資金は、前連結会計年度に比べ2億円減少し31億円となりました。これは主に配当金の支払額27億円によるものであります。

 

資本の財源および資金の流動性

当社グループの主な資金需要は、運転資金と設備投資にあります。運転資金は製品製造のための原材料費、労務費および製造経費をはじめ、販売費および一般管理費などとなります。設備投資は、デジタル分野を中心とした成長領域における事業拡大や、生産性向上等による経営効率化などに重点的に振り向けております。加えて、デジタルハイブリッドを促進するための戦略的投資についても実施してまいります。

なおこれらの資金需要につきましては、主に営業活動から創出するキャッシュ・フローを中心とした自己資金で賄う予定であり、十分な手元流動性を確保しております。

 

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針につきましては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

また連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

なお新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。

 

(6) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは、収益性ならびに投資効率を持続的に高めていくことが企業価値の最大化に繋がるものと考えております。中長期かつ持続的な成長を実現するため、独自性の高いソリューションの拡充を図りデジタルハイブリッド企業としての立ち位置を確固たるものとしていきます。さらに、構造改革の断行により、成長余地の大きい分野への経営資源の集中を図り、グループ総合力の強化と収益性の確保に努め、向上を目指してまいります。

具体的に収益性については、売上高営業利益率を指標として改善に取り組んでおります。また投資効率については連結自己資本当期純利益率(ROE)および投下資本利益率(ROIC)を重要な経営指標と捉え、その向上に努めてまいります。

当期は、売上高営業利益率4.0%、ROE2.6%となりました。

 

各指標の推移は以下の通りです。

 

第63期

第64期

第65期

第66期

第67期

売上高営業利益率(%)

3.7

3.0

3.0

3.6

4.0

ROE(%)

3.6

2.3

2.1

1.4

2.6

 

・売上高営業利益率: 営業利益/売上高

・ROE:親会社株主に帰属する当期純利益/期首・期末平均自己資本

 

なお経営成績等に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に、経営戦略の現状と見通しおよび経営者の問題認識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」にそれぞれ記載しております。

 

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